県議会だより

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平成19年11月議会一般質問(4)

人材の育成について

島根県の人づくりの観点から、今回教育委員長に御就任されました北島委員長に御見解を求めたいと思います。
出雲市美保町に義勇の碑があります。これは95年前に荒海に遭難した船人を救助せんと敢然と沖合に出帆し、殉難した若者の勇気をたたえたものであります。県内各地にはこうした偉人顕彰の施設がたくさんあると思います。また、ほとんどの地域には戦陣に散った戦死者の忠霊碑がございます。毎年ほとんどの地域で追悼式が行われますが、学校の教員や学校の児童生徒の参列実態はほとんどないというふうに見ております。慰霊の形式が宗教儀式だからというのが表向きの理由のようでありますが、私は間違っていると思います。私たちの生存は、先人のとうとい自己犠牲の上に成り立っているという全人教育の実践をなぜ放棄してしまっているのでしょうか。
私は、今の島根の形をつくってこられた偉大な地域の偉人の顕彰というものをもっときちんとすべきだと思います。宗教家であります北島委員長のこうした点に対する私はお考えをお尋ねしたいと思います。
また、学校での花いっぱい運動あるいは幼児期、小学校低学年の読書が急激に減少しているように思います。学校での花づくりは不登校や学校内での問題行動を静める効果が大きいと思います。卑近な例で恐縮ですが、10年ほど前、私の子供が通っている中学校は学内暴力、学校へパトカーの出動があったり、駐在所の警察官が待機したり、学校のトイレはドアが破られ、ロッカーというロッカーは全部に穴があいているテレビドラマまがいの状況でありました。もちろん、教職員を初め教育委員会や地域の皆さんが一生懸命に努力されたかいがあって、1年ぐらいで正常化をしましたけれども、PTAの母親委員会のお母さんたちが中心になって花壇の整備をして、学校じゅうにプランターを並べて毎日昇降口と職員室の前、教室の中に花を飾っておられました。いつの間にか学内暴力はやみ、不登校はなくなりました。
5年ほど経過をしましたら、また授業のボイコットやいじめが露見をしました。そのときには学校に花壇はもうなく、教室内も殺伐としたものでありました。私はこの花いっぱい、学校でこうしたものをきちんともう一回取り組むということが大事だ、そういうふうに思います。学校に花が咲くころ、学校に花が生けられているときというのは、やはり生徒の気持ちが和む、そして自然に先生のおっしゃることや友達が言うことがすっと中へ入っていく、そういう効果があると思います。もう一遍、県下の学校で花いっぱいに取り組んでもらいたい、そういうふうに思いますが、教育委員長さんいかがでございますか。
もう一つは、子供の読書についてであります。
ファミコンやパソコンに向かう子供はいっぱいおりますけれども、本を読んどる子供というのはほとんど見かけません。4月23日は子供読書の日だそうでございます。皆さん御存じですか。最近、ボランティアによる読み聞かせが盛んに行われておりますけれども、親が家で子供に本を読んでやるというのはほとんどありません。サッチャーの教育改革が成功したのは、イギリスの青少年の教育レベルが向上した一番の要因は、むしろいろんな制度改革よりも、乳幼児や小学校の低学年など、そうしたものに徹底して本を読ませる、読書を奨励したということにあるという報告もありますけれども、県内の取り組みについていかがお考えになりますか。
最後に、教育長に対してお願いがあります。
教職員が子供と向き合う時間をふやすために、文書による報告スタイルをもっと簡潔にしてください。学校へ参りますと、ほとんどの先生はパソコンに向かっておられます。子供に向かっておられません。本来、事務を大幅に簡素化するはずの機械が、逆に子供と向き合う時間を奪っているのではないかと思います。教頭先生ともなりますと、新人事評価システムとかという難しい名前のもので、教育委員会の報告文書づくりで一日じゅう大半の時間がなくなってしまうと笑っておられました。行間に子供とグラウンドや体育館で汗を流したり、放課後に鉄棒や雲梯に熱中して手にまめをつくったことがきのうのように思われますが、現在学校の状況はどうなっておりますか。子供や教師を褒めてください。多少大弁慶でもいいと思います。体育活動やそろばんや書道あるいは善行、芸術活動、社会活動などにも範囲を拡大して、よくやっている子供や教師を褒めてください。
先日、六本木で日展を見てきました。島根県の現役教師が審査員を務めておられました。島根県の生徒は幸せだと思います。全国展の、しかも一番大きな展覧会の審査員を島根県の現役の高校の先生が務めておられます。こんなことは別に一銭もかかりません。ホームページや新聞や、あるいはこうしたところでたたえて、●おまえ  ●はええのう、ようやったのう、そういうふうに言うだけで私はもう一生懸命先生も子供も励んでくれると思います。どうかこうした島根県の財産とも言うべき子供や教員を、もっともっとその一挙手一投足に注目をして、そしてそこへ思いをいたしてあげていただきたいと、そういうふうに思います。この点、教育長の御見解をお伺いいたします。

