県議会だより

Reports

平成20年11月定例議会一般質問(3)

少子化対策と教育問題について

先ごろ市町村別の生産年齢人口、老齢人口など島根県の推計人口についての新聞記事を目にしましたが、かなりの人口減少と高齢化率の進行がかなり顕著であったように記憶しています。
コーホート推計などの指標では、県内の人口が現在のような自然動態、社会動態ともに大幅な低下が継続すれば、地域の存続は危機に瀕すると考えられるのです。
島根県は「子育てするなら島根がいちばん」と謳い、「子育ての社会化」を掲げており、私は、過去、何度も、費用負担を含めた子育ての社会化は時宜に適ったもので、出産、医療、保育を含めた親の負担軽減の必要性を述べました。
核家族から核分裂家族と称されるように3世代同居から家庭の有り様が変化し、家庭内に子育てのマンパワーは著しく低下しています。子どもの数が大幅に減少しているのに、保育所の待機児童数が減少しない理由はここにあります。3世代同居を奨励すればある程度解決する問題は多いのでしょうが、一時保育や預かり保育のサービスが定着しつつあるものの、親に子育てのコストが過重にかかる現実は一向に改善していません。
ひとつは地域社会の地域力というか社会の共同体意識の低下で、個人情報保護法などによって必要以上のプライバシー意識の高まりは「自分は自分、人は人」で「遠くの親族より隣近所の他人」という意識は大幅に薄れました。家庭には親と子としか居ませんから、働くためには子育てを一時、他人にお願いするよりありません。保育所か幼稚園となるわけです。
小、中学校の放課後クラブも同様ですが、ほとんど全てに親の負担があるわけで、多少の行政負担があるとは言え、もう一度、親の過重負担について精神、身体、費用の面から、どのような支援が必要なのかを考える必要があります。
少子化対策室に「島根県の少子化対策は進んでいるか」と尋ねたらイのいちばんに「コッコロ事業」を挙げられました。知事も、昨日の同僚議員にコッコロ事業を自賛されました。地域の企業が子育て中の人たちを応援しようとするスローガン運動は良しとしても、女性の社会進出を本気で応援し、産後の職場復帰や子育て中の女性の多様な勤務形態を支援するなら、生産性の低下に対し企業のリスクを低減するような税制や支援を考えなければ、全ての責任を企業に押しつけているだけで、進展は難しいと思います。
また、島根県の少子化対策の総合調整、指揮を担当する部署がほとんど権限や予算を持たずに、子育て支援の事業は各部任せの状態では、子育ての社会化はお題目で、遠い課題だと言うことがよく分かります。
県の財政危機によって乳幼児医療費は負担増を余儀なくされていますが、東京などでは無料化されている地域もあります。
もはや、少子化は地域の問題ではなく、国家的問題でもあるのですから、老人医療費を2割にして18才までを1割にするぐらいの制度改正を国に求めるべきではないでしょうか。
また、1人あたり月額平均25000円となっている保育所の保育料は全額無料にすべきで、0才から5才までの700万人の30万円だと2兆1千億円でいま、政府が予定している定額給付金と同レベルです。
そこで知事にお尋ねしますが、県内の人口動態の予測についてお尋ねします。また、子育ての社会化に必要な対策の主眼は何なのかお尋ねします。現下の状況を考えると、福祉の力点を老人福祉から児童福祉に移行させるべきだと思いますが、ご見解をお尋ねします。

少子化によって競争が低下したことは、子どもの教育レベルの低下にも大きく影響しています。児童・生徒の学力低下が著しいのです。
私は、毎年新規採用の高校生や短大生の試験の答案を採点していますが、2-3年前から急激に国語や数学(算数)の正答率が低下しています。宿題がなくなったことと無関係ではなさそうで、3けたの整数の四則計算すら完全にマスターしていない県立高校生が珍しくはありません。聞いてみると、小学校で電卓を使っても良かったとのこと。深刻です。
県内の子ども達の学力向上をどうするのですか。すでに県内の公立高校から東大や京大に合格する子どもの数は大幅に減少しており、まさに危機的です。
先生も大変です。「あれをやっちゃいけない」「これをやっちゃいけない」規制だらけで、報告文書のヤマです。「子どもをクルマに乗せるな」「体罰はダメだ」「生徒が暴力を振るっても手を出すな」バカげています。
現場を経験していない行政職が一々使図する図式が続いているのです。教育委員の選任にも問題があるのではないでしょうか。近ごろ、教員はほとんど選任されず、教育行政に教員の意見が反映で来にくくなっているのでは無いでしょうか。
そこで教育長にお尋ねします。県内児童・生徒の学力向上をどのようにして図られますか。
知事、教員と警察官の給与カットは何とか今年度限りにすべきではないでしょうか。全国で同じ職務についている職種の減額はあまり適切ではないと思うのです。優秀な人材が流出する元だと思います。教員の夥しい文書報告を簡略化することと給与カットを再考することは教員が生徒と向きあう時間を増加させ、ヤル気のある優秀な人材が集まる種となるはずだと思いますがいかがでしょうか。

