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初めにインフラの劣化対策について伺います。
さきの埼玉県八潮市の下水道管崩落事故はインフラの保守管理がいかに大切かを想起させました。島根県は社会経済活動や県民生活の向上に必要な社会資本である公共土木施設の建設・整備を行なってきており、施設更新や維持管理費の増大に備えて平成27年9月に「公共施設等総合管理基本方針」を策定し、のち、令和4年8月に改訂し予防保全による長寿命化を図る方針を示していますが、①この間の取り組み状況について伺います。(土木部長)
公共土木施設の健全度は、②健全、予防的健全、早期措置段階、緊急措置段階の4つに分類して、必要な対策を講ずるとされていますが、現状の進捗状況について伺います。(土木部長)
計画には、維持管理システムの構築が明記され、施設の諸元、点検・診断・記録や修繕履歴などの情報をデータベース化し、一元管理することとされています。管理を円滑に進めていく上では、全ての施設の健全度等を正しく把握するとともに県と19市町村がシステムを共同利用しているとのことですが、大田市や出雲市での事故事例からは、市町村については十分なインフラ点検の管理システムが作動していないように感じるところです。
③県内市町村のインフラ点検および管理システムの稼働状況について伺います。(土木部長)
杜の都と言われる仙台市には48,000本もの街路樹が存置しており、仙台市では「仙台市みどりの基本計画2021-2030」策定し、48,000本の街路樹にIDナンバーをつけて管理しているとされ、東京都町田市では「町田市街路樹更新計画」に基づき、伐採した街路樹を強度などの状態に応じて家具や雑貨などにリサイクルする商品開発や循環型社会のビジネスモデルの確立に取り組んでいるそうであります。
県内全域で取り組みがされているハートフル事業は地域に根付き大きな効果を発揮してきた代表的な協働事業ですが、高齢化や過疎化によって参加者が減少したり組織の解散があったりで、管理のすべてを行政が担う必要が出てきた地域もあり、今後はインフラの廃止・統合、整理の検討が必要になってくると思います
④今後もインフラの維持管理に住民の理解と協力を得るためにはIT、デジタル、ドローン、SNSの活用やリサイクルの拡大などの要素を取り入れた新しい維持管理の方策を定めた計画策定を検討する必要があると考えますが、ご所見を伺います。(土木部長)
また、道路改良に伴う路線の廃止や「小さな拠点」を進める上でのサービスの統合、中山間地域農地の荒廃防止、学校の再編や庁舎、警察署の整理統合などの検討も急務だと考えますが、⑤人口減少に伴うインフラの質や量の整理ばかりでなく、時代に対応した高度化の検討が必要ですが、新規の整備と同時に見直しによる廃棄や除却についてご所見を伺います。(土木部長)
仄聞するところでは、島根県の維持管理システムは土木部が所管する6分野に限られており、庁舎など営繕部局が管理する施設や農林水産部、企業局、警察・公安委員会、教育委員会などが管理する施設とは連動していないとのことであります。これらの⑥施設管理の診断が可能な知見を有する技術者は同一のものもあると考えられますが、県はインフラ管理について専門的知見を有する人材を集約し、管理組織を一元化することなどを検討すべきだと思いますが、この際、知事のご見解をお尋ねします。(知事)
│掲載日:2025年02月25日│
現在、県では、まず庁舎などの建築物につきましては、知事部局、教育庁、警察本部、病院局などの執行機関の別にかかわらず、知事部局が主体となって、建築に関する専門的な知見を有する職員が、各施設の劣化状況の調査、また建築基準法に基づく点検などを一元的に実施をすることによりまして、県有の建築物全体の適切な維持管理、また計画的な修繕に取り組んでるとこでございます。
次に、土木部が所管します県管理の道路や河川、港湾、砂防、都市公園や、農林水産部が管理します地滑り防止施設などにつきましては、いずれも県土整備事務所において、一元的に維持管理、修繕などを行っているとこでございます。
現在、県が所有管理しております様々な施設は、整備後相当の年数を経過しているものが多いために、適切な維持管理を行うことに加えまして、建て替えなどに要する経費、費用をトータルで低く抑え、またその時期を分散することによりまして、財政負担の軽減と年度間の平準化を図る、すなわち施設の長寿命化を行う必要があるという共通の課題を抱えている状況にございます。
このため、県では、議員からも御紹介いただきました建築物や土木施設などの長寿命化を図ることなどを盛り込みました島根県公共施設等総合管理基本方針を策定をいたしております。各施設におきましては、この方針を踏まえまして、個別の方針や計画を策定し、施設管理を行ってるとこでございます。こうした全体の枠組みを設定するなどの取組によりまして、引き続き、個別の施設の適切な維持管理を行っていきたいと考えてるとこでございます。
