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3点目は京都議定書の発効に伴う取り組みについてであります。京都議定書の発効に伴い、日本は2008年から2012年の5年間で約14%の二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスを削減しなければなりません。京都議定書の規定する1990年を基準年とする温室効果ガスは、自家用自動車や家庭用電化製品の増加、サービス業など業務用床面積の拡大により、削減はおろか依然増加傾向にあり、基準年の数値から6%の減とする数値の乖離は増大しています。
地球温暖化の原因は温室効果ガスの排出によると考えられ、このまま推移すれば100年後には平均気温が3-5.8℃上昇し、平均海面水位が最大で88cm上昇するとの予測がされていることから、放置できない問題ですが、議定書からのアメリカの離脱をはじめ、わが国でもまだまだ国民的な関心は低いのが現状です。私は、温室効果ガスの削減強化、法的規制により、今後「エネルギーの地域取引」や「排出ペナルティ」という視点が出てくると考えています。そうした意味では、やっと田舎に光があたる時代が来たと思います。つまり、省エネの推進や公共交通機関の利用促進などエネルギー消費削減という限定的な都市型の対策には限界があり、エネルギー転換、森林整備など生産的な取り組みが可能な地域に役割を移転・委託する必要があります。
特に、京都議定書で規定した年限が差し迫っていることから、取り組みの準備が整っている地域に重点的な国家プロジェクトが投入される可能性は極めて高いのですが、島根県は行政、住民ともにいぜん暢気なものです。仄聞するところでは、県においても地球温暖化対策推進計画を策定中とのことですが、進捗状況と主たる内容、取り組みの重点事項についてお尋ねいたします。
また、合併論議等によりなかなか進捗していないように見受けられますが、県内市町村でも同様の計画を策定し、取り組みの強化を図る必要があると思いますが、どのような展開になっておりますでしょうか。具体的な実施計画等の策定が完了し、着手している市町村の取り組みなどがあれば参考までにお知らせ下さい。
エネルギー転換については、石油・石炭など火力発電から原子力へのシフトが代表的ですが、国では2002年12月バイオマスニッポン総合戦略推進会議を設置し、バイオマス利活用により原油換算で年間輸入量の15%にあたる3,500万キロリットルのエネルギー転換を図るとされていますが、バイオマス利活用の県内の取り組み状況はいかがでしょうか。また、同様に風力発電についてはどのような状況ですかお尋ねします。
平田市においては食用廃油(使用済み天ぷら油)の自動車用燃料代替活用をはじめ、バイオマスエネルギー関連で環境省の支援、風力発電についてはNEDOの支援により、それぞれ民間企業が主体となった取り組みが具体化しております。平田市の東部工業団地ではライト工業や岩谷産業を中心としたグループが産学協同でバイオマスエネルギーの商業開発のためのプラント建設を開始したところであり、風力発電については島根半島西部地域の十六島湾周辺に本州最大規模となる78,000kwの施設の建設計画が発表され、すでに法的規制をクリアするための準備に入ったと聞いており、平成20年に運転開始するとのことであります。施設の建設には許認可など複雑・多岐にわたる行政関係手続きが必要であり、そのコストもまた膨大であります。
一連の取り組みによって島根県の取り組みは大きく進化すると思いますが、県の支援、関与体制は極めて弱いように見受けられますが、どのような下知がされておりますか。また、平田市の取り組みによる温室効果ガス削減効果はどの程度と試算できますでしょうか。今後、事業者や地域が意欲を持って取り組めるような支援、取り組みはどのように進める考えですか。
燃料電池の開発が盛んになっており、自動車用や家庭用など小型の燃料電池については一部実用化されつつあります。エネルギー転換の先進地であるデンマークでは、すでに水素を燃料とした公営バスの営業運転が開始されているとのことであります。私は中学校のとき、理科の実験で水の電気分解をやると水素と酸素が生成することを知りました。素人考えですが、バイオマスや風力発電によって生産した電力によって水を電気分解し、生成した水素を圧縮充填することによってエネルギーの転換材とすれば環境への負荷は大きく低下すると思います。ただ、今後一般にどれだけの期間で普及するかは、コスト面などいろいろな課題がありわかりませんが、間違いなく言えることは、今後急速にエネルギー転換が進むということであり、なかでも水素はいちばん有力な素材の1つであり、先駆的な取り組みを進める地域や事業体に対する県の関与をもっと積極的に深めるべきではないでしょうか。
また、エネルギー転換PRの観点からも水素充填の自動車導入等を考えてみてはと思いますが、知事のご見解を求めたいと存じます。
