県議会だより

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平成16年9月定例議会一般質問(1)

歳出削減と新総合計画の整合について

質問に入ります前に、最近とみに残念に感じた事項を申し上げ、少しお考えいただきたいと思います。
8月14日未明から始まったアテネオリンピックは柔道、水泳、体操、レスリングなどかつて日本のお家芸とされていた種目の復活によって大きな感動を与えました。女子マラソンの2連覇や室伏選手のハンマー投げももちろん素晴らしい成果ですが、陸上男子の400㍍と1600㍍リレーの4位入賞は「やればできる」との大きな感動と「もう少し」との次への期待、希望を与えた象徴的なことでした。 寝不足の朦朧としたなかで「日の丸」に頭を垂れ「君が代」に涙する姿に言葉では言い尽くせない歓喜と感動を覚えました。島根県関係では野球で和田選手がミュンヘンの女子バレーボール塩川美智子選手の銀メダル以来32年ぶりの銅メダルを獲得し、陸上男子400㍍リレーで土江選手がロスアンゼルス吉岡隆徳選手以来68年ぶりの4位入賞を果たし、女子ホッケーでも山本選手が史上初めて8位入賞するなど素晴らしい成果を挙げました。
しかし、いくら知事が病気療養中と言え、こうした成果に対して島根県からのコメントはなく、今期定例会でもオリンピックに対する知事の所感はありませんでした。私は、「島根県も久しぶりにメダルを取った選手が出ましたね」と言うと、ほとんどの人が「誰が」と返されるのが悔しくてなりませんでした。
もちろん、今年の夏に島根県を主会場に開催された中国04総体は1人1役など県内高校生の参加で盛り上がったことは高く評価すべきですが、全てを自画自賛するほどのものであったかどうか、とりわけ、競技成績は優勝が今春中国からやってきた留学生1人で、準優勝は常連のホッケー、ベスト4も陸上、なぎなた、剣道の3競技4種目だけで、ベスト8,ベスト16も昨年に比較して大きく増えたとは言い難いもので、一部を除いて開催県として満足すべき成果であったかどうか、もっと冷静に総括すべきではないでしょうか。
島根県の価値判断の基準はよそ地域とは違うのでしょうか。そうでなければ、評価の仕方がおかしいと言わざるを得ないのです。オリンピックの終了後、新聞やテレビは毎日のようにメダリストや成績優秀者達の凱旋の模様を伝えましたが、島根県発の記事や映像はほとんどと言っていいほどありませんでした。これでは県民の意気は揚がりません。私は昨年この場で職員採用に例を挙げて「インターハイやインカレで成果を残したものや音楽や美術の国際コンクールで入賞したものを評価する制度を作るべき。頑張っている島根の出身者を島根の県民はちゃんと見ているんだよ、と言う姿勢がなければ人材は流出するばかり」との意見を申し上げ、答弁をいただきましたが馬の耳に念仏だったのでしょうか、本当に残念です。
職員さんに「何のために」という目的意識がなくなったのではと感じさせる事象が続発しています。
にほんばし島根館が昨年秋にオープンしました。三越本店の向かい側という地の利もあって連日賑わいを見せております。物産と食堂に加え島根の情報コーナーが設けられ、首都圏で「しまねを体感できる施設」として島根の情報発信拠点の役割を担っております。一つの事例を申し上げますと、ここで宍道湖産の活きたヤマトシジミと産地表示のない加工業者名だけを記載したシジミの佃煮が売られております。島根県内で加工されているシジミの佃煮は永年消費者の支持を受けている人気商品であり、そのほとんどが量産と販売単価を抑えるため、原料となるシジミの確保を国内はもとより、海外にまで求めていることは周知の事実であります。しかし、「しまねを体感する施設」に「売れるから」と言って、県外食材を使用した商品を、十分な説明もしないままで並べることはどうでしょうか。「『しじみ』は宍道湖。『宍道湖』はしまね。だから慎重に」との指摘をいたしましたが「県外産食材が原料でも加工が島根なら問題なし。島根の食品産業の育成のためには必要」「日本酒、蒲鉾、水産加工品などほとんど県外産材料だから県内産にこだわれば並べる商品はない」と顧慮されませんでした。
今年7月「土用しじみ」の幟が立てられ、特選の宍道湖産ヤマトシジミが店頭で販売されている日に、店内で買い求めたシジミの佃煮には食材の産地表示はなくレジで問うと「宍道湖産です」と応えられました。にほんばし島根館の状況が報告される際には必ず物産品と食堂の売り上げと入館者数の推移が出されます。でも、にほんばし島根館の一番大きな役割は「販売額や入館者数」でない「しまねを体感していただくこと」であり、さすれば『数字に表れない評価』こそ大事であるはずです。
昨日、島根館の物産販売を委託されている団体から県外産シジミを使用した加工品の販売を斡旋を含めて全て中止するとの通告が加工業者にあったとのことであります。まさに、臭いものに蓋をする姿勢そのもので、本末転倒です。これから野焼き蒲鉾や出雲そば、加工わかめなど県外材料を使用した加工品の販売を全て中止するのでしょうか。漆器や木工芸品も同じこと。私たちが求めていることは食品の安全、安心が求められ、農産物ではトレーサビリティの徹底が市場評価の基本となるなかで、東京で、しかも島根県の施設で消費者の誤解を受けかねない状況の是正であり、今回のシジミは一つの例に過ぎません。
あくまで正直に、島根県の商品がよその品物とどこが違うのか、どこに特徴があるのかを消費者の皆さんにご理解いただくため徹底して説明、PRをすることで、その絶好の場所が島根館だということです。消費者からの指摘に答えるのではなく、先んじてメーカーの皆さんが一生懸命作った商品を消費者に高い評価を得るために必要な手だてを尽くすこと。それが「島根」のブランドを確立するためにいま、県としてやらなければならないことでしょうか。
数日前、全国紙に島根県出身で、ある一部上場企業の役員経験者で科学技術関係団体役員の死亡記事が掲載されていました。たまたま、私の身内でもありましたので念のため、秘書課に連絡をしておきました。 通夜の席には財界トップの顔や生前の親交を結んだ人たちの弔問が続く中に島根県関係者の姿はありませんでした。翌朝、東京事務所に「どうしたんですか」と問うと、「秘書課から何の指示もあっておりません」とあり、秘書課からは「弔電が打ってあります」と『何様のつもりか』と言わんばかりの応対がありました。
「新産業の創出」を県政施策の第一に掲げ、首都圏・大都市圏で先端産業やメーカーの誘致にあたらんといくらアドバイザーやデスクを設置したところで「そうきで水を漉す」ようなものではないでしょうか。柳生家の家訓に「小才は縁に気づかず。中才は縁を活かさず。大才は袖擦り合う縁まで活かす。」とありますが、もう少し「何のため」という目的意識を職員にたたき込まないと島根県は沈没してしまいます。
一体、この執行部は議会での知事の答弁や自らの見解に対してどの程度「重み」を感じているのでしょうか。この2月定例会での職員採用凍結方針はわずか3ヶ月で撤回されました。しかも、その発表は議会の場ではなく記者会見でのことでした。方針変更の内容はおおかたの県民世論に従ったものであり、議員の意向に叶ったものではありますが知事が受けた政治的ダメージは大きく、県政に対する県民の信頼を低下させたことは紛れもありません。今後こうした愚を繰り返さないためにもどうか物事に対する戦略と戦術言い換えれば目的と手段・方法についてつねに責任の所在をはっきりさせていただきたいと思います。

