県議会だより

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平成19年11月議会一般質問(3)

時代の変わり目にある県政の方向について

今社会の価値観が大きく変わるときだと思います。日本は戦争に敗れて復興を果たすために、生産基盤の整備を主体とした施策展開を行いました。法律も供給側視点で、自然破壊や多少の公害が出てもまあまあ仕方がないわなという、そういう視点でございました。供給側が強いですから、労働組合の力も随分強くなりました。しかし、これが昭和四十四、五年ごろ公害問題が騒がれ、あるいは革新自治体がたくさん出てきた、そういうことで少し視点が変わりました。消費者保護という観点にかじが切られました。大量生産から多様化あるいは品質保持が言われ、行政も配給から選別という視点になりました。教育も大きく変わりました。米制度も変わりました。そして、今京都会議で温室効果ガス削減が言われたように、持続あるいは環境という視点にまた変化してきたように思います。原油価格が高騰して年金や医療などにスポットが当てられ、農林水産業のように再生、循環可能なものに対する評価がもう一度高まってきたのも、そうした証左であるというふうに思います。政治権力の移行が予感されるのも、やはりそうした観点があるのではないかと思います。
私は、島根県発展計画を持続あるいは環境、そうした視点でもう一度見詰め直すことも必要ではないかと思います。確かに、島根県は全国で最も貧しく、過疎化、高齢化が進んでいる地域かもしれません。しかし、温暖で全国でも上位の森林、海域を持っている潜在性は希有のものだと、そういうふうに思います。時代を読み誤らずに国の施策を先取りした施策を展開すれば、かつて松江藩がそうであったように、いつの間にか私は先頭ランナーになることができると思います。
このように、島根の持つ持続、環境機能、豊かな自然、地域資源を最大限活用するような視点を重視した施策の展開について、知事はいかがお考えになりますか、御見解をお尋ねしたいと思います。
また、道州制への移行の流れというものが避けられません。県内市町村の当事者能力を向上させるための権限移譲は、例えば単独ではできない事務に対しては、広域行政での対応を促進しなければならないと思います。平成の大合併は準備期間が極めて短く、というよりも財政的に合併に追い込まれたために、合併前の基礎自治体で実施されてきた住民サービスが受けられないという声が高くなっています。合併自治体の中央集権が進行し、本来支所にあるべき執行権限が本所に集中している例もあります。これは合併に至るプロセスが拙速で、自治体の内部での分権体制、つまり執行体制のケーススタディーが検討されていなかったためだと思っております。
私は、島根県は今後保健福祉や河川、道路の管理、徴税などの事務についても移譲を検討すべきだと思います。先ごろ合意された後期高齢者対策の広域連合の議論の推移を見る限り、相当な時間が必要であるように感じます。このままでは道州制など広域行政時代に本県の市町村は対応できないのではないかと思います。来るべき時代に備えて、さらなる権限移譲を市町村に進める広域連合や事務組合など市町村の連携も図りながら、私は基礎自治体の力量の向上を図るべきと考えますが、知事の御見解を伺います。
また、平均寿命が80歳の時代です。島根県で60歳で定年ではなく、もっと体力に応じた働きが可能な仕組みと施策を用意すべきだと思います。専門高校や技術校のほとんどは土日や夜間は施設が遊んでおります。これを活用して再教育や技能習得の講座開設ができないものでしょうか。高齢者が生き生きと働ける環境整備は時代の要蹄だと思いますが、知事の御見解をお尋ねしたいと思います。
また、ことしの米価下落は農業者の行政不信を増幅させました。1次産業は生産者に価格決定権がありません。原油価格、そうしたものが上昇しても、生産者の一方的な自己犠牲で成り立っているのが今の1次産業であります。地球温暖化防止が叫ばれ、1次産業にこれからスポットが当たってくるはずですけれども、スポットが当たるころには1次産業従事者はくたびれ果ててしゃがんでしまっております。
奥出雲町の岩田町長は、町民は家族、だから何としても守ってやらなければならん、収入なきところには定住はない。だから、地域を守るためには農業や林業を保護するのが当然と、あらゆる国の施策を駆使して60キロ当たり2万円の生産者米価を達成しました。これを見習うべきと県職員に申し上げましたら、仁多も最初はうまいこといきませんでしたわ、かなり町で負担しとられますがという話でございました。国の農政はどうであれ、町の農家を守るためにはどんな手段が必要か、その財源をどこから持ってくるのか、それを主体的に考えた奥出雲町の取り組みから県は学ぶべきことが多いと思いますが、国追随ではない、真に島根方式の農政展開、1次産業の展開を望むものでありますけれども、知事の所見をお尋ねしたいと思います。
そして、片や農業、林業、水産の試験研究機関は、試験の成果や取り組むべきテーマを外部の有識者に評価をしてもらっております。これは私は本末転倒だと思います。和牛能力共進会で、ことし得た成績は過去最低でした。しかし、私は行政が取り組むべきものは、確かにいろんな先生の意見も大事かもしれませんが、県の役割をきちんと自覚した私は取り組みが必要だと思います。外部の評価に一喜一憂するのではなく、やはり県でなければ取り組めない、そういう試験研究機関の取り組みが必要だと思いますけれども、知事の御見解をお尋ねいたします。

