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先日、宍道湖、中海の昨年の水質状況が報道されておりました。それによると夏期に雨が多かったために若干改善も見られるものの各種の数値は概ね横バイであるとのことでありますが、まず、宍道湖・中海に流入する河川を含めた近年の水質状況の推移についてお尋ねいたします。また、この水域の下水道、集落排水、合併浄化槽の整備状況はどのようでしょうか。
宍道湖、中海ともに生活廃水処理が進んできたとは言え、汚濁が進んでいると言われております。しかし、最近の傾向は斐伊川や飯梨川などの大型河川よりもむしろ流入中小河川の汚濁が無視できない状況になっております。食管制度によりコメが公定価格であった頃は、圃場や農地の維持、再生産投資経費がコメ価格に反映されており、消費者の間接負担によって結果、山間農地の荒廃も防止されてきました。今日、競争原理の導入、自由化によってコメや農産物価格は大きく下落しましたが農地の荒廃は拡大する一方であり、山間地でその傾向は深刻です。毎度々々申し上げておりますが、山間地圃場は遊水機能が失われそれにも増して森林の荒廃、とりわけ放置人工林の増大によって雨とともに山林の土砂が河川に流れ込むため湖沼や海岸の土泥堆積が顕著であります。加えて、森林内に日光が入らないため灌木の繁茂が少なく、腐葉土が不足するため養分の極めて稀少な水が流入するため、生物を育む藻が生えません。宍道湖・中海は泥(ドベ)で埋まり、河川のマコモも稀有です。私たちが子供の頃は、家庭排水は、タナヘジで汲み、川のリンやチッソはマコモ刈りやドベ掻きによって理屈は分からなかったようですが除去していたようであります。今で言う循環型社会でありました。斐伊川や神戸川では流域の上下流の市町村同士が森林の整備協定を締結し、森林整備を行っておりますが、中小の河川ではほとんどそうした取り組みは行われてはおりません。この際、NPOや学校をはじめ町内会、自治会などの協力を求めて流入河川上流の農地や森林整備を行ってはいかがかと存じます。また、集落排水や農業廃水の終末部に休耕農地を利用したビオパークを設置するなど、自然を利用したチッソやリンの除去を進めててはと思いますがいかがでしょうか。
以前も申し上げましたが、宍道湖・中海は島根が誇る水場であります。この環境を保全して初めて多目的な利用が可能であります。茨城県には霞ヶ浦対策課が設置され、総合的な企画調整が行われております。やはり、本県も宍道湖・中海対策課の設置が必要と考えます。水質問題は環境生活部で環境省、干拓事業や利水、集排事業は農林水産部で農林水産省、治水と下水道は土木部で国土交通省、開発事業は政策企画局では総合的、一体的な取り組みは難しかろうと思います。ラムサールの登録問題もあります。この際、知事の所見をお尋ねし、私の質問を終わります。
│掲載日:2007年03月21日│
宍道湖・中海に流入する河川を含めた近年の水質状況の推移についてお答えいたします。まず、宍道湖の水質状況の推移についてでありますが、ここ数年を見ますと、年度により若干の変動はありますものの、代表的な汚濁指標であります化学的酸素要求量や全窒素については概ね横バイであり、また全燐については低下傾向にあります。中海についても変動はありますが全ての数値は低下傾向にあります。しかしながら、両湖ともに目標とする環境基準値の達成までには至っていないという状況であります。
次に、両湖への流入河川についてでありますが、両湖へは約50の河川が流入しており、このうち宍道湖では斐伊川や松江市内の都市河川など、中海では飯梨川など、あわせて20河川程度を対象に水質調査が実施されております。これらについて河川の代表的な汚濁指標である生物化学的酸素要求量の推移を見ますとかつて汚濁の著しかった松江市内の山居川や平田市の湯谷川などの都市部の河川は下水道等の整備に伴い、近年改善が見られております。また、その他の斐伊川や飯梨川等については横バイで、概ね良好な状況が維持されております。なお、未調査河川については、今後地域の方や市町村等の参加と協力を得ながら、水質状況の把握や水質浄化の取り組みが促進されるよう働きかけてまいりたいと考えております。
次に、宍道湖・中海流域の下水道の整備状況についてであります。「全県域下水道化推進本部」の取りまとめによりますと、推進本部が設置されました平成9年度末においては、流域全体の農業集落排水施設、合併浄化槽等を含めた下水道の普及率は約46%でありましたが、平成15年度末には31ポイント向上して約77%にまで達しております。
次に河川上流の農地についてであります。河川上流の農地整備を行うにあたっては、まず農地の権利者の同意を取る必要があり、また、その費用について国や県が助成を行うためには農業の生産性の向上などの観点から農地面積などの一定の要件を満たす必要があります。このような要件に該当しない農地整備についてその水質保全機能に着目して公的支援を行うことについては、費用対効果などについて慎重に検討すべきものと考えております。なお、農業生産活動において、過剰な化学肥料の投入が行われた場合には、窒素やリンなどの流出を招き、湖沼等公共水域の富栄養化を助長する一因となります。このため、施肥の適正化を図るための指針を策定し、普及活動を通じて農家に周知徹底を図っております。
次に、河川上流の森林整備についてであります。河川上流の森林は、水源涵養や県土保全などの公益機能を有しております。このため、森林の整備につきましては、その公益的機能の度合いに応じ、森林所有者等の負担を軽減する国、県の補助事業があります。特に、公益的機能が高く、その機能回復が必要な森林では所有者の了解を得て保安林指定を行い、国と県で費用を負担する治山事業による森林整備を実施しているところです。また、荒廃した里山林などの森林の再生・整備を図るため、地域住民やNPOなどを既存の補助事業の事業主体とすることが可能かどうか検討しております。さらに、荒廃した森林のうち主に水源涵養機能の発揮が求められる森林について県民参加の森づくりを行うための新税導入を検討しており、その中でも地域住民やNPO等の参画について検討してまいります。
宍道湖・中海は県民の貴重な財産であり、この優れた環境を、より良い姿で将来の世代へ引き継いでいくことが、私に課せられた使命のひとつであると考えております。そのため、これまでも湖沼水質保全特別措置法に基づく指定を受け、各種施策を体系的に組み合わせた湖沼水質保全計画を策定し、関係部局がお互いに連携しながら、積極的に推進してまいりました。今年度策定することとしている第4期の計画においては、これまで進めてきた下水道の整備等はもとより、山林、農地、市街地等の非特定汚染源負荷対策やNPOをはじめとする地域住民の参加の促進、あるいは環境教育の充実など、多様な施策の展開を図っていくことが必要と考えております。これらの事業推進にあたりましては、関係部局が連携しながら、庁内横断的な取り組みを進めることが実効性のある対策になるものと考えております。また、ラムサール条約登録に向けての取り組みは、国による鳥獣保護区特別保護地区への指定が必要なことから、鳥獣保護行政を所管する農林水産部長の指揮の下に関係課長会議を設置し、統一的に進めているところです。この推進を含め、宍道湖・中海の総合的な保全、利用に関する推進体制につきましては、全庁的な関係部局の連携が機能するよう、私といたしましても十分意を用いてまいりたいと考えております。