8月6日の特別委員会に島根県総合計画における「優先施策」の選定について、というペーパーが配布されました。近く公共事業についても「優先分野」の選定もされたと聞いております。今議会で、すでに同僚議員から内容に関する質疑があっておりますが、まず、いま何故の総合計画なのでしょうか。いま、島根県は、「どうすれば財政再建団体に転落を免れるか。」をなりふり構わず、遮二無二押し進めようとしています。社会基盤整備費いわゆる公共投資も半減させ、施策の選択と集中を徹底するとされました。今年の施政方針では「産業の創出」「売れる米づくり」「観光トップブランドの推進」「少子化、子育て対策」が重点施策と承りました。私はこれを「新産業の創出・振興」「1次産業の構造転換」「交流人口の拡大」「人材の育成」と読み替えさせていただき、さすが時宜を得たものと存じておりました。当然、当面は、この方針に沿って施策の展開が図られるものと思っておりました。
今回、せっかくの総合計画とのことですが、それを実現するための財政計画、財源措置は不可能とされており、立案してもそのほとんどは事実上凍結されてしまいます。
ならば、知事が任期にある3年間に徹底推進する事項について、特化する施策について明らかにされることが責任ある姿勢ではないでしょうか。今のままで、総合計画の立案が進んでいくと、来年度以降「優先施策」とされなかった施策の予算を削減するための方便になってしまうのではないかと危惧するのですが、いかがでしょうか。
1-70までの施策を掲げたり、グループ分けしたり事務的に相対評価や客観評価されることはご苦労なことですが、例えば、優先施策を「新産業の創出」とすればそれを実現させるためには高速幹線を含む道路網や情報通信基盤の整備は必要条件であり、「観光・交流ビジネスの拡大」とすればそれを支える交流拠点となる空港や港湾の整備は不可欠で、消費者視点での販売戦略の実現が必要です。「人材の育成」とすれば学校教育をはじめとする生涯学習の振興施策の充実は自明です。
今、県民の不安は「県の財政が大変で、何もどうもならないのではないか」と言うことです。平田市の海岸縁の集落には、未だに軽自動車でさえ通行が困難なところがあります。介護保険の対象者であってもそのサービスを利用することも叶わない地域もあるのです。財政的な理由から、こうした地域に光をあてることがさらに先延ばしになるとの懸念が合併が決断された要因の一つですが、広域自治体として、県がその構成市町村に対して平準的なサービスを保証できなければその能力を疑問視され、求心力はなくなってしまうでしょう。
今回の「優先施策」について政策企画監室の担当者の説明を伺ったところでは、今回発表された事項はすでに知事の政策判断を経て発表された島根県の方針である、とのことであり、今後これをベースにして進むとのことであります。島根県の向こう10年の方向を決めるのに議会でろくに議論もしないまま発表され、しかもそれは議決事項でないから報告するにとどめるというのは明らかに何かおかしいのではないでしょうか。議会・議員は任期4年の法定代表であり、その意見は世論調査やパブリックコメントの比ではありません。
長期計画を立案するのであれば、それを議会の議決事項とし、執行権者、議会がともに責任を負うべき事項であると思います。現在のようなありかたは施政方針と同程度の位置づけで、その内容には拘束力も責任もなく、実施の段階では予算の個別事項毎に優劣を判断することとなり、屁の突っ張りにもならんと思うのですがいかがでしょうか。

