県議会だより

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平成20年9月定例議会一般質問(4)

高齢者の社会参画について

女性に社会参画を求め、家庭から社会一般の役割を担ってもらうのであれば、従来、受け持ってもらっていた家事・育児を分担することは当然です。行政が法令でこれを促進するのであれば、同時に社会が代行する部分を拡大しなければ、女性のみならず家庭の負担が増加することは自明で、結婚して家庭を持つ、子供を産み育てるということを忌避することは容易に想像できます。特に、上手・下手は別にして、男には炊事や洗濯などの家事はこなせても、母親の代行は難しく、育児支援にはもっと社会がその役割を代行、支援を拡大すべきだと思います。ところが、出産や子育てに必要な社会的支援の土壌をほとんど整備することなしに、むしろ従来のまま放置、隠岐病院の例に象徴されるように産科医療や小児科医療などは悪化させたままで女性の社会参画拡大が声高に言われますから、家庭の負担はますます増大するのです。出産時と乳児保育に大きな不安と手間が必要であればこそ、女性は「お産は実家で」と思うのであり、核家族によって、3世代同居が低下し、家庭の頭数は極めて少なく、家事や子育てのマンパワーが不足して状況であればなおさらです。
象徴的な例は、働く女性の中で、母乳育児が激減していることであります。お母さんが赤ちゃんにお乳をあげることは人間が哺乳動物であることを考えれば、極めて当然のことですが、これが低下していると危惧する専門家があるように、母乳育児が危機に瀕していることは、人間社会の危機であり、安心して赤ちゃんに母乳が与えられる環境を整備する必要があるように思います。
乳房マッサージを例にとりますと、赤ちゃんを産むときには女性は赤ちゃんが乳房を吸いやすくするために乳腺を発達させ、母乳づくりを促進させるために、出産前から基底部と乳頭・乳輪のマッサージが必要だそうでありますが、初めてのお産の時には自分ではなかなか難しく、助産師やマッサージ師さんにお願いする方が多いと聞いております。しかし、現下の状況は、医療保険の対象とはなっておらず、また、市井の助産師(産婆さん)がほとんど皆無で、とても対応できる状況ではありませんが、改善の必要はないでしょうか。
保育所や幼稚園のの保育料、医療費をはじめ小・中学校の給食費などの公費支援を大幅に拡大し、子どもは社会みんなで割り勘で育てようと言う意識、姿勢を打ち出すことこそ、少子化対策のイロハではないでしょうか。日本の高齢者福祉は、医療、年金、介護と大きく前進し、それが世界で屈指の長寿国となっている大きな要因で、それに要する負担は年間80兆円を超えているのであります。高齢者医療や年金は大きな問題にされますが、しかし、次代をつくる子ども達に対するものは、児童手当の増額や子ども手当の支給が云々されるだけで、「こどもを社会全体で育てる」という観点は極めて希薄で、社会負担は高齢者に対するものの20分の1であります。子どもは社会の宝とするのであれば、子育てに対する社会負担を充実することはわれわれの務めであると思いますがいかがでしょうか。
特に、生産年齢人口が少なく、高齢化の進む島根県において、子育ての社会化を進めるために不可欠なことは、地域に住む高齢者の皆さんの知恵とマンパワーを活用する以外に方途はありません。私は、県内の各地公民館などに子育ての支援センターとして高齢者ボランティアに常駐していただき、相談のみならず、具体的な育児支援を極めて安価で提供できるような仕組みをつくることはできないものかと思います。 昨日の「ためしてガッテン」では乳幼児とふれあっている人の免疫性高は極めて高いとの放映がされていましたから、高齢者に活き活きしてもらうためにも、子どもとふれあう機会を拡大させることは大きな効果が期待されると思います。
私は、島根県の振興は、高齢者の知恵とマンパワーが活かせるか否かだと考えます。子育て支援のみならず、高齢者の社会参画を拡大する以外に女性の社会参画が拡大できるとは思えず、また、現代に蔓延する社会の病理現象を克服することはできないように思えますが、知事のご見解をお尋ねします。

