県議会だより

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平成16年9月定例議会一般質問(2)

教育力の強化について

子供達の基礎学力が低下しているのではないかと思いますがいかがでしょうか。県内学校の基礎学力の推移はいかが把握されているのでしょうか。「ゆとり教育」とやらで土曜日が休みになり、地域や交流、ボランティア学習といった事象の導入でいわゆる授業時間数が大幅に減少したことに伴い教育カリキュラムは簡素化されています。そのせいかどうか分かりませんが、高校卒業生の加減乗除の計算力や国語の理解力は小生が面接したり、職業能力開発協会の適性試験結果等から判断いたしますと目を覆いたくなるような実態です。
同じように、県内学校のいじめ、問題行動についてはいかがでしょうか。近頃の学校で行われているいじめや問題行動の実態を見ますと、私は、もはや親の教育力が子供達を立派に育てるだけの域に達していないのではなかろうかと思うのです。子供に朝ご飯を食べさせないのは序の口で、長幼の序や社会のルールを全く教えようとしないのです。核家族化で多くの家庭には社会習慣を説く年長者はなく、仏壇や神棚など超えてはならないもの(存在)もありません。一組の夫婦が育てる子供の数は1-2人で子育てのケーススタディは極めて少ない。両親が働く家庭が多く子供に向き合う時間は限定されています。子供は自分をさらけ出す相手(人によって友人や兄弟、家族ですが)がきわめて少ないために孤独になりがちで、結果として自分の居場所、周囲に異常なほど敏感になっています。ここが、大家族だった私たちと違うところで、子供達が自己主張をせずに群れる原因と思います。と同時に、私たちは暴力に対しては非常に敏感に対応し、糾弾しますが、人権侵害事象には驚くほど鈍感で、寛大です。事実、学校でも暴行や喫煙等での処分事例はありますが人権侵害による処分事例は極めて稀となっています。
そろそろ、核家族家庭で育った世代が親となり教員に採用される時代となりました。十分な教育力を持たない世代が子育てを実践する状況となっています。よく、幼児教育の必要性が言われますが、子供が1才なら親としても1才であり、ここでの子育て指導が肝要であり、そのためのハード施策ではないソフト施策としての幼保一元化が必要です。参観日の活用、親の教育力を高めるために、教育委員会、健康福祉部一体となった指導体制をつくることが現下の問題事象の解決に資するのではないかと思いますがいかがでしょうか。
大学を卒業する22才。社会年齢は0才。未熟です。失敗するのは当然です。つい、手を挙げると指弾され、萎縮します。こうした繰り返しがだんだんやる気を失わせ、追い込んでしまいます。良い教員に育てるためには地域のサポート体制や豊富なケーススタディを持つOBの助言や適応指導の実践経験が必要ではないでしょうか。

広沢教育長答弁

基礎学力について

基礎学力を測るような全国規模での調査は国が行っておりますが、各県ごとのデータは発表しないため、島根県と全国の小・中・高校生との基礎学力の比較は出来ません。本県では、平成16年1月に、県内の小学校6年生と中学校3年生の児童生徒から、約20%を抽出し、本県独自の去育家庭状況調査(学力テスト)を実施しました。集計・分析の結果を見ますと、学習指導要領に示された目標・内容の定着状況について、本県の児童生徒は概ね良好な状況でありましたが、記述式の回答を求める問題には無回答が見られるなどの課題も判明したところです。現在、最終まとめを行っているところであり、まもなく、その結果を公表するとともに、学習指導上の工夫・改善点も併せて示し、更なる向上を図りたいと考えております。また、高等学校については、各高校で実力テストや校内模試等を通じて生徒の学力を把握しており、県教育委員会としては、本県高校生の学力の推移について、詳細な分析は行っておりません。ただ、受験業者による模擬試験によると、普通高校1年生が国語・数学・英語の3教科を受験する試験では、ここ10年間全国平均点を下回るとともに、年々下降傾向にあるというデータがあり、この点については大変憂慮しているところであります。現在、高等学校では、生徒の学力向上を目的として土曜日に補習を行うなどの取り組みを行っております。県教育委員会としましても、中・高教員の相互乗り入れ授業の取り組みを全県に広めるとともに、学力向上に向け有効な方策を研究しているところであります。
次に、県内の学校におけるいじめや問題行動、不登校の実態についてであります。小・中・高等学校におけるいじめや問題行動、不登校の実態につきましては、年度毎、文部科学省調査を行っています。また、県教育委員会は、単独調査として、毎学期、実施しており、各学校にその結果や分析、有効な取り組み事例などを示すことで、指導の改善に活かすようにしています。暴力行為、万引き、喫煙など、学校内外における児童生徒の問題行動については、2700件を超えた平成9年度をピークに、その後増減を繰り返しながら推移し、平成15年度は2000件弱となっております。そのうち、中学生が例年60%弱を占めております。小学校では、万引き、火遊びが、中学校では喫煙、万引き、暴力行為が、高校では万引き、喫煙が突出して多くなっています。こうした状況への対応にあっては、家庭、地域社会との連携による学校の組織的な取り組みが不可欠であると考えています。
いじめについては、平成6年度の389件をピークに、以降、減少傾向にありましたが、平成15年度に167件と前年度に比して増加しています。いじめは、子供の健全な成長にとって、看過できない影響を及ぼす深刻な問題であるとともに、人の尊厳を奪う重大な問題であることからも、常日頃から、人権意識を高め、子供相互の豊かな人間関係を醸成するなど、いじめを起こさない学級経営を心がけ、学校全体として取り組んでいくことが重要であると考えています。不登校のここ10年間の推移は、小学校では、平成6年以降、平成14年まで、年度を追う毎に割合は増加していましたが、平成15年度には0.63%と、初めて減少に転じています。一方、中学校では平成15年度の3.2%まで、年度を追う毎に割合は増加しており、憂慮すべき状況となっています。「不登校は、特別な子供に起こる」という過去の認識から「不登校は、どの子にも起こり得る」との認識に定着しつつありますが、不登校児童生徒を出さないためにも、家庭との連絡を密にし、個々の子供の状況に応じたきめ細かな対応や適切な支援をしていくことが重要であると考えています。

