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私は島根半島部の十六島湾岸に生まれ、 現在も住んでおります。 この地方は昭和初年から40年代後半まで天然石膏の産出と底引き漁業や定置や地曳の海面漁業をはじめ一本釣や採貝などの漁業により潤い、 活気があり、 また、 キヰの浜と呼ばれた海岸は遠浅で水清く、 明治時代後期には県内屈指の海水浴場が開設されるなど多くの往来もありました。 昭和41年、 全国で最後に指定された中海新産業都市の中核、 拠点港として河下港の整備計画が発表され、 海岸の埋め立てが始まりました。 海水浴場は工業団地に姿を変え、 同時に十六島漁港も大型漁船に対応する避難港として整備され、 湾岸の状況は大きく変わりました。 しかし、 団地の造成が終わった47年、 ニクソンショックやオイルショックと言われる経済変動を理由に、 河下港の整備はストップしました。 約10㌶の埋め立て地は利用されることもなく、 草ぼうぼうの状況が続きました。
昭和57年、 プロパンガスの大手である岩谷産業がガスの供給基地の建設を計画しているとの情報があり、 島根県と平田市の熱心な誘致により、 河下の工業団地には始めての企業が進出しました。 しかし、 湾口が北西に向いている河下港の冬季の波浪は大きな障害で、 事業者からは度重なる善処方の申し入れが続きました。
何度となく、 河下港の整備検討や構想が出されては消えましたが、 やっと、 平成3年マリンタウンプロジェクトを契機に河下港の整備が俎上に上り、 平成11年特定地域振興重要港湾の指定を受け、 境港、 浜田港を補完する島根県東部の拠点港湾として耐震岸壁を備えた防災対応施設として整備が始まりました。 水深7・5㍍の5, 000㌧岸壁は平成18年度末に概成しますが、 港湾利用に不可欠である静穏度の確保は国、 県によって設置された技術検討委員会の報告が出されているにもかかわらず、 財政難を理由に必要な施設の建設が確認されていないと聞いており、 心配しています。
私の家は120年続く海岸縁の宿屋です。 父は、 昭和40年代のはじめ、 中海新産業都市の整備構想の実現のため海岸にあった塩田を新たな海岸道路の建設用地に提供し、 埋め立てに同意しました。 結果として海水浴場は消滅し、 旅館の経営は窮地に陥りました。 岩谷産業の進出の折には地元関係者の代表として調印に同席もしました。 県が、 関係住民に計画を示して事業に着手して40年。 「河下港が整備されれば・・・」 との住民の期待は今度こそ実現されるものと考えて良いのでしょうか。 またも裏切られるのでしょうか。
過去、 何度も経済環境の変化を理由に整備計画が次々に変更された河下港ですが、 現在、 河下港の島根県での位置づけはどうでしょうか。 また、 整備の見通し、 港湾利用の促進、 活用についての取り組みはどうでしょうか。 特に、 河下港の課題は冬場の波浪に対する港内の静穏度を確保することであります。 河下港は十六島湾の東西で港湾、 漁港の区域設定があり、 湾口の施設建設は漁港と港湾の両面で実施検討がされているものと存じますが、 ご見解をお尋ねいたします。
私は当選して初めての質問に立ったとき、 平田船川の治水事業について申し上げました。 今年はいま渇水で水不足、 塩害に悩んでいますが、 昭和47年の着手から34年。 未だに冠水、 滞水は解消されません。 平田の市街地を貫流する平田船川、 湯谷川の整備は完成断面は30年確率での整備と伺っておりますが、 治水効果を上げるため当面は10年確率での整備が進められているとのことであります。
一方で昨年発表された大橋川改修事業は150年確率の治水計画だと言われております。 片や毎年毎年何回も冠水する地域の治水対策が遅々として進まない中で、 巨額の事業費が必要な治水計画が発表されました。 何とも複雑な心境であります。 私は住民に何と説明すればよいのでしょうか。 ただ 「力不足、 ごめんなさい」 なのか 「松江に住んでくれ」 とするのか。 県の災害年報では昭和55年から平成10年までの平田市での床上、 下浸水は14回とされ、 国土交通省では昭和45年から平成15年までの34年間で農地を含めた浸水回数はわずか15回となっています。 私は自分の目と耳を疑いました。 少なくとも私は2年前の本会議でも申し上げたとおり、 平田船川の出雲市西郷町地内では平成15年には7回の冠水、 浸水により県道鰐淵寺線は通行止めとなり、 昨年も2回の通行止めがありました。 30数年間で100回を超える浸水、 冠水があっているはずですが、 県の消防防災課の資料にはそうした被災の記録はありませんでした。 殿町一番地には県内地域の災害状況の詳細が正確に伝わっていないのでしょうか。 水害の延べ冠水面積、 浸水戸数は松江市に匹敵するとも思いますが、 住民にどう説明をしたらいいのでしょうか。
