県議会だより

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平成19年9月議会一般質問(3)

農林水産業と地域政策の視点について

今年の米価は過去最低水準にあり、中核的な担い手の経営収支は非常に厳しい状況になるものと予測されます。小泉内閣による構造改革によって国内農業に競争原理が導入され、「大きいことは良いことだ」とばかり担い手に業態を集積すべく農政改革に着手されました。しかし、こんな「木を見て森を見ず」という視点の行政が成功するはずはありません。 山間農地や中山間地は言うにおよばず、平場でも耕作放棄地の激増は見るより明らかです。日本の農村社会の結びつきは共同生産社会であっても、けっして財布を共有するものではありませんでした。それは、隣人が金銭的なトラブルによって人間関係を崩壊させないようにする、いわば、先人の知恵であり、集落営農の法人化は必ず失敗します。
私は国の農政は基本的な大枠だけ決めれば、あとは県が地域の実情に応じた対処をすべきで、詳細は市町村に委ねるべきだと思います。例えば、担い手の要件や転作の品目、直接支払いの方法など全国一律にする必要など全くないものであり、島根県は全県を農業特区として申請し、県知事の判断で地域事情に応じた取り組みができるようにすべきだと思います。
島根の農業は、年金や農業以外の収入がある人たちによって支えられています。これら小規模農家は耕作面積も小さく、多くの投資を必要としない経営を行うことができ、価格に左右されない強みを持ち、結果として農業を続けることができております。
また、中山間地域ではほとんどこれら小規模農家が田畑を守ることが、防災や水資源の涵養、集落維持にも大きな役割を果たしており、小規模農家、兼業農家の存在は欠かせないものであります。
大規模営農一点張りで誘導する国の政策に対し、多様な取り組みが出来る施策への転換を図るよう、県は、勇気を持ってもう一度、国の農政の転換を求めるべきだと思いますが、所見を伺います。
私は、過去、何回か鳥獣被害の実態を述べるなかで山林環境の変質について述べてまいりました。造林地の立木は密植で、ヤマの中は真っ暗で草一本生えていません。山の保水力は低下し、土壌の形成力は消失し、流れ出る水にミネラルはありません。命を育む源環境が生命体を育てることのできない状況になりつつあるのです。
「木を切ること」が求められています。隠岐地域の災害も山林環境の荒廃と無縁ではありません。沿岸漁業の不振も磯焼けも同じです。間伐の促進や県産材利用、バイオマス利活用も大切ではありますが、財政窮乏で使えるお金が限られている以上、「あれもこれも」ではなく、一番必要な施策に特化するべきではないでしょうか。
水と緑の森づくり税の使途も疑問です。県民からの提案や意見募集は、一面から見れば必要なことだとは思います。しかし、いまのような機嫌取りのバラマキでは地域は死にます。林業公社も損失を懼れての長伐方針にされていますが、2-3年徹底的に木を切りましょう。現状の利用間伐では解決できません、受光閥を行うべきであります。モリの再生を果たし、水下の環境を再生させるために英断を求めますが、如何お考えでしょうか。
先月、委員会で対馬に行って来ました。「トロの華」のブランドで扱われているホンマグロの蓄養事業を視察させていただきました。「日本海は水温が低くて、マグロ蓄養には向かない」との常識を温暖化による水温上昇を逆手にとった見事な発想、事業だと思いました。
隠岐周辺でもホンマグロの回遊は多く、稚魚採取も可能で、事実、大手事業者によって400グラム程度の養魚が活魚で1本1500円程度で買い付けされているとのことでした。しかし、同じものが対馬では4000円、3年蓄養して、1本15,6万円で出荷されているサマを見て、未だに略奪漁法中心の島根県漁業の現状の問題点が浮き彫りになったと思います。
県内漁業の就業者の平均年齢は63-65才、新規就業は極めて少数で、10年後の見通しはありません。しかし、周辺に、広大にして魚種も豊富な良好な魚場があり、養殖や蓄養を付加した取り組みが可能な水域環境を考慮すれば、島根県の水産業には無限の可能性があります。
特に、温暖化で冬季の水温が従前と比較して高くなっていることを考えれば、隠岐島の周辺では様々な取り組みが可能であると思います。
海士町ではCASシステムによりいわがきの中国への試験出荷が高い評価を受けたとの報道がされており、さらに、新たな取り組みについて予断を持たない、新鮮な発想が求められると思います。既に、在京の大手水産会社各社はカニやマグロの海外での規制強化に対応して国内での生産体制整備について拠点となる地域の検討を進めております。県内の市町村が、大手事業者との合弁、共同事業の主体となることは財政規模からして危険負担が大きく現実的ではありませんが、これに県が主体的にかかわることで夢は現実になると思います。県において水産関係部局だけでなく、産業誘致や環境関係部局あげての取り組みを求めたいと存じますが、所見を伺います。