藤原義光教育長答弁

教員への対応について

まず、学校における文書のスタイルを大幅に簡潔にしてもらいたいという御意見でございます。
その前に、学校の多忙化について若干申し上げさせていただきますと、教員の1日の実態を見ますと、子供が学校にいる間じゅう休憩をとることもなく、子供の学習指導や生活指導に真剣に向き合っておると思っております。放課後は、各種の会議や生徒指導にかかわる対策の検討、報告文書の作成、あるいは親からの多様な要求への対応などさまざまな用件が重なり、このことが多忙あるいは多忙感を助長しておるというふうに承知しております。
こうした実態にあるというふうに私も思っておりますので、管理職研修では校務の一層の簡潔化に努めること、あるいは会議の設定のあり方や校内の文書処理のあり方など、学校運営上の工夫をするよう要請もしておるところであります。例えば会議の復命を必ず文書で行う必要ないじゃないかというふうな、軽易なものについては口頭でもいいじゃないかとか、あるいは会議を少し大くくりな会議をすることによって会議の回数を減らすとか、あるいは平時から情報交換を密にすることによりまして、改めて用務によりますお互いの会議を開かなくてもいいようなやり方もあるじゃないかというふうなことも申しております。
また、文書に関しましても、できることから改善に努めるようにしておりますし、またこういう文書は改めてとる必要ないじゃないかというふうなものがあれば、具体的な提示もしてほしいというふうなことも申しておりました。そういうふうな提示がありますれば、すぐに可否の検討をしてまいりたいというふうに思っておるところでございます。
とは申しましても、いろいろな学校の現場で文書の作成も必要になっております。お話しありました人事評価の問題あるいは研究指定校の報告書の問題でありますとか、あるいは家庭に出します家庭通信とか、あるいは子供向けの資料の作成とか、さまざまな文書の作成ということもあると承知しております。こうしたことについてできるだけ簡素な、あるいは省力化が図れることによりまして、子供に向き合う時間がふえるように今後も努力していく必要があろうというふうに考えております。
次に、子供や教師を褒めてほしいということについてのお答えでございます。
私も全く議員おっしゃいますように、褒めるということが大事だというふうに思っております。この褒めるという言葉で真っ先に思い浮かびましたのが、山本五十六の「やってみせ、言って聞かせて、させて見せ、褒めてやらねば人は動かじ」という言葉でございました。なかなかこれは実際実践の中では難しい面もありますが、教職員の研修とか、あるいは意見交換の場を通しまして、体育活動あるいは文化活動など、子供の努力や行いを適時適切な場で認めて、褒めたたえるようしていこうじゃないかということを提唱しております。
また、教師に対しても同様なことを管理職の皆さんにお話をしておるところでありまして、今年度から、今まで表彰の規定はありましたけども、実際にはこれも10年、20年、全く表彰を行っておりませんでした。教職員について新たな表彰の規定を改定いたしまして、ことしの場合26人の表彰を行いました。具体的には、夏に行いました全国総合文化祭の実行委員会の中で、それぞれのセクションの代表を務めてくれた教員でありますとか、あるいは長年教育研究グループを続けておるグループでありますとか、あるいは地道な学校事務を一筋にやってきた職員などの顕彰を行ったところであります。
子供に対しましても授業の中でも豊かな発想による発言とか、あるいはさりげない気配りを褒めたり、あるいは作品とか絵画、書道などの学習活動とか、あるいは部活動、努力の経過や成果について表彰したり、あるいは活動を認めるようなことというのを行うようにということを、研修の中でもお互いに協議をしておるところでありますし、スポーツ、文化面の各種大会で優秀な成績をおさめた児童生徒への表彰とか、あるいは伝統文化の継承とか地域文化の創造にかかわっております優良少年団体を毎年3団体程度表彰するというふうなことも行っております。
まだまだ十分というふうには考えておりません。このような教職員や子供の取り組みを顕彰あるいは表彰するというふうなこと、あるいはホームページにも紹介するというふうなことについて、さらに広げていきたいというふうに考えております。以上でございます。

