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今期定例会に示された病院会計決算は大幅な赤字を計上されていますが、先ごろ安来市立病院と安来第一病院の経営統合が発表されたように、県内病院の経営状況は極めて厳しいと感じています。
病院経営は、経常赤字の病院割合が、2022年度の23.0%から2023年度には53.4%に急増し、多くの病院では医療サービスだけでは利益が出ず、補助金頼みの経営が常態化していたということになります。
2024年度も赤字病院が6~7割に達する見通しで、現在の診療報酬制度では物価高や人件費増に対応しきれず、構造的な赤字体質の速やかな改善が必要となっている状況ですが、2025年は国民の3人に1人が65歳以上になると見込まれ、慢性期医療や在宅需要、リハビリの拡充が求められる一方、少子化によって小児科・産科のニーズが低下し、これらの科を維持する病院の収益バランスが悪化し、旧来の急性期・高回転モデルでは収益確保が難しいと考えられます。
(3) 公立病院の収益の90%以上を占める診療報酬が2024年度の改定では1.9%の増加に止まったことについてどのように考えているのかお尋ねします。(病院局長)
政府は診療報酬改定や財政支援で対応を図っていますが、赤字病院の一般運営を直接的に補填するような包括的支援は不十分で、柔軟性のある制度設計が強く求められており、医療財源の制限や地方財政力の格差も課題であると考えます。
災害拠点病院では、耐震補強、非常用電源、ヘリポート、感染症病床の維持などに多額のコストを要するものです。
病院経営の改善には、診療報酬請求の正確化や係数改善、地域医療連携強化などの基本的施策のほか、医薬品・材料の共同購入、省エネ、在庫管理などのコスト削減策や地域連携による役割分担、財政負担の増額などが考えられますが、ほとんどの部分でそうした取り組みは図られていると思います。ただ、コロナ禍による国の手厚い補助金で一時的に経営収支が改善し、せっかく取り組んできた取り組みにゆるみが生じてきたところがたくさんあります。
とは言え、自治体病院単独の経営努力で収支の改善は極めて困難で、国に対し自治体病院が適切な医療を提供可能な診療報酬の改善求めることは当然です。
自治体病院の設備や人材、災害対応力は道路や上下水道と同じ社会の基盤インフラであり、その維持費は政策的投資と捉えるのが適当であると考えます。
現状のまま推移すると、人口減少もあって、病院の経営収支に財政支援の拡大が避けられない事態となることは容易に想像できますが、地域の公立病院の存続には、鉄道の上下分離と同様、自治体病院の施設は行政が整備し、運営を地方独立行政法人や医療法人などの組織で行うなどが考えられるところであり、国に抜本的な支援の在り方を検討するよう求めるべきだと考えます。
と同時に
(5) 自治体病院が抱える構造的な問題と自助的な問題を整理し、県庁一丸となって県内公的医療機関の経営健全化を進めていただきたいと考えますが、所見を求めます。(知事)
│掲載日:2025年09月25日│
県内では、公立病院などの地域の拠点病院が救急医療や災害医療などの政策医療に加えまして、巡回診療や診療所への医師派遣を行うなど地域の診療支援に大きな役割を果たしているところでございます。しかしながら、診療材料などの価格の高騰、光熱水費の高等、人件費の上昇が続いておりまして、加えて人口減少で患者数が減少し、医療従事者の確保が難しくなり、病床等の一部を縮小せざるを得ないという、稼働させないといった対応を迫られる状況があるなど経営的に厳しい状況にあるというふうに認識をいたしております。
医療機関の経営に係る経費は、これは人件費や診療材料費のみならず建物などの建設費、また医療機器などのハード部分を含めて、原則として公定価格であります診療報酬によって賄うこととされております。
例外的に公立病院におきましては、民間病院の立地が困難な僻地等における医療や救急、小児、周産期、災害、精神など不採算、特殊部門に係る医療、また高度先進医療を担ってることから、診療報酬で賄うことが困難な経費に対しましては一定の基準を設けて一般会計からの繰り出しや国からの運営費に対する補助金が措置されるという構造になっているところでございます。
今回の診療報酬改定後の病院が置かれている厳しい環境というのは、これは公立病院に限らず民間病院を含めて病院を経営している機関の経営が大変厳しい状況にございます。その主因は、令和6年度の診療報酬の改定が消費者物価指数や賃金の伸びに対して十分になっていないということにございます。したがいまして、県といたしましては、国に対する重点要望におきまして、診療報酬を遡及して再改定すること、つまり令和6年の診療報酬改定が十分ではなかったと認めることを強く要望しているところでございます。
また、病院事業を実施する地方公共団体は、各病院が経営健全化や業務効率化に向けて自らの経営強化の取組を進めていくために令和9年度までを対象とした経営強化プランを総務省の指導に基づいて策定しているところでございます。
