県議会だより

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平成19年11月議会一般質問(1)

県民との協働の促進について

財政健全化基本方針によりますと、知事は徹底した歳出の削減によって、向こう10年間で島根県の収支を均衡させるとしておりますが、官需依存から必ずしも脱却でき得ていない島根県の経済からすると、かなりのマイナス、経済収縮を覚悟しなければなりません。大都市部のように民間投資によって十分な経済循環が図られるのであれば、官から民へとばかり行政の受け持ち範囲を縮小させ、従来公共サービスで対応していた分野を開放して民間にゆだねることは、経済を活性化させ、また競争原理の導入によってローコスト化できるメリットがあります。しかし、本県の中山間地域や隠岐のように過疎化、高齢化が進行する地域にあっては、第3次産業の経済性、採算性は云々できないのであり、路線バス事業や医療などのように一定の公費投入を前提として成り立っているものがあり、県財政の破綻は何としても食いとめなければなりません。
私は、ピンチはチャンス、財政危機の今だから県民に求めることができるのではないかと、そういうふうに思います。また、県民も快く応じてくれると思います。それが結果として自分たちの住んでいる地域の再発見や現状の把握につながり、みずからの地域はみずからが守る、セルフヘルプというそういう意識になっていくと思います。
私たちが、行政が受け持つことが当然としてきた事柄、例えば県道の路肩や河川ののり面の草刈りなど、住民みずからが役務提供することによって財政支出を抑制し、捻出した財源をもって新たな事業に導入する、いわゆる一般財源として活用できると思うのであります。つまり、県民の皆さんに現在の県の置かれた状況について十分な理解を得ることによって、この難局が乗り越えられると思っております。
私は、県政報告会に出かけますと、県が赤字再建団体になったら一畑電車はとまるよ、そう言っております。昔は、電車の赤字というのは国から補助がありました。ですから、その補助残を県と沿線市町で負担をしておりましたけれども、平成13年度ごろから国の補助はなくなりました。ですから、県が単独で補助をしております。赤字再建団体になって単独事業ができなくなれば、必然的に電車はとまる、そういうふうに言っております。だから、何としても赤字再建団体になることは避けなければならんというこの溝口知事の考え方はよくわかりますし、理解はします。しかし、ここ数年の一律の歳出カットによる県民生活への影響は座視できません。
私は、歳入規模を現状として歳出のバランスを考えた健全財政を確立したいとする基本方針は支持しますけれども、県庁に蔓延しているカット病は退治しなくてはならないと思います。知事は、県財政の現状を糖尿病に例えられましたが、現状は急激にカロリー制限を行ったために栄養失調でふらふらになっている、あるいは低血糖を起こしておるのではないかというふうに思います。食事と運動のバランス、あるいは当面はインシュリン注射や薬剤投与によって、やはり少しずつ改善を図っていくことも大事なのではないか。特に、糖尿病を克服するためには、食事を行う際の食物交換や、あるいは運動療法も大事であります。血糖値を気にする余り、体力の衰弱やストレス障害を起こしては本末転倒になってしまいます。