広沢教育長答弁

親や教員の教育力の強化について

親の教育力を高めるための指導体制についてであります。少子化や核家族化が進展する中で、家庭の教育力の低下が懸念されており、「しまね教育ビジョン21」においても、保護者がお互いに家庭教育について学習できる場を拡充することの必要性を指摘しております。
現在、幼稚園や保育所においては、保育への参加機会への拡大等により、保護者や地域の人々に幼児教育を理解してもらうとともに保護者と教師が学び合う研修の場を設けたり、自分の子供についての日常的な悩みを気軽に相談できる子育て相談、乳幼児を持つ保護者等に対する育児講座など、子育て支援活動等を通して親の教育力を高める取り組みがなされているところであります。とりわけ、加茂町や宍道町においては、文部科学省の委託事業である「新しい幼児教育の在り方に関する調査研究」等に取り組みその中で幼稚園と保育所が連携した教育課程の編成や指導の在り方、交流保育の在り方等について、保護者とともに研究を進めております。
今後、教育委員会と健康福祉部が連携しながら、このような取り組みを支援するとともに、子供の成長に応じて、親も一緒に学んでいけるような環境整備について、さらに研究・検討を進める考えであります。
次に、教員の育成についてであります。小・中・高校の各学校においては、「開かれた学校づくり」の推進を積極的に進めており、「校内教職員研修」の講師を依頼するなど、経験豊富な地域の方々の力を学校教育の場に活用するよう努めております。また、不登校・いじめ問題等の教育上の課題に適切に対応した学校教育を創造するため、企業や社会福祉施設等の機関において、企業経営や組織マネージメントを学び、これを通じて得た、ものの見方や考え方を学校教育の場に還元することとし、教職員の長期社会体験研修等を行っているところであります。議員ご指摘のとおり、今後とも地域社会や社会に学ぶ姿勢を継続し、高い人権意識と見識を備えた教師になるよう、研鑽を積ませていく所存であり、適応指導教室等における研修につきましては、今後前向きに研究してまいりたいと考えております。

中村教育委員長答弁

教育力の強化について

まず、親の教育力についてであります。子供の発達段階に応じて親から子へ、例えば、音楽に親しみ、絵本を手に読み聞かせることによって語りかけること、子供とともに夢を語ること等が大切でありますし、小学生の頃から本や新聞を読む習慣を自然に身につけることにより、活字を覚え、基礎的な学習能力の向上にもつながると思います。こうしたことからも、学校のみならず、家庭、地域社会、医療施設等と連携して教育に取り組むことが必要であり、本年3月に策定した「しまね教育ビジョン21」の前文に「学校、家庭、地域社会が緊密に連携して教育を推進すること」を掲げたところであります。私たちのような戦争の前後に生まれ育った世代の親と、現在の親とでは、時代背景も異なり、価値観や愛情表現について大きく異なってきていると感じておりますが、子供にとって最大の力は、親の愛情であります。また、議員が危惧しておられます親の教育力、家庭の教育力は大切であり、子育てで悩まれることも多いと思いますが、自分の心を見失わずに、頑張ってほしいと思います。
次に、児童・生徒のいじめ等、人権侵害にあたる行為への対応についてであります。本県においても、いじめ等、児童・生徒の人権侵害にあたる行為については、人権教育等、その未然防止のための対策を進めるとともに、生じたときは、決してないがしろにはせず、毅然とした姿勢で問題解決に当たることとしております。なお、高等学校において、人権侵害に当たる行為が生じたときには、暴力行為といった問題行動と同様に、構内規定に基づき、教育指導の一環として懲戒処分を実施しながら解決を図っているところであります。
3点目の子育て指導と幼保一元化についてであります。現在、中央教育審議会において、義務教育改革の一環として、幼児教育の観点と次世代育成支援の観点に立ち、教育と保育を一体的に実施するための新たなサービス提供の枠組みの制度化について、検討されており、また、文部科学省において「新しい幼児教育の在り方に関する調査研究」等が進められているところであります。本県においても、先ほど触れました教育ビジョンの施策推進体制づくりの中で、幼児教育から子供の発育段階に応じた教育の提供と、中等教育まで一貫した指導の推進により教育力を向上させていくことが重要であるとしております。国における検討状況・動向にも注目しておりますが、私といたしましては、いじめや言葉の暴力等、人権を侵害する行為をなくしていくため、まず、親、教職員が穏やかな表情で幼児に接することを望んでおり、また、時には親として毅然とした手本を示すことも大切であると思います。そうした中で、幼児の頃から、優しい言葉を使うことや人に対する思いやりの心を育むことができると考えております。また、教育委員会だけでなく幅広く指導体制を整備することについても検討する必要があると感じております。いずれにいたしましても、教育に携わる教職員の資質・能力の向上を図ることはもとより、学校、家庭、地域社会が一層連携して教育に取り組むことにより、子供たちが安全でのびのびと学習でき、逞しく成長していくことを願っております。

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