県議会だより

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令和7年9月定例県議会一般質問(1)

都市と地方の賃金格差について

私は、過去何度か、最低賃金制度に対する疑問を申し上げてきましたが、「東京が高いのがあたり前」「地方が安いのがあたり前」に、合理性があるのか疑問に感じています。

最低賃金の決め方は大都市圏、平均的な地方、利便性に欠ける地方の3段階に分かれており、そうした思考は公務員給与にも反映されています。

確かに、地価は東京が高いし、家賃も高い。でも、コンビニやスーパーの商品価格に都市、地方の相違はなく、住宅メーカーの建築に要する費用もほとんど変わりません。

本当に東京の生活費が高くて、島根県の生活費が安いのでしょうか。

そこで、1点目は、この疑問点について指摘したいと思います。

 

島根県に住む人は、生活を営む上で不可欠として多くが車を持っています。

(1)例えば、大卒の行政職として22歳で新規採用され、県庁に入職した職員が、250万円程度の車を所持して、30km程度の通勤距離を往復すると、1か月あたりでどの程度のコストが生じると計算できますか。(政策企画局長) 

(2)島根県には大学が2施設しかありません。県内の子どもが東京都内の文系私立大学に入学すると、1年間にどのくらいの費用(学費プラス生活費の仕送り)が掛かると試算しますか。(政策企画局長)

(3)最低賃金は誰がどうして決める仕組みで、その功罪は何だとお考えになりますか。また、引き上げの開始時期が都道府県によって異なる状況および今年度の引き上げについての感想については、さきの同僚議員の質疑にお答えになったところですが、改めて、知事の所見をお尋ねいたします。(知事)

今年の最低賃金の引き上げは全国の加重平均が1,000円を超え、ほとんどの職場、従事者の社会保険の強制加入が見えてきますが、厚生労働省から当面の救済策として

(4)短時間労働者の就業調整対策として「年収の壁・支援強化パッケージ」が示されていますが、年収の壁が2026年度から撤廃される可能性についてどのように見ているのかお尋ねします。。(商工労働部長)

下請法の改正や価格形成法(食料システム法)の制定はあるものの、「2030年までに最低賃金1,500円達成」の政府方針は、現状からは月給換算で約84,000円、年間100万円の給与改善となり、法定福利費を考慮すれば雇用側の負担は従業員1人当たり115万円程度の増加となるだけに、国は、早急に1次産業や中小・零細企業の生産性向上はもとより、給与の増額分や社会保険料に対する支援などについてのロードマップを示すべきであると考えます。

知事は、今議会の同僚議員の最低賃金に関わる質疑に対し、日商会頭の見解を例示して「災害」と述べられたが、島根県中小企業団体中央会の調査では県内中小企業が加盟する150の組合の86.6%で「経営に 影響がある」と答え、倒産、廃業の増大を懸念しているところです。

「年収の壁・支援強化パッケージ」は、時限的な制度で、例えば、社会保険適用促進手当の社会保険料算定からの除外の措置は、新たに社会保険に加入した労働者だけが対象で、すでに加入している従業員には不公平となるなど、恒久的な制度構築が必要だと考えます。500円の時給引き上げは8時間労働の正規雇用であれば、5年間で100万円の給与改定となります。

(5)政府は2030年までに1,500円に引き上げる方針を示していますが、それを達成するためのロードマップは示されておらず、支援制度も未構築ですが、どのような準備が必要だとお考えになりますか、お考えをお尋ねします。(商工労働部長)

島根県の有効求人倍率は全国的に高く、人手不足が顕著です。県は今期定例会に人手不足に対応した業務効率化や生産性向上への支援予算を増額しましたが、当初予算へのリクエストは数件で、使い勝手が悪いと思います。今回、要件緩和を謳っていますが、現場からは従業員の減少要件を外すべきとの声が高いのも事実です。知事は同僚議員の質疑で見直しを否定されましたが、