少し前の報道で、県内の1年間の婚姻数が3305組で、離婚数が1199組に上っており、特に江津市や邑智郡では離婚率が50%を超え、比較的、都市部よりも周辺部の比率が高い傾向とされておりました。
結婚や家庭生活に対する意識や価値観が変化していることが離婚の増加要因なのかも知れませんが、社会の最小単位である家庭の崩壊は、過疎化・少子化に拍車をかけ、さらには地域社会の崩壊をも招きかねない深刻な問題であることを認識しなければならないと思います。
2学期が始まりましたが、8月の終わり、つまり夏休みの終わりにはコンビニの店頭から雑巾が消えたと言っておられました。何のことはない、学期の初めに学校へ雑巾を持っていかなければならないが、タオルを3つ折にしてミシンをかけるだけのものでさえ、コンビニで買って持たせる家庭が多いとの言葉に唖然としたことは言うまでもありません。 家庭が壊れかけています。連日の殺人やいじめなどの報道に心が痛みますが、子どもが正しい価値判断を身につけないのは大人の責任で、その大部分は親の責任ですが、その自覚が非常に少ない。権利意識はあるけれども果たすべき義務に考えがおよばない幼児性があるように思えてなりません。
忠恕、長幼の序などの社会モラルを身につけさせ、また、家族で子育てを分担するためにも、もう一度、社会政策として3世代同居を考えるべきだと思います。誘導する方法は、税制や医療、介護などの制度設計に家族という視点を強調することで自然にシフトすると考えます。例えば、保育所の乳児1人あたり約30万円の公費支出が行われていますが、在宅で子育てしているお母さんにいくらの支援がされているでしょうか。いまの行政施策は親が子どもに対して十分な手間をかけることを阻害するような面があるのではないかとも思うのです。
9月23日に出雲市の平田地域では小雨ではありましたが14の小学校全てのグランドで運動会が開催され、限界集落といわれる極めて高齢化が進行した集落に、町からから若い人たちが帰り、孫が帰り一日中笑い声がこだましました。私は、いま、求められるのは、まず、週末にでも実家に気易く帰ることを奨励する施策だろうと思います。
敬老会に出席して、とても心に残っている言葉があります。それは、ひとり暮らしの高齢者が一番求めているのは、老人ホームでもなければディサービスセンターでもない、病気になったとき診てくれるお医者さんでもない。「やさしい言葉をかけてくれる身近なひとであると。」
こうした点について知事のご見解をお尋ねいたします。

