県議会だより

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令和7年6月定例県議会一般質問(1)

国政の状況について

6月4日、厚生労働省は2024年の日本人の人口動態統計を公表し、1年間の出生数は68万6061人、合計特殊出生率は1.15で、過去最低を更新したと発表しました。日本人の出生数は、ピークの1949年の約269万人と比べると4分の1で、国立社会保障・人口問題研究所の推計よりもはるかに速いペースで少子化が進んでいるとのことであります。

2月27日公表の速報値では、外国人を加えた出生数の総計は720,988人(前年758,631人)で、減少傾向だった婚姻数は2年ぶりに増加し、前年比約1万組増の48万5063組と発表されました。

一方、死亡数は160万5298人で、自然減は91万9237人となり、人口減少も加速していることが浮き彫りになっており、国家の存立にかかわる問題として早急に対策を強化すべきであると考えます。

しかし、国政の状況は、自民、公明の与党が少数ということもあって、物価高とりわけコメやガソリンといった足元の対応に追われている感が強く、予算や法案を通すための部分連合が政党のエゴを容認するかたちで動いており、まさに「木を見て森を見ず」の状況で、その象徴的な事象が高校授業料無償化です。

国が少子化を人口対策の1丁目1番地とするのであれば、地方自治体の裁量とされている子どもの医療費負担や保育料、給食費などを国庫負担すべきですが、内閣府は「半数以上が在宅」という理由で、保育園やこども園の0歳から2歳の子どもの保育料を有償とし、3歳から5歳の子どもの保育料を無料としました。しかし、その一方で、0歳から2歳までの給食費は保育と一体として無償とし、3歳から5歳は有償とするわけのわからない状況となっています。

自民、公明、日本維新の会の3党は2026年度からの学校給食の無償化に向けた制度設計に着手したと報道されてはいますが、育休を申請せず、0歳児などの乳児を保育園に預けて働くのは何らかの事情があるからであり、若年世代の子育て負担を軽減するのであれば、まずは入口となる出産の費用や乳幼児の子育て負担を軽減すべきであり、次が義務教育学校の負担軽減、次が高校や大学の負担軽減に進むのが順序と考えます。

今議会には物価高騰に伴う学校給食の食材に対する支援が予算計上されていますが、今のところ、保育所やこども園の給食費に対する支援は無いようであります。はじめに、国の少子化をめぐる若年世代に対する支援のありかたについて知事のご所見を伺います。(知事)

 

6月11日、農畜産物の適正な価格形成に向けた関連法が可決、成立しました。

仄聞するところでは、令和8年4月の施行に向けた検討が始まるとのことであり、コメなどを指定品目とし、生産者(売り手)がコスト指標を示して卸売市場や小売事業者との価格交渉を可能とするとのことですが、一連の法改正に対する期待とあるべき姿について知事のご所見をお尋ねします。(知事)

 

さきの人口動態の公表では、全国的に婚姻数が下げ止まった中で、島根県の婚姻数については減少傾向を続けていることがわかりました。マッチングシステムの「しまコ」の登録数は思ったほどの効果を上げていないことが分っており、県では登録数を引き上げるための新たな方策を講ずるとされているところであり、出生数を確保につながる婚姻対策、いわゆる婚活支援を強化していただきたいと願っております。ところで、出雲市ではアバター婚活を実施しておりますが、こうした取り組みを全県展開してはどうかと考えますが、健康福祉部長のご見解をお尋ねいたします。

丸山達也知事答弁

国の少子化をめぐる若年世代に対する支援の在り方について

国においては、若い世代の経済的負担の軽減を図るために、こども未来戦略に盛り込まれております加速化プランの施策として、出産育児一時金の引上げや児童手当の拡充などが行われているほか、出産費用の保険適用化が検討されているところでありまして、これらの諸施策が着実に実施されることを望んでいるとこでございます。

私は、現状の少子化、出生数の減少は、これは個々の若い方々の人生選択として、子どもを持とう、または子どもを持つ数を増やそうという選択をする方が減ってるということの積み重ね、集合体でありまして、それを改善するために、そういう判断をされている若年層の方々が、出産が無償になったから子どもを産もうとか、保育料、給食費が無償化されたから子どもを持とうとかというふうに、単純に思ってもらえるのかというと、なかなか難しいのではないかと考えております。

具体的には、今の若い方々、これ昔もそうだったと思いますけども、子どもを持つ世代の親の感覚で言えば、経済的、社会的に子どもが自立するまで、親として十分なことをしてあげられるだろうかと思案の上、現状ではそういうことに不安があるということで、子どもをもうけるということをちゅうちょされているという状況にあるというふうに捉えるべきだと考えております。