(6)県内の人手不足は深刻で、例えば10人必要な職場で8人しか人手がない事業所で、ようやく1人を確保して9人とした場合などは今回の支援の要件を満たさないと思われますが、もう少し、柔軟性を持たせても良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。(知事)

県内では、ハローワークなどの公的な職業紹介では人手が確保できず、外国人のみならず、有料の民間職業紹介会社に多額の報酬を払って人材確保をしているのが実態です。

(7)県は、県内事業所の新採および中途採用の人材確保コストはどのくらいと見込んでいますか。また、人材確保のコストは上昇する一方と聞きますが、今後、その支援についてどのようにお考になるのかお尋ねします。(商工労働部長)

令和4年9月の質疑において農産物価格を再生産可能な価格で取引する制度を導入する必要性についての見解を尋ねた際、知事は「適正な価格転嫁を進めることは農業水産業のみならず商工業も含めて進めなければならない政策課題ではあるが、モノの売買が民法上の当事者間の合意契約で成立するものである以上、価格を当事者間の合意を否定して強制的に決める制度の導入は極めて難しい」として、「供給者側に有利な価格形成が行われるような環境を整備していくことが必要」とお答えになっており、公務員給与の在り方については「公務員給与は地方公務員法第24条に定める均衡の原則により、地域の民間企業の給与を考慮して定めなければならないとされており、県内の民間企業の給与水準が上がる状況をつくることに尽きる」と答弁されました。

(8)近年の知事の発言を聞くと、法律改正を含めて格差の是正を国の政策として行なうよう強く求めてきていると感じますが、いかがでしょうか。(知事)

昭和40年代は県職員の給与水準は国家公務員の水準を上回るものとなっていたが、昭和50年代以降、徐々に見直しが行われ、平成10年代半ばまでは国と同等の水準で推移していました。ところが、国は平成18年度に地域の公務員給与は地域の民間賃金準拠となるよう給料表の改定(引き下げ)と大都市部に地域手当を新設することなどを内容とする給与構造改革を実施し、平成27年度においても給料表の水準を引下げ、地域手当の上限を引き上げることなどを内容とする給与制度の総合的見直しが実施された結果、島根県と東京都職員の平均給与は月額10万円を超える開きが生じています。

最低賃金、公務員給与ともにその決め方は法律で縛られていますが、「東京が高くて地方は安い」という価値観の上に立っており、格差を固定化させる制度の見直しを国に求めるべきです。

ニワトリとタマゴの論となりますが、「まず隗より始めよ」で、わずかな地方への臨時交付金より、県職員の給与改定による地方の所得向上が必要で、以前、所要の財源を200億円と見積もられましたが、是非、これを国に求めていただきたいと思います。

(9)地方に人を呼び込み、地方の暮らしを輝くものにする地方創生を実現するため、地方の賃金を上げるための抜本的な対策を強く国に求めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。(知事)

丸山達也知事答弁

最低賃金の仕組みと功罪、今年度の引上げについて

最低賃金の決定方法は、最低賃金法に基づいておりますので、これに定められております。公益代表委員、労働者代表委員、使用者代表委員、いわゆる公労使の委員で構成される中央最低賃金審議会において全国を都道府県別に3つのランクに分けて労働者の生計費、賃金、通常の事業の賃金支払い能力の法定の3要素を基にランクごとに引上げ額の目安を示すこととされております。その後、各都道府県の公労使の委員で構成される都道府県別の最低賃金審議会において、中央の審議会が示した目安を参考に地域の実情を踏まえた審議会の審議、答申に基づいて最終的には各都道府県の労働局長が決定される仕組みでございます。

最低賃金決定の仕組み功罪のうちの功、いい部分につきましては、都道府県ごとの実績を基に最終的な決定に至るということから、全国一律ではなく地域の実情に応じて決定されることが可能になっているということが挙げられます。

