和而不流(和して流れず)

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過去最大の貿易赤字

国内消費を活発にするためには中間層や一定の資産保有者の購買意欲を喚起する対策が不可欠

2013年の貿易収支は11兆4745億円の赤字となり、1979年の統計開始以来、過去最大の貿易赤字となった。日本の貿易収支は、2011年に2兆5647億円の赤字を計上し31年ぶりに赤字に転落した後、2012年に6兆9411億円に拡大、13年は10兆円台の大台を突破した。大幅な貿易赤字について、財務省では「輸出は3年ぶりに増加したが、外貨建て比率が輸出より輸入の方が高く、原油・LNG価格の上昇で赤字幅が拡大した」と説明している。
アベノミクスによる経済回復が言われ、円安を背景に、輸出は前年比9.5%増の69兆7877億円と、確かに3年ぶりに増加したものの、数量ベースでは前年比1.5%減と、依然として減少傾向は続いている。一方、輸入は前年比15.0%増の81兆2622億円で、過去最大に膨らみ、原子力発電所の稼働停止により、原油や液化天然ガスなどの輸入が増大した。中国やEU、米国向け輸出で自動車や自動車部品などは増加しているものの、原油や液化天然ガス、半導体、電子部品などの輸入増加が過去最大となっており、12月の統計数値だけを見ても、1兆2225億円の赤字で、輸出は前年比17.8%増、輸入は同26.1%増とされている。
国会は2月28日に衆議院で平成26年度の政府予算を可決し、予算の年度内成立が確定。平成25年度の補正予算とともに4月からの消費増税に備えたかたちとなってはいるが、経済統計数値を見る限り、通貨供給の増加などの金融緩和政策による円安誘導によって日本は国富を大きく減少させており、物価の上昇による可処分所得の目減りが国内消費を減速させる可能性もある。政府は民間企業に対し声高に「賃上げ」を要請するが、公共事業の発注単価や公務員給与、保育や介護など公的サービス単価は抑制したまま、低所得者対策と称する施策のオンパレードである。国内消費を活発にするためには中間層や一定の資産保有者の購買意欲を喚起する対策が不可欠のはずだが、経済の舵取りを間違えると負のスパイラルに入ると危惧する意見が少しずつ大きくなり始めたように感じる。

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