溝口善兵衛知事答弁

少子高齢化に関する社会支援について

子供を育てるコストに係る社会負担を充実すべきではないかというお話でございますが、私もこの点も同感でございます。児童、家庭関係の給付費は日本は4%ぐらいでございまして、欧米諸国と比較しても低いわけでございます。また、県の少子化に関する意識調査におきましても、行政に期待する施策の第1位は子育てに伴う経済的負担の軽減であります。県におきましては、小学校入学までの乳幼児医療費の軽減を行っているほか、第3子以降の乳幼児保育料を軽減している市町村に助成をするなど、きめ細かな対応に努めているところでございます。財政の豊かなところでは中学校ぐらいまで無料にするといったことがございますけども、島根はいろんな事情からこういう状況に、今申し上げたような状況にとどまっておるわけでございますけども、この問題は我々が将来ともよく考えていくべき課題だというふうに思ってるわけでございます。
その問題は、やはり国全体として考えていくべき問題でもございます。国におきましては、今年6月の社会保障国民会議中間取りまとめにおきましては次のように指摘されております。国が責任を持って国、地方を通じた財源の確保を行った上で、大胆かつ効果的な財政投入を行い、サービスの質量の抜本的な拡充を図るための新たな制度体系を構築することが不可欠であると、その際制度の効率的な運営にも努めるべきであると指摘されておるわけでありまして、やはり国全体としてこういう問題にも取り組んでいく必要があるわけでございます。
それから、学校教育において新聞を積極的に活用していくべきではないかという御質問ございました。
私も同感でございます。新聞を読むことによりまして、世の中に対する関心が広がるわけでございます。それによって子供たちは成長するという面があるわけでありまして、社会科の授業等を中心にしまして、新聞を教材といいますか材料として学習をする、あるいは新聞を読むことを子供たちに勧める、大事な課題であると思います。教育委員会もそういう観点からいろんな指導も行っているものと思います。
それから、高齢者のボランティアによる育児支援提供の仕組み、そういう仕組みをつくれないのかというお話がございました。
実はそれに近いプロジェクトといいますか支援は行っておりますが、いずれにしましても夫婦で共稼ぎといったことが非常に普通になっておりまして、核家族化が進み、さらに子供との対話が少なく、接触が少なくなって、子育てが非常に難しい状況にあるわけでございます。そういう意味で、社会全体がそういう子育て世代を助けていく、支えていくというのは大事なことでございます。島根県自身もこっころでありますとか、いろんな形で子育て世代を支える施策をとっておりますけども、高齢者のボランティアの方が育児支援をするということもこれは一つ考えられるわけでございますが、現在行われておりますのは、保護者の方が病気になったとか、あるいは急用で子供のお守りができない、面倒を見ることができないといった場合には、子供さんの預かりを行うファミリーサポートセンターというのがありまして、そこにお願いする人、それから支援をする人、登録をされておりまして、実施をしてるところがあるわけでございます。例えばファミリーサポートセンターで高齢者の占める割合で、雲南市では40%ぐらいの方が高齢者の方であるとか、江津市におきましても3割ぐらいが高齢者の方ということがあります。それから、各地に市町村が子育て支援センターというのを設けておりまして、お母さん方が子供さんを連れましてそのセンターに行って子供さんを遊ばせるとか、やっておられることがあるわけでございますが、そういう中で高齢者の方がサポーターになっていろんな支援をしてるといったようなこともございます。あるいは松江市の例でございますが、松江市老人連合会の方々が伝承のある遊び、伝承遊びと申しますか、そういうものを子供さんたちに見せてあげたり教えてあげたりすることによって交流を深めるといったこともございます。こういった高齢者の方々の自発的な活動を支援していくということも大事な課題だろうと思います。これからの課題としてよく研究をしてまいりたいと思います。
それから、子育てに限らず高齢者の方がいろいろ活動してくださる、それが島根県あるいは社会全体の活性化につながる、特に女性の方々が社会参画をする、その余裕が高齢者の方々が助けられることによってそういうことが可能になるというお話もございました。
私もそのとおりだろうと思います。高齢者の方々に限らず、私は常々言っておりますのは、民間の活動と公的活動の間に、その両方をまたぐ広範な活動が社会でどんどん役割を拡大をしてる、それを活性化するということも島根全体にとって必要なことだということでありまして、地域の活動、自治会の活動でありますとか、あるいは老人クラブの活動、あるいはNPOの活動、そういうものを盛んにしていきたいということで、県もいろんな支援をやっておるわけでございますが、これからもそういう活動を充実していきたいと考えております。
特に高齢者グループの活動支援ということで言いますと、しまねいきいきファンドというものがあります。その中で高齢者のグループに対しましても支援をして、その額も年々増額をしてるところでございます。そういう意味におきまして、議員の御指摘の高齢者の方々の活動を盛んにする、さらに努力をしてまいりたいと思ってるところであります。以上であります。

山根成二健康福祉部長答弁

母乳育児について

母乳育児や乳房マッサージについてお答えを申し上げます。
母乳育児は赤ちゃんの病気を防ぎまして、かむ力を発達させ、また母と子のきずなを強くし、そしてお母さんにとっても産後の回復が早くなるなどメリットがたくさんあることから、重要なことであると認識しております。また、母乳育児を促すためにも、御指摘のように乳房マッサージというものが大切なものでございまして、妊婦教室や市町村が実施する助産師による母乳相談、あるいは新生児及び乳児の訪問指導などを通じまして、乳房の自己管理ができるよう支援を行ってるところでございます。専門家によります乳房マッサージは、医療機関や県内20カ所にある助産院において今現在実施してるところでございます。このように重要な母乳保育、そしてそのための乳房マッサージが一層普及しますよう市町村と共同いたしまして、医療機関、助産師など関係機関とも連携いたしまして啓発に努めるとともに、一層の支援をしてまいりたいと、かように考えております。以上でございます。

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