県議会だより

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平成20年9月定例議会一般質問(2)

国際情勢に対応する産業政策の立案について

近年、原油価格の上昇は大きく、第3次石油ショックと言われています。日本の過去2度の石油危機は省エネ技術の開発と普及によって克服したとされています。確かに、エネルギー効率の飛躍的な改善を可能にする技術開発による要因が極めて大きいことは事実だとしても、見逃してならないのは、この間の大幅な円高だと思います。第1次石油ショックの昭和40年代後半は1ドル360円から20-30%も円が切り上げられた頃であり、第2次石油ショックの頃も大幅な円高に向かったような記憶しております。アメリカのバブルが完全に終息するかどうかは分かりませんが、為替相場は、購買力平価、金利平価によってそれぞれ減価・調整することが原則であるとするならば、現行の円相場は円安誘導の政策が講じられているとしても、ドル平価に対して余りにも円安であり、長期的には円高になることは避けられないのではないかと思います。
過去の事を言っても仕方がないことではありますが、島根県の農業政策1つとってみても、昭和40年代から今まで大きく円高となってきていますが、それに対応する農業施策が採られてきたかと言うと、ほとんどそうした視点があったとは思えません。土地改良事業が導入され、圃場は暗渠排水やパイプラインによる灌漑など大きくレベルアップさせながら、生産振興の面、言い換えればソフトの面では、経済情勢とは全く無縁、従来からの延長線上で生産計画が立てられてきたように思えます。以前にも申し上げたことがありますが、昭和40年代、アメリカのカリフォルニア米は当時の日本の米よりもかなり割高でしたが、円高によって昭和60年代前半では半値以下となり、国内事情とは全く関係のないところで、農業情勢が大きく変化してきたわけです。例えば、穀物などの海外農産物と価格競争しなければならない産品の作付ならば所得保証が必要でしょうし、野菜や果実のような商品作物の振興を図るのであれば、品質保証に力点をおく施策が必要でしょう。今後、さらに円高に向かうとすれば、農林水産業の振興にはどのような視点が必要になると考えますか。
また、自動車など輸出依存の産業体質を転換して、省エネや化石燃料から脱却するエネルギー転換技術の開発などにシフトする必要があり、行政の支援施策も大きく変更しなければならないと思うのですが、いかがでしょうか。
アメリカがシリコンバレーに多くのベンチャーキャピタルを設立して、新しい産業のコア技術を集積させ、20世紀末から21世紀初頭の世界のIT産業でイニシアチブを取ったように、新しいものの開発にはそれを支える長期の資金支援が不可欠であります。しかし、ハゲタカファンドに象徴される外資の投資姿勢は、極めて近視眼的な利回り優先で、とてもコア技術が開発できるような雰囲気はありません。都市と地方の違いは投資に対する回収時間の意識の違いであり、私は今こそ、田舎の価値観が新しい時代を拓くような気がするのです。
島根県が吉野博士を招聘し、産業技術センターで地道な研究開発が続けてられているところに新しい技術開発が生まれると思うのです。目前の浮利ではなく、本当に次代をひらく研究や地域の資源を活かす意欲的な取り組みに住民や企業が出資できるような仕組みをつくることが必要だと思うのです。花が開いて大きな利益が挙がるのはほんの少しかも知れませんが、それでも、この地域の住民はきっと協力してくれるはずで、この地域が持っている鷹揚さは、研究者を集め、前途有為な技術者を育てる土壌に相応しいと私は自分の経験からそう思います。投資土壌の整備のためには、どうしても投資キャピタルの設立が必要ですが、県が主導して、官民による投資キャピタルの立ち上げを奨励するお考えはありませんか。

