県議会だより

Reports

平成17年9月定例議会一般質問(1)

島根県の学力(教育力)の回復について

自分はこの7月に奥出雲町で開催された島根県中学校総合体育大会の剣道競技を観戦しました。全国大会の出場権をかけた子ども達の熱戦が繰り広げられましたが、男女二つの会場に分散されたためか、試合場ごとの審判員の技量差が大きく、微妙な判定(誤審)に試合結果(勝敗)が左右されたものもありました。下された判定に呆然、号泣する選手たちを前に、かける言葉を必至でさがす顧問教諭や関係者の姿が今も私の目に焼き付いて離れません。
県総体に出場する選手の目標は「優勝して全国へ」と言うものから「ベスト8」「一回戦突破」など様々ですあっても、二度とない青春時代のたった一回の真剣勝負の機会だからこそ、私たちは子ども達の夢を叶えてやるために相応しい最高の舞台を用意してやることは私たち大人のつとめだと思いますが、私たちはいろいろな理屈をつけて子ども達の純な夢をうち砕いていないでしょうか。
学校体育の関係者からは「競技力の強化費が大幅に削減されており、大会開催経費を確保すると指導者研修や審判講習は困難。」との声があがっており、指導力の低下とマンパワーの不足により「誤審は起こるべくして起こる」と言われます。古典に「世に伯楽ありて然る後千里の馬あり、千里の馬常にあれども伯楽は常にはあらず」とありますが、スポーツに限らず島根の子ども達の可能性、能力向上のために不可欠である優秀な指導者の養成に必要な予算(費用)まで削減し、子どもの育成を指導者の自己努力、自己犠牲に負わせてしまったのではないかと感じています。
学校教育に限らずスポーツや文化の指導者に対する研修費は、航空機や車で言えば安全運行に不可欠な整備関係費用であります。いくら立派な体育館や文化ホールなどが建設されてもそれを活用する人のレベルを向上させなければ施設は無用の長物になってしまいます。歳出の一律カットによるしわ寄せがこうしたところに顕われてきたとすれば、島根の教育危機であり、やがて、全国に誇る音楽レベルなどに波及することは必至であります。
そこで教育長にお尋ねいたしますが、まず、過去10年間の教育予算の推移についてお示しいただきたいと思います。また、小、中および高等学校教員・職員数と市町村の学校教育費を含む県内の学校教育費の推移、施設整備費の推移についてもお示しいただきたいと存じます。
次に、財政再建(歳出カット)による教育予算へのしわ寄せについてお尋ねいたしますが、教育費のなかで体育振興予算、文化振興予算という分類をすれば、それはそれぞれどのような推移となっておりますでしょうか。人件費、施設整備費および維持管理費といわゆる振興費に分類してお示しいただきたいと存じます。また、小、中、高校の競技力強化や体育連盟など学校の体育関係費と音楽、美術など学校の文化振興にかかる予算(人件費、施設管理・運営費を除く)の推移についてお示しいただくとともに、厳しい運営となっている学校の体育、文化活動の現状と支援、改善について所感を求めたいと存じます。
前の代表質問にあった通り、自民党議連は県内中、高校生の学力について現状を調査し、向上に資する施策について提言すぺく教育検討部会を設置して議論を始めたところであります。過般実施いたしました中学校、高等学校の教員に対する意見聴取では、学力低下の要因について一般的な生活習慣の未定着と学習に必要な忍耐力などの知的体力の不足に言及され、大変驚きました。家庭や社会の教育力の低下が子ども達の知識、学力の低下の大きな原因の一つとすれば喫緊にその対策を講ずる必要があると考えます。そこで、教育長にお尋ねいたしますが、県教委では、学力低下の要因をどう捉えているのでしょうか。また、県内小、中学校の児童、生徒について学力の定着状況の検証、分析では「学習指導要領に定める学力の定着状況は概ね良好」とのことでありましたが、中、高の教員の認識とは大きく異なっております。特に、問題ありとされる数学や英語などの学力強化はどのようにお考えになっておりますでしょうか。
そして、何よりも学校での授業、生活に不可欠な子ども達の社会性の定着、いわゆる基本的生活習慣の訓練(定着)については就学前教育の強化が不可欠であり、親の教育を含めた幼児教育のありかたについて幼・保のカリキュラム連携、統一など抜本的な取り組みが急務だと考えますが、具体的にどのような対応をお考えになっているのかお示しいただきたいと存じます。
仄聞するところでは、全国(19年度実施予定)に先駆けて、18年度に県内全ての公立学校で学力テストを実施するとのことでありますが、その結果をどのように活かすべきか(私見でも可)お聞かせいただきたいと存じます。
過日の報道では、「キレる小学生、島根は倍化」とありました。私は、不登校の数値等が全国平均に比較して高いことを必ずしも問題視すべきではなく、むしろ、キメ細かい調査が進んだ地域ほど数値(%)は高いと感じており、「不登校は、いつでも誰にでも起こる」という前提で、その芽(萌芽)を見逃さない、学校と家庭の共通認識を深めることが何よりも大事だと思います。
