県議会だより

Reports

平成20年6月議会一般質問(3)

4 マツクイムシの空中散布について

5月26日の出雲市での事例はマツクイムシの空中散布についてさまざまなことを考えさせた。1つは住民への事前周知のあり方。いま1つは学校などに対する事態対応(ケーススタディ)についてである。目や鼻の異常を訴える児童・生徒に対して、マニュアル通り「水道の水で洗う」という適切な指導が行われたところと行われないところがあったという。 同じことが家庭でも起こっている。出雲市はマツクイムシの空中散布については市報で広報したと言うが、配布されたのは自治会に加入している世帯に対してのみで、未加入世帯には配布されません。
出雲市の新興住宅地域では自治会への加入率は高々60%程度であり、必ずしもマツクイムシの空中散布についての注意喚起が行われたとは言い難いのです。
新聞やテレビの報道は非常にセンセーショナルなものでした。目やのどの異常を訴えた人が1000人にも上り、出雲市の学校が大混乱したかのような感を持った人が多かったのではないかと思います。残念だったのは、収穫期を迎えているブドウハウス周辺でJAいずもが空中散布に際して農薬の飛散調査を行っており、その結果を公表すべく準備がされたにもかかわらず、ほとんど顧慮されずに風評のみが拡大したことであります。
浜山周辺や長浜の防風林は先人が長い時間をかけてつくったかけがえのない財産であり、また、それが飛砂から周辺の生活を守っているものであります。出雲大社の参道のマツは国宝の本殿と不離一体の景観を形成しており、また、奉るという神々への奉仕を表す象徴でもあります。 「実施主体は市町村だから」「出雲大社だから」というスタンスで、時にはマツや景観の保護を言い、都合が悪くなると農薬の取り締まり側と立場を使い分けるような態度に県民のために働くという姿勢はなく、自らの保身だけが見え隠れしており、とても県民の信頼は得られないと思います。
こうした姿勢は北山のシカ対策にも見られます。いま、私たちは「シカを殺すな」という申し入れを受けています。10年前、弥山地域の住民と島根県は一つの約束をしました。過去のシカ被害の補償は甚大だが住民はあえてこれを求めない。しかし、今後、県が弥山地域でシカの保護を続けるのであれば、県が責任を持ってシカの生息環境を整備してほしい。10年、20年かかっても着実に受光伐などの取り組みを進めてくれるのであれば協力する、と。しかし、現実はどうでしょうか。県の財政難を理由に生息環境整備に必要な経費は削減され、捕獲の予算が確保されているため、大きな経済損失を受けながらもシカの保護に協力してきた住民が野生動物の保護に反対しているかのような指摘を受けるのです。
県はマツを守るのか、あるいはあきらめて他の樹木への転換を図るのか明確にしなければなりません。守るのであれば、関係住民の理解が得られるよう、農薬に対する正しい情報の周知を県が主体的に行うべきであると思いますが、いかがでしょうか。
また、今回の事象は行政の広報と言うことについて少なからず教訓を与えたと思います。行政側が周知したとしても、それが全く住民に届かないことが多々あると言うことです。たまたま、今回、県の公報をインターネットでしようとする条例が提案されています。
現在、県内の一般家庭におけるインターネット回線の接続状況と使用の状況はどの程度でしょうか。また、県のホームページについて県民一般の関心がどの程度かについてきちんと調査がされているでしょうか。まだまだ、県民一般のインターネットの浸透はいまひとつのような観がします。
経費削減であれば、広報の発行回数を集約したり、市町村の広報に便乗して、もっと県民一般への広報を行うことが必要ではないでしょうか。
マツクイムシや注射針をはじめ、年金や後期高齢者医療制度などの問題はすべて行政情報が住民一般に対して、不十分な伝わり方となっていることが原因です。インターネットは便利ではありますが、まだまだ県民一般に普及しているとは言い難く、行政情報の広報・公聴をこれに依存することは、少し時期尚早のように感じます。
特に、消防・防災関係の事案や今回のマツクイムシの空中散布のように関係住民に対して必ず行って行わなければならない広報については、自治会をはじめ学校、幼稚園、保育所などと連携した周知を検討すべきだと思いますが、県の広報(公報)に対する考え方についてお尋ねします。