とかく県は「声がかからなかった」「相談がなかった」と言って「知らぬ顔の官兵衛さん」を決め込みがちですが、財団をはじめや県機関についても県内市町村での取り組みについては積極席な関与、関心を図って「何か出来ることはないか」「一緒にやらせてほしい」といった姿勢を示すべきではないでしょうか。そうでなくては、遅れている温室効果ガスの削減目標の達成は不可能であり、エネルギー取引による千載一遇の県勢振興のチャンスを逃してしまうと思います。是非、部局を超えた全庁一丸となった取り組みの深化を期待します。
(再質問)
(エネルギー転換に対する県の積極関与について)
本稿で申し上げたとおりエネルギー転換はこれからの地域振興のカギとなるものであります。全国で有数の森林面積を持つ本県の木質系バイオマス利活用、平田市で行われた風向風力調査によって島根半島地域は本州屈指の風力発電の適地とされ、これらの資源を活かした取り組みを拡大させることはきわめて重要な県政の課題と思います。
しかしながら、先程来の答弁を聞いておりますと、いたって他所事で、全庁的な取り組みにはほど遠く、まだまた、政策的な位置づけは低いと感じました。 平田市での取り組みは3-4年前からはじめてやっとスタートラインについたばかりで、実際に稼働するのは2-3年先になります。京都議定書による法的拘束力を持った取り組みは2008-2012年の期限付きで、未達成となれば大きなペナルティが予想されるばかりか、自動車の使用規制や産業用電力の削減、規制など市民生活に重大な影響を及ぼすことが予想されます。
アリとキリギリスの寓話がありますが、いままだ県の取り組みは温いものです。全庁的な取り組みがあれば、たとえば、平田市で民間事業者の40基の風力発電の取り組みに対して、半島部の森林整備をリンクさせ、工事用・管理用道路を林道敷設によって側面支援するとかは、既存施策の活用や、部局を超えた取り組みによって可能です。事業への行政支援が受けられるということになれば、県内各地で様々な取り組みが始まると思います。県の財政が厳しいときだからこそ、官、民などの事業主体に固執することなく、弾力的な取り組みがほしいと思いますし、温暖化対策については主管する組織が必要だと思いますが、改めて知事のご所見をお伺いいたしたいと存じます。
(答弁)
澄田知事
島根県の80%を占める森林資源を活用した木質系バイオマスや風力など化石燃料から持続・再生可能な資源を活用した取り組みは県政の重要な課題の一つです。私は1992年ブラジル・リオデジャネイロで開催された地球環境サミットに出席しましたが、島根県は坪田愛華さんの「地球のひみつ」のミュージカル上演など地球環境保護に対する啓発を積極的に実施してきました。2月16日から京都議定書が発効し、温室効果ガス削減について法的拘束力が加わりましたが、平田市の先駆的な取り組みは県内では、傑出したものであり、隠岐や浜田、多伎などで設置している風力発電の施設が1-2基であるのに対し、先般、平田市長や実施主体となる事業者の代表の皆さんから説明を受けた日本国内有数の規模となる30-40基もの風力発電施設の建設計画は画期的であります。バイオマス利活用の取り組みや水素プロジェクトなど一連の取り組みに対しても注目しております。今後、地球温暖化対策についての取り組みについては、県としても部局を超えた取り組みで積極的に支援したいと考えています。
│掲載日:2007年03月30日│
バイオマスや風力を利活用したエネルギー開発などの市町村の取り組みに対する県の関与についてお答えします。まず、議員に産業振興面における県の姿勢が消極的との印象を与えましたことについては申し訳なく思っております。県といたしましては、例えば、平田市で進められている水素製造事業に関しましては、昨年5月、平田市からの要望を受け、その趣旨に添って、「出雲國水素社会プロジェクト研究会」に地域振興部、環境生活部、農林水産部とともに商工労働部からは次長を協力会員として参画させております。また、平田市東部工業団地に計画されているプラント建設は、平田市が環境省の「環境と経済の好循環の町モデル事業」を導入して実施するものであり、その採択にあたって、平田市と連携し、国等への働きかけを行ってきたところであります。ご指摘にありましたとおり、温室効果ガスの削減は地球規模の課題であり、バイオマス、風力、太陽光などの再生可能エネルギーの利活用は、その解決策として期待される分野であり、また、事業化が進めば大きなビジネスチャンスになるものと考えております。したがいまして、今後ともこうしたエネルギー開発の推移に引き続き関心を持ち、国内外における最新の情報収集に努め、市町村における取り組みに対して、県としてできることは積極的に対応してまいりたいと考えております。
新エネルギー関係についてお答えします。まず、新エネルギーとしてのバイオマスエネルギーの利用状況であります。現在、大きな取り組みはありませんが、承知しているところでは、①県の宍道湖流域下水道東部浄化センターにおける排出汚泥から発生するメタンガスのボイラー燃料としての利用②大田市の民間福祉施設でのチップボイラーによる急騰や床暖房③中山間地域研究センターにおけるペレットストーブによる暖房など、主に熱源としての利用が行われています。なお、木質バイオマスについて、県では今年度、バイオマスエネルギープランを策定し、豊かな木質資源を有効活用するため、取り組みの強化を図ることとしております。また、風力発電施設については、①県企業局が隠岐の大峯山に設置した風力発電施設が3基、出力1800kw。②多伎町に2基出力1700kw。③安来市に1基600kwと、④浜田市に1基1500kwが、それぞれ稼働しております。