北島建孝教育委員長答弁

地域の歴史的偉業の顕彰について

去る10月24日、七五三前委員長の後を受け教育委員長に就任いたしました北島でございます。精いっぱい努める所存でございますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
それでは、御質問に対する答弁をさせていただきたいと思います。
まず、地域の偉人、先人の業績から学ぶことの大切さについてお答えをいたします。
本県におきましては、これまでも小学校の総合的な学習の時間や社会科で、地域の偉人や先人に関する学習が行われております。具体の例といたしましては、森鴎外、西周、永井隆といった全国的にも著名な偉人のほかに、高瀬川により荒木浜を開拓をされました大梶七兵衛や隠岐航路を開いた松浦斌など、地域社会の発展に貢献した偉人の業績も多く取り上げられております。このほか、治水対策のため佐陀川を開削した清原太平衛、享保の大飢饉から人々を救った芋代官こと井戸平左衛門、海外貿易で藩財政に寄与した会津屋八右衛門やたたら製鉄に従事した人々、幕末に隠岐で起こった自治政権の樹立などさまざまな先人の姿が想起されます。それら先人の営みには幾多の困難を克服してなし遂げられたものも多くあり、またそうした姿は今を生きる我々に勇気と感動を与えてくれるものであります。
先人の努力に謙虚に思いをいたすことは、感動する心、地域を思いやる心の涵養などにもつながるものであることから、ふるさと教育などにおいてそうした取り組みを行っておりますが、引き続き今後においても進めていきたいと考えております。
次に、花いっぱい運動の取り組みについてお答えをいたします。
私は、学齢期という人格形成のいとも重要な時期に、植物を育てることにより命や自然の神秘に触れ、四季折々の移ろいを体感することは、心の豊かさをはぐくむ上で貴重な原体験となり、知徳体の調和のとれた健全な成長発達にも大変意義深いことだと考えております。
県内でも多くの学校で花壇やプランターで草花などの栽培に取り組んでいるほか、ふれあい環境財団21が進める花いっぱい、緑いっぱい運動などにも多くの児童生徒が参加しています。感動する心、人を思いやる心など心の豊かさを尊重することは、すべての教育活動の基盤となるものであり、知育や体育もこうした徳育の上に積み上げるべきものと思っております。草花を初め命あるものを慈しみ育てる機会を通じて豊かな感性を磨くことを、今後の教育活動においても推進していく所存でございます。
次に、幼児の読書活動についてお答えをいたします。
子供は、本を読むことによって言葉を学び、自分の思いを的確に伝える表現力を身につけ、他者への思いを深く理解する能力を高めていきます。そして、それにも増して幼児期に親が子供に絵本や童話を読み聞かせることによって、子供は肌のぬくもりを感じ、物語の中で自由に遊び、豊かな想像力や感受性をはぐくんでいくものと考えております。読書は感性を磨き、知性を高め、想像力を養うものであり、心豊かな人格の形成にとって非常な重要なものであることから、議員の御指摘には全く同感でございますし、幼児期からの読書活動についてはさらに盛んに行われるように願っております。
御質問のあった3件を初め、基本的に子供の教育には保護者や家族などが深くかかわっていく姿勢が大変重要であると私は思っております。ほとんどの家庭で読み聞かせなどはされていないから学校でとの御意見も承知しておりますし、学校でもそういった状況に対応していくことは必要であると考えております。しかし、何よりも家族を中心に我々大人が姿勢を示すことによって、まずもって我々大人が襟を正して、隗より始める気持ちで子供に接することが今最も大切なことではないかと思っております。

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