問題行動や生活指導にあたっている関係教職員の努力は大変なものですが、「殴る、蹴る」という暴行と「立たせる、正座させる」といったいわゆる体罰を同一論調で批判し、児童生徒が教職員を殴っても報道されず、教職員が児童生徒に体罰を下すと即座に糾弾報道されるという現実に、学校(教員)は萎縮しています。
「ほら、殴って見ろ」という生徒、「学校にお任せします」という責任放棄の親を前にして、苦悩する関係者を見るにつけ、私は、県教委に対して、報道機関に対して、場合によってはもっと教職員の正義(価値観)を信頼して毅然と対応する姿勢がほしいと思います。何でも頭を下げてほしくありません。
また、家庭学習の習慣が未成熟との原因には兄弟が少ない、家庭内生活人員が少ないという社会現象があるとすれば、都会地のように学習塾等の施設がない県内の状況を考えれば、高校では取り組みが常態化している夜間や土、日など休業日の学校開放が必要だと考えます。
そこで教育長にお尋ねいたしますが、学校内での反社会的行為(不法行為)に対するペナルティについて校長の権限(裁量)はどのように定められておりますか。また、学力の回復には、何よりも知識学習(国・英・数・理・社の授業時間)の時間を拡大(確保)する必要があると思います(私たちの子どもの頃は土曜日に授業した上に、理解不足の者には居残り授業もあった)が、その対応はどのようにすべきでしょうか。
県立学校では、土曜日、春季・夏季・冬季休業中の補習や学校(教室)開放時の冷暖房費等の経費負担は保護者とされているようでありますが、県として学力向上に取り組むのであればこうした姿勢で良いのでしょうか。私は、以前にも述べましたが、部活動や進路指導で著しい実績を上げている教員の評価をきちんとしてほしいと思っています。その、熱意に応える行政の積極的なバックアップがほしいと思いますが、いかがでしょうか。教員の異動ルールの見直しについてもあわせてお示しいただきたいと存じます。
中・高の教員から異口同音に、生徒の学力向上には部活動、クラブ活動の実践、体験(充実)が不可欠との指摘がありました。これは、学習に必要な忍耐力や協調性の醸成だけでなく集中力の向上等の子ども達の発達段階に大きな効用があるとのことであります。
現在こうした活動の担当(顧問)は教職員のボランティアだと言われますが、これを積極支援または勤務評価、査定を拡大してはと思いますがいかがでしょうか。また、現在、小、中および高校の連携はそれぞれ関係(進学交流)のある学校同士が年一、二回連絡会を開催している程度と聞いておりますが、教科担当やPTAを含め相互連携の強化を考えてはいかがでしょうか。
また、国立行政法人となった島根大学の教育学部に適応指導や成績向上プランについて共同研究や研究委託するなどの連携を一層強化、活用してはいかがかと存じますが、ご見解をお伺いいたします。
先日、益田東高校の体育館で卒業生のパーティが行われ、酒食を伴っていたことや未成年者の同席が問題視され、「不適切」との判断が下されたとの報道がありました。学校施設を使った社会活動での酒食を伴う使用についてこれを全て問題視することが問題です。9月19日は敬老の日。平田では70歳以上のお年寄りを最寄りの学校の体育館に招いて、食事と歌や踊り、寸劇などで「敬老会」を開催しています。小学校、中の児童、生徒を含めて地域社会に暮らす人たちがたくさん参加します。
一昨日は14小学校全てで地域の運動会が開催されました。老若男女が集いました。私の地域は450世帯1800人余りの自治会ですが、小学校に800人からの人が集まりました。敬老会も運動会、どちらも多少の酒類も出すが、それを咎める声など聞いたことがありません。
私は、学校施設を使用した社会活動については目的と主催者の節度にかかっていると思います。益田東高校の場合は、問題は参加者が飲酒運転で検挙されたことであって、卒業生の懇親パーティを開催したことが間違いではないと思うのです・・。 そこで教育委員長にお尋ねいたします。 私は学校を含めて地域の施設を可能な限り開放すべきだと思います。もちろん一定の使用に関するルールは必要ですが、ケースバイケースで現場長(校長)の裁量を認めるべきだと思いますが、学校施設の開放についてはいかがお考えになりますか。
また、学校と地域社会の連携、方法について、学校長の裁量の範囲についてご見解をお示しいただきたいと存じます。
知事にお尋ねいたします。島根の未来は次代を担う青少年にかかっております。いま、島根県は非常に困難な時代です。しかし、若い人たちを、この困難を克服して打開してくれるようなたくましい人材に育てるのは私たちの義務であります。いまこそ「米百俵」だと思います。必要な教育費の確保について島根100年の大計を考えれば、教育予算、とりわけ学校教育に関わる予算の削減は避けるべきであり、必要な予算額確保は為政者のつとめだと思いますが、所感を求めます。

