Reports
「5~8年後に道州制を導入」との報道をうけて、またぞろ道州制に対する議論が沸騰しそうな予感があります。国のかたちや行政範囲、道州と市町村の役割分担、費用負担のあり方など基本的な議論がほとんどないまま、道州の範囲、規模など、各論が先行しています。このまま推移すれば、道州制は、市町村の数が減っただけで、行政の当事者能力が向上したどころか、対象エリアの拡大によるサービスコストの増により、さらに厳しい財政状況に追い込まれた市町村が増加しただけの、先年の平成の大合併と同じで、単なる都道府県の合併再編となる可能性が強いと思います。
また、突然降ってわいたような「ふるさと納税」制度ですが、本来、国が保障すべき一定の行政サービス水準が、地域によって大きく異なってきています。従来は農業や林業など生産活動と一体化し、無コストで行われてきた、国民の生存に不可欠な国土保全や環境、水資源の涵養などの要素が、農林業の経済性の低下や過疎化、高齢化によって担い手が消失したため、大きなコスト負担となっています。、「格差」の顕在化に拍車をかけています。
一方、ヒト、モノ、カネは都市に集中し、都市と地方の経済格差がますます大きくなる中で、国は地方自治体間の財源調整機能を果たしている地方交付税制度を縮小しつつあります。「三位一体改革」だの「地方分権確立」だのという名称看板は、国政選挙での『一票の格差』裁判による違憲判決により大都市圏選出の国会議員数が増加し、全国会議員定数の2/3が十大都市圏選出の議員であることと無関係ではなく、国会議員の数も都市と地方の「格差」が顕在化してきました。
税によって富の再配分を行い、国民がある程度平均的な生活ができるようにすることは福祉国家として至極当然であり、その役割を国が担う必要があることは自明であります。今回の「ふるさと納税」制度は地方出身者が納税地を居住地の如何に関わらず、自らの意志で決めることができるとするものですが、三位一体改革による税源委譲によって都市と地方の格差は一段と拡大し、地方交付税の縮小によって地方財政がさらに疲弊していることを考えれば、国、都道府県、市町村の3つに分かれている徴税を一本化し、偏在する税源をきちんと再配分した上で、行政サービスを可能にすべきではないでしょうか。私は、「ふるさと納税」の導入を全否定しようとは思いませんが、現在の議論を聞いていると、国が保障して担うべき行政サービスに必要な税の再配分の責任を曖昧にするおそれがあるのではないかと思います。
そこで、お尋ねいたしますが、知事は、地方交付税が担っている地方の財源調整機能の存続や今後の見通し、また、菅総務相が提唱する「ふるさと納税制度」に対する所感と今後の道州制論議に対する島根県知事としての基本的な立場と見解をお示し願います。
今春、「白い船」の錦織良成監督により、雲南市を舞台にした「うん、何?UN-NAN~やまたのおろち伝説~」がクランクアップし、11月から全国公開されます。今後、同じ、錦織監督による「BATADEN」という一畑電車を題材にした映画の撮影も予定されており、出雲3部作として島根を舞台にした映像作品が制作されます。
出雲大社は知っていても「島根県」は知らない人が圧倒的に多く、島根県の認知度は全国最低です。石見銀山の世界遺産登録は島根県をアピールする千載一遇のチャンスですが、確実視されていた登録が延期されそうな情勢になってのドタバタはあまり心地良いものではありませんでした。
島根県人の気風として「あまり派手なことは上手くない。好きでない。」というものがあるにせよ、県庁にブランド推進課を設置したぐらいですから、島根県を売る努力が必要で、そのためには石見銀山の世界遺産登録は是非とも必要です。
私は、羽田発出雲行きのホテル付往復航空券の金額が25、6千円で出雲発羽田行きのそれが40千円前後であることが、現在の島根県の他地域での評価であると申し上げてきました。隠岐空港の夏季料金にしても同じことが言えます。
そこでお尋ねしますが、島根県の認知度を上げるためにはどのような要素が必要でしょうか。私は、石見銀山の登録延期騒動の折、知事がユネスコの近藤大使と知己だと語られた刹那、国の対応が劇的に変化したように、溝口知事の引き出しには、ヤマのようにモノが入っていると思います。その知識や人脈を島根県庁がどう引き出して、島根県のためにどう活かすのかが溝口知事の声望を決すると思いますが、知事のお考えをお伺いしたいと存じます。
│掲載日:2007年06月19日│
地方交付税制度は、地方団体間の税収の不均衡を調整し、全国どこに住んでいても適切な行政サービスが受けられることを目的とする制度であり、財政力の弱い島根県にとって、極めて重要な仕組みであります。
しかし、近年、地方交付税の大幅削減が実施されてきました。また、昨年度の「骨太の方針2006」においても、人件費や公共事業費などの地方歳出を、今後5年間引き続き削減する方針が示されており、地方交付税の見通しは、将来的にも厳しい情勢にあります。
法人2税を中心とした地方税収の伸びが大都市圏に集中し、自治体間の財政力格差が拡大している今日だからこそ、地方交付税の総額が確保され、地方交付税の機能が十分発揮されることが必要不可欠であると考えております。
また、税収の偏在が著しい現状を踏まえると、さらに進んで、税財源制度の根幹に踏み込むような改革も必要であります。
「ふるさと納税制度」については「受益と負担の原則」「ふるさとの定義」など解決すべき課題は多々あり、個人的な見解としては、導入されても、そう大きなものとはならず、寄付金控除程度に収まるのではないかと感じております。
しかしながら、財政力格差の是正に向けた、様々な角度からの検討のひとつとして、こうした議論の高まりは大いに歓迎すべきであると考えております。
今後の道州制論議については、「国と地方の役割分担」や「税財政制度のあり方」などの具体的な設計について、当事者である国と地方が対等な立場で議論を行い、国民の合意形成を図っていくことが求められております。
その際、道州制が単なるスケールメリットの追及ではなく、真に分権社会の実現に視するのか否か、あるいは、大都市圏と地方で行政サービスに格差が生じないよう適切な道州間の財政調整システムが構築されるのかどうかという点などに付いて、十分な注意を払う必要があると考えており、相当な時間をかけて検討すべきものであります。
島根には、全国に誇ることができる固有の歴史や文化、豊かな自然があります。また、仁多米や隠岐牛、どんちっちアジなどの全国的に高い評価を受けている特産品もあります。
さらに、「たたら製鉄」の伝統を受け継いだ高級特殊鋼「ヤスキハカネ」など世界に向けて出荷されている選れた工業製品もあります。
IT産業の分野では、松江発のプログラミング言語「rubby」が世界的な注目を集めています。このほかにも、県内各地域には独自の魅力溢れた資源があります。これら島根の選れた資源に磨きをかけ、県民と行政が一体となって、誇りと自信を持って、全国へ、世界へと情報発信していくことが、島根の認知度を高めていくことにつながると考えております。
私が行政官として国内外で培った人脈については、島根県の振興のためには施策や事業を戦略的に組み立て、具体的・組織的に進めることが必要であり、あらゆる場面で最大限活用したいと思っております。