県議会だより

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平成17年6月県議会一般質問(1)

国と地方の役割分担について

県議会議員の任期も折り返しを過ぎました。 この2年間の県政は、 財政窮乏により 「縮み思考」 または 「縮小再生産」 に向かい、 明日の希望が感じられません。 かつては 「アメリカが嚔をすると日本は風邪をひく」 と言われましたが、 いま 「国が嚔をすると地方は風邪どころか肺炎になってしまう」 状況にあります。
日本は戦後の経済発展を背景に社会福祉、 とりわけ医療、 年金に代表される給付型の福祉経費は増大し、 いまやその給付総額は国の年間予算に匹敵しています。 高齢化により受益者が増大する一方であるのに対し、 制度を支えるべき生産年齢人口は少子化により減少し、 制度の維持・存続は危機に瀕しています。 もはや、 大幅な給付費の切り下げや対象年齢の引き上げは必至であり、 安定的な制度設計の構築が急務となっております。
また、 国債・地方債の大量発行による予算編成のあり方についても同様で、 次世代に膨大な債務の償還をツケ廻している状況は、 国力の低下を招きかねない深刻な状況です。 では、 私たちは都道府県の今後の運営についてどのような備え、 見通しを持つべきでしょうか。
国への過度の依存を廃し、 あくまで、 「自立」 を果たすためには、 「本来のあるべき論」 について徹底的に議論した上で、 国の役割と地方の役割、 また、 費用負担のあり方についてきちんと整理すべきだと思うのであります。
日本は中央集権国家ですから、 外交、 防衛、 治安、 教育など国家の体制維持に関わる事項については国が責任を持つべきでしょう。 また、 現憲法下で規定されている国民の生存権を保証するための防災・安全、 衛生、 保健・医療、 など一定水準をクリアーするための行政コストの保証も必要です。 つまり、 現在の制度では前者が国庫補助・負担金、 後者が地方交付税交付金で担保されているということになりますが、 いつのまにか両者が肥大化して境目が無くなってしまいました。
さて、 知事は国が国民に対して果たす役割は何であると思われますか。 また、 国が担うべき役割、 例えば治安維持や教育の分野など現実としては地方が果たしているものがたくさんありますが、 そのコスト負担はどのようであるべきとお考えになりますか。
すでに国と地方の債務残高は1000兆円を突破したとの報道もあり、 このままでは10年後の国債・地方債の残高は国民の金融資産に匹敵する1300兆円にも達するとのことであります。 もはや、 国の財政の破綻は免れないところであり、 国債・地方債の発行による財政運営の終えんは近いと思います。
私はこの間、 常に疑問に感じてきた事柄があります。 それは、 いったいいつまで現在の社会システムが持つだろうかと言うことであります。 知事をはじめ島根県の幹部の皆さん、 島根県の各種計画の前提となっている現在の国庫補助・負担金制度や地方交付税の制度が一部の手直しや段階的な制度変更で本当に対処、 存続できるでしょうか。
今年10月には県内市町村は合併により59から21になります。 しかし、 そのほとんどが財政的な理由で合併に追い込まれたもので、 隣接市町村が共同・共通する大きな政策目標を達成するための建設的、 戦略的な合併ではなく、 現在の社会システムの中で行政サービスを維持するために苦渋の選択をしたに過ぎません。
一昨年、 交付税がカットされただけで 「地財ショック」 と称され、 島根県では職員、 特別職の報酬カットや政策経費の大幅削減を余儀なくされました。 しかし、 国の財政が好転したわけではありません。 悪化の一途です。 この後、 大幅な社会システムの変更、 財政制度の大幅改革は必至です。 現在の国庫補助、 負担金(支出金)制度と地方交付税制度についてお尋ねしますが、 この制度は存置すべきでしょうか、 抜本改正すべきでしょうか。
私は、 県の頭脳とも言える政策企画局に、 国のやるべき役割と地方の担うべき役割を明確に区分し、 その費用負担のあり方、 ルールについて徹底的に検討した上で、 島根県としてどのような行財政運営をすべきなのか、 という政策テーマを与え、 知事は、 その議論を基にして地方6団体や県選出の国会議員らに意見具申をすべきだと思います。
私は地方自治は歌舞伎の大向こうをうならせる様な派手なパフォーマンスやかけ声よりも、 地味ではあっても地に足がついた着実な取り組みこそが王道であると認識し、 澄田知事の治世を評価してきました。 しかし、 知事の任期もあと2年です。 澄田知事は全国知事会の重鎮であり、 国、 県の行政に精通された俊秀であります。 島根県の明日を確としたものにするためには、 長期ビジョンや政策目標も大事でしょうが、 私は、 澄田知事に知事としての18年の経験と地方が生き残っていくための制度設計を国や関係機関に対して積極的に発言してほしいと思います。
国の地方制度審議会や国会の議論をまって、 それに沿った対処をするのでは、 島根県は常に国の方針に右往左往する状況がひどくなるばかりです。 改善すべき方向を地方から具体的に示さなければ、 国の放漫財政のツケを地方、 とりわけ島根のような人口の少ない地域が一方的に受けることになります。
市場原理は 「強者の論理」 です。 ともすれば、 現在の世相は地方より都会優先というキライがありますが、 知事には、 是非、 政治家として 「理を説く」 という姿勢を強めていただきたいのであります。
例えば、 国庫補助、 負担金はその使途が細かく規定されており、 地方の裁量がおよばないものであります。 これをすべて廃止し、 交付金化、 一般財源化することにより地方分権が進展し、 地方自治体の独自性が発揮できるとする意見と、 あくまで国の権限に属する事項について財源保証の観点から制度維持をすべきとの意見が交錯しています。 義務教育費などはその代表例ですが、 知事のご見解はどのようでしょうか。 昨年の3位1体改革論議の過程では国から税源委譲される金額が削減される財源を大きく下回るとの試算がされ、 島根県は交付税の削減傾向が続けば現在の予算規模が確保できないとされましたが、 お見込みはいかがでしょうか。 また、 580億円程度の県税収入と標準財政規模の乖離は大きく、 現在の予算規模は相当な膨張状態と考えられます。 立ち後れている社会資本整備費の必要額等はおいて、 自立的な財政運営が可能な予算規模(身の丈に合った)はどの程度と試算しておられますか。 お尋ねいたします。

