県議会だより

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平成18年6月定例議会一般質問(1)

島根県の観光振興について

私は今後の島根県振興のカギを握る「観光」にスポットを当てて、知事以下執行部の見解を質したいと存じます。
過疎化、少子化、高齢化に加え、頼みとする自治体の財政窮乏により、いま島根県内の山間地域や海岸縁の地域は瀕死の情勢です。
県は目指す方向を「自立的に発展できる快適で活力のある島根」としていますが、県内地域は、脆弱な産業・経済基盤のなかにあって、辛うじて公共投資など行政の手厚い下支えによって何とか生きながらえて来たと言っても過言ではなく、自立経済での再生、発展は容易なことではありません。
定住人口の減少、とりわけ生産年齢人口の著しい減少により、県内の消費支出は大きく落ち込んでおり、コーホート推計などの数値では今後さらに人口減少が予想されていることから、活力の維持は観光振興による交流人口の確保如何との認識は誰しも共通するところだと存じます。
そこで、先ず、知事にお尋ねいたしますが、交流人口の確保に不可欠である島根県観光のめざす方向はどのようなものでしょうか。
私は、島根県の美しい自然景観や豊富な食材を活かしたリフレッシュリゾートを目指すというものから転換し、グリーンツーリズムやブルーツーリズムの流れに代表されるように、自然環境を活かした農林水産業などの1次産業と加工、販売を融合させ、それを宿泊や食事などの消費にまでリンクさせるという、いわゆる「6次産業化」させることこそ島根の観光の目指すべき道と思いますがいかがでしょうか。
ところで、最近の観光動向についてお尋ねいたします。県内観光客の入込数の推移はいかがでしょうか。昨年はほとんどの地域で「愛・地球博」の影響をまともに受け、売り上げ、客数ともに苦戦したように聞いておりますが、県外客の動向はどうでしょうか。
特に、入込手段については、かつてのJRや観光バスの利用から、自家用車を使用したグループ旅行にシフトしており、関東周辺からは航空機利用による商品開発も増加しているとのことでありますが、実態はいかがでしょうか。
バブル期に活況を呈した国内観光地の宿泊客は、デフレや円高、規制緩和等による海外旅行単価の下落により、ここ10年で半減し、本県観光地の宿泊客数も依然として減少傾向が続いております。特に、和風旅館の利用客数の落ち込みがホテル利用客数に比較して顕著となっており、宿泊単価についても伸び悩んでいると聞いておりますが、実態はいかがでしょうか。
県内の各地域別(松江、安来、出雲、雲南、大田、浜田、益田、隠岐)の入込客数の推移と県内、県外観光客の比率、推移についてもお示しいただければと存じます。
さて、県内観光の目玉は何でしょうか。「自然環境」「山海の豊富な食材」「温泉」など、高い評価を受けているものはたくさんありますが、やはり、島根の目玉は「歴史」つまり長い時間をかけて形成された決してお金で買えない「時間という価値」だと思います。
例えば、私は鰐淵寺のすぐ近くに住まいしていますが、創建されて1400年以上経過した古刹の魅力は時空を超えた風情です。しかし、それを観光に活かすためには、相応の整備が必要であり、広大な境内と伽藍群を維持・存続させるためには膨大な手間と資金が必要で、観光寺院として割り切って俗化させるかあくまで静寂な修行道場とするのかは難しい選択です。
出雲大社にしても、いま脚光を浴びつつある石見銀山にしても同様のことが言えるわけで、こうした施設を観光拠点として位置づけ、周辺を観光客の受け入れによって活性化させようとすれば、従来発想を超えて、「民間」「宗教」といった枠を取り払うくらいの、施設そのものの維持管理や整備に地域住民と行政が直接関わりを持って支援できるような仕組みづくりが必要です。
かつて、旧平田市では、摺木山レーダー基地の麓に重文の「大般若経」を所蔵する高野寺という真言宗の古刹がありました。しかし、30年ぐらい前に無住となり、いまは森の中に一部の伽藍が残るばかりとなっています。