それはなぜなのかと考えますと、私も再三申し上げてますけども、学習指導要領で学習指導要領をつくった人たちが受けたこともない教育をあれやこれやといって盛り込んで、実験場のように子どもに求めて、好き勝手して、挙げ句の果てに、つまりは子どもに求める学力や能力というのを、私の世代に比べてすさまじく引き上げている。美辞麗句で、立派な能力を身につけるという美辞麗句を掲げて、学校現場は疲弊をし、小中学校で実際、全国一斉学力調査の結果は、読み書き、私が申し上げているのはそろばんですけど、そろばんすら身につけてもらえるかどうか分からないという数字が、全国の悉皆調査で出ている。しかしながら、それを反省すらする文部科学省も中央教育審議会の委員も、一顧だに反省もしないという許し難いゆゆしき状況です。それを補うため、または公立校への進学をもう避けようということで、私立に入れるために、または中学校受験をさせるために、小学校受験をさせるために、そういう低年齢から塾に通わせるということが常態化、普通になっていて、加えて今般は、大学進学においても、国民にとって安価な進学先である国立大学の授業料を3倍に引き上げようかという、そんな勢いで人選をしてのろしを上げているという動きが公然と進んでおります。

そんな中でありますから、子どもが自立するまでに求められる経済的な負担というのが、私の親の世代がイメージしたものと、今の若い方々がイメージしなきゃいけないものが全く違って、すさまじく高くなっているということが、子どもを持つこと、増やすことをためらわざるを得ないという状況を生んでいるんだという総体で捉えるべきだと私は思っております。

当然、出産費用、保育の費用、高校の無償化など、20歳までにかかる様々な保育、教育の負担軽減というのは、それはそれで大事なんだというふうに思いますけれども、もう少し若い方々が思われてる射程というのは広く捉えるほうが適当ではないかというように思っているとこでございます。

こうした若い方々が抱えておられます結婚、子育て、また親として、子どもに自分が親にしてもらったことに相当することをしてあげれるかどうかという不安が、婚姻数だったり、出生数の減少につながっていると私は受け止めておりまして、そういった長いスパンで子育てに要する金銭的な、また金銭以外の負担ということを全体として抑えていく。今まで野放図に増やし過ぎてきた。学習指導要領であれこれ盛り込んで、身につけてくれていればいいですけど、身につかずに学校を終えさせているという、このさんさんたる状況を改めるということを含めて、若い世代が子育てに、そういうことを抑制するとともに、若い方々が子育てをしていく上で必要となると思われる様々な負担を、御自身の所得を通じて得られるという見込みが立てられるようにすること、この2点が極めて重要であると考えてるとこでございます。

国においても、こうした観点から、若年世代が置かれた状況を、親目線といいますか、個人目線できちんと捉えていただいた上で少子化対策に取り組んでいただきたいというふうに考えているところでございます。

丸山達也知事答弁

農畜産物の適正な価格形成に向けた関連法に対する期待について

農畜産物を含む食品は、長期的に保存が難しいものが多く、生産者や加工業者は、一般的に価格形成をはじめ、小売を含めた流通事業者との取引において、優位な立場に立てない、不利な立場に置かれておりまして、小売においても、消費者の低価格志向を踏まえた価格設定や、品目によっては、競合店に顧客を奪われないように、定期的な特売の対象となってしまうなど、安売り競争が行われる傾向にございます。

こうした食品が置かれているサプライチェーンの特性の中で、農業や漁業をはじめ、生産者側が十分な再生産価格を確保できない状況が続いておりまして、6月11日に成立しました、いわゆる食料の持続的な供給のための法律におきましては、需給バランスや品質評価による価格形成という経済原理を前提としながらも、次のような事柄を求めております。

売手から買手に価格交渉の申出があった場合には、誠実な対応を行う努力義務を課す。また、商習慣の見直しなどの提案があった場合には、必要な検討や協力を行う努力義務を課すということ。これらの努力義務への違反が認められた場合には、国から勧告、公表などの措置を講じるということ。また、特定の国が指定する品目につきましては、価格交渉などの材料として活用できるように、業界団体がコスト指標を作成することなどの内容が盛り込まれているとこでございます。

農畜産物の価格は、需給のバランスに左右されることが多く、特に市場取引が主流の生鮮品におきましては、こうした措置を貫徹することが難しいと考えております。

しかしながら、農畜産業を含む食品生産者が、需給に応じた生産や品質管理を徹底しているにもかかわらず、消費者の値頃感ですとか、小売の商習慣の論理で、コストがいかにかかっていようが安いことが当たり前とされている食品があるという現状でございますので、この法律は、直ちに再生産価格を保障するというまでの措置の内容とはなっておりませんけれども、価格形成のプロセスに買手有利の構造に対して是正措置を講じる規律を導入をするということ、また立場の弱い事業者を支える仕組みを整備しようとする取組でありまして、評価すべきものというふうに考えております。

今後におきましては、法律で盛り込まれた諸制度を有効に活用していく、実際に使っていくということ、これらは生産者側がきちんと使っていくということ、そして過剰生産によって、法制度を実際に活用していくということと、また別途、違った観点といたしまして、過剰生産によって、過剰生産構造にある品目については、やはりコストを転嫁して販売すること自体が極めて困難でありますので、そういった品目については他の品目に転換するといったことも考えてもらいながら、またそういった行政の支援も講じながら、生産者自身の経営判断をしていただくということも同時に重要であるというように考えているところでございます。

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