県議会だより

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9月定例県議会一般質問(2)

コロナ禍と人口減少の問題について

島根県は、地域のコミュニティの強さ、住民相互の結びつきの強さが特徴、また、長所として挙げられます。

さきに生じた日御碕の県道崩落災害においては、往来が困難となって孤立状態が長期化しても、大きな混乱が生じなかったのはその証左ですが、コロナ禍によって島根県内でも生活様式が従前と大きく変わってきたように感じるのです。

劇的に大きく変わったことは、冠婚葬祭のあり方で、とりわけ、葬儀は地域葬から家族葬に変化しました。

また、日常の「茶飲み」と称する相互の往来は、コロナ禍で中断したわずか数年で、地域の高齢者が亡くなったり、施設に入所したりで、隣人が少なくなり、住民の往来が見られなくなった地域・隣保は珍しくありません。

ところで、第211回通常国会において、「孤独・孤立対策推進法」が成立し、本年4月から施行となりました。

人間は社会的な生き物であり、誰しもが他者とのつながりを通じて精神的な充足を得ることが多いものですが、現代社会では様々な要因によって、この大切な「つながり」が失われがちになっており、様々な理由で孤独感を感じる人が増えていると言われます。

こうした孤独や孤立といった社会課題を受けて、制定されたのが「孤独・孤立対策推進法」で、この法律は、孤独や孤立からくる心身への有害な影響を受けている人々への支援を目的とし、その基本理念は、誰もが人生のあらゆる段階で孤独や孤立を経験する可能性があり、社会のあらゆる分野で孤独や孤立への対策を推進することが重要とされており、国と地方公共団体は住民の理解と協力を促進するよう督励し、必要な支援を講ずることが規定されています。

これは、まさに私たちが日常、「あたり前のこと」として行ってきたことが、法律で規定しなければならなくなったことを意味しており、日本の地域社会のコミュニティと言うか「きずな」が大きく劣化し、『地域で支えあう』ことが難しくなったことを示しています。

法律の趣旨に、「孤独・孤立に悩む人を誰ひとり取り残さない社会」、「相互に支え合い、人と人との『つながり』が生まれる社会」を実現することが書かれていますが、初めに、この法律の制定についての所感をお伺いいたします。(知事)

9月15日から1週間は老人福祉法に定める老人週間で、この時期、各地では敬老の日の前後に敬老会が開催されるのが常でしたが、コロナ禍で大規模集会は感染のリスクがあるとして多くの地域で中断し、現在に至っています。

かつて、農山漁村は人々が生業を営む場であり、そこには、共同作業での生産活動や居住環境や自然環境の維持・保全、鳥獣被害の防止、消防・防災、子育てや介護などの相互扶助があたり前のこととして実践されてきました。

地域社会が農林水産業と密接不可分であった時代は、農山漁村の保全は「わがこと」で、住民自らが行うことは当然のことでしたが、産業の高度化やグローバリゼーション、競争原理の導入など、社会・経済の変化によって、農林水産物(生産品)の価格指示が生産側にあった相対取引から市場取引に移行し、農業、林業、漁業など1次産業の採算、経済性は失われ、零細の生産者は離業し、核家族化や都市化の進行もあって地域社会での生活様式は「集団から個へ」と大きく変容してきました。

しかし、それでも、島根県では、多くの中山間地域で、必ずしも生産活動を伴わない共同作業であっても、コミュニティ活動として継承されてきましたが、現状を見ますと、農山漁村の環境は、農業、林業、漁業に対する多面的機能支払いで辛うじて保全され、保育や介護の主体は行政に移行しつつあります。

多面的機能支払いから外れた地域では、草刈りや美化(海岸や路肩、河川のごみ処理)、道路のり面やため池の管理などが放置され、野生鳥獣の被害も激増しています。コロナ禍によって「何とか維持してきた『協同の意識』」が変化し、住民の結びつきが弱まって、公助の要求が増嵩しているように感じるのです。