次に、平田市の風力発電の取り組みに係る温室効果ガス削減効果を県で試算いたしますと、総出力78,000Kwの発電設備で年間せつびりようりつ25%、CO2排出原単位が電力量1Kwhあたり0.6kgと想定した場合の二酸化炭素削減効果は約102,000tとなります。これは現在、改定作業を進めている「島根県地球温暖化対策推進計画」において設定する二酸化炭素の目標削減量805,000tの12.7%にあたる数値であります。
次に、県の支援、取り組みについてであります。平田市で計画されている大規模な風力発電の建設については、実績のある大手企業が、採算性を踏まえて計画されていると承知しており、新エネルギー導入促進の観点から、大いに注目しています。また、支援、関与についてでありますが、今回の風力発電施設の建設計画については、森林法、景観条例、公害関係諸法令など、関係する法令が多伎にわたる可能性があり、また、大規模な開発行為に該当するため、島根県土地利用対策要綱に基づく開発協議の対象になる事業と考えています。この協議にあたっては、個別法の所管部局が一堂に会し、調整を行うことによってそれぞれの個別法諸手続が適正かつ円滑に行われるよう対応したいと考えております。現在、事業の具体的な計画については詳細を聞いていない段階にありますので、今後事業者からの情報をいただくなかで、地域経済への雄はつこうかも考慮しながら、県として支援できるものがあれば検討していきたいと考えております。
県の地球温暖化対策推進計画の改定についてお答えをいたします。本県の地球温暖化対策は、平成12年に策定しました島根県地球温暖化対策推進計画に基づき推進してまいりましたが、国内外の状況の変化や現計画の目標の達成状況を踏まえ、一昨年から学識経験者などによる計画策定委員会において、改定作業を進めているところであります。既に、パブリックコメントも行い、今月中には県として計画を決定することとしています。改定計画においては、県民、事業者、行政の各主体が、目標の宣言や実績の公表を行うなど、連携しながら改定計画の推進と進行管理を行う体制を整備するほか、環境教育・学習の充実、森林の整備・保全、利用の促進、新エネルギーの活用を重点施策として取り組み、「脱温暖化社会」の実現を目指してまいりたいと考えております。
次に、市町村の地球温暖化対策の取り組み状況についてであります。市町村につきましても、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき、県と同様に地域内の推進方策を定める「地域推進計画」と、自らの取り組みを定める「実行計画」を策定することとされていますが、昨年9月現在で「地域推進計画」を策定している市町村はなく、「実行計画」の策定は7市町であります。一方、省資源の観点から、省エネルギービジョンは6市町村、新エネルギービジョンは22市町村で立てられております。これらの計画に基づき、市町村では、例えば松江市においては、市内のすべての学校で省エネ活動が取り組まれたり、出雲市では独自の環境ISO制度が創設されるなど、地域レベルでの様々な普及啓発活動が取り組まれております。また、平田市で最新の技術を活用したバイオマスエネルギーの活用が、本年度から環境省の「環境と経済の好循環のまちモデル事業」の採択を受けて実施されているほか、風力発電や太陽光発電など、各地で新エネルギーの導入が温暖化対策のひとつとして展開されています。いずれにいたしましても、地球温暖化対策を推進していくためには、住民生活に密着した市町村レベルの取り組みの強化が重要であり、県としてもその取り組みが促進されるよう働きかけてまいります。
平田市において計画されている風力発電事業については、私も先般、平田市および風力発電事業会社からその概要をお聞きしたところです。 また、平田市においては、水素製造とこれを公共交通機関に利用するプロジェクトが併せて進められると聞いておりますが、このクリーンエネルギー開発事業は、大変先進的な取り組みであり、県としても注目しており、今後、協力できることがあれば検討してまいりたいと考えております。
水素充填の自動車についてでありますが、水素は、その利用段階では二酸化炭素を発生しないエネルギー媒体であり、地球温暖化防止に役立つこと、また、原理的には非化石燃料からも製造が可能であり、エネルギーの安定供給という観点から、優れた素材であると言われております。
また、実用化にあたっては、水素燃料電池の大幅なコストダウンや長寿命化、水素を供給するための施設の整備や、水素燃料電池自動車を導入することを想定した規制の体系の構築など様々な課題があると言われております。こうしたことから、水素充填自動車の導入につきましては、一層のコストダウンに向けた技術開発など実用化の進展を注視してまいりたいと考えております。