和而不流(和して流れず)

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民主党代表選のツケ

100日間の政治空白をどうやって埋めることができるだろうか

日本の政治空白を見透かしたように9月7日、中国漁船の尖閣領海侵犯事件が発生した。停船を命じた海上保安庁の艦艇に体当たりして、船長が公務執行妨害で現行犯逮捕された事件は、首相官邸の危機管理に対する認識の甘さが露顕したばかりでなく、予測された中国の強硬姿勢への対応策を怠った外交当局のミスによって、大きく国益を損なってしまった。日本の領海で発生した公務執行妨害事犯が、地検の「外交的配慮」によって、起訴もされずに、処分保留のまま釈放されることなど、法治国家として「あり得ない」事態であり、事実上、「中国の圧力に屈服したも同然」の外交的な敗北を喫した、きわめて後味の悪い結末となった。
9月14日の民主党代表選挙で菅直人氏が再選された。再選と言っても、1期目の任期は平成22年6月2日からだから、ようやく「信任された」と言った方が適切かも知れない。しかし、昨年の9月16日、鳩山由起夫氏が内閣総理大臣に指名され、歴史的な政権交代が実現した。衆参両院で与党が多数を形成する安定政権は、衆議院選挙で国民に示したマニフェストを実行するに十分な備えを有しており、直前の自公連立政権が安倍、田中、麻生と1年で首相がコロコロ変わる状況から脱するものと思われた。
しかし、・・・である。鳩山首相の政治資金報告書の虚偽記載、小沢一郎民主党幹事長の政治資金転用問題などにより、政府と政権与党のトップがいずれも秘書が訴追されるという、いわゆる「政治とカネ」、沖縄普天間基地の移設問題の失態、予算編成方針の転変など政権運営の稚拙さもあってわずか8ヶ月余で鳩山内閣は自滅してしまったのである。鳩山首相の後継は「国会の会期中」との理由で、わずか数日で選出された。しかし、菅直人氏の総理大臣の指名から組閣まで1週間の政治空白が生じ、AEPECやG20の国際会議に懸念が顕われたばかりか、参院選での与党敗北の処理が9月の民主党代表選まで先送りされ、選挙後に内閣改造や党役員人事が行われると発表されるに至って、第1次菅内閣は職務執行内閣でしかなくなり、事実上、政治空白が継続してしまったのである。
この100日間、為替は急激な円高となる一方で、株価は下落、リーマンショック後の回復基調は一気に危険水準となってしまった。世論調査によると、菅首相が再選された最大の要因が「首相がコロコロ変わる状況は良くない」とするものだと報道され、民主党関係者もそれを認めている。それでは、なぜ、わずか3ヶ月のうちに2度の党首選を行ったのだろうか。菅・小沢の対決は過剰とも思えるメディアへの露出によって関心が高まり、下落した内閣や政党支持率は一時的に回復したように見えるが、政治空白によって、国益を大きく損ねていることは明白であり、大きな批判を浴びることは必至で、支持率の急落は免れまい。10月1日から開催される臨時国会で、政府・与党は、この間の不手際について虚心坦懐に説明、反省し、国民生活のための君子豹変するくらいの覚悟を見せてもらいたいと願うのは無理だろうか。

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