(再質問)
児童生徒一人あたりの教育予算額は、一校あたりの学校規模が小さな本県などが相対的に上位にくるのは当然であり、それをもって他の都道府県に比べて充実しているかの答弁など片腹痛い。財政再建は大事だが、歳出の一律カットのしわ寄せはジワジワと顕れてきており、せめて島根の子どもたちの明日を拓くために必要な学校教育予算のカットはやめるべきである

広沢教育長答弁

学校の当事者能力の向上について

学校教育法では、校長及び教員は、教育上必要があるときは生徒及び児童に懲戒を加えることができ、退学、停学及び訓告の処分は校長にその権限を与えているが、公立の小・中学校においては、退学、停学を命ずることはできない。他の児童生徒の教育に妨げがあるとき、市町村教委は、校長および保護者からの意見聴取をもとに、保護者に児童生徒の出席停止を命ずることができると規定している。
小・中学校においては、教育課程の適切な実施に必要な指導時間を確保するよう努めており、予め、標準時間数を超えるよう指導計画を作成することとしている。一方、高校では、補習の実施や長期休業の短縮など指導時間の拡大に努めており、今年度は七割以上の普通高校で土曜補習を実施している。
補習や自学自習のための学校開放などの取組が広がっており、これらに係る光熱費等の経費については、各学校に配分している管理運営費で全額対応しているが、夏季に教室の冷房のため、各学校のPTAが空調機器を設置されるケースについては、冷房費を設置者であるPTAに負担していただいている。
学校教育の成否はその直接の担い手である教員の指導力に負うところが大きく、新たに「公立学校教職員評価システム」を本年九月から試行し、平成十八年度から実施する予定で、教科指導のみならず、部活動や進路指導も含めた教育活動について、教職員の意欲・姿勢、能力、実績等をより適切に評価することとしている。更に、勤務時間を超えて部活動等に従事している実態を踏まえ、特記事項欄を設けて記述し、積極的に評価する。
現行の人事では、同一校の勤務年数は、市町村で原則七年間、県立学校では原則八年間としているが、部活動や進路指導において顕著な実績を上げる教員が長期間勤務することは、特色ある学校づくりに資するとともに、競技力の向上や芸術文化の振興、生徒の進路実現を図る上で効果のあることと認識しており、例外的な取扱いを研究しているところである。
小学校と中学校においては、卒業前や入学後に、児童生徒の状況全般について連絡会を行っている。本年度から県内五つの地域で、中学校とその校区内の小学校を指定し、小・中のつながりを意識した授業を実践するなど、小・中連携による学力育成のための研究事業を開始したところである。中学校と高等学校の連携は、主として英語と数学における中・高合同の研究会が、県内各地で開催されている。県教委では、教科レベルでの中高連携のみならず、学習意欲や学習習慣などを含む幅広いテーマのもと、学校あげて「学力向上連携」が県内すべての地域で実施されるよう、現在、各高校を督励している。
県教委は、島根大学教育学部との間で、平成十五年一月には 「連携協力に関する覚書」を締結し、教員を教育学部に派遣し、現場に根ざした体験学修プログラムの開発、特別支援教育業務等を行っている事例や「心の架け橋支援ツアー事業」を実施している事例などがあり、教員研修や学力向上についても、可能なものから連携を図りたい。