私は、現状の方法というのが決して知事の本意ではないと思っております。財政再建への外部からの意見を求められたのは、行政マンの発想、常識を超える意見やアイデアを期待されたからだと思っております。残念ながら、改革推進会議で出されたものは大した特筆すべきもの、傾聴すべきものがあったとは思いませんけれども、基本方針は人件費と事業費総額の抑制が内容となりました。しかし、これからでございます。来年度の予算編成に向けて、ミスター・ドルと異名をとった伝説の財務官が、「辛口の●みそくちせんべい●」と親しまれるいい知事さんで終わるか、あるいは県政史に残る名知事さんとなられるかは、徹底したスクラップ・アンド・ビルドで従来発想を超えた手法の事業執行ができるか否かだと思っております。私は、若手職員さんとの意見交換や、県内各所への巡検に知事の隠れた意図を推しはかっておりますが、買いかぶりでしょうか。
さて、私は当面する県政の課題について県知事の御見解をお尋ねするとともに、ぜひ平成20年度の施策、予算に取り入れていただきたい事項について、私なりの意見を申し上げたいと思います。
また、人づくりの観点から教育委員長、不登校、いじめの問題解決の方策については教育長に御見解を求めたいと思います。
まず初めに、行政と県民の役割分担、協働の拡大についてお尋ねいたします。
申し上げましたように、行政が受け持ってきた事柄を民間に移行または県民の自主的な活動にゆだねるためには、なぜそうなるのか、なぜそうするのかということを丁寧に説明することが必要だと思います。よくホームページに掲載しました、パブリックコメントを求めています。審議会や公聴会で意見を聞いたと言われますけれども、県民一般の県政の現状に対する理解度が高いとは思いません。私は、年間に七、八十回県政報告会を行って、四、五千人の人と対話しますけれども、県庁の感覚とは大きくかけ離れております。島根県経済に占める官公需の割合は低下したとはいえ、40%近いものがあり、行政支出の減少は県内の景気動向を悪化させ、収縮させた大きな原因であります。
現下の県政の財政逼迫は、国の三位一体改革という、私から言わせれば詐欺的な交付税の一方的削減が原因であると思っておりますけれども、そうであっても何とか脂汗を出してでも財源を捻出して一定の事業費を確保しなければ、島根県は衰弱死すると思います。
そこで、県内の公共施設、とりわけ料金が徴収できる施設、例えば美術館、博物館、水族館あるいはテーマ公園、宿泊研修施設などの指定管理を廃止するか、委託方法を大幅に見直し、民営化に近い方法に改めるべきだと思います。仮に、事業者に条件を付して公立施設を無償貸与して民営化すれば、30億円という支出がなくなります。このような方法での公共施設の運営について所見を伺いたいと思います。
また、1年に2回、島根県民草刈りの日か何かを設定して、この日は老いも若きも、町中に住んでいる人は在郷の実家や親戚へ行って一日じゅう草刈りをする、あるいは川の掃除をする、県の河川や道路の美化予算は約5億4,000万円、5万人の役務費が計上されております。島根県の15歳から65歳の人口は約43万人ですから、みんなが1日当て草刈りをしますと、この10倍もの役務費が捻出できるわけです。以前は、川の土手や家の周りの草刈りなんかは当たり前でしたが、今は自分の家の周りに草が生えますと、役所に電話をかける時代になっております。
やはり私はこうしたことを県民みずからがやって、そして行政コストを抑えて、そして浮いた分で私たちの安全・安心、あるいはどうしてもやってもらわなくてはならない道路整備とか、あるいは学校の整備とか、こういうことにその財源を振り向けてもらいたいと思います。行政の仕事のやり方や事業費の執行の方法を住民や民間企業との協働により、そうした視点によって大幅に見直すことで、真に県民の生活に必要な予算を確保することができると思います。いかがお考えになりますでしょうか。

