県議会だより

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平成15年11月議会一般質問(3)

構造不況対策について

金融状況の変化、制度改革により金融機関の体質強化や自己資本増強がは図られており、結果中小、零細企業への貸し出しは極めて厳しい状況となっております。貸し渋り、貸し剥がしと言われる状況も事実であり、既存債務の債務保証を担保による個人保証から保証協会保証に変更した途端、資金ショートによりデフォルトした例があるなど深刻です。特に、縫製や弱電等中国や東南アジア諸国との厳しい価格競争下にある業種は特定不況業種とされており、この10年間に事業所数は半減し、就労者は1/3になっています。銀行の融資やリース契約が拒否されるなど深刻な実態と聞いております。県では、こうした厳しい状況にある業種の状況についてどのような認識をお持ちでしょうか、お尋ねいたします。
先般、私は中国の縫製業の状況を視察してまいりました。中国の現状は安価で豊富な労働力を背景に大量生産体制が実現されていますが、使用されているミシン等の縫製機械はクラッチ式と言われる概ね日本の10-20年前のものが主流で、パーツ生産方式がとられています。これに対し、日本はコンピュータ制御の最新機器を使用し労働集約型の総合生産方式でコストダウンを実践しているのが実情です。つまり、現在の競争はミシン等の縫製機器の性能差によって辛うじて成立しているのであり、適切な設備投資を実施しなければ即落後するというものであります。こうしたときに設備投資の資金供給やリース契約に応じないなどまさに何を考えているのかと言いたいくらいの状況で、この際、適切な支援を検討されるべきではないでしょうか。
今期定例会には、年末の資金需要に対応すべく補正予算として計上された制度融資に関わるものがあります。そのうち構造不況業種と言われる分野への資金はどのぐらいが予定されているでしょうか。また、必要であれば、年末支援に向け信用補完や県の窓口設置等支援体制を強化する必要があると思いますがご見解をお尋ねいたします。
中国はWTO加盟により、早晩、通貨の切り上げや不適切な貿易慣行の是正などが求められ、実施されると思われます。いまは、厳しい状況であっても優れた技術力があれば必ず光は見えてくるはずであり、そのためにもできるだけの支援が必要でありましょう。
信用保証協会や産業技術センター等の取り組みの強化を望む次第であります。
次に制度支援についてであります。
県内製造業は厳しい環境を乗り切るための方策の1つとして海外研修生の積極的な受け入れ等による経営努力を行っております。外国人研修生の受け入れについては、不良外国人による犯罪の多発等一方では批判もありますが、採算面等辛うじて事業が継続され、雇用が保たれている業種ではその効用もあります。私は、日本企業が生産拠点を海外に移転することは様々な観点からも国益に叶わないと考えています。  むしろ、外国人研修生や外国人労働者の受け入れによって生産拠点を国内に置くことが肝要であると思っております。現状は外国人の受け入れ主体が協業組合等の民間法人に委任されていますが、行政がこれに積極的に関わることによって外国人労働者等の把握が容易になり、不法外国人を抑制できるのではと思います。例えば、いま県内建設業にはほとんど外国人建設作業研修生は配置されていませんが、厳しいコスト競争や積算単価の引き下げに対応すべくこれの導入を視野に入れた取り組みを研究してはと思います。
次に、製造業の地産地消についてご見解を伺います。農林産物や水産製品の地産地消は様々なところで実践され、定着しつつあります。100円市や生産者市場、ファーマーズマーケット等の施設やイベントに加え学校給食等にも積極的な動きがあります。しかし、製造業の地産地消はほとんどありません。例えば学校の制服、体操服等はすぐにでも対応が可能と思いますし、ほかにもあると思います。私は検討してみる価値は十分あると思いますがいかがでしょうか。
最後に苦言を一つ申し上げておきます。県は様々な商工業の支援施策を用意し、多様なメニューと産業技術センターや石見ぷらっと、商工会議所(中小企業相談所)などの機関も設置しています。しかし、これらが必ずしも県民に周知されていないことがよくわかりました。せっかくの施策が県民に知らしめていないために十分活用されていません。もう少し上手にPRし、用意したメニューを100%活用してもらってこそ光ると思います。「どんなに長い夜でも必ず朝が来る」いまはつらくても頑張っている県内企業を支援するための関係諸君の取り組みの深化を願って質問を終わります。