広沢教育長答弁

子どもの学力の定着、向上について

児童生徒の学力低下の要因としては、完全学校週五日制による授業時間の減少や、家庭学習時間の低下など学習時間の不足があり、さらに、近年、学習の仕方、特に自学自習の方法が分からない生徒が増加しつつあるとの指摘が、普通高校を中心に寄せられている。一方で、児童・生徒の基本的生活習慣や価値観の変化といった、社会や家庭に由来する要因も大きいと考えている。県教委では、本年度から、「ふるさと教育」及び「生活習慣改善推進事業」を開始し、家庭や地域との連携を図りながら、豊かな心と健やかな体を育成し、学ぶ意欲を高めるよう取り組んでいるところである。
県内の小・中学生の学力は、平成十六年一月に、小六・中三の一部を対象に実施した「教育課程状況調査」で、国語の文章読解や中学校数学の理解が不十分との結果を得ているが、
高校現場からは、高校入学時における学力の低下が指摘されており、本年六月、学力向上プロジェクトの中に、英語と数学のワーキングチームを設置し、中学と高校の教科連携に関する検討を進めている。
県教委では、島根県幼稚園教育振興計画により、「幼稚園・保育所の連携・協力の積極的な推進」や「地域の幼児教育のセンター的役割としての積極的な子育て支援の推進」等幼稚園教育の充実を働きかけてきており、幼稚園と小学校の連携としてそれぞれの教員の合同の意見交換会や研修会、幼児と児童の合同活動の実施など、地域の実態に応じて取り組まれている。一方、子どもの発達段階に応じた子育て講座の開催や「すこやか育児テレホン」 開設など、保護者への啓発や学習機会の提供等、家庭教育への支援に努めている。しかし、それらの取組が十分に効を奏していない面もあり、来年度は、「生活習慣改善推進キャンペーン」を行うなど積極的に啓発活動を行うこととしており、保護者の意識改革を含めた幼児教育の一層の充実のための方策について検討してまいりたい。
小中学生を対象とした学力調査実施の目的は、児童生徒の学力の定着状況を正確に把握し、その結果を児童生徒の指導に適切に活かし、確かな学力の向上を目指すことにあり、分析結果から個に応じた指導法の改善を行い、よりきめ細かな指導の効果があがるよう、学校体制や教職員の資質の向上に資する教職員研修の見直し等、総合的に活用したい。

広沢教育長答弁

教育予算の削減による体育・文化活動への影響について

公立の小学校・中学校及び県立高等学校の教職員数の十年間の推移を見ると、児童生徒数の減、学級数の減に伴い、教職員は一貫して減少を続けており、平成八年度、小・中・高合わせて七、七四五名であったのが、今年度は七、一五九名に減少している。また、 事務職員、校務技術員、実習助手等の職員についても、一、四五二名から一、二五二名に減少している。
島根県教育委員会の予算総額は、概ね一千数十億円程度で推移してきたが、平成十五年度に一千億円を切り、 今年度の当初予算額は九百六十億円余となっている。
「地方教育費調査」 結果によれば、市町村を含む本県の学校教育費は、概ね一千三百億円程度で推移しており、ここ十年の傾向は、平成十年度の一千三百五十億円余をピークに減少し、平成十六年は一千百九十億円余となっている。
本年度から「スポーツ特別推薦入試」や、「高等学校重点校」制度の充実を図り、能力の秀でた選手の育成に努めるとともに、指導者の適正配置と長期間腰を据えて指導できる体制を確立するための人事異動ルールの見直しを研究すると共に、 専門的な技術指導力を備えた地域の指導者を中学・高校に派遣する 「運動部活動外部指導者活用事業」の拡充や「スポーツ指導者派遣事業」 の継続が必要と考えている。学校での文化活動は、芸術鑑賞事業や文化部活動への支援などを行っているが、平成十九年の全国高等学校総合文化祭島根大会を一つの目標に、「文化特別推薦入試制度」や「児童生徒学芸顕彰制度」 を活用し、中学生を含めた文化活動が縮小しないよう配慮する。

中村教育委員長答弁

校長の裁量権の拡大について

学校施設の開放の目的は、地域に根ざし、地域に親しまれる学校を目指すものであり、子どもたちの健全な育成のためには、学校、家庭、地域社会が各々の教育機能を十分に発揮し、連携を図りながら取り組むことが重要と考えており、学校施設が三者の活動を結ぶ要として利用されることを期待している。 学校施設を開放し、使用の許可を行う権限は学校長に委任されており、安全性の確保や、喫煙等青少年に悪影響を与える行為が行われないことなど、施設が教育の場であるということを踏まえた上で、それぞれの地域における様々な状況を考慮され、適切に判断されている。

澄田知事答弁

明日の島根を担う人づくりは、最優先で推進していくべき政策の柱であり、子どもたち一人一人が可能性を開花させ、社会の一員として自立して生きていくことができるよう、 積極的な取組を進めていかなければならない。しかし、財政状況が未曾有に逼迫している中で、教育予算も含め一層の効率化や経費節減を図り、財政の健全化に全力でとりくんでいる。学校教育は、人づくりの根幹をなすものであることから、「ふるさと教育推進事業」「中学校クラスサポート事業」、新しい定時制・通信制過程高校の設置への取組などに、その必要額を予算措置してきた。本県の児童生徒一人あたりの教育予算額は、小学生では全国一位、中学生では二位、高校生では四位と、全国のトップクラスにあり、今後とも最優先課題である学校教育の一層の充実に努めたい。

過去の投稿

園山繁の活動日誌