県議会だより

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平成17年11月議会一般質問(2)

海岸の消失と漁業振興について

沿岸漁業の不振は、乱獲による資源の枯渇だけでなく魚の産卵、育成の場となる藻場の喪失があると思います。もずくや藻葉の生産は近年激減しており、これは山林の荒廃やコンクリートによる護岸整備と無関係だとは思えません。
大阪湾の汚濁が進んでいた泉南地域が関西空港の護岸整備による藻場造成で甦ったとか、中国の上海地域では昆布養殖によって海洋汚染をくい止めているとかの報道もあり、海岸整備にあわせた取り組みがあれば磯焼けや藻場の喪失は防止できると考えますが、県内の海岸の整備状況についてお尋ねいたします。
また、今までに様々な漁業・漁村対策が実施され、たくさんの予算が投入されてきましたが、本県漁業は衰退し、漁村の荒廃、後継者不足は深化しています。施策のなかには、必ずしも漁業者の立場に立っていないもの、市場のリクエストや時代認識を欠いたものがあったのではないかとも思えます。
県外市場や消費者の本県水産物に対する評価は驚くほど低いことが認識されていません。これは海面漁業(天然もの)が、気象や魚の回遊により水揚げが不安定なため、市場ニーズは計画生産、販売が可能な養殖ものや輸入魚介類を主とした冷凍ものに移行していることに対応できていないことが如実に顕われていると思います。
島根県の漁業振興は、本県水産物が市場から「評価されるか否か」ではなく、「求められるか否か」という観点から施策を組み立てなければならないと思います。蓄養施設や保冷施設の整備を進め、また、整備済の漁港や荷捌き施設を活用するとともに、頑張っている漁業者を積極支援する漁業振興施策のあり方についてお尋ねします。

法正農林水産部長答弁

漁場造成等について

磯焼けとは、沿岸の大型の海藻類が自然要因あるいは人的要因によって枯れてしまい、まるで焼け野原のようになる現象のことを指します。原因としては、水温の激変や水質の汚濁、海藻を食べるウニや魚などによる被害など、複数の要因が考えられています。現在のところ、県内には、漁業被害に直接つながるような大規模な磯焼けや、藻場の喪失の報告はありませんが、昨年度、漁港漁場整備課が県内の漁協に対して実施したアンケート調査では、隠岐地区や出雲地区から「昔に比べると藻場が減少した」という漁業者の声が寄せられています。
また、隠岐の島町都万地区では、魚の食害による海藻の減少の事例が民間の研究者によって報告されています。このような状況を踏まえ、今後水産試験場等により、県内沿岸域における藻類の生育状態の把握に努める必要があると考えております。
関西国際空港用地造成株式会社の報告によると、本空港工事では、「人と自然にやさしい空港づくり」をテーマに、護岸工事においては天然護岸に近い緩斜面石積工法が採用され、併せてアカモク、シダモク、ヤツマタモクなどの藻類種苗の移植も実施されています。1988年から1990年の第一期工事では護岸延長11.2キロメートルのうち、約78%を占める8.7キロメートルで、これらの方式が取り入れられ、その後、現在までに海藻着生面積は23ヘクタールに達し、海藻の種類も63種類に及んでいるとのことです。
上海地域の昆布養殖の情報は、詳細な情報が把握できませんが、中国においては、戦前に日本から養殖技術を導入して以来、中国北部の遼東半島付近の沿岸域で昆布養殖が営まれてきました。現在は、南部の福建省沿岸まで養殖海域が拡大され、近年の中国における昆布養殖生産量は六百万トンを超えており、我が国の海藻総生産量の十倍以上に達していると言われています。
これらの養殖は、20%が食料、80%が工業用原料の生産を目的にしているとのことですが、生長に伴い水中の窒素やリンを吸収することから、水質の浄化にも一定の役割を果たしているのではないかと、考えています。
岩海苔生産や海藻生育のための施策には、岩海苔が生えやすいコンクリート面の造成や、海藻の繁茂を促進する魚礁等の設置を内容とした築いそ事業があります。これらについては、漁協または市町村が事業主体となって、水産庁の強い水産業づくり交付金事業を活用して実施されております。なお、平成16年度までに、県や国の支援により整備されたコンクリート面造成や魚礁等の設置箇所は、約百箇所になっており、今年度も松江市島根町、出雲市多伎町の二箇所で実施される予定となっております。

法正農林水産部長答弁

漁業振興について

本県漁業の振興の最も重要な課題は、資源の回復と意欲と活力のある漁業経営体の育成であります。
具体的には、悪化している資源の回復を図るため、アカアマダイの種苗生産技術の開発のような地域に密着した栽培漁業を積極的に展開することや、主要漁業種類ごとに漁業関係者とともに資源管理計画を策定し、その実行を支援していきたいと考えています。
また、厳しい状況の中でありますが、CASを利用した隠岐のイワガキやしまね定置もん、ブランド重点五品目の一つとして取り組んでいるウップルイノリなど、消費者に支持され、売れる水産物づくりや、担い手確保などに意欲的な取り組みを行っている漁業者等へ、より一層施策を集中し、厳しい予算の中で、より効果的な事業の執行を図っていくことが重要であると考えております。  いずれにしましても、漁業振興策の効果が最大限発揮されるためには、漁業関係者の意欲が最も重要でありますので、松江、浜田、隠岐の3つの水産事務所単位に漁業関係者や行政及び研究機関を構成員として設置しております地域課題解決推進会議において、地域ごとの漁業関係者と十分協議検討し、これらの課題に取り組んでまいりたいと考えております。

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