和而不流(和して流れず)

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個人消費の伸び悩みには理由がある

財政資金の投入ではデフレは脱却できません

内閣府が8月16日に発表した2010年4~6月期の国内総生産速報値によると、物価変動の影響を除いた実質が前期比0.1%増(年率0.4%増)となった。輸出は好調だったが、政府の景気対策の息切れなどから個人消費が伸び悩み、前期(年率4.4%増)に比べ大幅に減速し、3期連続のプラス成長にはなったものの、物価の影響を含む名目は前期比0.9%減(年率3.7%減)で、2期ぶりに名目が実質を下回り、デフレ状況を示す「名実逆転」に戻った。実質GDPを主な項目別に見ると、全体の6割弱を占める個人消費は前期比0.03%増と5期連続のプラスとはなったものの、伸びは前期(0.5%増)より鈍っている。企業の設備投資は0.5%増で輸出の伸びに伴う生産拡大を反映し3期連続で増加した。住宅投資は1.3%減、公共投資は3.4%減となった一方で、輸出は欧州向けの建設機械を中心に引き続き好調で、5.9%増加した。輸入は4.3%増で、実質GDPの伸び率に与えた影響を示す「寄与度」は内需がマイナス0.2%、輸出から輸入を差し引いた外需がプラス0.3%と、国内経済の減速を好調な輸出が支えるという構図が鮮明である。
個人消費の伸び悩みやデフレ傾向の顕在化は、家電エコポイントやエコカー減税などの政策効果が弱まってきたことが原因とされているが、クレジットカードの発行制限や上限金利の規制を主とした貸金業規制法の改正による「信用の制限」に、より大きな要因があると思う。現代社会は通貨よりも、クレジットやカードなどによる信用が何倍もの量で取り引きされ、通用しているが、多重債務問題などを理由に信用の収縮に直結する規制強化が図られた。貸金業者は金額の大小、期間の長短の区別なく、年15%以上の金利は請求できなくなり、事実上、日本国内の消費者金融は営業不能となり、また、クレジットカードの利用も大幅に制限を余儀なくされており、「お金も信用もあるのに使えない」状況が起こっているのである。
政府は16日、追加経済対策の検討に入ったと報道された。急激な円高への対応や個人消費の喚起、新卒者の就職に重点を置いた雇用促進などが対策の柱となる見通しで、景気の腰折れ回避やデフレ克服に向け、日銀に金融政策面での連携を呼び掛けるとしている。しかし、多重債務者問題のみならず後期高齢者医療制度や年金問題に見られるように、「社会構造やシステムの改善をどうするか」というものごとの本質ではなく、制度の不備によって起きている現象のみを強調し、あたかも「全てが悪い」というような報道に政治が振り回され、性急に法律や制度を改正した結果、混乱や不備を増幅させている例は枚挙にいとまがない。
経済状況を改善するためには、一刻も早く「お金が廻る」ようにすべきであり、それは、国が借金して国民にカネを配ることや行政サービスを無料化することでは実現しない。公共投資を消費への投資から生産への投資に転換させ、公・共・私の徹底した役割分担を図ることが大切であり、行き過ぎた規制と行政介入を是正することが社会を活性化させる第一歩だと思う。中韓両国への対応をはじめ菅内閣の外交姿勢には違和感も少なくない。参議院選挙の結果、参議院で与党の多数は消失し、国会は「採決ありき」から、与野党が経済政策、社会政策についてお互いの主張をぶつけ合い、政府の政権運営や経済運営に対する是非を論じる土壌が整った。まもなく小泉、安倍、福田、麻生、鳩山と5人が交代した「鬼門の9月」を迎える。景気の2番底を回避し、デフレを克服するためにも「政権ごっこ」からの脱却を期待したい。

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