県議会だより

Reports

平成18年9月議会一般質問(一問一答質問)

1,県内の松枯れの状況について

マツクイムシによる松枯れの発生のメカニズムと県内の発生状況、被害対策とその効果についてお尋ねします。また、最近、島根半島、とりわけ弥山地域の象徴である旅伏山と鵜鷺地域の松枯れが目立つようになっていますが認識はどうですか。マツクイムシ対策についての課題とあわせてお尋ねします。

光吉農林水産部長答弁
発生のメカニズムについて
広範囲に発生している松枯れは、一般にマツクイムシと呼ばれていますが、正しくは『松材線虫病』というマツの感染力の強い伝染病被害であります。病原は「マツノザイセンチュウ」という体長1mmの線虫で、媒介するのが「マツノマダラカミキリ」という昆虫で、昭和46年に森林総合研究所で発見されました。マツノマダラカミキリは5月下旬から7月中旬に枯れた松から脱出し、健全な松を摂食する際にマツノザイセンチュウを感染させ、松は6月から8月下旬にかけて枯死します。

県内の被害状況について
島根県では昭和40年代後半に県西部の海岸でマツクイムシによる被害が急増し、昭和50年代半ばから急速に県下全域に拡大しました。感染のピークは昭和59年で、年間11万立米の被害量は全国一でした。平成17年度は隠岐の島町で6,659㌶で22,162立米、出雲市で1,891㌶7,151立米など県内全体で16,654㌶で36,540立米(17万本)の被害が確認されています。

被害対策と効果について
被害対策を効果的かつ重点的に実施するため、防災的機能が高く重要な松林等で継続的な防除が可能な範囲に限定して対策を推進し、対策対象松林において市町村が国庫補助と県単事業を活用して、予防措置である空中散布等と駆除措置である伐倒駆除等を継続しています。県内の松枯れは昭和59年をピークに暫減し、近年は3~4万立米で推移していますが、空中散布の効果は、毎年出雲市で効果調査を実施し、防除を継続している地域での被害の抑制効果を実証しています。

今後の課題と対策について
防除区域の松枯れ発生率は低いものの、人家等から空中散布の保安距離として設定された区域から松枯れが拡大する傾向にあり、また、伝染病を回復させる特効薬がないことから、被害は依然拡大しています。現在までのマツクイムシ被害対策の実施により、保全すべき松林の被害量は抑制されましたが、限られた予算を有効に活用するために重要な松林を対象に対策を継続する必要があり、隠岐の島町と出雲市では被害が大きく重点的な対策が必要です。被害跡地については、松以外が生育せず土砂崩壊の原因の可能性がある地域については、平成20年度にマツノザイセンチュウ抵抗性松の種子の供給開始を予定しており、被害跡地の植栽等に活用する考えです。

山根環境生活部長答弁
島根半島地域の松枯れについて
島根半島弥山地域を中心に住民の理解が得られる地域で空中散布を継続してきましたが、保安距離として設定された地域からマツクイムシ被害が拡大したことから、平成15年度から旅伏山周辺への空中散布は中止され、松林全体に枯死が拡大したものと認識しています。また、鵜鷺地区については森林公園の新設により空中散布の範囲が縮小されたことから被害が拡大したと考えられます。

5.モラルの低下について

「クールビズ」により、公務員はノーネクタイ勤務になりました。たくさんの小学校でも服装が自由になっていますが、入学式、 卒業式の服装についての指導は十分でしょうか。ものごとの「たてわけ」がなくなり、社会のモラル低下に拍車がかかっているような気がします。子供や公務員の服装は公私の区別をなくし、風紀、自意識の低下を招きかねず、早期に是正が必要ではないかと思います。また、次々と新しい法令が作られ、地域住民が右往左往しております。農薬や個人情報、投資規制など対象はごく一部の人のルール違反のために一般市民の生活が規制ずくめになっています。9月21日、東京地方裁判所は、東京都の教育公務員への国旗・国歌に対する法令遵守違反に対する懲戒処分を違憲としました。道理や伝統など日本人の精神文化は崩壊の危機にあります。国旗や国歌を無視する人間が公立学校で生徒を指導するなど世も末ですが、知事の所感を求めます。

澄田知事答弁
クールビズについて
体感温度を下げ、冷房の室温を高めに設定するクールビズは省エネルギーの観点から有効であり、国民運動として定着しつつありますが、マナーを失しないよう一定の節度を保つことが肝要であり、軽装勤務としたために公務員としての規律や自覚が揺らぐことがないよう、意を用いる考えです。

新しい法令の制定について
昔、漢の高祖が、秦の煩雑な法を廃し、「法三章(法は3章のみ)」として人々から喜ばれたとの故事の通り、法令は国家による人を強制的に規律するもので最小限が望ましいと思いますが、時代の変化により社会連帯が弱まっており、また、社会の複雑化・高度化により様々な分野で新たな問題が生じていることから、それを取り締まる法令の制定はやむを得ない面があります。国民一人ひとりが社会の構成員としての自覚を持つことが国家の取締を最小限にする途であると考えます。

