県議会だより

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平成17年6月県議会一般質問(2)

農林水産業の振興について

18年前、 知事は 「海と山のフロンティア」 を言われました。 島根の豊かな自然と産品を組み合わせた産業の振興を県政の柱にすると。 私は、 農林水産業の振興こそ島根の生きる道だと思っています。 もちろん、 旧態依然とした取り組みではやっていけません。 時代にあった技術革新や設備投資も必要です。 しかし、 豊かな自然を生かし、 その恵を最大限活かして生業を立てることこそ、 私たちの生存になくてはならない要素であり、 時代を超えて地域が生き残る途でありましょう。
見方を変えれば、 バイオテクノロジーやバイオマス利活用など時代は自然の再生能力を活かした技術が最先端となりました。 いまこそ、 田舎の時代、 出番で1次産業に光を当てるチャンスだと思います。 そこで最初に伺いますが、 県内の1次産業の販売金額の推移と今後の目標数値はどうでしょうか。
本県は 「かもじのり」 の十六島海苔ほか4品目を代表的な島根ブランド産品として選定しました。 しかし、 これらが、 松葉カニ、 20世紀梨といえば鳥取県、 マスカット、 ままかり、 きび団子といえば岡山県、 カキといえば広島県、 ふぐといえば山口県、 というような全国どこでも通用する島根の代名詞となるのでしょうか。
ウップルイノリは岩海苔の種類としての学名で、 日本海のあちこちの岩場で採取されますが、 一般に言われるいわゆる十六島海苔は十六島地区で採取される 「かもじのり」 のことで、 まぼろしの海苔と言われております。 多伎のイチジク、 浜田のどんちっちアジ、 隠岐のいわがきそれぞれ市場評価は高いと聞いております。
こうして見れば、 県のブランド戦略は島根=高級品というイメージの定着かなと感じていますが、 現状は、 これらの産品を全国展開するに必要な量産体制、 生産拡大の取り組みは関係者に委ねられており、 県の取り組みはどちらかというと販売戦略に偏っているように見受けられます。 いわゆる特産・名産とはなっても島根の代表詞となるものではないと思います。 産品=島根となるべきもの、 可能なものは何でしょうか。 また、 そうした取り組みが成功するためには生産、 流通、 販売までの一貫した振興戦略が必要ですがどのような組立がされているでしょうか。 加えて、 必要な資金の調達はどのように手当されますか。
私は、 年間通じて島根をイメージできる産品と春、 夏、 秋、 冬の季節産品として提供できるものに整理した上で、 集中的な取り組みをすべきではないかと思うのです。 島根のブランドとして地域イメージと産品が合致でき、 全国展開が可能で、 かつ高級品との評価を得ることができるとすれば、 それは宍道湖のヤマトシジミと島根和牛だと思っています。
宍道湖とシジミのイメージは一致しており、 すでに、 ヤマトシジミの漁獲量は年間約7000㌧で、 販売額も33億円を超え単独産品では県内屈指の販売額を誇り、 日本一であります。
すでに取り組みは始まっていると聞いていますが、 ヤマトシジミの稚貝(種苗)の生産、 供給体制の確立によって生産量を拡大することは十分可能であり、 また、 宍道湖のヤマトシジミが島根県のイメージになれば、 県内の内水面での生産や養殖も、 と言うことになり、 現在は域外からの供給に頼っている加工品の原材料も県内産となるなど、 シジミファミリーは飛躍的に増大すると思います。
また、 島根和牛は生産、 肥育ともに島根県の飼育技術は全国でもトップクラスであり、 自然豊かな風土に育まれた健康な牛というイメージを付加することによってさらなる市場評価を高めることは可能です。
県内の農地面積は約4万㌶で、 8割が稲作圃場と聞いておりますが、 そのうちほぼ8割にあたる2万3千㌶が中山間地で、 現状は約1/4を超える圃場が休耕・または耕作放棄地になっているとのことであります。 県内の転作面積は約8千㌶でうち5千㌶が中山間地ですがら、 転作圃場と耕作放棄地と休耕地を合わせた中山間地の農地面積はゆうに1万㌶を超える現状です。