澄田知事答弁

税源移譲後の予算規模について

本県のような税財政基盤の脆弱な団体においては、 税源移譲額が国庫補助負担金の廃止、 縮減額に満たないことが想定されますが、 この不足する額については、 「骨太の方針二〇〇四」において、 「地方交付税の算定等を通じて適切に対応する」とされております。
したがって、 地方公共団体間のアンバランスは、 地方交付税の財源調整機能により是正されることが約束されておりますが、 一方で、 一昨年末のいわゆる 「地財ショック」のように、 地方交付税の全国総額の大幅削減が同時に行われることとなれば、 全国ほとんどの地方団体において財政規模の大幅な縮減を余儀なくされることとなります。
この点、 「骨太の方針二〇〇四」は、 地方交付税の総額について、 「二〇一〇年代初頭における国・地方を通じた基礎的財政収支の黒字化を目指して、 地方財政計画の合理化を進め、 地方交付税の抑制を図る」との方針も示しているところから、 今後長期的に見れば、 地方にとってさらに厳しい財政運営を強いられることを覚悟しておく必要があると考えています。
次に、 自立的な財政運営が可能な予算規模についてであります。
本県は、 県税収入が歳入全体の一割程度と少なく、 地方交付税等の依存財源に大きく依拠した財政構造となっております。
そもそも、 人口が少なく、 企業の経済活動の規模も相対的に小さい本県のような団体においては、 福祉や教育、 社会資本整備等の、 国が法令や毎年度の予算などを通じて求める標準的な行政サービスをまかなうだけの県税は、 残念ながら確保し得ないのが実情です。
地方固有の財源である地方交付税は、 こうした税源の偏在を補てんし、 地方公共団体の財源を保障する制度であり、 いわば「国が地方にかわって徴収している地方税」とも言うべき財源であって、 税源の乏しい本県にとって不可欠のものであります。
したがって、 お尋ねの自立的な財政運営ができる予算規模とは、 単に県税収入の額だけではなく、 地方交付税等を加えた一般財源全体の歳入規模に見合う水準まで歳出規模を縮小し、 収支の均衡が達成された時点の財政規模をいうものであると考えています。
本県の一般財源収入の大部分を占める地方交付税等の将来見通しが不透明な中で、 こうした収支均衡を前提とした将来に渡る予算規模を申し上げるのは難しい面がありますが、 自立的で持続可能な県政運営の実現に向けて、 まずは中期財政改革基本方針に掲げる取組を着実に実行する必要があります。
このため、 平成十八年度の予算規模は、 本年度より更に縮減せざるを得ないと考えておりますが、 こうした財政改革の努力の積み重ねにより、 今後できるだけ早い時期での財政収支の均衡を目指してまいります。

