県議会だより

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平成15年9月議会一般質問(1)

今期定例会の質問もいよいよ殿。寄席では大看板です。気合を入れて、通告いたしました4点について知事並びに担当部局長の見解を質したいと存じます。
生物の生存の最大理由は種の存続、生命体の維持にあることは普遍の原理原則です。通常それは「本能」「摂理」という言葉で表されてきました。しかし、いま、改めて「生を育む意義」に言及しなければならないことが少子化問題の根底だと思うのであります。「長幼の序」を基本とした東洋思想、社会規範を持つ両親に育てられた私たちの世代と戦前を全て否定する風潮の中で育った、いわゆる団塊の世代以降の親に育てられた世代は明らかにその精神構造に相違があります。国家観や社会観は極めて曖昧となり、普遍性や社会常識も改めて言葉で説明しなければ理解されなくなりつつあります。少子化に至る過程はまさにこうした現代世相を投影しており、敢えて人間の役割を説く必要を感じるわけであります。  少子化対策についてはすでに原議員と田中八洲男議員から発言があっておりますので私は主としてしまね少子化対策ステップアップの内容についてお尋ねしたいと存じます。
女性の社会進出と合計特殊出生率が反比例することから、従来の子育て支援は女性の就労支援と表裏一体でした。「子育ては家庭でするもの、親がその責を負うべき」という社会意識は「子供は地域の宝」と言いながら子育ての責任は社会的にも経済的にも100%家庭ないし親に委ねられているのであります。言うまでもなく、社会の仕組みは人間の生存が連綿と続くことを前提に成り立っており、社会保障制度や国債や地方債による社会資本整備もすべて次世代が続くことが前提です。
「子供を持つと損する」「結婚はイヤ」といった価値観をも肯定する風潮のなかで、次なる世代のマンパワーをどうして確保できるでしょうか。先頃示された「しまね少子化対策ステップアップ」には「子育ての社会化」が謳われています。行政がまとめた指針にこうしたコンセプトが示されたことは画期的であり、評価の声もあります。
しかし、これが本当に広範な検討をされたうえで採用されたかどうかは極めて怪しいもので、「現状では言葉遊びでしかない」という同僚議員の指摘はまさに正鵠だと思います。医療や介護のような保険(相互扶助)による社会保障制度と子育ての社会化は言葉は同じ「社会化」でもその意味するところは全く違います。また、現行の様々な支援制度を拡充し、事実上社会化してしまうこととも全く異なるものであります。
子育ての社会化とは、子育ての責任の一部であってもその主体を親や家庭から社会に移行させ、子供を生み育てる意志の全くない人たちにも子育てに参画、責任を持たせることであり、明治時代の「学制、義務教育制度の創設」に匹敵する社会変革であります。子育ての何をどこまで社会化するのか、それにかかる新たな費用負担をどうするのかを含め相当な検討が必要だと考えます。社会に生存するものすべてが連帯して次代の世代を育てる責任を負うという子育ての社会化の概念は、現代世相に照らせば極めて理解が得られにくい性質のものですが、徹底的に議論し、早急に社会合意を形成すべくその取り組みを深化させていかなければならない思うわけです。
私は、子育てを社会化することと現行の子育て支援を拡充することとは相反するもので、しまね少子化対策ステップアップの内容を具体化すればするほど子育ての社会化の概念と大きな軋みが生ずるのではないかと考えますが「子育ての社会化」について健康福祉部長の見解を質したいと存じます。
知事は「子育てするなら島根が一番と言われたい」とコメントされました。これが島根県の少子化対策、子育て支援の目標ならば国の現行制度や法令の枠を超越した大胆な施策の企画立案が必要だと思います。国はこの7月に次世代育成支援対策推進法を公布し、地方自治体などに平成17年度からの行動計画の策定を義務付けたわけですが、まだどこも有効な対策を持ち得てはいないわけであります。保育料の軽減や放課後児童クラブの設置、育児と就労の両立支援などすでに市町村レベルでは相当進んでいるところもありますが、子育て世代の社会動態に貢献する程度で出生率向上に寄与するとの報告はありません。
県レベルで取り組むのであれば、18歳以下の医療費や保育所、幼稚園を含め学費をすべて無料にするぐらいの取り組みを展開しなければ目に見える改善は困難かもしれません。少子化がもたらす社会的な問題についての啓発、教育はもとより、知事自らが「少子化対策実践本部(仮称)」の本部長になって法令の枠を取り払って大胆に陣頭指揮を執るくらいの意気込みがほしいわけですが、知事の見解を質したいと存じます。

永田健康福祉部長答弁

「子育ての社会化」についてのご質問にお答えいたします。
少子化は、女性の社会進出、核家族化の進行、ライフスタイルの変化や地域におけるつながりの希薄化等、子供と子育て家庭を取り巻く環境の変化により、子育てに係る精神的、肉体的、経済的負担の増大が生じたことが大きな要因の1つと言われております。
少子化問題の深刻さ、次代を担う子供の健やかな育ちの大切さを考えますと、親だけが子育てに係る負担や責任を背負い込むのではなく、行政や企業、地域がこぞって子育て家庭を支援することが必要であり、このことが「子育ての社会化」であると理解いたしております。
したがって、「子育ての社会化」とは保育その他の子育て支援サービスの提供、子育てに係る経済負担への対応、民間における支援活動の活性化、子育てしやすい雇用環境の整備、さらには税制や社会保障制度等における子育て家庭への配慮など幅広くかつ様々なレベルの内容を指すものと考えております。
「子育ての社会化」をこれまで以上に進めていく必要があると考えておりますが、どこまで進めるかにつきましては、企業、その他の団体や県民の皆様方の社会的な合意が不可欠であり、様々な場において広くご意見や議論をいただき、その結果を踏まえ推進を図ってまいります。

澄田知事答弁

子供は、「未来の夢」であり「次代の希望」であります。私は、子供が健やかに産まれ育つことなくして、本県の未来はあり得ないと考えております。このため、「子育てするなら島根が一番」との思いで、本県の実情に応じた子育て支援を強力かつ全庁的に進めてきたところであります。
また、少子化の進行は、社会の様々なシステムや人々の価値観と深く関わっていることから、長期的な展望に立った、社会全体での不断の取り組みが不可欠であり、次世代の育成に向けて、国、県、市町村、企業、県民がそれぞれの責務を的確に果たすとともに、連携・協力して取り組むことが何よりも大切であります。
こうしたことから、県においては、それぞれの役割を明確にしつつ、厳しい財政事情の中で、子育て支援を重点化施策に選定し、更なる打開策を講じようとしているところであります。
今後とも、私自身先頭に立って、子育て支援の機運の醸成を図りながら、市町村、企業、県民の皆さんの英知を結集して、島根らしい「子育て支援社会」の実現に向けて、全力を尽くす決意であります。

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