和而不流(和して流れず)

Columns

成長戦略にエネルギーや食料の自給率拡大を

TPPの対応よりも急ぐものがあります

「市場に流通する通貨量を増やす」という金融政策は、従来、「金融緩和政策」として金利の調整でマネーストックの増加が図られてきましたが、金利がゼロに近い状態にまで下降したため、「金利」から「資金量」に着目し、中央銀行が国債や証券などを買い入れて市場に潤沢に資金を供給する「量的緩和政策」へと進化しています。
米国では、2008年から実施された量的緩和政策を「QE1」、2010年から実施された量的緩和政策を「QE2」と呼び分け、QE1はサブプライム・ローン問題に端を発した金融危機に対応するため1兆7250億ドルを市場に供給、QE2は米国の景気対策として6000億ドルが供給されました。
景気回復には、財政政策と金融政策を組み合わせたポリシー・ミックスが有効とされ、米国ではQE2と9000億ドル規模の包括的減税によって消費と生産に回復基調が見られましたが、雇用統計は回復せず、米連邦準備制度理事会(FRB)は、2012年9月からQE3として、市場から月額400億ドル(約3兆円)の住宅ローン担保証券(MBS)の買い取りと月額450億ドルのオペレーションツイスト並行して行うとともに事実上のゼロ金利政策を継続的に実施し、2013年7月31日午後の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)でも継続することを決めました。
FRBのバーナンキ議長は量的緩和は万能薬ではないとしながらも、米国債・社債・住宅ローンなどの金利の引き下げ、株式相場・住宅価格の引き上げ、労働市場(雇用)の改善、消費の拡大などに効果があると述べ、雇用市場が順調に回復すれば今年後半に量的緩和を縮小する道筋を示しています。
米国の景気数値は緩やかな回復傾向を示しており、9月の次回FOMCでの判断によっては、円安が加速し、エネルギーコストや輸入農林水産物価格の上昇によって貿易収支の赤字が拡大するなどの懸念が生じますから、政府が発出する第3次の成長戦略にはエネルギーや食料の自給率拡大が不可欠です。原発の運転凍結によって化石燃料依存が増大、国富は流失するばかりで、木質バイオマスなど循環エネルギーへの転換は急務で、同時に農林水産業への回帰も極めて重要な視点です。衆・参のねじれは解消されました。秋の臨時国会に向けて政府・与党一体で、国益に資する日本経済の回復に向けた迅速かつ適切な舵取りを期待します。

過去の投稿

園山繁の活動日誌