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私は中学生のころから平成15年に松江の市場に統合されるまで十六の島と書いて十六島と読む地域にある北浜の魚市場に通っておりました。今もJFしまね松江魚市場の買受資格を持つ仲買人です。昭和40年、50年代の北浜は、8カ統16隻の沖合底引き船団や小型底引きやイカ釣り船団、定置網の水揚げと一本釣り、かなぎの採貝、採藻など溢れんばかりの近海物の水産物で、朝、晩のセリが行われ、往時は年間3,000t、約30億円の水揚げ実績がありました。
わが家は明治19年から湾内の岸べりで杣の宿を営んできました。1月はかもじ海苔やブリしゃぶが献立の中心になりますが、これからの時期は真フグとアンコウに変わります。2月はアンコウです。今の時期のアンコウは産卵期に備えては肝が肥大化し、卵巣が膨らんできます。あん肝は海のフォアグラと称される通り、皆さん、おなじみですが、表面がゼラチン質の卵巣は熱を通すとプルンプルンになり、中はコリコリとした食感で、ポン酢や酢味噌での味わいに「これは何だ」とビックリして、舌鼓を打たれます。
マフグは「ふぐの女王」と称されます。ふぐの王様である最高級魚のトラフグよりも強い甘みをもち、白身のあっさりとした味わいは上品で、無毒の白子とともに、奥ゆかしい美味しさがあります。トラフグの半値以下で取引されるマフグを私たちは、「ナメタレ」と呼びますが、ふぐはアミノ酸の中でも甘美な味を醸し出すグリシンやリジン、アラニンなどの成分も含み、脂肪分が少なく、筋肉質で高たんぱく質の旨味と甘味を兼ね備えた白身魚ですが、マフグはトラフグより甘味成分のアミノ酸の含有量が高く、噛むほどにじんわりと口に広がる濃厚な甘味をもっており、疲労回復に効果のあるアミノ酸の一種アスパラギン酸の含有量は、トラフグの4倍以上と言われています。
底引き船団が休漁する夏の時期は、シイラ漬け漁と呼ばれる漁法で水揚げされるシイラがあり、船の中でつくるシイラの沖漬けと呼ばれる漁師料理や白バイや赤バイなどのエッチュウバイや赤エビ、白エビなど甘えび類やキス、カワハギなどが主たる食材でした。
実は、こうした食材が取れる海を目の前に持ちながら、沖合底引き船団はすべてが廃業し、いま北浜の海は定置網1か統と小型底引きが1隻残るだけの港となり、市場が閉鎖となった今、沖合以下釣り船団の寄港もありません。我が家も、近海の魚の仕入れが松江となって以降、小生が県議となったせいもありますが、休業を余儀なくされました。
しかし、島根県沖は、まだまだ海産物の宝庫であり、そこから水揚げされるさまざまな魚種や貝藻類は生活の糧を得るに十分な量も、質もあると確信しており、県におかれてはぜひとも海の活用、沿岸漁業の振興を海縁り集落の維持存続に結びつくような施策で答えていただきたいと切に願って意見を申し上げたいと思います。
国勢調査2025の速報値は令和8年5月ごろと聞いています。
島根県において人口減少が一番進んでいるのは石見、隠岐であり、山間地域と海岸地域を比較すると昭和50年代から60年代前半は山間地域、平成に入ってからは海岸地域が急激に疲弊し、いま、両者は危機的状況にあると思います。
平成14年の県の推計人口は756,574人で出雲地域が499,454人、石見地域が232,371人、隠岐地域が24,749人でありました。平成24年は479,077(▲4.1)、206,838(▲11.0)、20,933(▲15.4)、令和4年は458,801(▲4.2)、179,301(▲13.3)、18,691(▲10.7)、令和8年は445,572(▲2.9)、168,259(▲6.2)、17,683(▲5.4)で、このところ、県の人口減少を食い止めてきた出雲地域の人口減少数が石見地域の減少数を上回ること(増加してきたこと)が、島根県の人口減少を加速させてきていることに危機感を感じるのであります。
農業を主体とする農村地域は中山間地域を含めて農業の基盤整備や直接支払制度等もあり、一定の存続対策が講じられてきており、山村地域も森林・林業への手厚い支援により、林業、木材産業を含めて衰弱は一息ついたように見えますが、山林の荒廃自体は進んでおり、野生鳥獣の生息域が拡大し、目視や被害が顕著となってきていることはその証左なのかも知れません。
JFしまねは、組合の構成員について出漁日数60日を基準として正・准の組合員資格を見直ししたところ、正組合員が激減したことからも明らかなように、サラリーマン漁師が主体の巻き網漁業を除く沿岸漁業は衰退の一途です。巻き網船団が存置している隠岐地域や小型底引き船団の集積する大田地域の漁村は一定の就業者を確保していますが、1本釣り漁業と沖合底引き船団の集積地であった島根半島地域は疲弊が著しく、水揚げ額のほとんどを定置網の漁獲実績で占めていると言っても過言ではないように見えますが、その従事者の多くは漁村居住ではないサラリーマン漁師となっており、漁村の担い手は見つからず、沿岸漁業は消滅の危機にあります。
小生はこうした観点から県内海岸地域が抱える問題点について意見を申し述べたいと思います。
│掲載日:2026年02月25日│