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ニホンジカの生息調査の方法に区画法があります。あらかじめ一定の区域を定めてその中に実際シカを何頭目視できるかという調査方法ですが、私も過去これに参加し実際に山林を踏査してきました。山林の荒廃は私達の想像以上です。ほとんどの人工林は山の中が真っ暗で、ほとんど草は生えていないのです。だから少量の雨でも土砂が流出し川は濁流となります。梅雨期ともなれば斜面・法面崩壊も顕著となっています。
私は平成9年7月12日に布勢川の土石流災害に遭い、避難生活も体験しました。この原因も密植状態の人工林の荒廃でした。山林の保水力の低下は山間農地の荒廃により下流部を直撃しかねない極めて憂慮すべき状況となります。現状で治山事業による保安林調査の実施実績はあると聞いておりますが、この際、県内山林の植生調査とそれに基づく適正な間伐、受光伐計画の立案をはじめとする山林の荒廃防止対策が必要であると考えますがご見解をお尋ねいたします。
河川の源流、上流部の荒廃と流入部となる湖沼、海岸の荒廃も顕著となってきました。いま島根半島の海岸では海藻の消失が言われており、宍道湖も水質や湖底、海底の荒廃が進んでいるとの指摘があります。山林の管理を徹底強化することと流入汚濁負荷を減らすこと、つまり家庭や事業所からの排水対策と農業をはじめとする産業排水の処理の必要性を強く感じるわけであります。特に閉鎖水域である宍道湖、中海への対策は喫緊であり、流域の下水道整備はもとより、チッソやリン等の流入負荷対策となる農業廃水を講ずることが斐伊川や宍道湖・中海の水質改善には不可欠だと思うのであります。
昨年11月、茨城県筑波市で土壌利用による排水処理のパイロットプラントを見学しましたが、下水道整備に加えこうした視点を政策に加えるべきと思います。できれば、「宍道湖・中海政策課」の設置を検討されセクションの枠を越え総合的な観点から施策を検討、実施すべきと考えます。また、海岸部の対策としては「魚村保安林」の拡大等により山林植生の強化が必要と考えます。また、山林の管理を所有者がほとんど放棄しつつある現状では、もはやマンパワーも森林組合のみでは対応不可となっており、山林管理に建設事業従事者の活用も検討すべきと思います。
私は山林管理は一部を除いて林業振興の観点から環境保全への政策転換がなければ達成できないと思いますが、山林の所有権や木材の伐採・販売権等の一定の制限を付して行政に主体を移行することも検討すべきと思いますが見解をお尋ねいたしす。
│掲載日:2007年03月10日│
はじめに山林の植生調査と徹底的な間伐、受光伐についてお答えいたします。間伐、受光伐は、植栽木の密度を調整し、残された木の成長を促進することにより森林の木材生産機能と、山地災害の防止などの公益的機能を高度に発揮させるものであります。このため県においては間伐を重点課題のひとつと位置づけ平成11年度に策定した「間伐推進基本方針」に基づき間伐の推進を図ってきたところで、今年度までの5年間で約19000ヘクタールの実績を見込んでおります。しかし、間伐を必要とする森林は未だ多く今後はこれらの森林の植生状況を勘案しつつ、緊急度の高いところから引き続き間伐を実施する必要があります。このため、平成16年度を初年度とする新たな間伐推進計画を策定し、各種の補助事業を活用しながら森林所有者の理解と協力を得て間伐、受光伐を計画的に推進してまいります。
林業振興から環境保全への政策転換についてであります。森林は、木材生産機能のみならず県土の保全、水源の涵養などの公益的機能を有しており、県土の8割を占める森林の整備は本県にとって極めて重要であると認識しております。このため、平成13年度に、従来の林業や木材産業の振興ばかりでなく環境の保全や公益的機能を重視した「新しまね森林・林業活性化プラン」を策定しました。昨年度から森林を重複しない形で3つに区分し、その区分ごとに重視する機能が高度に発揮されるよう施策の重点化を図ることとしております。具体的には、水源の涵養や県土の保全を重視する「水土保全林」、環境教育などの場としての機能を重視する「森林と人の共生林」、木材などの生産を重視する「資源の循環利用林」の3つに区分したところで、今後ともそれぞれの森林の機能が十分発揮できるよう県民の理解と協力の下、適正な森林の整備に努めてまいります。