一方で、罪、よくない部分については、近年の最低賃金の決定だけを見ますと、まず労使が対立するのはこれは仕方がないわけでありまして、問題は公益を代表する委員さん方、労使の意見を調整するとともに公益的見地からの意見を反映させるという役割を期待されている公益の委員さん方が傾向としては大幅な引上げを主導する政府寄りの立場を取られるという結果になってるということが続いているということではないかと思いますので、特に使用者側からすると最低賃金決定プロセスの客観性や中立性への信頼が揺らいでいるというふうに考えるべきじゃないかというふうに思います。

そして、決定された金額の引上げ時期が今年度都道府県でばらついているということに関しましては、仕組みとしては最低賃金は都道府県の労働局長が決定した内容を官報で公示した日から30日経過した日または30日を経過した日の後であって、別の日を定めたときにはその日ということで、労働局長が決定できるということになっております。

最低賃金が時間額のみで示されるように平成14年度から令和6年度、昨年までの最低賃金の発効時期のほとんどが10月中で、遅くとも11月中には発効してるというのがこれまでの傾向、実績であります。しかしながら、今年度は、11月より後の12月が8件、1月が4件、3月が2件となっておりまして、顕著な例で申し上げますと金額ベースの引上げ額が全国3位の80円の引上げとなっている秋田県では、発行日が3月31日となっておりますので、ほとんど今年度中は適用しないという内容となっております。

次年度の改定額の発効時期が従来の主流であります10月と仮定しますと、秋田の例でいきますと、適用期間は4月以降のおおむね半年に限られますから、初年度のプラス改定の効果というのは半減させるという、そういう意図を持って決められているというふうに理解をしております。つまり、引上げ幅が大きいので初年度の影響が出るその割合を発効日を遅くすることで事実上の経過措置として発効時期を遅らせているという苦しい判断をされてるのではないかと、そういう使用者側の窮状を踏まえてそういう決定がされているのではないかというふうに推察をするところでございます。

全般としての今年度の引上げについての感想でございますけども、今年度の最低賃金の引上げに関しては全国で39道府県が中央審議会の示した目安額を上回って全都道府県の最低賃金が1,000円を上回る結果となっております。島根県におきましても最低賃金は1,033円で、目安額を8円上回る71円というふうになっております。

再三申し上げておりますとおり、石破内閣の下で1月に示された方針、そしてその方針が参議院選挙で掲げられたというふうに理解をいたしておりますけども、参議院選挙の結果は自民党としては大敗でありました。そういう中で、従来どおりの引上げを抜本的な追加対策もなく平然と実施されてるという状況に対して、こんなことがあるのかというふうに私は思います。ただ、政府や与党の中から今回の進め方を反省される声は一切聞かれませんので、こうした機械的な大幅な引上げが、5年のうちの1年が終わろうとしてますけども、少なくとも今後4年間続きかねないというふうに考えておりまして、そういうふうになりますと、今年何とかしのげたところも来年同じような引上げがある、その次もある、これをもって経営が立ち行かなくなる県内企業が増加していくということを危惧せざるを得ないと思っております。

今回のこの最低賃金の話というのは、特に最低賃金の水準が低いCランクのところがより高くこの引上げ幅が設定されて、このAランクのところは小さかった。つまり、全体として最低賃金のばらつきが少なくなる方向になってますので、そういった意味では、この全国の最低賃金の金額のばらつきという意味では、格差が是正されております。ただ一方で、それを負担する中小企業は、その負担する能力の均てん化なり格差是正がされない中で支払い額を引き上げることを強制されてるっていうことでありますので、労働者の皆さんとっては格差是正、中小企業の経営者の皆さん、最低賃金が適用される企業、労働者をお雇いの方、またその近傍の、最低賃金の引上げに伴って最低賃金以外の賃金を上げなきゃいけない、つまり最低賃金の影響を受ける企業経営者からしますと、これはつまり格差是正の必要な資金を強制的に政府によって供出させられている被害者に相当するんだというふうに思います。