溝口善兵衛知事答弁

農林水産業と地域政策について

大規模営農一点張りで誘導する国の政策に対しまして多様な取り組みができるように施策の転換を図るよう国に対して求めていくべきではないかということが指摘されたわけでございます。
国の農政を今見ますと、現在は品目横断的経営安定対策など、いわゆる担い手の育成に対する施策を集中することで競争力のある農業を振興しようとしております。これは日本農業が置かれた状況を見ますと、やはり中核的な施策として続ける必要があると思いますが、ただその周辺に大規模でなくてもいろんな活動してる農家があって、それが地域の振興にも大きな役割を果たしておるわけでございます。
そういう意味におきまして、小規模農家を含めた地域ぐるみでの取り組む農地や、あるいは用排水路等の維持保全対策、そういったものにも国による支援が強化することを私どもも必要だと考えておるところでございますし、あるいは島根の中では県道の大半が中山間地域で過疎、高齢化が進行する中で、例えば雲南地域での地産地消の取り組みなど、小規模ながらもいろんな工夫、努力を重ねる農業者もおられるわけでございまして、こうした面への対応も必要だと考えております。
さらに、昨日の新しい農水大臣の就任の記者会見などを見ますと、国におきましても高齢者や小規模農家への施策を充実するようなことも考えなければならないと言っておられるわけでございまして、これは私どもが主張する方向と一致するわけでございまして、今後とも経済的に自立は困難でありますけども、女性、高齢者などさまざまな主体により、地域の暮らしと密接にかかわり合う中で展開される農業の支援、施策につきまして国に対して強く働きかけでいきたいと考えているところであります。
それから、林業についての御指摘がございました。二、三年の間に徹底的に木を切ることによって森の再生を果たすことが大事だという御指摘でございます。
森林の公益的機能の維持増進や森林資源の経済価値を高めるため、御指摘のように森林に多くの光を取り込むと、そうするために過密状況を解消する間伐を重点的に実施していく必要があるということにつきましては、私どもも同意見でございます。同じ考えであります。
島根県では、造林業における新たな植栽を抑制し、間伐に重点を置いて取り組んでおりまして、治山事業におきましても、水源地域の保安林の間伐に積極的に取り組んでいるところであります。
また、水と緑の森づくり事業におきましても、間伐と広葉樹の植栽による森の再生に取り組んでおりまして、引き続きこの面についても努力してまいりたいと考えております。
造林、治山、水と緑の森づくり事業の本年度の当初予算による間伐予算額は、昨年度の当初予算に対しまして2%の増を計上してるところであります。また、今回の9月補正予算案におきましては、間伐事業として国の交付金の支給が1億2,000万円ございまして、これを計上してるところでございますが、昨年度の当初予算に対しまして22%の増加になっておるわけでございます。今後も間伐を重点的に実施し、森林の持つ多面的機能を十分発揮させていくよう努力していきたいと考えているところであります。
次に、漁業の振興に当たりまして、新しい取り組みが必要であり、県が水産関係部局でなく、産業誘致や環境部局を挙げて主体的にかかわることが重要だという御主張でございます。私どもも全く同感であります。
水産業について見ますと、海外での水産需要の高まりや高級な水産物を求める消費者ニーズに対応した新たな取り組みを進めることによりまして、島根の漁業にも大きなビジネスチャンスがあると認識をしてるところでありまして、例えば従来は困難とされてきました日本海でのマグロの養殖について新しい取り組みも各地で行われ始めておりまして、島根県におきましても、本年秋から隠岐で開始される試験的な養殖の取り組みに対しまして積極的に技術指導、調査分析への協力を行うこととしております。
例えば山口県長門市あるいは京都府井根町におきましては、新しいマグロの養殖の取り組みが開始されておりますし、国においてもマグロの効率的な養殖方法についての研究も行われまして、そういうものも県として取り組んでいくと、そういう成果も活用しながら取り組んでいくっていうことであります。さらに、例えば浜田地区におきましては、アジやカレイなど、どんちっちブランドのような首都圏への販路拡大といった意欲的な取り組みも既に行われてるわけでございますが、県としても引き続き支援をしていく考えでございます。
いずれにいたしましても、集約性の高い漁業を実現するためには、漁業者等の新しい取り組みが必要なわけでございまして、そういう新しい取り組みに対しまして、県としましては産業誘致あるいは環境部門など、関係部局も連携しまして取り組んでまいりたいと考えておるところであります。
園山議員からの御指摘の中に家庭を中心とした温かい人間関係、家族関係の形成っていうのが大変大事な時期になってる、こういう問題についてどう考えるかというお話でございます。
この話につきましては、敬老会で園山議員がお聞きした言葉が引用されたわけでございますが、ひとり暮らしの高齢者が一番求めているのは優しい言葉をかけてくれる身近な人であるということでございます。
私もこういうお金によって買えないもの、買えない温かい人間関係っていうのが高齢者、特にひとり暮らしの高齢者などに必要なわけでございまして、そういう面におきましては、市町村が直接やるというよりも民間の方々の自発的な支援活動、地域の自治会でありますとか、あるいは青年団の活動でありますとか、あるいはNPOの活動でありますとか、地域の方々がそういう高齢者の方々に配慮する活動をする。それに対して県などが支援をしていくっていうことが大事でございまして、そういう面での施策は今後も私は強化していくべきものだと考えておるところでございます。
それに関連しまして、可能な場合には3世代同居の家族生活っていうのがこうした問題のために大変大事だがっていう御指摘がございました。私も全く同感であります。
3世代の同居は、子育ての面では祖父母が親の不安や負担をカバーするとともに、祖父母が持つ家庭教育や地域生活の知恵により、子供の健やかな成長を支援するなどのメリットがあるわけでございますし、高齢者にとりましても日々同居する子や孫の成長を通じて安心と生きがいを感じ取ることがあるわけでございまして、私どもが3世代同居を政策的に進めるということはなかなか●命●が限られておりますが、そうした動きが各家庭で進むことは私どもも望ましいことだと考えているところでございます。
いずれにいたしましても、高齢者の方々が温かい家族関係、人間関係の中でお過ごしになれるよう可能な施策の展開を図っていきたいと考えているところであります。

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