溝口善兵衛知事答弁

農業問題について

県の農政の展開の方向でありますけども、集落営農が県下各地でも進んでおりますけども、国の施策によりますと、規模の面において国の支援措置に合致しない地域がたくさんあるわけでございまして、そういうところにつきましては県自身が単独の施策としても、その地域の活性化のために農業を振興するといったようなこともいろんなやり方で支援をしておりまして、引き続きそういうものをやっていきたいと考えておるところであります。
その中で、地域の実情に合わせたアイデアも促進をするように県としてはしているわけでありまして、例えば特色のある米づくりなどを行う、各地で無農薬でありますとか減農薬によって銘柄米をつくるというような稲作もありますけども、そういうものも私どもは支援をしておりますし、地域の実態に合った支援を今後も引き続き考えてまいりたいと思います。
その中で、奥出雲町の仁多米についての会社経営についてのお話が紹介されました。私もこの話は岩田町長さんからお聞きしたこともあります。もう少し実態もよく調べてみたいと思います。県として工夫ができるのかどうか、考えてみたいと思っているところであります。
それから、最後に農林水産関係の試験研究についての質問がありました。その中では、ことしの肉牛の共進会において、過去に比べると必ずしも県から出された肉牛の評価が高くなかったということがあります。それにつきましては今農林水産部、それから畜産をやっておられる方々、いろいろどういうことをすべきかという検討をしております。そういう真剣な検討を踏まえまして、必要な対応をとっていく必要があると考えているところであります。
それから、島根県の中には幾つかの農林水産関係の研究所があるわけでございます。そういう研究所が取り扱うテーマにつきましても、市場の動向でありますとか消費者の求める動きでありますとか、あるいは消費者の選考、好みでありますとか、そういうものも研究の中に取り込まれていかなければならないと考えております。実際には少人数の有識者の諮問委員会みたいなものがございまして、そこでも御意見をちょうだいをするということをやっております。それから、各試験研究機関のレベルにおきましても、そういう外部の方の意見も聞くということをしておりますが、必ずしも、園山議員のお考えではそういうシステムは必ずしもワークしてないんじゃないかと。むしろ外部の人からいい意見をもらっているのかという御指摘もあったと思います。そういうことを踏まえまして、県が行っております農林水産業における試験研究の仕方等について改善すべき点がないか、これからよく検討してまいりたいと考えているところであります。