私は、後の答弁でも申し上げますけど、今回の引上げというのは、最低賃金法2条に定める通常の事業の支払い能力を考慮する義務に違反しているということを、そういう疑いがある引上げだと思っておりますし、先ほど申し上げたような政治として考えなきゃいけないことが考えられているかどうか分からないという状況というのは本当に問題で、この最低賃金への対応に苦慮する中小企業などを横目に少なくとも最低賃金の引上げを政府の政策の成果だと誇るというのは本末転倒甚だしい。労使で決められた話を誘導されたという側面はあろうと思いますんで、そこの部分は成果かもしれませんけども、最低賃金のところというのは、最低賃金の支払い額を増加される企業の皆さんの経営資源からのプラスアルファの資金供出によって成立している政策であって、政府がお金を出してやってるわけではなく、審議会なり政府の目安を高く誘導することでそういうふうに余儀なくされる状況をつくってるにすぎないわけでありますので、こういったことが続くということは大変危惧している。そこに反省されてる雰囲気が全くないということが非常に懸念を持つところであります。

丸山達也知事答弁

省力化投資等の要件緩和について

議員からもお触れいただきましたとおり、9月18日の須山議員からの代表質問にお答えをいたしましたとおり、今年度当初予算で創設いたしました省力化投資等支援事業は、従業員が減少して人手不足のために売上げも減少している厳しい状況の事業者を支援することが当初の狙いでありました。しかしながら、議員も御指摘のとおり、応募の状況が低調であるということから、価格転嫁の進展により売上自体は増加していてもコストアップに追いつかず、価格転嫁が追いつかず、増収減益で経営が厳しい事業者も多いと考えられることから、これら、多いその増収減益、増収であっても減益のところについてはこの補助対象にするという要件緩和を行うという考え方で8月21日の県議会の農林水産商工委員会においてそういった方針を示したところ、この要件であっても厳しいという御意見をいただきましたこと、そして最低賃金の改定が過去最大の引上げ幅で行われることになったという状況を踏まえまして、売上要件の撤廃とそれに伴う予算の増額を今議会に提案させていただいてるところでございまして、常任委員会でいただいております御意見を踏まえて、要件と予算を見直して提案をさせていただいたものでございます。

省力化投資への支援というのは、その性質上、雇用を減らす効果を持つものでありますので、従業員が減少するという客観的な状況が発生している事業者に絞って対象とする必要があると考えているところでございます。

議員の御指摘になりますケースにおきましては、事業を実施するのに何人必要なのかということを補助金を交付する側が客観的把握したり認定するということは実務的にも困難でございますので、議員がお示しのケースにおいてはこの補助制度上、過去2年間のうちに10人おられて8人になって9人になってるというものであれば、10人から9人になってる、5%の減少要件を満たしているので対象になるというふうに考えてるところでございます。

今回の議員の問題意識に基づく県の支援の在り方といたしましては、雇用を減らす効果を伴う、つまりある程度慎重に使わなきゃいけないこの省力化投資事業で問題を解決していこうという考え方ではなく、生産性向上など、また新事業分野への展開支援でしたり販路開拓といった他の収益向上策と組み合わせて行うことが適当であるというふうに考えておるところでございます。

これらに関します支援策いたしましては、令和7年度当初予算ベースで約15億円の予算を措置をいたしておりまして、多方面から県内事業者の支援に取り組んでいるところでございます。

省力化投資ということで、従業員の減少要件というのをなくしていくということについては考えておりませんけれども、今回御提案いたしましたこの予算がどういうふうに執行されていくかという状況を勘案いたしまして、この従業員の減少要件というものが今のままでいいのかどうかということについては、その執行状況を踏まえて、検討の余地はあるものというふうに考えております。

丸山達也知事答弁

国策としての格差是正要求について

現在の日本といいますか、長年の積み重ねの結果でございますけども、特に平成のバブルの崩壊以降、長年の蓄積で、残念ながら日本国内においては、国民の間の所得の格差、また大企業と中小企業のこの間の格差、また大企業、中小企業の格差がほぼパラレルに影響して大都市と地方の格差といったものがいずれもリンクして拡大をしている状況でございます。

