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日本には「分を弁えよ」と言う言葉に代表されるように、「腹八分目」や「五分五分は上の上」など程々で良しとし、行き過ぎを戒める言葉がたくさんあります。「過ぎる」と言えば、サブプライムローンの破綻をきっかけにアメリカのバブルがようやくはじけてきたように感じます。
リーマンブラザーズやメリルリンチ、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)など巨大金融資本の経営破綻や整理、国有化が相次いでいますが、現役のエコノミストではないにしろ、元国際金融のプロフェッショナル、溝口善兵衛氏としては、この状況についてどのように論評されますか。
与謝野金融財政担当大臣をして「日本経済への影響はハチに刺された程度」と言わしめたほど日本経済や国内金融機関の状況は盤石と言えるのでしょうか。私は、とてもそんな暢気な状況ではなく、相当の影響があるように思えるのですが、知事の見方はいかがでしょうか。
国内、とりわけ地方では、建設業やゴルフ場、旅館などのサービス業、アパート経営など初期投資が大きく、償却に長期の時間がかかる業種が、事業を継続しているにもかかわらず、2006年から減損会計や時価評価など外国ルールの導入によって債務超過となり、資金調達が困難となって資金繰り倒産する例が多く見られます。山陰でも、三朝、皆生、玉造を代表する老舗旅館やゴルフ場、地場大手の建設業などの経営破綻は余所事ではありません。サブプライムやリーマンなど外国発の損失が新たな不良債権の拡大となって、国内金融の収縮あるいは貸し渋りが拡大することがないように祈るばかりですが、今回の金融危機の発生によって、さらなるルール改正の恐れはありませんか。
│掲載日:2008年09月25日│
米国におけるリーマン、メリルリンチ、AIGなどの経営破綻に関する私の考え、所感をお聞きになりました。
今、米国の金融機関の破綻と、こう言っておりますが、実は金融機関というよりも投資銀行という存在ですね、ほとんどは。証券会社というか、証券会社とも大分もう変わってきた性格になっておりまして、株式とかを人に売ると、これ証券ですけど、ブローカーと言いますけども、そういう仕事は余りもうからなくなったんですね。手数料が下がり、それでそれからいろんなことが起こりまして、サブプライムローンを証券化して売ると、それで手数料が課せる。あるいはサブプライムローンは金利が高いですから、短期市場でお金を借りまして、それで買うとか、短期で資金を調達して長期で運用するといったような、かなり危険なことが起こり始めたわけですね。アメリカでは投資銀行はいわばプロの集団ですから、普通の金融機関が預かった預金で投資をする点で違うんで、プロの取引ですから余り規制が厳しくなかったりしたわけですね。それがどんどんサブプライムローンという市場が拡大してきますし、もうかりますから、そういう市場が拡大し、それから融資に対してデフォルトが起こると、そのデフォルト分を立てかえますよと、そのかわり手数料を取りますよといったような取引なんかも起こったわけでありますが、金融が安定しとるときに手数料が入ってきますから、もうかるわけですけども、一たんおかしくなるとこれは大変なことになるわけですが、それが起こってるということだろうと思いますね。
それは、だから通常の銀行がやってるわけじゃなくて、そういうプロの集団がやっている。大会社ですね、集団といっても。それが破綻をしてると。普通ですと、それはプロ同士のあれですから責任はその人たちがとるということでいいわけですけども、実は短期の資金を貸してるほうに今度は金融機関なんかがおるわけですね。そうすると、貸したものが返ってこないとなると、今度は流動性に危機が起こるわけですね。返ってくることを前提に金を貸してるわけですけども、返ってこないってことになると、今度は自分が借りてるやつを返済しなきゃいかん、それが返済できなく、破綻の連鎖が起こるわけでして、それを防ぐ作業が今行われてるということであります。そういう意味で、こういう事態は余り予想しなかったのかもしれませんね。しかし、それが起こって、金融システム全体に波及するのを抑えるために今そういう作業が行われてるということであります。今、投資銀行がみんな金融機関にかわるようにしてますね、銀行に。銀行にかわると、今度は金融機関ですから、流動性の供給は中央銀行から可能になるわけですね。それがゴールドマン・サックスだとかモルガン・スタンレーといった、今は問題がないといったとこもそういうことをやっておるというような状況ですね。
それで、日本のほうの影響はどうかということでありましたが、日本の銀行はそういうことをやってないわけですね、ほとんど。1つは、やはりバブルが崩壊して金融機関が大変な目に遭いましたから、体力がそもそもリスクをたくさんとるような体力がなかった、あるいは新業務に入ってやっていけるだけの人材もいなかった、あるいはこれまでに苦い経験しましたから非常な慎重な投資活動、融資活動をしてきたということが影響してるわけでありまして、幸いをしたということじゃないかと思いますね。ただ、アメリカ経済はやっぱり世界の中の大きなシェアを占めてますから、そこの景気が停滞する、さらにまた金融不安がまだ解決したわけじゃなくて、いつ解決するかまだわからない状況ですね。まだ相当先行きどうなるかわからないことでありますから、そうなりますと金融機関全体にまた融資が慎重になってきますし、それから現実に損をして破綻をするようなとこがありますと実損を負いますから、企業の投資なんかも難しくなる、そうすると今度は消費だとかいろんな実体経済に影響が及んでくる。アメリカが悪くなると、アメリカに輸出してた中国とか新興国も大きな影響を受けますね。そうすると世界経済全体が停滞していくわけでありまして、そうすると日本経済もまた影響が起こるわけであります。そういう意味で直接的な影響はないけども、まだ間接的な影響がどう出てくるかというのはわからない状況になっておりますから、いろんな面で慎重な対応が必要だということであります。
それから、欧米で行われてた会計、減損会計でありますとか時価会計、そういうものを得れるようになったから日本も大きな影響を受けたんではないかという御指摘がありましたけども、日本の国内だけ、あるいは非常に株の公開とかをしてないようなところと、それから国際的な活動をしてるところの会計基準というのは、あるいは違うのかもしれませんね。しかし、国際的な取引をする、あるいは外国人に株を買ってもらうといったような企業は、やはりディスクロージャーの仕方あるいは会計の仕方は外国と同じでないと買いに来ませんから、それはやる必要があったわけですね。同じルールのもとで開示をする、評価をする、これはやむを得ないことであります。そうしませんと日本の市場に入ってきませんから、資金が。そういうことがあります。
それで、今の世界のいろんな取引が複雑化してますから、そういうものをより現実的な合理的なものにするという作業はこれからも続くんじゃないかと思いますね。それは国際的な活動をする企業、日本も国際的な活動をしなきゃいけないわけでありますから、そういうものを取り入れていくというのは今後も起こり得るだろうと思います。