溝口善兵衛知事答弁

高齢者雇用について

高齢化が進む中で、高齢者が働ける環境整備についての御質問がございました。
国におきましては、平成16年に高年齢者等の雇用の安定等に関する法律というのを改正しまして、65歳定年を導入したわけでございます。島根県におきましても定年の引き上げや継続雇用制度の導入、定年制の廃止などの措置が民間企業において進んでおりまして、従業員51人以上の規模の企業、546社あるそうでありますが、95%が65歳定年を導入しているということでございます。
また、国におきましては、70歳まで働ける企業の実現に向けていろんな動きをしているわけでございまして、そういう意味におきまして、高齢者の再就職あるいは就業に必要な技能の習得ということは大事な課題であります。島根県におきましては、例えば国の機関もやっておるわけであります。雇用能力開発機構の島根センターが●安来●にありますけども、そういうところでもやっておりますし、あるいは県の機構といたしましては、●松江高等技術校●でありますとか出雲、浜田等もありますが、そういうところでもやっておりまして、実は私も調べてみたわけですけども、平日の夜そういうセミナーを、高齢者を含め就業を求める人にやっておりますし、土日もやっているところがかなりあります。そういう例といたしましては、特に簿記でありますとか、あるいはコンピューターが使えないとなかなか職が見つかりにくいといったことがありますし、そういう技能を得ることによって職が見つかるということもありまして、最近ではそういうパソコン等の研修なども平日の夜やったり、土日をやるというようなこともやっておりまして、さらにそういう面での強化をする必要があると思います。
これは企業への就職でございますけども、他方で年金で暮らしてある方々について、先ほどの社会貢献的な活動と関連するわけでございますけども、そういう方々が社会貢献活動に参加していただく、そこで活動していただく、そこで人々と触れ合っていただく、それで世の中の貢献をする、そんなようなことも大事ないわば活動の場だろうと、高齢者にとっての活動の場だろうと思います。それは間接的には県の必要な予算を削ることによって、節減することによってほかの事業をふやす、ほかの事業がふえるという関係にあるわけでございまして、間接的な経済活動であると思いますので、私はそういう活動もさらに強化していきたいと考えているところでございます。

溝口善兵衛知事答弁

市町村への権限委譲について

今後の広域行政時代に備えて市町村との連携、どういうふうに進めるのかという御質問がありました。
今、地方分権が長い歴史の中で進んできているわけでございます。将来は道州制も視野に入れるような状況になったわけでございます。道州制がどの程度のスピードで進むかというのは、まだなかなかはかりがたいところがあると思いますけども、私はやはりそういうものも念頭に入れながら、市町村の足腰を強くする、あるいは県と市町村の連携をする、あるいは県の行政で市町村に移すべきものは移していく、そのことをよく考えなければなりませんし、市町村におきましても合併の後の市町村内の行政の効率化、さらに市町村間をつなぐ広域的な体制、そういうものも整備をしていかなければならない時代でございまして、私は国、地方の役割分担の見直しの中、あるいは県内における市町村との関係の見直しを進めてまいりまして、やはり住民に近いところで行われる行政は市町村に移していくということ、そういう基本方針で臨みたいと思います。
ただ、市町村間にまだ大きな市と、それから人口が非常に少ない財政力の弱い町村があるわけでございまして、その間の対応をどうするかということもよく考えていく必要がありますが、一律にはできないんでありまして、できるところからやるという原始的な対応がいいのではないかと考えております。

溝口善兵衛知事答弁

環境視点について

環境の問題について御指摘ありました。今、世の中は経済の持続あるいは自然の保護、循環するシステム、そういうものに目が移ってきて、そういうものが大事な時代になってきて、それにあわせて島根の総合発展計画もそういう観点から見詰め直す必要があるという御指摘でございます。私も同感でございます。そういう意味で、循環型、環境と共生する社会システムを島根もどういうふうにして構築していくか、これは島根の総合発展計画の中の重要な一つの柱だろうと思っております。
私は、そういう世の中の変化から見ますと、島根は逆に開発からややおくれてきたために、自然を初め古きよき文化でありますとか、あるいは地域社会でありますとか、いいものが各地にたくさん残っておると見ておるわけでございます。そういうものを掘り起こすことによって島根の発展をしていく、これが可能であるし、それを追求すべきだと思います。ただ、そのためにはやはりそういうものを支える、背後で支えるインフラといったものがなきゃいかんわけでありまして、そのインフラの整備がおくれているわけでございますから、道路でありますとか下水道、そういったものについて県全体の整備を見なきゃいけませんし、国に対しても要求、要望をしていかなければならないと考えているところであります。

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