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宍道湖・中海のラムサール条約登録についてお尋ねいたします。
知事は宍道湖・中海のラムサール条約湿地帯登録を目指すとの表明をされました。この表明は宍道湖・中海の淡水化事業中止の決定の直後で、事業中止に伴う地域イメージの挽回という側面があることを否定するつもりはありません。しかし、現在も宍道湖周辺での野鳥の農作物被害があり、私たちのようにシカをはじめとする野生生物の保護行政のツケを一方的に負わされている関係者からすれば「何を勝手なことを言っているのか」との思いがあります。確かに宍道湖・中海は野鳥の宝庫です。とりわけキンクロハジロをはじめとするカモ類の繁殖地としては有数の場所でしょう。しかし、キンクロハジロはシジミが主食です。いまは漁業者と絶妙のバランスですが過度の保護は周辺で自然と向き合って生活している人の生きるすべを奪いかねません。もつれと呼ばれる掛け網漁や木づけ漁と言われる地域独特の漁は必ず野鳥に対して危険との指摘を受けるでしょう。知事、何故唐突に、ラムサール条約の湿地帯登録なのでしょうか、お尋ねいたします。
時代風潮としてラムサール条約の湿地帯登録に表立って「反対」との表明をすれば「野蛮」「自然保護に反する」との誹りを受けます。地域イメージも著しく低下するでしょう。だからこそこうした表明をされるなら事前に関係者に対する配慮を十分行ってほしいのであります。登録には、宍道湖・中海周辺で農林漁業で生計を立てている者や関係者の理解が登録の前提条件であるはずです。そのための知事のスタッフではありませんか。現在、説明や話し合いはどの程度進んでいるでしょうかお尋ねいたします。
過去、野生鳥獣の保護行政は関係住民の一方的な犠牲の上に成り立ってきました。私は、このままでは責任の範囲を曖昧にしたままで世論形成が進み一気に登録に行ってしまうのではと危惧するところです。登録までの今後の手順および登録後に関係者の経済的損失が発生した場合の制度等の検討は必要ないでしょうか、お尋ねいたします。私は地球は人間のものだと言うほど傲慢ではありません。全ての生物が生息する権利を持っていると思います。しかし、人間の立場から言わせていただけば、法や規則は人間が生活するためのものであって、苦しめるためのものであってはなりません。ラムサール条約の登録にあたってはどうか事前の準備を十分に行って、関係者や地域の将来に禍根を残すことのないよう配慮を望むものであります。
│掲載日:2007年03月17日│
「島根県自然環境保全審議会」の委員の選考についてお答えいたします。
この審議会は、自然保護や自然公園および鳥獣保護などについて調査・審議を行う県の附属機関であります。その委員の選考にあたっては、幅広い意見の反映と議論の公平性を確保するため、関係行政機関、各専門分野の学識経験者のほか、関係団体等から適任者の推薦を受け任命しております。 また、この審議会においてはより専門的な議論を行うため、自然保護、自然公園、鳥獣保護および温泉の4つの部会を設けており、各委員はいずれかの部会に所属し、それぞれの部会を主体に、関係する事案の調査・審議が行われております。「鳥獣保護部会」につきましても、動物学や林学の専門家のほか、森林組合連合会や猟友会、農業協同組合などの関係団体から推薦いただいた委員で構成されており、適切な委員の選考と考えております。
次に、ラムサール条約登録に係る関係者への説明の進捗状況についてであります。
ご指摘のように、ラムサール条約登録を進めるにあたっては、関係者のご理解が不可欠であります。このため、地域の皆様に両湖を条約に登録する趣旨について、より理解を深めていただくため、10月から11月に掛け、関係市町や団体等に対し、説明を行うとともに、意見、質問等もお受けしているところであります。そのなかで、条約登録についての理解は深まりつつあると受け止めておりますが、一方では、条約登録の要件である鳥獣保護区特別保護地区の指定による、具体的な規制内容等について多くの質問が寄せられております。今後は、こういった質問に対して、正確な情報を提供しつつ、様々な機会を通じて、条約登録の趣旨について、理解を深めていただけるように努力してまいります。
次に、登録までの今後の手順および経済的な損失が発生した場合の制度検討の必要性についてであります。ラムサール条約登録の手順としては、まず、国から鳥獣保護区特別保護地区の指定を受ける必要があります。
現在、環境省では、この指定に向け関係者に対し説明会、公聴会を行うなどの準備を進めております。また、鳥獣保護区特別保護地区指定の後、地元自治体に対し、ラムサール条約登録についての意見照会が行われます。
次に、条約登録後の経済的損失に対する制度検討の必要性についてであります。
ラムサール条約に関する、第7回締約国会議の決議においては、本条約は、一方的に鳥獣等を保護するのではなく、漁業や農林業等での利用も前提としており、原則的にはこれらの経済活動を阻害するものではないとされております。しかしながら、鳥類による被害が急激に増加するなど、著しく状況の変化が生じた場合は、他の登録地の事例も参考に、被害防止対策を検討してまいります。
次に、島根県自然環境保全審議会鳥獣保護部会の運営についてであります。
県が鳥獣保護区や野生鳥獣の捕獲禁止区域の指定等を行おうとするときは鳥獣保護法の規定に基づき諮問することとなっております。部会では、県が行った公聴会での利害関係者の意見内容を踏まえ、大所高所からご審議いただいておりますが、特に弥山山地のシカの問題については、大きな問題としてとらえられ、現地調査を行うとともに、現地での公聴会で利害関係者からの意見を直接伺われたほか、事案をより詳細に検討するための小委員会も設けられたところです。このように、シカの問題については慎重にご審議いただいておりますことから、運営は適切に行われているものと考えております。
宍道湖・中海のラムサール条約登録についてであります。
宍道湖・中海の豊かな自然は、我々県民にとって貴重な財産であり、水産業や観光産業の活性化のためにも、将来にわたってこの自然の恵みを受けられるよう守っていく必要があります。また、私は四季を通じて様々な表情を見せる両湖を折にふれて見るたびに、かねてから美しく豊かな自然を、国内外に強くアピールして行きたいと考えておりました。このため、宍道湖・中海の淡水化、干拓の問題に一定の決着がついたことを踏まえ、国際的に重要な湿地の保全を目的とするラムサール条約への登録を目指すこととしました。今後、県としては、条約登録を目指すこととした背景、登録による効果等について説明をするとともに、農業者、漁業者をはじめ地元の関係者のご意見を十分に伺いながら、登録に向けた作業を進めてまいります。