そこでお尋ねいたしますが、県内観光の拠点となる施設はどのようなもので、その管理状況はいかがなっておりますでしょうか。寺社や温泉など管理が不十分なところがあるのではと思うのですが・・・・。
次に観光トップブランド事業で指定されている重点3地域(隠岐、津和野、出雲)についてお尋ねいたします。
東京、名古屋、大阪などで知事がトップセールスされ、積極的な観光振興への取り組みの姿勢を示されており、昨日は、同僚議員の質疑で、昨年の対象地域の観光入込み客数が2003年に比べて4.4%増の1962万人とする答弁がありました。
しかし、益田津和野地域では道の駅シルクウェイにちはらの30万人がカウントされており、出雲松江地域では平田中ノ島の民間温浴施設「ゆらり」がオープンし、47万人を集客したことなどがあり、カウント手法では増加と見ることもできるでしょうが、トップブランド事業によって、入込み客の実数が大きく増加し、大きな効果があったとは実感できていないのが現状です。
重点3地域の観光商品の開発や共同販売などはどのように取り組まれ、観光客の受け入れ態勢の整備などはどのように計画され、実行されているのかお尋ねいたします。
また、この3地域について、域内のアクセス整備の現状とそこに至る高速道(主要幹線道)、空港・港湾、JR駅(私鉄駅)はどのようになっておりますでしょうか。
かつて、国土交通省は交通の衝をなす施設間の整備を「マルチモーダル」として重点整備する方針と伺っておりましたが、島根県ではどのような取り組みがされたでしょうか。
折角のトップブランド事業ですが、県が用意しているものは関係行政または観光関連団体で取り組めるソフト事業がほとんどで、肝心要の受け入れ施設が取り組めるメニューがほとんど無いと言うことです。
新たに、○○観光協会や○○連絡協議会などの組織を設立し、行政や商工会議所、商工会などのトップが役員としてズラリと顔を並べ、事務局に役所の職員を充て、運営費のほとんどを行政の拠出で賄い、年度初めに会合を開いて事業計画を決め、調査はコンサル、PRは広告代理店、エージェント回りは業者毎、という取り組みではなかなか実効が上がりません。
用意されたメニューが、あまり進化していないように思えます。松江周辺では今年度から「縁結びグッズ」が用意されましたが、ポータルサイトでの地域アピールなどが区々のように感じていますが、どのように総括されているでしょうか。
次にかけがえのない島根の歴史とそれを感じることのできる原風景を守るために何が必要なのかということをお考えいただきたいと存じます。
豊かな自然、歴史資料、伝統的建造物など日本否世界に誇る島根の歴史を守るためには「適切な管理」が不可欠であります。
そうした遺産、資産を存続させるための事業主体はほとんどがその所有者であり、事業者である場合が多いわけですが、まれに地域であったりもします。
しかし、長い時間の中で主体が疲弊したり崩壊することもままあります。そうしたときに時の行政、権力者にに力があればそれを警鐘、存続するための支援も可能ですが、今、頼みとする行政体の力が低下しつつあります。
ともすれば、今のままでは、行政の力が弱まると地域は安楽死しななければならないのでしょうか。
いまこそ「官民の協同」が必要であり、歴史遺産や自然環境を保全、継承するために公共投資のあり方も含めて、根本的に改めるべきであり、官民の役割分担についても既成概念を撤去すべだと思います。そうした意味では、民間投資促進の態勢づくりが急務でありますがいかがでしょうか。
また、現在、国土交通省、経済産業省、環境省、文部科学省、農林水産省、厚生労働省、総務省と関係監督官庁が多岐に亘り、県でも所管部局が様々となっています。
観光政策については、部局横断で一元化した施策展開が可能になるよう、目に見えるかたちを期待いたします。この点については、知事のご見解をお尋ねし、質問を終わります。

