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島根県では県産品のブランド化、流通・販売を一体化させることによって県産農林産物の品質向上、高規格化を進めようとの取り組みをめざし、農林水産部、商工労働部共管の島根ブランド推進課が設置されたと承知しております。
従来、県内農林水産物のほとんどは、JA、JFなどの系統組織を通じて「市場」と呼ばれる生産、卸売市場に出荷され、施設費や人件費、生産資材費などの変動を価格転嫁できないしくみであり、また、生産・流通・販売のすべてのコストを生産者が負担するという生産者の自己犠牲で成り立ってきました。
道路や通信網などネットワーク状のインフラ整備の進捗により、近年、急速に都市と田舎の交流が促進しており、「産直市」に見られるように、生産者による直売が拡大し、また、宅配やインターネットの爆発的な普及により、通販による販売額が全国のデパート売り上げを凌駕するまでになっています。
輸入野菜からの残留農薬やBSE感染牛の混入などにより、消費者の食の安全に対する欲求は大きく高まっている、今こそが、生産・販売を一体化させる大きなチャンスです。豊かな自然環境を持つ、島根県の零細規模だからこそできる徹底した品質管理を売り込む千載一遇の機会でありながら、島根県の一次産業は生産量、販売額、就業者ともに大幅に減少しており、、行政の取り組みも旧態依然で、一向に変化がないように見えるのです。
BSE感染牛の出現によって日本の牛肉生産は大きなピンチを迎えました。しかし、これを徹底した検査体制の整備とトレーサビリティの確立によって克服し、現在は揺るぎない消費者の信頼を勝ち得ていますが、「島根ブランド」の確立というものの、安全・安心の取り組みや販売戦略等の取り組みは大甘です。日本橋の島根館での売り上げが増え、首都圏で島根産品の販売が一時的に上昇したとしても、実際に島根産品の評価や信頼が大きく上昇しているとはとても思えないのです。
今年の秋、島根半島の漁港ではハマチの水揚げが順調でしたが、浜値は買いたたかれ、1kgの活きハマチがわずか80円という日もありました。デラウェアも西条柿も厳しい状況が続いております。どうすれば島根の農・林・水産業の現状が打破できるのでしょうか。どうすれば島根の農村・山村・漁村の衰退が防止できるのでしょうか。県は、この先、島根の一次産業の将来をどう描き、時代に即応、先取りする施策展開を図っていくのかお尋ねしたいのであります。
どんなに立派な「○○活性化プラン」と銘打った計画が策定されても一向に打開できない要因はどこにあるのかお尋ねしたいのであります。「時代が、社会が、環境が」という逃げ口上はもはや通用しません。民間は、計画し、資本投入して実行が上がらなければ即刻修正するか、責任が及びます。
無責任農政、無責任水産行政、無責任山林行政・・・・。すべてを行政施策の失敗とは言いませんが、一次産業の振興のため、県が主体として担うべき役割を絞って、多少の反発はあっても補助金行政からの脱却を図る必要があるのではないでしょうか。
│掲載日:2007年04月18日│
これまで、県においては、「新農業・農村活性化プラン」などの計画を策定し、各般の施策を講じてきているところでありますが、これまでの島根の農林水産業の現状を見ると、担い手の減少、生産額の低迷など、全国的な傾向に抗し切れていないという認識を持っております。私は、島根の農林水産業の元気を取り戻すためには、社会経済状況の大きな変化に的確に対応していくことが必要であると考えております。
即ち、農業を例にとれば、食糧管理制度の下で米をつくり、単に特定のルートにのせれば良かった時代や、その他の農産物について卸売市場への出荷が大部分を占めた時代が長く続きました。しかし、社会経済の成熟に伴い、今や、消費者の食に対するニーズは、著しく高度化しており、また、販売や流通のルートなども劇的に多様化しているところであります。
このような時代においては、一次産業に携わる側が、消費者に売ることを第一に考え、そのニーズに如何に応えていくかという視点に立って、自らの生産と販売に創意工夫を凝らしていくことが何よりも重要であります。県としては、そのような生産サイドの主体的な取組みを従来の枠組みにとらわれないで後押しすることにより、一次産業がより多くの所得を得て、自立していけるよう努めていく必要があると考えております。
本県では、農業政策推進に当たり、限られた予算の中で、できるだけ大きな効果が発揮できるよう、国の事業を積極的に活用しつつ、地域の実態を踏まえた独自の支援策も組み合わせて、施策を展開しているところであります。
このような中、国においては、平成十九年度から、産業政策としての「品目横断的経営安定対策」を農政改革の柱として、導入することとされております。この対策については、中山間地域の多い本県においても、農業を持続的・継続的に行っていく経営体を確保する観点から重要と考えており、県独自の施策も講じながら、担い手の育成に取り組んでいく必要があります。
また、農山漁村の活性化のためには、産業政策のみならず、車の両輪として必要な地域政策を講じていかなければなりませんが、国においては、同じく平成十九年度から「農地・水・環境保全向上対策」を導入することとされております。
県といたしましては、この対策の取組みを積極的に推進するとともに、これまでの「中山間地域等直接支払事業」や県独自の各種地域振興施策なども活用し、農山漁村の一層の振興を図っていく必要があると考えております。