山下商工労働部長答弁

構造不況業種の実情について

議員ご指摘の通り、縫製業をはじめとする構造不況業種は、生産拠点の海外シフトが進んだことや、低価格の輸入品の増加、生活様式や流通・販売形態の変化、長期にわたる景気低迷下での消費の冷え込み等により、売り上げや受注が減少し、厳しい経営が続いているものと認識しております。このため、中小企業庁では、不況業種144業種について、信用保証協会の別枠保証が受けられるよう制度を設けており、本県でも中小企業制度融資において、この制度を活用した運営を行っております。例えば不況業種であることを要件としたセーフティネット資金、売り上げ減少を要件とした長期経営安定緊急資金、借入債務の取りまとめと返済の長期化による返済負担の軽減を目的とした構造転換支援資金などによって、構造不況業種の資金調達を支援しているところであります。また、金融機関や島根県信用保証協会に対しましても、こうした不況業種にあっても技術力と将来性のある中小企業が厳しい状況に追い込まれることがないよう、あらゆる機会を通じてお願いしているところであり、さらに産業技術センターにおいてもこうした業種に対して、技術力向上の面から積極的な支援を行っているところであります。今後とも、債務超過にあっても将来性のある企業については、資金調達が可能となるよう県としても取り組んでまいります。
次に、補正予算で拡大する資金枠の内、構造不況業種による利用をどの程度見込んでいるかとのお尋ねでありますが、この度上程した制度融資の予算130億円は、長引く不況の中で、売り上げ減少による収益悪化や借入金の返済負担緩和のための資金需要が増加することに対応するために増枠するものであります。この予算の内、不況業種への資金枠について特に設けてはおりませんが、不況業種か否かに関わらず資金需要があれば県としても柔軟に対応していきたいと考えております。
次に年末に向けての金融支援体制の強化についてお答えします。
ご指摘の通り、企業にとって年末は、手形をはじめとする資金決済や、従業員のボーナスの支払い等もあり、その資金需要は高く、金融機関から円滑に資金調達ができることは、極めて重要なことであります。このため、県では今月早々にも年末における企業への円滑な資金供給について、各金融機関に要請することにしております。また、16日には、国や商工団体、金融機関、信用保証協会からなる「地域融資動向に関する情報交換会」が開催されますので、この場においてもお願いすることとしております。さらに、年末の金融相談につきましても、企業の資金繰りに支障が生じないよう、金融機関、商工団体等に万全の体制を敷いていただくよう、協力要請することとしております。

山下商工労働部長答弁

外国人研修制度について

外国人研修制度は、開発途上国への技術移転を図り、その国の経済発展を担う人材の育成に寄与することを目的とし、特定の業種を対象に、商工会議所・商工会や中小企業団体等が受け入れ団体となり、受け入れを希望する企業で一定期間研修を行うものであります。県内においては、本年10月1日現在で、この制度を活用し、縫製業界をはじめ鉄鋼、水産加工、建設関係など幅広い業種にわたって約1150名の研修生を受け入れており、県内企業の活性化にも一定の役割を果たしているものと認識しております。このため、今後とも受け入れ団体である商工会議所等に対して必要な情報提供を行うとともに、制度の周知を図ってまいります。また、企業から具体的な相談があった際には、研修生受け入れの照会や相談、仲介など総合的支援を行っている国の機関である財団法人国際研修協力機構(JITUCO)に斡旋するなど、この研修制度が円滑に実施されるよう努めてまいりたいと考えております。
なお、現在、県においては、県が窓口になり友好交流先である寧夏回族自治区からの研修生受け入れ事業を行っておりますが、これは友好交流を目的として、毎年数名の研修生を受け入れているものであります。県内で行われている研修生受入全般について県が窓口となり実施することは困難でありますが、先程申し上げたこと以外に、民間企業の研修生受け入れに、県がどのように関わり、何ができるのかこのことにつきましては、今後引き続き検討をしてまいりたいと考えております。

山下商工労働部長答弁

製造業の地産地消について

ご指摘の縫製業をはじめとした製造業が、生産拠点の海外へのシフトや消費の低迷の影響で厳しい状況にある中、県内製造業の優れた製品を県内で活用する、あるいは、そうした製品の製造に係る下請けを県外ではなく県内企業が受注することは、本県製造業全体の振興を図る上で極めて重要であると考えております。こうしたことから、県の施設および公共事業等において優れた県内製品の活用が図られるよう、関係部局に働きかけるとともに、製品展示説明会の開催や公共施設でのモニター利用などを通じて利用促進に努めているところであります。また、下請け受注につきましても、しまね産業振興財団の下請け中小企業アドバイザーなどにより取引の斡旋を行っており、最近も県内企業において下請け取引を県外から県内に切り替えた事例、例えば、県内医療器メーカーにおいて県外発注していたプラスチック製品を県内企業から調達することになった事例など、が複数出ているところであります。今後とも、こうした取り組みを強化し、県内製造業の優れた製品での活用等を推進してまいります。
次に、商工業の支援施策のPRについてお答えいたします。
県におきましては、国、県および関係機関の支援施策を総合的に紹介する「企業支援施策ガイドブック」を毎年発行・配布するとともに、県内企業をはじめ市町村や商工会議所・商工会を対象に説明会を開催しているほか、しまね産業振興財団、商工会議所・商工会などの各支援機関においては情報誌やインターネットを使ったメールマガジン等で施策情報をお知らせしているところです。しかしなから、議員ご指摘のようにこうしたPRが十分浸透していない面も見受けられることから、県といたしましてはどの窓口であっても機動的、総合的な支援ができる体制を構築していくために、今後市町村や関係機関を含めお互いの施策情報の共有と連携に一層努め、さらに企業や地域の現場に積極的に出かけて施策のPRと有効活用を促進してまいります。

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