東京地裁の国旗・国歌に関する判決について
国のシンボルである国旗・国家を敬い、大切にする態度は、オリンピックの表彰式に象徴されるように世界共通のものであります。教育公務員には法令遵守が義務づけられており、わが国の歴史において一時期、日の丸、君が代が戦争の旗印となったからといって、社会マナーを児童・生徒に教導するべき教職員が自己の思想信条を優先させることは許し難い行為であると存じます。今回の東京地裁の判決についての見解は議員と全く意を同じくするものであり、到底承服しがたいものと考えます。

藤原教育長答弁
学校での服装指導について
県内の小学校の約3割が自由服であり、入学式や卒業式等の行事についてはその意義や目的を子どもたちにきちんと説明し、襟のついた服を着用するとか、好ましい服装のあり方について指導しており、保護者に対しても学校だより等で考え方を伝えていると承知しています。

「たてわけ」の重要性について
けじめ、分別、たてわけというものは大人、子どもに関わりなく大切なものであり、服装についてもけじめをつけ、きちんとした身なりをすれば心も引き締まると思います。ただ、服装とモラルの因果関係について語ることは難しい問題であると思います。

4,地域のコミュニティについて

県内市町村別の町内会等自治会の組織率と加入率はどの程度でしょうか。統計法では調査に対する国民の協力義務が定められていますが、国勢調査を個人情報保護法を盾に拒否するケースがあるそうですが、県内の実態はいかがでしょうか。また、PTAの緊急連絡網が不調になるなど、匿名社会の懸念、つまり学校・家庭・地域の連携が「安全・安心」の基本と言われますが、地域の連携低下を危惧しています。駐在所員や外勤警察官の家屋、住民の調査状況についてもお尋ねします。7月の梅雨前線豪雨では「避難勧告」などに対する対象家屋、住民数について必ずしもすべての人が住民登録をしておらず、市町村の住民台帳登録者数と実際の住民数に相違がありました。こうした事態は、消防機関と警察の情報交換が不可欠だと思いますが実態についてお尋ねします。また、ケーブルテレビや有線放送によって行政情報が周知されているが、緊急事態の伝達には必ずしも十分だとは言えず、行政防災無線が有効だと思いますが整備の状況と今後の計画はいかがでしょうか。

山下地域振興部長答弁
町内会の組織率について
自治会のとらえ方に統一的な基準はありませんが、県内市町村別の組織率は単純平均で概ね90%程度と推定していますが、市街地では70%程度との報告もあります。

加松総務部長答弁
国勢調査について
国勢調査など指定統計調査には申告義務がありますが、昨年の国勢調査では260,854世帯のうち、2,511件(平成12年は1,500件)について調査票の提出がありませんでした。

消防機関と警察の連携について
避難勧告の情報は市町村が把握している対象家屋、住民数が消防機関に対して伝達されますが、住民登録をしていない住民は含まれないため、災害時の活動に対しては地域の居住実態の把握を行っている警察と連携し情報把握に努めています。しかし、本年7月の豪雨の際に、報道発表と実態が乖離したこともあり、今後は必要に応じて、地区災害対策本部等から被災市町村への職員派遣などを考慮することとしました。

防災無線の整備状況について
災害時にケーブルの切断や停電等の影響を受けない防災行政無線は最も有効な通信手段であり、市町村に対して整備を働きかけており、既に18市町村が整備し、未整備の3町に対し整備を勧めています。

藤原教育長答弁
緊急連絡網について
地域において予め緊急時の連絡方法を定め、助け合いが行える体制をつくることは重要ですが、個人情報保護法により、本人同意が得られないとの理由により緊急連絡網の作成が困難となる等の事例を聞いており、必要性に対する理解を得られるような説明が重要と認識しています。公立学校で学級毎の緊急連絡網を作成しているのは、小学校で53%(138/262)、中学校で86%(92/107)であり、匿名性の高い社会では社会の連帯感が稀薄になることから、学校がPTAと協議しながら地域社会とのコミュニケーションが図られるよう対応すべきと考えています。

山田警察本部長答弁
警察官巡回連絡について
警察では「巡回連絡制度」により事業所や家庭に対し、防犯や事故防止の観点から「巡回連絡カード」の記載を求めていますが、昼間不在世帯の増加等により、居住実態の正確な把握が難しくなっています。