人材や組織の一元化につきましては、県有の建物などと土木施設などとの間ではそれぞれ求められる専門性、知見が異なるほか、既に知事部局とそれ以外の組織の間におきましては、任命権者は異なりますけれども、知事部局におきましては私が任命権者として組織編成、職員配置を一元的に行っておりますし、知事部局以外につきましては、知事部局との併任、つまり両方の業務を併せて担うこととするなどによりまして、組織形態、所属にかかわらず、限られた人材を効果的、効率的に配置をしているとこでございまして、現行の体制で臨んでいきたいというふうに考えてるとこでございます。
平成27年9月の公共施設等総合管理基本方針の策定を受け、土木部では、同年12月に公共土木施設長寿命化計画を策定し、長寿命化対策に取り組んでまいりました。具体的には、橋梁やトンネルなどの施設ごとに長寿命化修繕計画を策定し、定期的な点検と点検結果に基づく診断により、優先順位を考えた対策を実施することで、ライフサイクルコストの低減や予算の平準化を図っております。
また、この間、修繕計画の対象施設を順次拡大してきたほか、点検方法の改善や新技術の活用等、長寿命化対策の充実、拡充に取り組んでまいりました。
次に、長寿命化対策の進捗状況についてであります。
先ほど申し上げました公共土木施設長寿命化計画では、平成25年、26年度に実施した総点検で、修繕が必要と判断した施設と対策を10年間で完了させることを目標としておりました。
主な施設の令和5年度末の対策状況について申し上げますと、対策が完了した割合は、橋梁で97%、トンネルで100%となっております。
一方対策を進めていく中で、毎年行う点検により修繕が必要な施設が新たに発生しており、この数を含めますと、対策が完了した割合は、令和5年度末において、橋梁で65%、トンネルで70%となっております。
これまでに行ってきた対策によって、早期措置段階や緊急措置段階の施設の数は着実に減ってきており、引き続き修繕の必要がある施設をなくし、予防保全段階に移行するよう取り組んでまいります。
まず、市町村における点検状況につきましては、全ての市町村の道路施設のうち、法定点検が義務づけられた橋梁、トンネル等の施設では、5年に1回の点検を実施しております。法定点検の対象となっていない舗装や街路灯、防護柵等の小規模な道路附属物については、各市町村で10年に1回ですとか、日常パトロールに点検といった方法を定めて実施していると聞いております。
維持管理システムの利用状況については、施設の諸元、点検、診断、記録や修繕履歴などの情報を一元管理することを目的に島根県が構築し、市町村と共同利用しております。
道路施設のうち、橋梁やトンネルなど、法定点検の対象である施設は、全ての市町村において利用されておりますが、その他の施設における利用は一部の市町村にとどまっております。システム利用がない施設につきましては、市町村において、紙や独自のデータベースで管理してると聞いております。
県では現在の長寿命化計画に基づき、対策に取り組んできたところですが、計画期間の10年が経過するため、今年度中に改定することとしております。
御指摘がありましたIT、デジタルの活用につきましては、ドローンによる点検やAI診断といった新技術を積極的に活用すること、またSNSの活用による住民の協力につきましては、パトレポしまね等による住民からの早期通報を維持管理に活用することを、改定する計画の中に盛り込みたいと考えております。
最後に、人口減少時代におけるインフラの在り方についてであります。
公共事業の実施に当たっては、急激な人口減少や厳しい財政状況を踏まえ、各地域の課題を把握し、地域の方々の声を聞きつつ、地域の将来像を見据えながら戦略的、計画的に進めることが重要であります。
このうち、道路建設事業につきましては、人口減少下においても、県内の道路網の骨格となる道路の整備が必要であると認識しており、県内外の都市間をつなぎ、災害時などの輸送路として重要な役割を担う道路を骨格幹線道路に位置づけ、優先的に整備することで事業の選択と集中を図っております。
一方で、バイパスとして整備した場合の旧道の取扱いについては、関係市町村との協議を踏まえ、交通状況や沿線の土地利用状況などを勘案し、市町村への移管や道路の利用停止等の措置を行っております。
また、県内の市町村が管理する橋梁におきましては、大雨による被災や、定期点検で大規模な修繕が必要と判断されたことを契機に、集約、撤去をするなど、取組事例も出てきております。
今後は、施設を全て維持するということではなく、周辺の人口の変化や維持管理コスト等を考慮の上、撤去や集約化も選択肢の一つとして検討していくことがより必要になると考えており、地域の皆様方の声をしっかり聞いて合意を得ながら、適切な施設の維持管理を行っていくことが重要であると考えております。