三宅政策企画局長答弁

島根の歴史とそれを感じる原風景を守るための方策について

本県では、地域の人々に支えられながら、全国に誇りうる自然や歴史遺産、伝統文化が豊富に受け継がれてきており、これらが県民の誇りであり、地域づくりの源になっているとともに、本県を訪れる観光客にとっても最大の魅力となっております。
来月、本県で開催します全国知事会議においても、会議終了後に多くの知事が、県内各地で自然、歴史、文化に直接触れてお帰りになられると聞いております。多忙を極める知事たちでさえも惹きつける「長い歴史に彩られた本物の素晴らしさ」に改めて自信を深めているところであり、この大いなる財産を子孫に守り伝えていくことが今を生きる私たちの責務でもあると感じているところです。
このような都会や他県では決して見られない島根の素晴らしさを保存継承するためには、地道な努力が必要です。
地域資源の中でも、例えば神社仏閣などについては出雲大社のように指定文化財となっている施設は、文化財保護の観点から、その修繕などに国・県・市町村の助成制度を活用することが可能です。
しかしながら様々な施設に対して、すべからく公的支援を行うことは困難であり、一定のルールの下に限られた施設に対し支援を行っているのが現状です。新たな視点を加えて、公的支援を拡大してゆくことは難しいと考えています。
地域の資源を守っていくことはとても重要なことですが、その方法については、民間資本の活用も含め先ずは各々の地域で一緒になって十分な話し合いが必要であると思われます。
ただ、他県においては、地元市町村と民間企業が連携し、地域の資源・特色を生かした新たな旅行商品の企画・提案により、地域振興に努めているところもあります。
こうした事例が、地域資源の維持・管理に寄与できるかどうかについても調査してまいりたいと考えています。

伊藤土木部長答弁

本県の「マルチモーダル」について

公共交通機関の乗り継ぎ利便性の向上、利用の促進を図ること等により都市への車の集中を緩和する取組です。
重点三地域では、松江・出雲地域における鉄道・バスを利用したパーク&ライドや、津和野町におけるパーク&ライドの実施と循環バスの運行等をあわせた交通社会実験等が行われています。

山下地域振興部長答弁

観光トップブランド創出事業で指定されている重点三地域の域内アクセスの整備等について
松江・出雲地域は、空港連絡バスの運行や高速道路とのアクセス道路整備に加えまして、域内の主要観光地と駅等の交通拠点を結ぶ路線バスや施設独自のシャトルバスも運行されています。
益田・津和野地域では、萩・石見空港連絡バスの運行が行われています。その他、山口・宇部空港や萩、津和野を結ぶ観光周遊バスの運行が行われております。
隠岐地域では、来月六日に新空港が開港しジェット機が就航するのを機に、空港発着の乗合いタクシーや定期観光バスの運行が開始される等、域内アクセスの整備が進んでいます。しかしながら、点から線、面的な広がりがないということは、ご指摘のとおりでございます。

山根商工労働部長答弁

観光トップブランドの指定3地域の現状と課題について

観光振興を図るためには、個々の観光事業者だけでなく、行政・民間団体、さらにはそこに住む住民が一体となって、地域をあげた魅力ある観光地づくりを行っていくことが非常に重要であると考えております。
このため、各地域が、自ら主体的に行う観光商品の開発や観光客の受け入れ態勢の整備、人材育成等の取組に対し、県は専門的なノウハウの提供と事業費の支援を行っております。 また、観光誘客プロモーターによる売込みや首都圏・関西圏でのトップセールス、観光情報説明会の開催等販売宣伝の強化を行い、企画・マーケティング・商品開発から販売までの一貫した取組が進められるよう支援しているところです。
なお、ご指摘のありました様な、観光客を受け入れる施設が取り組めるメニューにつきましては、国・県等の既存の各種支援施策の活用を含め、今後の研究課題と考えております。
松江・出雲地域では、「神話の国縁結び観光協会」が中心となり、これまでに「縁結び」をキーワードとした旅行会社の企画商品造成や冬季観光連絡バスの運行、空港を起点とした周遊チケットの設定等広域観光商品の開発に取り組んでおります。
また、施設での案内体制の充実やおもてなし向上活動の研究などホスピタリティの醸成にも取り組んでいます。
益田・津和野地域では、現在、ガイドを活用した町並み散策や体験メニューの設定、郷土料理の活用、石見神楽の定期上演等、地域素材を活用した具体的な旅行商品化に向けた取組が進みつつあります。
また、観光商品の企画、販売、受入等を地元が主体となって行う仕組、組織づくりの検討が現在行われています。
隠岐地域では、隠岐らしい郷土料理やエコツアー等の体験メニューの商品化、四島周遊パスポートの設定等が現在進められています。
また、旅行会社とタイアップしたイベントの開催や四島の宿泊情報等を一元的にコントロールする隠岐ツアーデスクの運用にも取り組んでいます。
今後は、今年度末を目途に隠岐全体の観光を企画する新たな組織の設立に向け、検討等を進めていく予定です。

