和而不流(和して流れず)

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「緊急経済対策」を聞いて感じること

給付と負担について抜本的な見直しがまず先決

インフラは日本語で「基盤」「構造」という意味で、経済活動の基盤となる道路や鉄道、電気、ガス、通信網などサービスを提供する土台となる設備を言い、公共事業で整備されるものもあれば民間で整備されるものもあります。いずれも受益者が利用料金を支払うことで整備や維持・管理に要する費用を賄いますが、公共施設として整備されたものについては税が充てられることがあり、その場合は国や県、市町村などが必要な予算措置を講じて対処します。
通常、公共事業として実施されるインフラ整備の資金は国債や地方債などの借金で調達されるため、事業の実施後に返済する必要が生じますから、地方公共団体が発行できる地方債などは、財政破綻を招かないよう国によって厳しい条件が付されています。ところが、国は財政法で禁止されている赤字国債を発行するための特例法という「禁じ手」を常態化させ、国債の発行残高は膨れあがる一方の状況です。
国家財政の悪化は景気後退による税収の落ち込みにあると言われていますが、公共事業で整備したインフラのコストと負担のミスマッチや福祉や医療などの給付水準の拡大にも大きな要因があるように思います。国民が3年5ヶ月前に政権交代を選択した最大の理由は従来型の国家運営を変えることにありましたが、この「声無き声」に全く応えなかった民主党が総選挙に大敗したことは当然です。日本社会は少子高齢化の進行によって人口減少時代に突入し、国内の拡大再生産を前提とした国家運営はすでに破綻しており、一日も早く海外の発展地域の成長を取り込む経済政策への転換と徹底した行政給付の見直しが求められています。
安倍内閣は緊急経済対策として公共事業を中心に10.3兆円の補正予算を編成する方針を示しました。確かに景気回復とデフレからの脱却は克服すべき重要な課題ではあり、スピード感のある政策対応でスタートダッシュには成功したように見えますが、金融緩和の方針を表明しただけで株価や為替が大きく変動したように、マネーの世界は実体経済とかけ離れたところで動いており、効果は未知数です。むしろ、自民党が政策転換を図ることなしに、いつまでも従来手法での予算編成や財政運営を続ければ、国民は即座に維新など第3極と言われる勢力に支持の軸足を移行させることは必至のように感じます。
茂木経済産業大臣は自動車取得税と自動車重量税について自動車業界の活性化に支障があるとして廃止を求める方針を示し、自民党内にもこれを支持する意見がありますが、道路施設が国債を財源とする資金で整備、維持・管理されている以上、一番の受益者である自動車の所有者や運転者がガソリン税や自動車関連税を支払うことは当然で、前政権が掲げた高速道路無料化などと同様の目前の利を追う「木を見て森を見ず」の轍を踏んではなりません。また、高齢者の医療費窓口負担(2割)の引き上げを見送り、特例措置の継続が検討されているようですが、社会保障改革を実現させるには、全ての世代が少しずつ我慢し、譲り合いの精神を持つことが不可欠で、現在の高齢者にも分担を求めなければ理解は得られません。
安倍政権が、国防や外交など国家の基本を正し、肥大化した国家の行政機構や医療、年金、介護などの福祉サービスの給付水準、公共インフラに対する利用者負担のあり方など、疲弊した社会システム全般の作りかえという困難な課題に着手する姿勢を明確にすれば、国民は相当な期間、国家の運営を委ねるように思うのですが・・・。

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