現在、 県内で飼育されている和牛は繁殖、 肥育それぞれ1万頭ですが、 放牧地として転作圃場と遊休農地を活用すれば、 現状で1万頭程度の増頭は可能です。 既に、 隠岐では建設会社による和牛生産が開始されており、 こうした取り組みを深化させることによって量産は可能と考えます。
しじみと和牛を機関車にして、 海苔やイチジクなどの季節産品を連結させることによって、 県が念願しているブランド化が実現できると思います。 そのためには、 そうした仕掛けが必要です。 もちろん、 現在取り組んでいる販売、 市場対策も大事ですが、 産・官・学・野の連携による技術開発と、 県で言えば農林水産と地域振興、 商工労働、 土木、 環境生活の横断的な取り組み、 県と市町村の連携が不可欠です。
産直やグリーンツーリズムなどフレッシュビジネスは交流人口の増に直結する傾向にあります。 児童生徒の減少に伴う学校統廃合による校舎、 市町村合併による遊休行政施設などの活用により都市と田舎の交流拠点を提供することは地域振興の上からも極めて有効ですが、 1次産業と観光のリンクについてはどのように考えますか。
水産業の振興というとほとんどが日本海での外海漁業の振興策を指し、 内水面漁業の振興についてはあまり議論されていないように感じています。 内水試などで地道な取り組みがされ、 安定的な漁獲があがっており、 あまり課題が浮上していないのであれば幸いですが、 閉鎖水域の水質、 環境保全の問題や資源保護など課題は多いように思います。 県内最大の内水面漁業のメッカである宍道湖の漁業振興についてはどのようにお考えでしょうか。
中海のラムサール条約登録はほぼ関係者の同意が出そろいましたが、 一方の宍道湖はなかなかです。 何故なら、 斐伊川河口や宍道湖の野鳥による食害はかなりの金額に上っており、 キンクロハジロはしじみを餌にしており、 漁業者の懸念は大きいからであります。
いままで、 自然保護は関係住民の理解と協力という美名はありますが、 実態は関係住民の一方的な犠牲で成り立ってきました。 今回、 「ラムサール条約登録は賢明な利活用であり、 経済活動に支障はない」 と言われますが、 「では、 万が一影響、 被害が拡大した場合の責任は」 と問うと県は 「第1義的には国(環境省)であると」 応えます。 いまが、 受忍限度ギリギリなのにこれ以上の被害が出た場合の対応が約束されなければ賛成できない、 とする関係住民の意見は極めてわかりやすいものであります。
国・県は 「野鳥は無主物」 との論理で、 対応は後手。 ラムサール条約の登録に反対するものは自然保護には熱心でないように映り、
世論に背を向けるように感じられますが、 実際は全く異なり、 宍道湖の自然環境に対して一番敏感で、 守ってきたのはほかでもない漁業者や周辺の関係住民です。 言い出しっぺの県が、 「被害が出たときには県が責任を持って対処する」 と一言明言すればすべて解決するのに、 それがいつまでたってもありませんから、 関係者の不信は募るばかりです。 漁業者を追い込んではなりません。 ラムサール条約の登録に関して、 県の取り組み、 責任については関係者にどのような説明がされているでしょうか。
今春、 ついにコイヘルペスが斐伊川流域に感染し、 被害の拡大が心配されますが、 今後の取り組みはどうされるでしょうか。
国は、 やっと外来生物種の規制を法制化しましたが、 釣り愛好者の権利という訳の分からない理由でブラックバスやブルーギルなどの持ち込みは禁止したものの同一場所でのリリースを容認し、 事実上骨抜きにしてしまいました。 すでに県内の多くのため池や河川で外来種の魚類、 生物が生息し、 固有種が減少、 混血化が進行するなど生態系の変化が懸念される状況となっており、 宍道湖7珍もやがては幻になるだろうとの声もあります。 何年か前、 すでに旧平田市ではリリース禁止の条例化が検討されましたが、 県でも生態系を守るために独自の取り組みをすべきと存じますがいかがでしょうか。