県といたしましては、賃金格差是正のためのいわゆる下請法の改正を含めた価格転嫁対策の強化、また是正の抜本的な見直しによります東京一極集中の是正、また地方の声を国政に届けるための参議院議員選挙における格差の是正について法改正を含めた対応を国において実施するように県の重点要望を通じて求めてきているところでございます。

今後も諸課題の解決に向けて、法律改正が必要なものは法律改正で、法律改正でないものは、諦めるっていうことではなくて、法律改正ではなくて、改善しなきゃいけないもの、例えば学習指導要領は法律改正が要りません。そういった法律のみならず制度全般、政府なり公が関与して改善していけるところというのは改善を求めていくということについては幅広く求めていきたいというふうに考えております。

丸山達也知事答弁

地方の賃上げについて

議員から具体的に県職員給与の在り方について御指摘をいただいたところでございます。県職員の給与は、地方公務員法の第24畳第2項においていわゆる均衡の原則というのが定められておりまして、これは地域の民間企業の給与などを踏まえて定めることとされております。これは、最終的には予算として、県議会に予算をお認めいただかなければいけない内容でありますので県民の理解が得られるようなものでないといけないという趣旨だというふうに理解をいたしております。

また、人事委員会において、給与、勤務時間、その他の勤務条件が社会一般の情勢に適応するよう地方公共団体に講ずべき措置について勧告できるとされておりこれまでも県といたしましては、県人事委員会からの勧告に基づき対応してきているところでございます。

翻って、東京都と島根県の職員給与に差が生じているのは、主に民間企業の給与水準に差があることが要因でありまして、私といたしましては島根県職員の給与を引き上げていくためには県内民間企業の給与水準が上がるような状況をつくっていくことが大事だというふうに考えているところでございます。

また、県職員の給与を県内民間企業の給与水準よりも上回って東京都と同じ水準に引き上げるためにその財源を国に求めたとしても、これは国の立場からしますと、島根県内に勤務する国家公務員に支払っている給与水準を上回る水準で島根県が給与を払えるように支援してくれということになりますので、恐らく国が認めてくれる可能性は極めて低いというふうに考えているところでございます。

それがならないとなりますと、県の独自財源を使って県職員給与を東京都並みに引き上げるということになりますけども、これも到底県民の理解を得られないというふうに考えているところでございます。

こうした中で、島根県の賃金を引き上げるための対策については、まずは国が主導している最低賃金の引上げによってこの最低賃金の引上げの原資を確保する必要が発生してる企業、また議員から加えて御指摘があります社会保険料の追加負担が発生してくる企業がございますので、こういった最低賃金などの引上げの原資を捻出することが直ちに求められている企業が生産性向上省力化新事業展開販路開拓など幅広く支援する包括的、抜本的対策が政府において講じられる必要があるというふうに考えております。

また、賃上げを継続的に進めていくためには、最低賃金とか最低賃金近傍だけの話にとどまりません。したがいまして、これは賛否両論あるかもしれませんけれども、主に輸入に頼っている原材料エネルギー価格を抑えるために政策金利を引き上げて行き過ぎた円安を是正していく必要があるというふうに考えております。

この場合、政策金利の引上げによって事業者の皆さんの借入金が上昇することへの対策も併せて必要になりますので、日本政策金融公庫の融資や各都道府県の制度融資に国費を投入して中小事業者の貸出金利を抑えるなど資金繰り支援をセットで行う必要があるというふうに考えております。

また、この政策金利引上げによってマイナスが是正されれば、事業者側にとっての原資捻出に資するのみならず、我々生活者ベースでいきますと消費者物価の抑制にもつながり、実質所得の向上にもつながっていくというふうに考えているところでございます。

県といたしましては、第2期島根創生計画に掲げております県民生活や県内事業者の経営に深刻な影響を与える為替水準の是正、物価上昇等によりますコスト上昇分を価格転嫁できる経営環境の整備を国に引き続き求めていくとともに、政府が主導する最低賃金制の引上げに事業者が対応できるよう、包括的かつ抜本的な対策を強く求めていきたいというふうに考えているところでございます。

