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介護保険制度が開始されて5年が経過いたしました。本県でも保険運営を単独市町村で行っているところや広域市町村で対応するなど様々な形態で事業が行われてきましたところですが、保険の目的である介護の社会化については概ねその目的を達成しているように感じております。しかしながら、保険給付額が年々10%も上昇傾向にあるなど、当初の見込みを大きく上回る状況で、介護サービスの高度化、要支援・要介護対象者の重度化をはじめ在宅サービスから施設介護サービスへのシフトなど抱える問題も少なくないと聞いております。先ず、介護保険制度の開始から現在までの給付額の推移について明らかにされたいと存じます。また、規制緩和によって民間事業者の事業参入が始まっております。県は保険圏域ごとに施設の整備状況についてガイドラインを定めていると聞いておりますが、現在の整備状況および公益法人以外による事業参入の状況について、利用料金を含めお尋ねいたします。
現在、介護事業者の拡大や事業所の大型化傾向が進行しております、1法人による多機能サービスの実現が顕著となりました。事業者の規模拡大や施設の充実は本来それ自体は歓迎すべき事項ではありますが、一方でケアマネージャーを自らが抱えることによる恣意的なケアプランの作成が懸念されるところであり、ケアプランの公平性、透明性の確保が大きな課題でありますが、増嵩傾向にある保険給付の審査とともにこうしたことを担保する第3者機関の設置がどうしても必要と考えます。しかし、現在の保険給付の水準は特別養護老人ホームや痴呆高齢者対応のグループホーム事業が極めて高い採算性があるのに対し、事業の根幹をなすケアプランの作成単価は安価でそうした機関が立ち行かないと言う状況にあります。私は、今般の制度検討に関し、是非こうした視点が必要であり、都会地と痴呆、周辺部の施設介護の給付水準の見直しをはじめ痴呆や寝たきりを防止するためには病後リハビリから予防リハビリの強化が不可欠であると思いますがご所見をお尋ねいたします。
│掲載日:2007年03月22日│
ケアプランの公平性、中立性の確保についてであります。ケアマネジメントは介護保険制度の重要な柱であり、この仕組みが利用者の立場に立って公正・中立に行われることが、適切なサービスを確保するためにも必要なことであります。このため、国の社会保障審議会介護保険部会において公平性・中立性を一層確保する観点から、ケアマネジメントのあり方について検討されているところであります。この中で、ケアマネージャーの独立性の確保、業務範囲の明確化、担当する人数の上限の見直し、報酬のアップといった意見が出されており、この夏には一定の方向が出されるものと伺っております。また、今年度から、「国保連合会介護給付適正化システム」が全国的に運用開始されたところであります。このシステムは、介護保険事業所が提供したサービス内容を客観的に分析することができるものであり、例えば、作成されたプランが画一的サービスになっていないか、ケアプランが同一法人の事業所のために作成されていないかといった情報を得られるものであります。従いまして、このシステムを活用することによりケアプランの公平・中立性など保険給付の内容の検証を的確に行うことができることとなります。今後はこのシステムを、圏が行う事業者の指導においても活かしてまいりたいと考えております。なお、第3者機関についてですが、国の介護保険部会において、ケアプランをそうした機関においてきちんと評価する仕組みが必要ではないかといった意見もあり、県としては、検討の推移を見守っているところであります。
次に予防リハビリの強化についてであります。平成14年度本県において実施した「介護サービスの有効性評価に関する調査研究」により、介護サービスの提供が本来制度が目指している要介護状態の軽減、悪化の防止に結びついていないことが明らかになりました。その要因としては、ケアプランの作成や介護サービスの提供にリハビリの視点が不足していたこと等が考えられ、今後のサービス提供にあたっては議員ご指摘のとおり予防リハビリの強化が重要になると考えております。県といたしましては、これまでの研究の成果を踏まえ、今年度においては、歩行機能、嚥下機能の悪化の防止に、より効果的なリハビリプログラムを作成するとともに、地域でのリハビリ実施体制の整備に取り組んでいくこととしております。今後もこうした成果も活かしながら、介護予防の視点に立ったケアプランの作成や介護サービスの提供が行われるよう支援してまいりたいと考えております。なお、国におきましても、介護予防・リハビリテーションの充実を目指し、利用者ごとに個別にプログラムを作成した上で、適切な介護予防サービスが提供されるようなシステムの構築が検討されています。
介護保険給付費の推移についてであります。本県の介護保険給付費は、介護保険制度がスタートした平成12年度は346億6千万円と推計されますが、平成13年度は398億6500万円、平成14年度は444億3100万円と毎年10%を超える伸びとなっております。平成15年度は480億円程度と対前年比8%程度の伸びと見込んでおります。
次に、介護保険施設の整備状況についてであります。介護保健施設には、特別養護老人ホーム、老人保健施設、介護療養型医療施設の3施設がありますが、その整備につきましては、各保険者において住民の幅広い意見を聞きながら、国の定める基準や施設の入所希望等を踏まえて、目標数などを定めた整備計画を策定しており、これに基づいて整備を進めているところでございます。3施設の整備状況は、平成19年度の目標8,122床に対し本年4月1日時点で7,358床が整備済となっております。このうち、入所希望が多い特別養護老人ホームについて見ますと、目標数4,505床に対し、4,085床が整備済で、圏域別には大田、邑智、隠岐の3圏域がすでに整備目標数を達成しております。
次に、民間事業者の参入状況についてであります。施設サービスの事業者は、市町村、社会福祉法人等に限られておりますが、居宅サービスにおいては株式会社・有限会社など民間事業者の参入が認められており、例えば痴呆性高齢者グループホームでは、46事業者のうち28事業者が民間事業者となっております。グループホームの利用料金につきましては、介護サービスの部分は全国一律の1割負担となっておりますが、それ以外に各施設ごとに設定する家賃や食事代が必要となっており、それらの合計は概ね53,000円から87,000円程度と聞いております。