澄田知事答弁

国庫補助負担金制度と地方交付税制度のあり方について

現在進められている「三位一体の改革」は、 「国から地方へ」という構造改革の理念に基づき、 「小さくて効率的な政府」を実現するとともに、 地方公共団体の「自己決定・自己責任」の原則が貫かれる、 財政面での地方分権化を目指すものです。
国庫補助負担金については、 こうした改革の趣旨・目的を踏まえ、 原則的には、 税源移譲により縮小していくべきものと考えています。
ただし、 こうした流れの中にあっても、 生活保護など国民全体に対して保障すべき必要最低限の生活水準の確保に関するもの、 感染症対策など危機管理等の見地から都道府県の区域を越えた広域的な取組みを行う必要があるものなどについては、 国庫補助負担金制度を存続させることが必要であると考えています。
一方、 地方交付税については、 税源移譲によって生ずる財政力格差の拡大を是正するため、 その意義・重要性は一層増すことになります。
したがって、 地方交付税制度については、 財源保障・財源調整機能の充実強化を図る観点から、 安定的な総額の確保と、 地方税の税源の偏在を極力縮小するため、 交付税原資の組替えを含めた法定率の再設定など、 制度の基本部分を含めた見直しが必要になるものと考えています。

澄田知事答弁

地方が果たす事務に係るコスト負担について

治安維持や義務教育など、 国として責任を有する分野の事務について、 法令の規定により、 地方公共団体に対し一定の事務処理を義務付けるものがあります。 これらの事務については、 地方自治法により、 国は、 その処理に要する経費に対し必要な財源措置を講じなければならないものとされています。
この場合に国に義務付けられた財源措置としては、 当該事務に係る国庫補助負担金のほか、 地方税や地方交付税などの一般財源の措置も該当するものとされています。
いずれにしても、 地方公共団体には、 法令で定められた合理的で妥当な行政サービス水準を維持する義務があり、 一方、 国には、 地方公共団体が当該事務を円滑に執行できるよう、 将来に渡って必要な財源を安定的に確保し、 計画的な運営を保障する義務があると考えています。

澄田知事答弁

国が果たすべき役割について

議員御指摘のとおり、 中央集権型行政システムから地方分権型行政システムへの転換に当たっては、 国と地方の役割分担や経費負担について、 徹底的に議論する必要があります。
現在、 道州制に関する議論が盛んになりつつありますが、 これは都道府県のあり方をどうするかということと同時に、 我が国の国家構造、 すなわち政治・行政体制のあり方や国の果たすべき役割をどう見直すかという議論でもあります。
私は、 国の役割は、 まず国家としての存立に関わる外交・防衛といった事務や、 介護保険や義務教育など全国的に統一して運用すべき基本ルールに関する事務、 あるいは高速道路ネットワーク整備などの全国的な規模や視点に立って行わなければならない施策・事業の実施に重点化していくべきであると考えています。

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