法正農林水産部長答弁

コイヘルペスに関する今後の取り組みについて

五月六日に松江市内の斐伊川水系で発生したコイヘルペス病は、 月末には被害区域が出雲市及び安来市まで拡がり、 これまで回収されたへい死魚は約一万二千尾に及びますが、 現在のところ、 水温の上昇とともに終息に向かっております。
コイヘルペス病は病気にかかったコイの移動により蔓延することから、 県では、 一昨年からコイの移動や放流の自粛を県民に広く呼びかけるとともに、 県内水面漁場管理委員会指示により、 発生水系からの移動を禁止する等、 厳しい対応をしてきたところです。
今後とも、 コイの移動や放流の自粛・禁止を徹底するとともに、 県内主要河川及び養殖場における定期検査を行うことにより、 本疾病の早期発見や蔓延防止に努めてまいります。
また、 病気の発生に伴う他の水産物への風評被害発生防止が重要であり、 今後とも、 この病気が人にはもちろん、 コイ以外の水産動物には感染しないことの周知に努めてまいります。

法正農林水産部長答弁

宍道湖の漁業振興について

宍道湖は、 ヤマトシジミを中心として三十億円以上の漁業生産があり、 この水域の水産振興は、 本県にとりまして非常に大きな課題となっています。
このため、 県といたしましては、 平成十三年度から宍道湖・中海水産振興対策事業を実施しており、 貧酸素水魂の動きなどの水質環境を把握するとともに、 ヤマトシジミ、 シラウオ、 ワカサギ等の有用水産動物の資源生態調査や造成した増殖場の効果調査などを行っています。
これらの結果を踏まえて、 今年度中には、 具体的な取り組みや施策を盛り込んだ水産振興計画を策定することとしておりますが、 漁業関係者と連携し、 資源の持続的・効率的な利用が図られるよう、 科学的根拠に基づいた資源管理対策などに取り組んでまいります。
また、 宍道湖の水産物の価格維持・向上を図るため、 宍道湖漁協と一体となって、 安全・安心な水産物を求める消費者ニーズに対応した品質表示に徹底や、 出荷規格の工夫などの取り組みも推進してまいります。

法正農林水産部長答弁

産品イコール島根となるものの振興戦略について

産品が県の顔となる要素としては、 一般的には一定の生産量があり、 全国的に広く流通・販売されるものが考えられ、 その観点から見た場合には、 食味の良い 「島根の米」、 全国でも屈指の生産量をもつ 「ハウスデラウエア」、 また全国一の生産量を誇る「ボタン」や「宍道湖のシジミ」などがあげられるものと考えております。
一方で、 産品に対する消費者の価値観や、 流通チャンネルなどが多様化してきている中では、 「十六島のり」 など地域や期間が限定されたり、 生産量が少なく量的な広がりが見込めない産品であっても、 高品質で食の文化財とも呼ばれ希少価値のあるものなど、 その特徴を活かしたブランド化の可能性があるものと考えており、 現在「しまね和牛」をはじめ五産品を選定し、 大消費地であると共に全国への情報発信力のある東京に向け、 重点的な取り組みを進めているところです。
これらの産品の振興にあたりましては、 それぞれの特徴に応じ、 生産・流通・販売までの一貫した取り組みが必要と考えています。
例えば、 御指摘の「しまね和牛」につきましては、 まず生産面において、 企業参入をはじめとする自立的な意欲ある担い手の確保育成に努めてまいります。
また、 これまでの 「しまね和牛の里づくり」事業等により、 肥育体制の整備は進みましたが、 今後は、 繁殖の振興が急務と考えており、 そのため水田や遊休地また里山などを活用した放牧の推進により「しまね和牛」の生産拡大に取り組んでまいります。
流通・販売面では、 これまでも取り組んできた県内での販売促進はもとより、 宣伝効果の高い東京を拠点の一つととらえ、 こだわり産品を求める消費者層や高級レストラン等に向けた取扱店の拡大、 また「にほんばし島根館」でのフェアの開催などにより、 「しまね和牛」の認知度の向上や販路の拡大を一体的に進めてまいります。
なお、 資金面につきましては、 産地の育成について、 「たちあがる産地育成事業」などで支援していくこととしており、 重点五産品のPR事業や販売事業については、 ブランド化に取り組む事業者に対し、 「ブランド化支援事業」により支援してまいります。