溝口善兵衛知事答弁

県民との協働について

行政の仕事のやり方や事業費の執行方法を、住民や民間企業との協働の視点により大胆に見直してはどうかと、私もそういう考えを持っておるわけでございます。純粋に行政がやる分野と、それから民間の活動として、営利企業としてやる場合、その間に広い公的な機関と、あるいは住民の方々あるいは企業の方々と協働する分野が広がっていると思います。かつてはそういう分野が狭かったわけですけども、それを広げていいというのが世の中の流れになっていると思います。私はそういう意味で自治会の活動でありますとか、あるいはNPOの活動でありますとか、そういうものを促進をしたいということで、6月の補正予算にもそういう事業を拡大するものを計上しておるわけでございますけども、ただ私の感想を申し上げますと、イベント的なもの、啓発的なものがかなりあるわけでありまして、おっしゃるように例えば草刈りをみんなでやると。それに対して若干の自治会の活動などに補助をするとかといったような、もう少し継続的、行政に近いような部分ももう少しやってもいいんじゃないかという考えを持っております。
御指摘がありましたが、現状ではそれに近いようなものとして、「ハートフルロードしまね」ということで、島根県道路愛護ボランティア制度というのがありまして、御指摘になりましたけども、1平米当たり30円ぐらいのわずかな実費相当の補助を出して、道の両側の草刈りなどもやっておりますが、そこら辺ももう少し住民の方々のそういう自発的な活動を促進し、御理解を賜ることによって、もっと広い地域でそういうことが行われるようになるということが大事じゃないかと思います。
今、土木整備事務所、地方などに行って職員などとも話をしておりますが、公共事業が中断をされ、道路が中断をされ、いろんな苦情が多いわけでございます。しかし、そういう中で日常的な活動で高齢者の方がふえて、これまでは自治会でやっていた溝さらいでありますとか草刈りのようなものができなくなって、それで何とかしてくれという苦情も大変多いと聞いております。そこら辺について行政が、今までは地域の方でやってくださったところを今度は行政が金を出すと、これは大変なわけでございまして、やはりそういう活動をもう少し県民全体としてやっていく、これが大事なことじゃないかと思います。
アイデアとして、年に2回草刈りの日、島根県草刈りの日を設けてはどうかという具体的な御提案もありましたが、そういうようなことも各地域地域でも起こるようなことを支援、それを促進するようなことを考えていきたいというのが私の考えであります。

溝口善兵衛知事答弁

県政改革の基本姿勢について

財政の現状にかんがみ、いろいろな工夫をしなければならないというお話の中で、具体的にやりましたのは、公的な施設の管理につきまして、もう少し民営化に近いようなやり方、いろんな工夫の余地があるんではないか、そういう点を見直したらどうかということであります。
まず、大きな基本方針のところからちょっと触れてまいりますと、基本方針は何度も繰り返しておりますけども、いわば10年ぐらいの間にどういう措置が必要かという大まかなめどを、枠組みを示したものでございまして、おっしゃるように具体的な内容をどういうふうにしたら経費の削減が大きな影響なくできるのか、工夫の余地がないのか、これを我々は検討して、それを具体化していかなきゃいかんわけでございます。それを今やっておるわけでございます。
それから、そういう意味で現場の声をよく聞く必要があると思っております。抽象的な話は、それは私どもでもできますが、具体的にじゃあ施設をどういうふうに合理化したら経費が安くなるのか、それはやっぱり現場現場で知恵を出してほしいということを私は言っておるわけでございます。それで、現場の知恵が、現場の工夫が本庁の各部に伝わってくる、各課に伝わってくる、それが仕組みを変える、それが予算に影響を与える、それによって必要な事業費がさらに確保される、そういうことを今やりつつあるということでございまして、公的な管理で言いますと、おっしゃるように指定管理がかなり進んでおるわけでございます。
今、大体指定管理でやっておりますのが22施設ぐらいあります。おっしゃるように、指定管理は大体入札で幾らの経費でこういう業務ができるかということを入札してもらって委託費が決まるわけでございます。現状では30億円ぐらいかかっておるわけでございます。それもこういう業務をやってくれという入札に伴うものでございますから、業務の仕方をもう少し工夫する余地がないのかという気はいたします。おっしゃるような点はよくわかるわけでございます。例えば、施設全体を委託をするのか、施設の中でも清掃のようなもの、あるいは民間のボランティアの方がやってくださるようなものについては、そういう力を活用して指定管理者の業務がそこで簡素化される、そんなような工夫も私はしなきゃいかんと思っているわけでございます。今それをやり始めております。ぜひともそういうことでやりたいと思いますが、なるべく民間の経営に近いような形で指定管理が行われるということが大事だというふうに思っておるところでございます。
実態からしますと、私が聞きますのは、指定管理料が入札によってかなり低くなっておって、それでは実際に引き受けると経営が成り立たないというふうに言う人もおられます、美術館なんかの管理におきまして。私はそれは委託の仕方についても検討の余地があるんじゃないかというふうに思うわけでございまして、一生懸命やってまいりたいと思います。

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