澄田知事答弁

新しい総合計画の策定についてであります。本県では、平成6年に「島根県長期計画」を策定しましたが、この間日本の社会情勢は大きく変化し、これまでの制度や仕組みを継続することが困難になっています。特に、国・地方ともに莫大な借金を抱え、これまでの網羅的な施策の実施が困難になりました。このため、長期・中期計画で築いてきた各種の基盤や施策の成果と多彩な地域資源を活かし、本県の独自性・魅力を高め、自立的・持続的発展に向けた取り組みの、新しい指針として、総合計画の基本構想編を策定したところです。また、財政再建団体への転落を回避するには、徹底した行政コストの削減や事務事業の見直し、様々な歳入の確保などにより、徹底して財源を捻出することが必要であります。その具体的な内容については、まもなく策定します「中期財政改革基本方針」で明らかにすることにしています。なお、総合計画実施計画編は、この基本方針と整合性をとったものを策定することにしています。
次に今後、徹底的に推進する事項についてであります。このたび、選定した優先施策は、本県が自立的、持続的発展を確実にするため、平成19年度までの期間に、特に力を入れて取り組まなければ施策であると考えています。なお、平成16年度当初予算で定めた重点プロジェクト事業の大部分が優先施策に含まれています。
次に優先施策にしなかった施策の予算削減の懸念についてであります。総合計画に掲げた70本の施策は、すべて必要なものと考えておりますが、大幅な事業費削減が避けられない財政状況の中で、選択と集中を徹底せざるを得ません。優先施策の中身についても、効果的な事業のあり方について精査することにしており、それ以外の施策は、より厳しい見直しが避けられないと考えています。
次に、県の市町村に対する平準的なサービス保証についてであります。県と市町村とは、対等で協力する関係にあり、市町村が行うサービスの平準化を保証する立場には制度上なっておりません。しかし、県内のどこでも県民の皆様が良質なサービスを受けられることが大切でありますので、県と市町村が役割分担を明確にし、連携して総合計画の目標実現に取り組む考えであります。
次に、総合計画と議会の議決についてであります。県が策定する総合計画については、市町村と異なり、議会の議決事項としての法律上の定めがありません。仮に、総合計画を議会の議決事項とするためには、新たな条例の制定が必要となりますが、条例の制定については、県民参画のあり方、議会と執行部のあり方なども含め、今後、幅広い観点から検討すべきものと考えています。いずれにせよ、総合計画の目標を達成するには、県議会をはじめ県民の皆様のご理解とご協力が不可欠でありますので、職員一丸となって努力していきます。

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