溝口善兵衛知事答弁

マツクイムシの防除について

松くい虫に関連をいたしまして、特に住民の周知等あるいはこの松くい虫を守る活動、そういうものをどういうふうにしてやっていくのかという質問がありました。
非常にいろんな角度から大事なことにつきまして、実際的な御指摘がありました。私どももよく御指摘を県と考えてまいりたいと思います。特におっしゃられた中で感じますのは、行政の広報の仕方についてであります。
松くい虫の散布があるという広報あるいは周知が自治会などを通じて行われる、自治会がないとこでは公民館で行われる、コンビニの棚に関係の資料を置いてあると、そういうことではなかなか徹底しないんじゃないかということがございました。それもそういう点があるだろうという気がお話を聞きながらしたわけでありまして、周知の仕方につきましてもう少しよく研究する必要があろうというふうに考えます。
ただ、私はその地域の松くい虫対策をどうする、あるいは松を守ると、県自身もやらなければなりませんけども、地域でそういう活動が自然に起こってこないとこれはできないわけでございます。県の周知はそれは間接的ですから、限界があるわけでございます。もちろん、県は一生懸命やらないといけませんけども、自治会があるとこでは自治会がかなりの活動をしますけども、都市部においては自治会がないところがあるわけでございまして、そういうところをどうするかってのは大変大事な問題でございます。
私は、そういう意味におきまして、行政とともに経済活動、行政の間にある領域において地域の住民の方々の活動だとか、NPOの活動だとか、例えば松を守る会といったようなものがどんどんつくられていきまして、そういう方々が自発的に地域の景観を守るために活動される、そういうものに対して県が支援をするといったようなことを考える必要があるんじゃないかという気がするわけでございます。
いずれにしましても、出雲大社周辺の松っていうのはあの地域の歴史的な景観を形成する大きな役割を持っておるわけでございますから、ぜひともそれを守る覚悟で活動しなければならない。しかし、その活動はいろいろあるだろうと、そういうものをどういうふうに組み合わせていったらいいか、よく私どもとしても研究をしていきたいというふうに考えるところであります

今井康雄政策企画局長答弁

行政広報について

私からは広報に関しまして御質問ございました。お答えをいたします。
まず、県内の一般家庭のインターネット回線の利用状況ということでございますが、総務省の調査でありますとか、あるいは県内の世帯数、事業所数からいたしますと、インターネット契約をしている家庭、島根県でございますが、全家庭の約3割程度ではないかと推測されます。
それから、県のホームページの関係でございますが、議員からも御紹介ございましたが、現在180万件、年間でございますが、トップページにアクセスがございます。1日当たり約5,000件ということでございます。県民の方からのアクセスが年間約180万件と、これも推計でございますが、そういう推計をいたしているところでございます。
こういったことで、インターネットというのは広報の有力な手段の一つではございますが、御指摘のようにすべての県民の方が利用されていないという状況を考慮いたしますと、インターネットの活用をしながらも、それ以外のさまざまな媒体も十分に活用いたしまして広報を行っていく必要があるというふうに考えております。
それから、議員御指摘のございました消防・防災関係の事案あるいは松くい虫の空中散布の県民への広報でございます。
先ほど知事からございました県民の方々へ最終的にどのように伝えていくかということにつきましてはいろんな方法があろうかと思います。先ほど知事が申し上げましたいろんなことを考えていかなければならないと思いますが、私、一般論で申し上げますと、先ほど申し上げました防災関係の事案につきましての県の広報につきましては、先ほど申し上げましたインターネット以外の媒体も活用いたしまして、まずは事前に関係する県民の方々に周知徹底を図っていく必要があるというふうに考えております。
それから、特に議員からございました緊急時でございますが、緊急時には直ちに情報収集を行いまして、メディアあるいは防災行政無線あるいはケーブルテレビ、こういったものを活用いたしまして、正確な情報を速やかに関係する県民の方々に提供することが重要であるということが基本であろうというふうに思います。
今後、御指摘いろいろいただきました点も十分に踏まえまして、どうしたら県民の方々にそういう正確な情報が伝わっていくのかということにつきましては、研究をしてまいりたいというふうに思っております。

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