井手久武政策企画局長答弁

自動車の所有コストについて

まず、ガソリン代につきまして3つの条件で試算しておりまして、1つ目のガソリン価格は、資源エネルギー庁の石油製品小売市況調査によります9月16日時点の島根県の数値でレギュラーガソリン1リットル当たり179.5円とし、2つ目、走行距離は往復で60キロ、1か月の勤務日数を20日としまして、1か月当たり1,200キロ、3つ目の燃費につきましては250万円程度の普通乗用車でガソリン車及びハイブリッド車を合わせた数種類のカタログ掲載値の平均1リットル当たり26キロ、以上により算出しますと、1か月当たり約8,000円となります。

次に、車両購入費につきましては、全額ローンとし、市中銀行の例から5年返済、年利3.05%の条件で算出しますと、毎月の返済額は約4万5,000円となります。

以上のガソリン代とローン返済額を合計しますと、1か月当たりのコストは約5万3,000円となります。

試算は以上でありますが、実際の燃費は、カタログ掲載値よりも低い傾向にあることやコストとしましてはオイルやタイヤの摩耗などの消耗などもありますので、実際にはもう少し多くなることも考えられます。

なお、入庁1年目22歳の行政職職員の給料月額は22万983円でございます。

井手久武政策企画局長答弁

県外大学進学の学費と生活費の仕送りについて

学費につきましては、東京都内の私立大学として区分されたデータはございませんでしたので、文部科学省が実施しました私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査におきます全国の4年生私立大学の文化系学部の平均でお答えをいたしますと、授業料が年間約82万7,000円、施設設備費が年間約14万4,000円、以上の合計で年間約97万1,000円でございます。

次に、生活費の仕送り額につきましては、東京都に限っての調査はございませんでしたので、東京地区私立大学教職員組合連合が東京都、埼玉県、栃木県にあります9校の新入生の保護者約4,000人に対しまして令和6年度に実施されました私立大学新入生の家計負担調査によりましてお答えいたします。

仕送り額の月平均につきましては、入学直後の新生活に伴う出費が落ち着きますところの6月以降の月平均で、令和6年度は月8万8,500円、単純に12を掛けました年106万2,000円となります。

以上の学費と生活費の仕送りの合計は年203万3,000円となります。

石橋睦郎商工労働部長答弁

年収の壁撤廃の可能性について

社会保険関係の年収の壁は、従業員51人以上の企業において、標準的な週20時間の労働で年収が106万円を超えると厚生年金、健康保険の保険料負担が発生し、手取り収入が減少してしまうため、勤務時間を減らすなどの就業調整をする方が意識する制度上の境界です。

また、厚生年金や共済組合に加入する社員等に扶養されている方の年収が130万円を超えることで、国民健康保険、国民年金の保険料負担が発生する130万円の壁もあります。

今年6月に成立し、公布された年金制度改正法の中で、年収106万円の賃金要件につきましては全国の最低賃金の引上げの状況を見極め、公布から3年以内に撤廃するとされました。

今年の最低賃金の改定により、一番低い地域でも1,023円となり、標準的な週20時間での労働で年収106万円の時給換算1,016円を超えてしまうため就業調整が発生する実質的な賃金要件はなくなっており、2026年度に撤廃される可能性があります。

なお、週労働時間20時間以上が対象となる要件は残りますので、引き続き社会保険料が発生しないようにしようとする方は週20時間以内となるよう就業調整されることが考えられます。

また、現在の従業員51人以上の企業規模要件については、10年をかけて段階的に基準が引き下げられ、2035年10月には全ての企業が対象となります。

加えて、常時5人以上を飼養する個人事業所においても、現在適用業種が限定されていますが、2029年10月から非適用業種がなくなります。

石橋睦郎商工労働部長答弁

最低賃金引上げ方針に関わる準備について

政府は、2030年までに、最低賃金を全国加重平均1,500円に引き上げることを方針として示していますが、その場合の社会保険料の負担については新たな加入者により発生する負担はもとより、既加入者の負担増や段階的な規模別の対象事業者の拡大なども含め、加速度的に増えていくことが想定されます。この負担は、労働者のみならず、事業者にも大きな負担となることから、経営に与える影響は大きいと認識しております。

