県議会だより

Reports

平成19年6月定例県議会一般質問(4)

2.教育問題について (1)学校での副教材の使用について

出雲市では全ての公立学校に学校運営理事会が設置され、学校運営に地域住民の意見を活かし、学校と地域との連携をより深めることによって子供たちを伸張させていこうという取り組みが始まっております。
先月には、理事会の代表や教育委員、市議会議員などが、先進地であるイギリスを訪問して意見交換や視察研修が行われたとのことであり、学校の情報を積極的に地域に公開し、学校教育に厳しい外部評価を導入している事例が報告されました。
旧平田市では平成11,2年頃から「スクールトーキング」という事業を実施し、小、中学校に地域の様々な分野で活動する方たちを招いて、授業時間に講演や実技指導を行う取り組みが行われてきました。
その活動は様々で、神官や僧侶が社寺の故事来歴を語ることもあれば、外地での戦争体験が語られることもあり、また、陶芸家や画家、音楽家による芸術指導やスポーツ選手の実技指導、韓国や中国からの来訪者との交歓など、様々な活動が行われ、「読み聞かせ」のボランティア活動とともに常態化しております。

公益法人である社団法人平田青年会議所は、昨年は8つの小学校で道徳を、今年は1つの中学校で近現代史を題材にして交流学習を行い、本年2月27日には中学2年生を対象に「誇り」というDVDをみんなで見たあと、ディスカッションが行われたようであります。
新聞報道によれば、県教委は偏った歴史観を学校へ持ち込むものとの共産党島根県委員会からの指摘に対し「DVDを見たことはないが、あらすじをJCのサイトで見たところ、判断力を十分備えていない中学生に見せるには不適切」とDVDを使用した学習を自粛するよう通達されたとのことであり、大変驚きました。
中学校では、校長らが、事前にDVDを見て是非を検討した上でその使用が許可されたとのことであり、「内容に共感し、生徒に誇りを持った日本人になってほしいと思い許可した。」と話しており、一方は内容を確認もせずに不適切との見解が出されています。DVDなどの副教材の使用について、それを現場の判断を覆して、不適とするからには、きちんと内容を精査した上でコメントを出すべきであり、私は、県教委の姿勢は極めて不適切であると思います。

食事の前後には、合掌して「いただきます」「ごちそうさまでした」と言います。これは全ての動植物には命があり、その命を私がいただいて「あなたの命を私がいただいて、私の命に換えさせていただきます。」「美味しく、いただきました。有難うございました。」という感謝の言葉であり、いま必要性が言われている食育に叶う概念であります。
しかし、「いただきます」は宗教用語でけしからん。合掌は、宗教様式で不適切との指摘があり、一部の学校では、そうしたことを止めているところさえあると聞きました。

そこで教育委員長および教育長にお尋ねいたします。今回、不適切とされたDVDの内容は本当に不適切でしょうか。また、内容を精査することなく、適、不適を判断するという今回の判断手法は正しいでしょうか。ご見解をお示し下さい。県教委は、今議会で公民館や非営利法人などの学校教育活動への参加を促進すべく予算を計上していますが、社団法人は公益団体の最たるものであるだけに整合性を疑います

私は、歳出の一律カットは、小・中学校の教育現場にも深刻な影響を与えるおそれがあると指摘してきました。
たった5,6日前の出来事です。6月12,13日に出雲市、簸川郡の中学校総体が開催されました。これは、全中予選となる島根県中学総体の地区予選ですが、剣道競技では、競技者数が多いため、日程を2日間としたとのことであります。
ところが、1校から参加できる生徒数は、3年生部員プラス5名に限定され、学校によっては部員数の1/3しか予選に出場できない事態となったとのことであります。
これは、大会の運営費が削除され、1日あたりに依頼できる審判員数が限定されるため、やむなくそうせざるを得ないとの説明があったようですが、全中の開催が予定され、強化をしなければならない地域でさえも、歳出削減のため子どもに十分なグランドを用意してやることができないとすれば、そのあり方を再考しなければなりません。
また、警察官や県職員を積極的に派遣することも考慮されるべきであります。対象者に年休を取得させて、ボランティアで参加させることも結構ですが、執務時間であっても本来業務に支障がなければ、支援要員として派遣するぐらいの任用規定を考慮されたいと存じます。

本年は、全国高等学校文化祭が予定されており、3年後には全国中学校大会が予定されております。島根県の子どもたちが、全国で、自分たちの力を伸びやかに発揮できるよう最大限の支援をしていくことは私たち大人のつとめであると存じます。この際、どんなにひもじくても、島根県の子どもたちに必要な教育費の確保を果たすという教育長の決意をお伺いします。

七五三教育委員長答弁

「近現代史は拳拳服膺して対応すべき」

「いただきます」「ごちそうさまでした」という食事にともなう感謝の態度を否定したり、給食費の未納が数十億円に達しているという現状を耳にいたしますと、この国はいったいどうなってしまったのかという観を強くいたします。
DVD「誇り」に関し、歴史的事象の評価に関しては、様々な立場、観点などから異なる見解の主張が併存するケースがありますが、民主主義を前提とする私たちの社会においては、これらの様々な主張や意見の表明は当然のことと考えております。
一方、学校教育において、どのような内容を、どのような方法によって指導するかは、子どもの成長発達に強い影響を及ぼすものであることから、常に中立の立場で適切に判断する必要があります。
中学校において使用する教材については、生徒の発達段階を十分考慮して、学校と、その設置者である市町村教育委員会において適切なものを選定することとなりますが、県教育委員会としては、総合的、中立的な見地から、必要に応じて助言を行うこととしております。
お尋ねのDVD「誇り」につきましては、私も先日、拝見する機会をいただきました。このDVDに関しては国会でも取り上げられ、伊吹文部科学大臣も、近現代の歴史の判断は見る人のいろいろな立場での判断があり、ひとつの判断で全てを押し切る、割り切るということであってはならないと思うとのべられています。
私もこれらを参酌し、拳拳服膺して対応すべきものと考えております。

藤原教育長答弁

県教委はDVDの内容を精査した上で判断すべきであった

日本青年会議所で制作されたDVD「誇り」の内容について、県教育委員会の判断については、議員ご指摘の通り、直接DVDを視聴し、精査した上で判断すべきものであり、適、不適のコメントについては一刻を争う状況でもなかったことを考えれば、より慎重な対応をすべきであり、不適切であったと考えております。
授業を実施した中学校長の対応につきましては、DVDを視聴した後の補完的な学習を実施するなど、事後の処理につきましては極めて適切に行われたと考えております。
なお、各学校の指導に関しましては、教材の選定にあたり、一般的に配慮することを伝えてきましたが、特定の教材を取り上げた通知は行っておりません。
私も、昨晩、興味深く視聴いたしました。雄太とこころの対話を中心に展開するシナリオの中で、現代の高校生の歴史認識がこころに象徴されているのではないかと関心を持ちました。子ども達に、もう少し近現代史を学ばせる必要性を感じました。
また、一部新聞で「県内の小、中学校で使用しないように指導している」との報道がなされましたが、県教育委員会としては、教材の使用につきましては、市町村教育委員会と学校が判断されるべきものとして、通知等は行っておりません。

教育費の確保については、平成15年末の地財ショック以来、県、市町村ともに厳しい財政状況となっており、教育や文化、スポーツ分野の予算も聖域とはなっておりません。
しかし、島根県の将来に関わる教育予算については、できる限りの予算の配分が図られ、島根の子どもたちを心身ともに健康な社会人として世に送り出せるよう最大限の努力をしてまいりたいと考えております。

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