溝口善兵衛知事答弁

少子化対策と子育て支援について

子育てに関連しまして、まず将来の人口推計についての質問がありました。
昨年の5月に、国立の社会保障・人口問題研究所で、各県別の将来人口の推計が出ております。島根県は、2005年が74万2,000人、これが10年後の2015年には68万8,000人、20年後の2025年は62万2,000人、30年後の2035年は55万4,000人というふうに、自然減あるいは社会減を中心として、人口の減少が見込まれておるところであります。
それから、それに関連いたしまして、子育てを社会全体で支える体制をとらないと出生数がふえませんから、人口の減少を食いとめることはできないんではないかということから、子育ての社会化あるいは老人福祉と児童福祉の重点をどう考えるかという質問がありました。
私は、社会全体として子育てを取り組む体制を築いていくということは大事でございまして、ただ保育所でありますとか、そういった行政は市町村でやっとりますから、県は計画をつくるとか、あるいはPRを行うとか、あるいは企業に要請をすると、そういうようなことがメーンな分野になるわけでございますが、そういう面では地域の子育て支援センターでありますとか、子育てサロンの充実でありますとか、御指摘がありましたこっころ事業の推進とかをやっとるわけでございますが、行政、地域、企業などあらゆる主体が、何らかの形で子育てに参画する仕組みを構築するように引き続き努力をしたいと思います。
それに関連いたしまして、企業の負担というものがあると、そのバランスをとるべきだと。おっしゃるとおりであります。本来、子育てに係る経費の負担のようなものは、国全体で行うべきもんだと私は思います。特に、地方財政の豊かなとこでは医療費の負担が高学年まで拡大をされている。しかし、そうでないところはそれが制限をされてるといったような地域格差の問題もございます。そういう意味におきまして、国がもう少しこの問題に国家の問題として対応すべきだというふうに思っておりまして、国交省等に対してそういう要望を重ねてるとこでございますし、さらに引き続き、その面で努力をしたいと思うわけでございます。
それから、老人福祉と児童福祉の財源の配分についての御質問ございましたけども、これはやはり、この2つだけの問題ではなくて、社会保障制度全体をどう構築するかという観点、さらに国全体として負担と給付の関係をどう考えるかという広いコンテクストの中で検討しないと、なかなか結論が出る問題ではないと思います。例えば、ヨーロッパのように非常に多くの国民が多くの負担をし、それによって福祉を社会化をするといいますか、社会全体で医療、子育て、あるいは年金等を支えていくという体制をとるというのも一つの道であります。それはそういう選択の問題、政治の選択の問題でもございます。国としてさらにそういう問題に対して、よく国民的な議論を経て、正しい方向に向かっていくべきだというふうに考えているところであります。
それから、児童生徒の学力向上の問題について御指摘がございました。
学力の現状につきましては、私も議員と同じような問題意識を持っておるわけでございます。いろんな理由がこれにはあると思います。いずれにしましても、子供たちが読み書き、計算など基礎的な学力を学校で身につけるということは、大変大事な課題でございます。そういう面におきまして、さらにこの面で教育委員会がこの問題に対応していくということを期待をするわけでございます。私も、そういう面での県の体制については、よく教育委員会とも話をしていきたいというふうに考えているところでございます。
それから、それに関連しまして、やる気のある優秀な人材を、教員あるいは警察官の職のために確保をする必要があるということがございまして、それと関連して待遇の改善について、特に給与カットの問題について御質問がございました。議員のおっしゃるようなことも立場としてはわかるわけでありますけれども、今県が直面している財政の問題は非常に深刻でございます。毎年、何もしませんと200億円越える赤字財政が続くわけでございます。この問題は、時間はかかりますけれども、粘り強く対応しなきゃいかんわけでございます。
県の職員は、全体で1万5,000人弱でございます。このうち6割の職員は教員と警察官でございますから、やはりこの6割の方々に対しても一定の負担をお願いするのは、県の財政の状況からしてやむを得ないと考えておりまして、そのような措置をお願いしているとこでございますが、なるべく大事なことは、こうした給与の特例減額を早くやめるように努力をしなきゃいかんわけでございます。県自身としても努力を続けなければなりませんし、さらに、国自身が財政力の弱い地方に対して、さらに必要な措置をとっていくようにお願いもしなきゃいかんわけでございます。この両面で財政の問題を早く解決することによりまして、給与の特例減額についても早く納得できるように努力してまいりたいと考えているところであります。

藤原義光教育長答弁

学力の回復について

学校の閉塞感の中での生徒の学力向上をどうするかということについて、私のほうにも質問がございましたので、答えさせていただきたいと思います。
御指摘がございましたように、現在、学校の現場、さまざまな教育課題を抱える中で、ややもしますと、あれをするな、これもするな、あるいはあれもしろ、これもしろというふうな点、あるいは報告の点ございましたように、あの報告あるいはこの報告もしろというふうな、非常にいわば事務作業が非常にふえている、あるいは教育課題がふえているという中で、いわば行き詰まるといいますか、余裕のない状況にあろうというふうに、私も現場の状況を認識しておりまして、少しでもこういうふうな状況を改善するということが必要だと思っております。そのためには、現場を締めつけるというふうな考え方ではなくて、できるだけ励ましてやる、あるいは自信を持たせてやるということが必要だと思っております。また、報告につきましてございましたように、できるだけ簡素な形で済ますということについても、日ごろから申しておるところでございます。
全体といたしまして、個々の課題に対します的を射た対策が一つは必要でございます。それとともに、さまざまな教育課題が非常に複合的に生じてるというふうに考えておりますので、そうした観点からは、総合的な対策をあわせてとってまいることによりまして、お願いいたしております学力向上、そのための学力調査も含めまして、来年度以降も全力で取り組んでまいりたいというふうに思っております。

過去の投稿

園山繁の活動日誌