経営強化プランには、各病院が地域の中で担うべき役割、機能を明確化して収入の増加や経費の削減、従業者の確保などの具体的な取組を定めているところでございます。
さらに、施設の建て替えや大規模修繕、高額な医療機器の導入など、病院側の施設設備に係る主な投資について、必要性や適正規模などについて検討を行った上で収支見通しに反映させておられます。
県といたしましては、医療政策を所管する健康福祉部と市町村の行財政運営を所管する地域振興部が連携し、代診医、代わりに診ていただくお医者さんの派遣などの役割を担っている病院局とも連携協力しまして、県内の各公立病院の経営強化の取組が進み、地域に必要な医療機能が確保、維持されるよう支援していく考えでございます。
現在の診療報酬制度では県立病院はもとより他の病院においても近年の人件費増や物価高騰に対応し切れておらず、構造的な問題となってると考えております。
したがいまして、このことにつきましては、県立病院のみの問題として捉えるのではなく、病院全体の問題として捉えておりまして、国において、遡及改定も含め、包括的、抜本的に改善していただくことが必要と考えております。
また、高齢化や少子化などに伴う医療需要の構造変化にどう対応するかということも重要な課題でございます。この課題に対応するには、まず現在、国や県が取り組んでおられる、新たな地域医療構想の検討をしっかりと進めていることが重要であると考えております。例えば今後増加が見込まれる高齢者救急の受入れ体制、専門病院や施設などの協力、連携による発症早期からのリハビリテーションなど最適な医療の提供、産科、小児科における医師偏在対策などの課題につき既に議論が始められておりますので、しっかりとまとめていただきたいと考えております。
県立病院といたしましては、県全体や各医療圏域で受け持つべき医療機能の整備、病院間の役割分担と連携、人材の確保、育成、財政支援の拡充など、具体的な課題意識も持っておりますので、病院の実態や意見も踏まえていただけるよう、構想の策定実施に向けた議論に参画していきたいと思っております。
全国的な病院経営の危機的状況につきましては、私ども医療現場におきましても、同じ問題意識を持っております。県立病院対しましては、自ら取り組む経営改善も大事ですので、毎年経営改善実行プランを策定し、医療DXの推進、タスクシフト、チーム医療の強化、他の医療機関との連携強化などの取組を進めてるところでございます。
また、こうした取組に加えて国への要請、働きかけも大事ですので、これまで様々な機会を通じてこうした状況を改善するための要望を行ってまいりました。例えば全国自治体病院協議会においては、令和6年度の決算状況を調査し、全国の公立病院の86%が赤字になったという厳しい状況を踏まえ、今年9月に全国の6病院団体連名で国に対しまして補正予算による緊急的な財政支援や診療報酬の大幅な改定といった緊急要望を行いました。
診療報酬制度の構造的な問題の改善や財政支援制度の拡充につきましては、国において包括的かつ抜本的に対応していただくことが必要ですので、今後も健康福祉部と連携して国に強く要望してまいります。
県内の公立病院全14病院と公立以外の病院のうち17病院について、令和6年度と5年度の状況を聞き取りましたので、その内容をお答えします。
まず、公立病院についてですが、6年度決算において、経常損益が赤字となった病院は9病院で、前年度より1病院増え、黒字となった病院は5病院で、前年度より1病院減りました。
また、1病院当たりの経常損益の平均額を試算してみますと、赤字病院の6年度の損失額は5億2,000万円で前年度より1億7,600万円増、黒字病院の6年度の利益額は4,500万円で、前年度より3,600万円減でした。
次に、公立以外の病院についてですが、6年度決算において経常損益が赤字となった病院は、9病院で前年度より3病院増え、黒字となった病院は8病院で、前年度より3病院減りました。公立病院と公立以外の病院を合わせますと6年度決算において、経常損益が赤字となった病院は18病院で、前年度より4病院増え、黒字となった病院は13病院で、前年度より4病院減っており、県内病院の経営状況は厳しくなっています。
全国自治体病院協議会などが全国の病院を対象に実施されました2024年度診療報酬改定後の病院経営状況調査によりますと、令和6年11月時点におきましては医業収益が1.9%の増にとどまった一方で、医業費用は2.6%の増となりました。
また、中央病院の令和6年度決算では、医業収益は2.7%増となりましたが、医業費用は6.8%増となり、収益の伸びを大きく上回りました。
全国調査の結果と中央病院の決算のいずれを見ても、令和6年度の診療報酬改定は給与費の増や物価高騰を反映し切れておらず、不十分であります。このことに対しましては、先ほど病院事業管理者から答弁いたしましたとおり、診療報酬制度の構造的な問題の改善や財政支援の拡充が必要であり、国において包括的かつ抜本的に対応していただくことが必要と考えております。