まず、 災害の発生確率と河川整備および整備期間について基本的な考え方をお示し願います。 2つ目は、 平田船川はたまたま、 床上浸水対策特別事業によって国の予算措置があり、 大幅進捗しましたが、 同じ地域の湯谷川はそうした対応はなく、 広域基幹河川改修事業によって整備をするとのことで、 100億円を超えると見込まれる事業の完成はいつのことか分かりません。 事業の進捗のためには 「新たな災害待ち」 とのことですが、 片や昭和47年の水害を引き合いにした大型事業が俎上に上り、 毎年毎年冠水に見舞われている河川の改修は遅々として進捗しないというのは合理性に欠けるのではないでしょうか。 改めて、 平田船川、 湯谷川の整備について今後の整備方針、 見通しについてお尋ねいたします。
どうも近頃 「1人は万人のため、 万人は1人のため」 という視点がなくなって、 投資効率、 一人当たり整備費(率)、 というように 「数値でものをはかる」 ことが正しいという風潮が跋扈しつつあります。 これは、 1つのものさしですべてのものを計るということで、 「政治家は不要」 と言うことになります。 しかし、 新潟や福岡の例を出すまでもなく、 災害によって深刻な状況となるのはいつも条件不利地域であり、 災害対策などはまさに政治の役割であると思うのですが、 県民の生命・財産を守る上でどのような視点でことにあたるのかお聞かせ願います。
│掲載日:2007年04月03日│
両河川においては、 昭和三十九年の水害を契機に河川改修に着手し、 事業推進を図っていますが、 市街地の改修であることから事業の進捗に時間を要しています。
このような中で、 湯谷川では昭和五十六年から河川激甚災害対策特別緊急事業により、 また平田船川では、 平成九年の降雨を踏まえて、 平成十三年度から十六年度にかけて床上浸水対策特別緊急事業を組み込むなど事業の促進を図ってきました。
現在、 平田船川は市街地の改修に概ね目途がつきつつあり、 今後は湯谷川の市街地の改修に着手することとなります。
引き続き、 多くの家屋移転が伴いますが、 地域の皆さんの理解を得ながら、 まちづくりと連携した河川整備に取り組みます。
本県では、 流域や地域の特性、 過去の降雨実績や浸水被害実績、 そして一時間雨量五十ミリ程度の降雨に対応する事などを踏まえ、 各河川を再度災害から防止する観点に立った治水安全度に区分し、 計画規模やこれに要する整備期間を定め、 川づくり検討委員会等を経て、 河川整備基本方針、 河川整備計画に盛り込み、 事業の展開を図っています。
しかし、 改修が必要な延長が千六百二十三キロメートルに及ぶことから、 一時間雨量五十ミリの降雨に対応する河川の整備率は、 二十九パーセントにとどまり、 出雲市の市街地など沖積低平地では、 未だ浸水が多発する状況であります。
厳しい財政状況の中、 治水効果の早期発現を図るため、 市街地を中心とした浸水常襲地帯や水防計画にある危険な箇所の解消への重点化、 更には暫定施工などによる効率化に努めています。
本県では、 河下港を県東部の物流の拠点港として、 また震災時の緊急輸送の拠点港として位置づけております。
垂水地区ではマイナス七. 五メートルの岸壁整備が十八年度に完成します。
引き続き、 港内での船舶係留及び荷役作業の安全性の確保や輸送の信頼性を高めるため、 沖防波堤の建設が必要であり、 早期着手にむけ努めてまいります。
次に、 河下港の利活用についてであります。
現在、 河下港では石材やコンクリートブロックの原材料、 LPガスなどの国内貨物の取扱いが行われ、 十六年の実績は約三十三万七千トン、 対前年比で二十五%の伸びを示しております。 河下港の利活用の促進にあたっては、 引き続き河下港利用振興協議会など関係諸団体と協力しながら進めてまいります。
次に、 河下港の湾口の施設建設についてであります。
河下港沖防波堤検討委員会で策定した沖防波堤の現計画案は、 港湾区域及び漁港区域の双方にまたがる位置に建設することとしていますが、 隣接する十六島漁港での費用対効果が低いことから漁港事業として採択は困難であるため、 港湾工事として施工する考えであります。
洪水などから生命や財産を守り、 県民の安全・安心を確保することは、 私に課せられた重要な責務であると考えております。
こうした観点から、 島根県総合計画では、 施策の柱の一つに「それぞれの地域で安全安心な生活ができる島根の国造り」を掲げ、 安全な生活の確保の推進に取り組んでいます。
治水対策については、 県民の生命や財産を守ることを第一として、 家屋浸水の解消に向けて、 河川事業の進捗を図るとともに、 昨年の新潟・福島豪雨、 福井豪雨などの激甚な水害を教訓とし、 被害の軽減を図るため、 市町村と一体となったハザードマップの作成を急ぐなどハードとソフトの両面から、 災害に強い県土づくりと防災対策の推進に努めます。