県議会だより

Reports

平成16年9月定例議会一般質問(3)

新たな産業政策の展開について

島根県は産業別の就労人口と粗生産、所得をどのように誘導するつもりですか。
例えば、農業で言えば就労者、1人当たりの経営面積、粗生産額、収益はどう見込むのでしょうか。水産業、林業はどうなのか。私は、今までこうした視点が少し弱かったのではないかと思うのです。民間企業であれば、年間売り上げ、利益をいくらに設定し、それを実現するための生産体制、人員設備投資、資金計画など徹底した数値計画を立案し経営責任が明らかにされますが、行政はと言うと、例えば農業関係予算が1000億円も投入されているのに生産は700億円だとの指摘がされています。
ここ数年公共投資が減少し、関連業種とりわけ建設業の異業種進出が言われ、特に農業参入が期待されています。では、県内にいま、どのくらいの遊休農地があって、どの程度の生産が見込めるのでしょうか。それにはどの程度の投資と、マンパワーが必要でしょうか。具体的なものが数値となって出てくれば、民間はそろばんを弾きます。都会と田舎の一番大きな差違は民間設備投資の金額で、それは資金調達額の差です。公共投資には都会と田舎の差はありません。何故かというと、ファイナンスに対する保証が同じだからで、融資にかかる土地や証・債券、保証人による保証では都会と田舎で決定的な差があります。事業性、採算性を判断するファイナンシャルディレクター(目利き)の欠如によりプロジェクトファイナンスは非常に難しいのであり、これがPFIをも阻んでいるのです。
つまり、この問題を解決すれば田舎の投資が可能になるわけで、産業の創出の如何は一時の「補助」ではないことは自明です。産業向けのファイナンスは10億円、100億円の単位ですから信用保証協会などでの対応は無理ですから、金融機関との協調によるファンドの創設や民間からの投資を募る制度や初期投資融資に対する利子補給制度等を創設することによって民間投資を誘発することが何よりも大切だと思います。
小泉内閣は「民間にできることは民間で」と採算のとれない高速道路は無料化して行政資金で建設し、採算が見込めるそれは有料路線として株式会社で建設する方針を立てています。この先、ますます民間投資の促進策が拡大し、こうした投資の有無が地域の命脈を決すると存じます。折角、産・官・学・野が連携して新産業の創出を目指すのであれば、他地域で開発された技術でも積極的に受け入れる投資土壌を確立することこそ島根の行くべき道筋ではないでしょうか。そして、行政がやるべき役割、立地を可能にする社会資本の着実な整備や市場評価に必要な支援など地味ではあっても一つひとつの積み重ねこそが関係者の信頼を得、成果に結びつく道ではないでしょうか。

澄田知事答弁

投資土壌の醸成について

本県では公共投資が多くを占めることや民間資本の集積が薄いことなどから、民間投資が少ない状況にありますが、議員ご指摘のように、金融機関は融資にあたり、担保や保証に過度に依存しているため、企業にとって必要な資金調達ができないとの声があるのも事実であります。本来、企業の設備投資に対して、金融機関が融資を判断するにあたって最も重視することは、事業性や採算性であり、全国的に見ますと近年は、企業の信用力や担保価値に依存せず、プロジェクトそのものが産み出すキャッシュフローに着目した金融手法、いわゆるプロジェクトファイナンスが行われるようになってきております。さらに、大型の案件においては、政府系や大手を含めた金融機関が連携して融資を行うシンジケート・ローンが併用されております。本県におきましても、事例は少ないものの、浜田・江津のCATV事業など、地元金融機関によるこうしたファイナンスの実績があるとうかがっております。一方、行政が関与する大型融資としましては、地域総合整備財団の「ふるさと融資制度」があり、これまで山陰中央新報社新聞製作センターをはじめとして多くの実績があります。このように様々な制度がありますが、議員ご指摘の新しい投融資の方法につきましても、新たな民間投資促進の観点から、その必要性を含めて、今後研究すべき課題であると受け止めております。なお、県が取り組む新産業の創出にあたっては、今後、企業の投資マインドを醸成し、設備投資を促進することが重要であります。そのための資金調達については、現時点では、既存の制度を活用することで対応が可能ではないかと考えております。

澄田知事答弁

産業別の誘導について

近年、本県の産業別就業者数は、農林水産業、製造業、建設業で減少し、卸小売業がほぼ横ばいで推移したのに対し、サービス業は増加しております。また、県内総生産額についても、産業別に見ますと、就業者数の増減とほぼ同じ傾向にあります。現時点で試算したものはありませんが、今後とも、農林水産業や製造業、、建設業については、担い手の高齢化や労働集約的製造業の海外移転、さらには公共工事の削減傾向等により、このままでは就業者や総生産は減少傾向が続くものと見込まれます。一方、サービス業については、人口減少の変化やライフスタイルの多様化等を背景とした新たなサービス需要が期待できることから、就業者・総生産ともある程度は増加するものと見込んでおります。しかしながら、サービス業や卸小売り業の多くは、あくまで地域の経済活動の水準に連動して成長する産業であり、またこれまでの本県地域経済の基盤をなしていた公共事業をはじめとする公的需要は、縮小を余儀なくされております。こうした中にあって、今後の本県経済を活性化し、雇用の場を確保するためには、これから成長が見込まれる「産業用材」「環境・エネルギー」「情報通信」など県の戦略4分野の振興が何より重要であると考えております。また農林水産業においても、消費者ニーズに応えながら、輸出や健康関連分野との連携も視野に入れて、高付加価値化や生産性の向上等を図り、豊かな自然と環境の中で育まれた島根らしい農林水産物を安定的に供給して、足腰が強く自立した産業となっていくことが重要と考えております。私は、こうした考え方に立って、産業の振興を県政の最重要課題と位置づけ、県内産業の競争力強化に向けた施策を積極的に講ずるとともに、県自らが牽引役となって内外に競争力のある新たな産業創出を行うなど、本県産業の活性化に積極的に取り組んでまいります。
次に、農外企業参入と遊休農地の状況、生産の見込みなどについてであります。まず、農外企業参入についてでありますが、地域農業の担い手の一形態として、建設業など農外企業からの参入を促進し、農業分野に新たな可能性を広げることは、重要な視点であると認識しております。また、2000年の世界農業センサスによりますと、本県の耕作放棄地は約3100㌶で、県内の耕地面積の約10%を占めているところであります。これらすべての耕作放棄地に、農外企業が参入すると仮定し、稲作を中心とする先行事例等を参考に、1経営体あたりの経営面積を25㌶、就業者を4名として、単純に試算致しますと、125経営体の参入と500名の就業が行われるということになります。また、その際の生産額を試算いたしますと、総額で52億円、投資額は64億円余となります。
しかし、耕作放棄地は、小規模な土地が分散しているなど必ずしも積極的な参入を期待しにくい農地が多く、これらの数値は、あくまで一定の前提条件の下で試算したものであります。いずれにいたしましても、産業施策として農業振興を図っていく上で、具体的な取り組みにつながる担い手の育成数等の目標数値を設定し、その目標の下に、関係部局の知恵を結集して進めていくことが重要であると認識しております。

過去の投稿

園山繁の活動日誌