厚生労働省では、事業者や労働者の負担軽減のため、年収の壁支援強化パッケージを打ち出しており、厚生年金、健康保険の106万円の壁への対応支援としてキャリアアップ助成金を設けています。この助成金では、令和5年度から社会保険適用時処遇改善コースが新設され、現行制度では労働者の新たな負担となる社会保険料部分を事業者が手当として労働者に支給した場合などを要件とした手当等支給メニューや短時間労働者が週の所定労働時間を一定時間延長する場合などを要件とした労働時間延長メニューがあります。

また、その2つのメニューの併用メニューもあります。

加えて、今年7月からは、先ほど触れました労働時間延長メニューの助成額を拡充した短時間労働者労働時間延長支援コースが新たに設けられています。

次に、国民年金、国民健康保険の130万円の壁への対応の支援として、短時間労働者である被扶養者が年収130万円を超えた場合に、その超過が一時的な労働時間延長などに伴う収入変動によるものと事業主が証明することで連続で2回まで被扶養者認定を継続する制度が設けられています。

しかしながら、助成金の創設前に社会保険に加入した労働者は対象外であること、助成を受けられる期間は2年もしくは3年と期間が限定されていることなど、国が示した方針に基づく最低賃金の急激な引上げによる負担増に対応する制度とはなっていません。

島根県中小企業団体中央会が島根県の最低賃金が1,033円となることを受けて実施した緊急調査によると、人件費負担の増加だけでなく幅広い業種で賃上げにより、社会保険料の事業者負担が増えることから、政府に対して社会保険料の負担軽減を求める意見がありました。

国が示している中小企業小規模事業者の賃金向上推進5か年計画の施策パッケージ案では、こうした社会保険料の負担軽減の視点が盛り込まれていないことから、最低賃金の引上げの対策とともに最低賃金引上げに伴って社会保障料の負担が増すことで生じる様々な課題を改善する対策を求めてまいります。

石橋睦郎商工労働部長答弁

新卒及び中途採用の人材確保コストについて

人材確保コストは、就職情報サイト登録料や人材紹介手数料、企業合同説明会などのイベント参加料のほか、インターンシップ等に要する経費など、様々あります。

また、業種や採用規模など企業によって大きく異なるため、全体のコストについては把握できておりませんが、各種経費のうち民間職業紹介会社によるサイトを活用した場合は、ある会社の例ですが、新卒採用が80万円から300万円程度、中途採用が20万円から120万円程度で、企業情報の掲載やエントリーを受け付けるシステムが活用できるなどの基本的なプランがあります。

加えて、サイト内での優先表示や取材画面の掲載など様々なオプションがあり、どれだけオプションを活用するかによって大きく異なってきます。

こうしたコストは、人手不足の中、人材を確保できず利用する民間職業会社を増やしたり情報サイトのオプションの追加や掲載期間の長期化などにより負担が増えているという声を聞いております。

また、成功報酬型のプランでは、新卒採用で1人当たり100万円から130万円程度、中途採用で求職者の年収の30%程度であると聞いており、これらは他社においてもほぼ同様でした。

県では、新卒採用に当たって、就職情報サイトの登録に係る経費、専門家を活用した企業PR動画の制作や合同説明会での出展ブースの改良経費などについて支援しております。

また、中途採用に当たっては、県外の専門人材をUターンIターン等で雇用する場合や副業、兼業の形態で確保する場合に民間職業紹介会社へ支払った人材紹介の成功報酬部分などを支援しております。

加えて県では、ふるさと島根定住財団と連携してUターン、Iターンの促進や県内外の若者の県内就職を促進するため、企業と若者のマッチングイベントや企業説明会の開催、専門家の派遣、インターンシップ活用の支援などをしており、これらは企業の採用活動の支援とともに、負担軽減にもなっていると考えております。

こうした支援を通じて人材の確保に取り組んでいただきたいと考えております。

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