3.景観の保護・保全について

景観の保護・保全についてお尋ねします。いままで、美しい自然環境、山並みを守っているのは山林所有者でしたが、もはや受益者として山林管理のすべてを山林所有者や地域住民があたることは難しいと思います。先般、平田地域の風力発電所事業に対する景観論争が活発でしたが、北山の景観について受益者は誰でしょうか。景観保護行政を進めるならば守るべき範囲と費用負担についてルー ル化すべきだと思います。また、地域社会や民間事業者の理解が得られ、県の負担が軽減できるものについては、予算の優先順位や事業枠を超えて国の補助事業を活用するなど事業の量的確保を図ってはいかがでしょうか。

澄田知事答弁
自然環境や景観の継承・保全について
良好な景観は現在および将来にわたって地域住民はもとより県民全体、そして本県を訪れる多くの人々が恩恵を享受するもので、県民、事業者、行政が一体となって保全・創造すべきものと考えています。

自然景観の受益者について
ふるさと島根の景観は人が自然に手を加えながら長い歴史のなかで営々と培ってきたものであり、県民共有の財産であると考えます。

景観保全に対するコスト負担について
県では、特に景観形成を配慮すべき地域として「宍道湖景観形成地域」を指定し、自然公園や名勝旧跡などにも「景観形成基準ガイドプラン」を示しています。今後、強制力を伴う広域的な地域を指定するためには還啓住民の合意形成などの問題があり、費用負担には馴染まないと考えています。

三宅政策企画局長答弁
事業枠の確保について
財政改革を推進しつつ、限られた財源でできる限り効果の上がる施策を行うためには、事業の選択と集中や優先順位付けにより財源の重点化や国庫補助金等の有利な財源を活用することも重要です。個々の事業は採択要件などケースバイケースですが、より少ない県費で効果のある施策を展開するという観点で、積極的に関係機関に働きかけています。

2.人工林の荒廃について

次に人工林と自然林の状況についてお尋ねします。県内の人工林の面積と管理状況および平均の齢級はおおむねどうでしょうか。また、県や市町村などによる分収林や林業公社の伐採延伸と新植の中止による山林環境への影響はどうですか。
近年、下草の繁茂不足による河川、湖沼への土砂流失が増大しているように思いますがいかがでしょうか。特に、宍道湖への流入河川や島根半島地域が顕著だと思いますが、漁業への影響や法面崩壊の状況についてお尋ねします。また、受光伐の不足による山の土の粘力が低下しているように思いますが、山が痩せる状況をどう捉えていますか。

光吉農林水産部長答弁
人工林の状況について
島根県の人工林面積は186千㌶で、天然林面積は287千㌶であり、人工林で間伐が必要な森林は36400㌶で5,526㌶が実施済となっています。戦後の拡大造林面積は204千㌶で、平均齢級は8齢級(36~40年生)となっています。

分収林の伐採延伸について
県内の分収林は58600㌶(民有林の12%)、平均齢級は6齢級で、県行造林834㌶、市町村行造林5,988㌶、林業公社22,200㌶、緑資源機構28,467㌶となっています。林業公社の伐採延伸は、皆伐・植栽頻度の減少により長期にわたって公益的機能の発揮や生産効率の高い大径材生産が期待でき、また、広葉樹伐採跡地は自然に再生するため、新植凍結による影響は少ないと考えています。

放置森林の対応について
平成15年度に4齢級から8齢級の森林83千㌶を対象に過去10年間の間伐実績状況を調査したところ、59.8%が10年以上放置されていました。県内の10年間に1回の間伐が必要な4齢級から14齢級の森林面積は115千㌶だが、間伐は年平均4,700㌶に止まっています。木材価格の低迷により森林所有者の整備意欲が低下し、管理されない森林が増加していることは事実で、森林からの恩恵を享受する県民全体で森林整備を行う必要があるという社会合意が形成されつつあります。昨年から水と緑の森づくり税を創設し、「県民再生の森事業」を実施しており、森林が循環する仕組みづくりの検討が必要と考えています。

河川、湖沼への土砂流失について
下層植生のある森林に比べ、下層植生のない森林からの土砂流出量は約10倍という調査結果もありますが、森林からの土砂流出量が宍道湖、島根半島地域で増大しているかどうかは把握していません。

漁業への影響について
現在のところ、県内においては河川、湖沼、沿岸域とも、森林の荒廃による漁業への大きな影響は見られていないと認識しています。

山林土砂の粘力低下について
放置された人工林は樹木の根や地面を覆う落ち葉や下草がなくなり、土砂流出を防ぐ力が低下するため、栄養分のある表土が流出し土地が痩せると認識しているところです。

伊藤土木部長答弁
法面崩壊の状況について
半島地域の道路の法面に繁茂する木々がだんだんお辞儀をするようになっており、枯損木の路面への崩落が目立つように思いますが 島根半島西部では釜浦町で平成11年に、塩津町で平成15年と18年に落石が発生しました。半島付近の道路の山腹に枯損木が多いことも要因の一つであることから、定期的に道路パトロールを実施し、法面点検や除草、支障木の撤去などの維持作業と必要な災害防除事業を実施しています。

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