法正農林水産部長答弁

農林水産業の振興について

まず、 一次産業の産出額の推移と今後の目標数値についてであります。
国の生産農業所得統計などによりますと、 この十年間に、 全国の一次産業の産出額は輸入農林水産物の増大や景気の後退による価格低下などにより約二十四%の減少となっております。
一方、 本県では平成十五年度に農業六百五十億円、 林業五十一億円、 水産業二百三十五億円の合計九百三十六億円となっております。 これは、 十年前の一千三百九十八億円に比べ三十三パーセントの減少(ピーク時の昭和五十九年の一千六百八十二億円に比べ四十四パーセントの減少)となっております。
次に、 今後の目標数値についてであります。 現在、 農・林・水各分野において十年程度の期間を目標とした基本計画を策定し、 それぞれ当面の重点課題について成果指標を設定しているところです。
農業については、 昨年度見直した「新農業・農村活性化プラン」において、 農産物販売金額年間一千万円以上の農家数や農業生産法人数、 トレーサビリティシステム導入組織数などを、 林業については木材生産量、 間伐の実施率などを、 水産については高付加価値装置の整備箇所数や漁場整備面積などの具体的な数値目標を設定したところであります。
これらの目標の実現を図るための施策を講ずることにより生産額の確保、 向上に努めて参ります。

井上環境生活部長答弁

ラムサール条約登録の説明について

宍道湖のラムサール条約登録に当たっては、 宍道湖の豊かな恵みを将来にわたって守っていくためにも、 広く関係者の理解と協力を得て進めていくべきものと考えており、 条約の登録に関する県の基本的な考え方を始め、 宍道湖の水質保全対策や水産振興対策等を説明しております。
ご指摘のありました条約登録後の経済的損失に関しては、 ラムサール条約に関する第七回締約国会議の決議においては、 本条約は一方的に鳥獣などを保護するのではなく、 漁業や農林業などでの利用も前提としており、 原則的には、 これらの経済活動を阻害するものではないとされておりますが、 鳥類による被害が急激に増加するなど著しい状況の変化が生じた場合には、 県としても、 ほかの登録地の事例も参考に被害防止対策を検討してまいりたいと考えております。

澄田知事答弁

私は、 かねがね中山間地域が有する豊かな自然、 風土、 情景や伝統文化、 さらには、 そこでの生活そのものが中山間地域の意義であり価値であると捉えております。 そして、 その価値を都市住民と地域住民が共有することによって、 地域への誇りと経済効果を高めたいという考えから、 「しまね田舎ツーリズム」を推進することと致しました。
県内各地に出掛けますと、 地域で頑張っておられる多くの方々に出会います。 地域の食材を使った農家レストランや廃校になった小学校の空き校舎や空き家を活用した民泊、 棚田のオーナー制をはじめとした農作業体験など、 都市住民との交流を進める「しまね田舎ツーリズム」の取り組みも県内あちこちで広がりを見せはじめています。 また、 産直市には、 日曜日にたくさんの県外ナンバーの車が停まっており、 年間売上げが一億円に近い店もいくつかあると聞きます。
私も、 議員が提案されたとおり、 「しまね田舎ツーリズム」の理念を核に、 広がりのある産業として育てていくためには、 交流人口を拡大しながら、 中山間地域の基幹産業である農林水産業や既存の観光産業とも融合し、 従来の言葉で言えば「六次産業」の振興を図り、 地域経済のマネーフローを増大させたいとの強い思いを抱いております。
県内各地で、 こうした取り組みを展開している関係者の総力を結集して取り組んでまいります。

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