いままで、コミュニティ活動として、道路・河川の除草や海岸の美化、野生鳥獣の駆除など、多くを自助・共助として住民が担ってきた居住環境の保全に税を投入する必要が生じています。

行政に「打ち出の小づち」があるわけではなく、もはや、国に対して農林水産業に対する多面的機能支払いの範囲を大きく拡大するよう要請する必要性があることを残念に思うと同時に、過疎化・高齢化で担い手が少ない地域が多くなっている上に、コロナ禍で「個の意識」が強まり、自治会からの離脱やコミュニティ活動への不参加の住民が増加していることを懸念するところです。

 新型コロナウイルスの感染法上の位置づけは変更され、社会経済活動は概ねコロナ禍前に復したと言われていますが、コロナ禍の前と後で何が変わったと認識し、どのような対策が必要になるとお考えになっているのかお尋ねいたします。(知事)

さて、厚生労働省が発表した人口動態統計によりますと、令和5年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供の推定数)は、日本全体は『1.20』、島根県は『1.46』で、ともに過去最低を更新し、全国の出生数は727,288人(令和4年770,759人▼43,501人)、島根県は3,759人(4,161人▼402人)で前年よりも大幅に減少し、出雲市は1,196人(1,302人▼106人)で、松江市と出雲市で2/3、残りの17市町村で1/3となる勘定です。

そこで、昭和30年、60年、平成27年、令和5年の出生数を県、合併後の松江市、出雲市、松江市・出雲市を除く本土地域の市町、隠岐の市町村で示すとどのような推移を示すのか。また、そうした状況に至った要因をどのように分析しているのかをお尋ねします。(政策企画局長)

若年女性の定住状況や人口動態からは、現状で出生数や合計特殊出生率を劇的に上昇させる特効薬はなく、地道に地域で暮らす若者、とりわけ出産可能な若年女性を確保する対策を進めていくことが、人口対策において一番大切な要素となると考えますが、男性の非婚化と女性の晩婚化・晩産化に対する対策が急務であることも明白です。

また、子育て支援の前に「子をつくる(産む)」施策が必要で、国に対し婚姻世帯への優遇税制の創設や若年世代の所得向上、さらには東京一極集中の是正に向けた人口の地方分散などの対策を求めるところであり、高校の授業料が無償化されても難関校に進学するためにはその何倍ものお金がかかると言われていることから、教育費に対する手当を抜本的に見直しすることが不可欠であり、国立大学の授業料値上げなどは言語道断と言わざるを得ません。

3歳児からの保育料を無償化した一方で0歳から2歳までは有償、3歳児からの給食費の徴収を定めるなど、全くもって不可解な制度設計を行ったり、依然として子どもの医療費や小中学校の給食費は有償とする制度の存続などなど、ちぐはぐな観は拭えず、本当に少子化を食い止めたいのかと疑いたくなります。

現下の総裁選や党首選の焦点が経済成長や夫婦別姓にあてられ、地方の衰弱や人口減少・出生数の低下という国家の根幹にかかわる問題が後回しにされていることには危機感を覚えます。

 国は、子育て応援プランをまとめましたが、重要な視点が欠けていると考えます。知事は、地方行政の長として、人口定住対策や少子化対策について国の施策には何が足りないと考え、何を望むのかお尋ねいたします。(知事)

人口減少によって大きく影響するのは交通環境です。いま、木次線の存廃が議論されかけているのはその例で、モータリゼーションの進展と沿線人口の減少によって採算が悪化したことによって、事業者が鉄道経営やバス事業から撤退する例は枚挙に暇がありません。

鉄路はいったん廃止となれば、ほとんど復活することが極めて難しいのは大社線に明らかですが、福島県の奥会津地方を走る只見線は数少ない復活例で、沿線人口が減少する中で観光に活路を見出すのであれば、何らかの方策が必要になります。

木次線はトロッコ列車の季節運行で2万人の乗客を集めましたが、例えば、沿線自治体で過疎債を活用してトロッコ列車を建造し、JRに運行委託して365日運行する、いわゆる部分的な上下分離によって観光目的の乗客数を増加させることは想定できませんか。(知事

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