山根商工労働部長答弁

観光動向と地域別入込客数の推移について

観光客入り込み数については、平成17年度は2605万人余でした。これを前年度と比較すると3.5%の増加ですが、この中の、調査方法の変更増加分を差し引き、前年と同じ条件で比較すると、0.6%の減少となり、ほぼ前年と同じ状況でございます。昨年は、愛知万博の開催等大きなマイナス要因があった状況で、グラントワのオープン等プラス要因もあり、ほぼ前年並みの結果となっています。その推移については、新規施設のオープン等により大きく増加した平成12年及び平成13年以降、ほぼ横ばい状況にあります。
県が平成17年度に実施したアンケート調査によりますと、観光客入り込み数に占める県外客の割合は、74%でございます。対前年比0.9ポイント減少しました。この調査は、平成16年から実施してているため、平成15年以前の数値をお示しできませんので、ご承知ください。次に、その入り込み手段についてですが、ご指摘のとおり、自家用車利用が圧倒的に多く68%にのぼっております。以下、貸切バス12%、航空機7.5%、鉄道7%、高速バス3.8%の順になっています。
動向としてましては、貸切バスの減少傾向及び自家用車と航空機の増加傾向が顕著で、特に航空機利用は、この10年で約2倍になっています。
平成17年度の宿泊客総数は、310万人余で、現在の調査方法を開始した平成9年度と同数です。旅館、ホテルを区分した県内の宿泊統計はありませんが、客室数の推移を見ますと、同じく平成9年度と比較して、ホテルが約30%増加しているのに対し、旅館は13%減少しております。宿泊者総数が変わっていないことを考えると、ホテルの宿泊者数は増加、旅館の宿泊者数は減少しているものと推測されます。また、県内の主要宿泊地である玉造温泉は、この8年間で21%減少しております。松江しんじ湖温泉は、32%減少しているということでございます。
県が平成17年度に実施したアンケート調査によると、観光客が県内で消費した総旅行費用は、県内の宿泊者が18500円、県外の宿泊者が32200円で、8年前の調査と比較すると、県内の宿泊者は22%の減少、県外の宿泊者で4.4%の減少となり、明確なデータではございませんが、宿泊単価も同様に減少しているものと推測されます。
平成17年の県東部は、1919万9千人で対前年比4%の増になっております。平成9年比で10.6%の増、県西部は、642万6千人でございます。対前年比4.7%の増加、平成9年度対比で3%の増、隠岐は、入込客数43万3千人で対前年比2.9%の増、平成9年度比で24.6%の減少になっております。
次に、圏域別の県内・県外客比率についてですが、県が県内22カ所において実施したアンケート調査を基に、これらを各区域別に一定の推測により算出しますと、松江・安来圏域は90%、出雲圏域は69%、雲南圏域は62%、大田・邑智圏域は66%、浜田圏域は64%、益田圏域は70%、隠岐圏域は85%ということになっております。
観光動態調査における主要観光施設は、出雲大社や島根ワイナリー、津和野町の太鼓谷稲成神社、一畑薬師、道の駅キララ多伎、足立美術館などです。
このほかの観光地として、日御碕や石見海浜公園、玉造温泉などもあります。
これらの管理につきましては、施設自らが整備や補修を行っています。
なお、出雲大社や日御碕神社のように指定文化財を所有している施設は、文化財保護法に基づきまして指定文化財の修繕・管理などに国・県の助成制度を活用することが可能です。

澄田知事答弁

島根県観光のめざす方向について

今日の観光が、かつてとは大きく様変わりし、自然や名所旧跡などの観光資源を単に見るというだけでなく、様々な知的欲求を満たし、その地域ならではの特色ある文化や歴史にふれるなどの、多様な体験へと変容していると、私は考えています。
そうした観光スタイルの変化に対応していくため、島根ならではの素材の生産と加工、販売を一貫させ、地域の魅力として新たな観光資源を生み出すなど、受け入れる側が様々な価値を提供できるように努めることが、これからの本県の観光がめざす方向と考えています。この点、議員の、「六次産業化」を目指すべきとの御提案と相通ずるものと考えます。
かつて多様な観光ニーズを「十人十色」と称していましたが、今では、「一人十色」であります。
こうした「一人十色」の観光ニーズに対応するには、御指摘のとおり、行政においても、様々な部局を横断した取組が大切であり、私も常々そのように考えております。
今後、県の観光行政について、各部局の専門性も生かしながら、これまでにも増して部局横断、部局連携により進めるよう、政策企画会議などの場も積極的に活用しながら取り組んでまいります。

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