溝口善兵衛知事答弁

為替レートの変動と産業政策の転換などについて

円高になるんではないか、これはわかりませんですね。ドルとの関係では、近年は比較的安定しておるわけであります。120円から100円前後ぐらいまででありますから、非常に狭いレンジで動いてるということであります。むしろ中国の元だとか韓国のウォンとか、途上国が成長、力をつけてくるに伴ってそういう通貨が強くなりますから、むしろ平均してみると、日本の円は平均した価値で見ると下がってると思いますね。
それから、仮にドルが弱くなる、これもわかりませんね。ヨーロッパの金融機関、企業も影響を受けるでしょうから、ユーロがどんどん強くなるというようなこともあるのかどうかわかりませんし、日本の円だけがしっかりしてるわけにはいかないわけですね。日本の企業も世界の影響を受けますから、だからそういう意味で通貨の価値は相対的なもんでありますから、どうなるかというのはなかなか予想できません。
しかし、円高が進むと、いい面、悪い面、両方あると思いますね。例えば農家で言えばエネルギーの円建ての価格が下がりますし、飼料等の円建ての価格も下がりますからね。そういう意味ではプラスですけども、中国等から入ってくる輸入食品は今度は価格が下がりますから、そういうところとの競争が厳しくなるということであります。これもなかなか予測しがたいもんでありますけども、そういうこととは別に、日本の農林水産業、特に島根にとっては大事な産業でありますから、そういうものに大きな影響が及ばないようにいろんな対策を講じていくというのは県の役目であります。特に農産物などにつきましては、いいものをつくって都市の人々が喜んで買ってくださるようなもの、高くても買ってくださるようなものをつくる努力を今後も続ける必要があるというふうに思っております。
それから、こういう時代でありますから、省エネあるいはエネルギー転換技術の開発などにシフトする必要がある、それもそのとおりだろうと思います。ただ、それだけでなくて、結局エネルギー価格が高くなってるわけですから、そういうエネルギーの消費を少なくするような技術もこれは高く買ってくれるわけですけども、ほかにも需要が拡大するもんがありますから、需要の拡大そのものが安くできるようなものをつくっていけば、これは輸出ができますから、そういう面では日本もそれを通じて外貨を稼ぐことができるわけでありますから、いずれにしても新しい価格体系のもとでそれに合ったようなものをつくっていく、そういう努力をしなきゃいかんということだろうと思いますが、島根県におきましては今お話がありましたように、新産業創出プロジェクトの中で太陽電池でありますとか光熱電動材料でありますとか、あるいは発光ダイオードの新素材となる新しい素材の研究開発なんかが進んでおります。これはそういう意味で、そういうものにマッチした技術開発でありますから、これが実用化するということはプラスになることであります。研究も進んでおりますから、この研究を進めていきたいというふうに考えてるところであります。
それから、官民による投資キャピタルの設置ということでありますが、日本の企業も物すごい量の技術開発のための資金を出しておるわけですね。企業は競争に勝ち抜くために大変多額な技術革新投資をやっておるわけでございます。しかし、島根のようなとこではそういう開発の投資をやれる企業がたくさんあるわけじゃありませんから、官民が一緒になってそういうファンドをつくってするというのも一つの考え方であります。これまでも、島根新産業創出ファンドというのを中小企業基盤整備機構や県内の金融機関と協働いたしまして平成17年度に創設をしております。ファンドの出資額は5億円で、出資期間は10年間としております。これまでの投資実績は7社で、投資総額は1億6,000万円でございます。このファンドも適当な投資案件を見つけまして、ファンドを有効に活用していく、大事なことだろうと思います。
それからもう一つ、県内の企業を県民で応援するファンドとして、平成16年に島根県民ファンドというのが創設をされております。これは元中国経済産業局長が発起人となりまして、77人の個人、団体から出資を募って創設されたものであります。ファンドの出資総額は1,440万円で、出資期間は10年間とされております。投資の実績は5社、投資総額は800万円にとどまっておりまして、こちらのほうは少額の投資でありますが、個人、団体がやっておるというものがございます。
それから、島根県の中では山陰合同銀行がキャピタル資本投資のためのごうぎんキャピタル株式会社というのを設立をしておるようでありまして、これまでに投資累計約32億円、投資先数約130社ということでございまして、その投資によるキャピタルゲインもかなり大きいようでございます。たまたまうまく、たまたまと言っちゃ失礼ですけども、うまくいった企業がありまして、その公開によりまして利益を上げておるといったようなものもあります。御指摘のように、こうしたいろんな新規の投資を行うことを進めると、あるいは県も必要があればそういうものを行っていく、検討すべき課題だろうと思います。

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