県議会だより

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平成20年11月定例議会一般質問(2)

新型インフルエンザ対策について

政府は11月28日、新型インフルエンザに対する国の対策の基本になる行動計画を全面改定した。従来の計画より「ウイルスの国内侵入を防ぐのはほぼ不可能」との前提で(1)感染拡大を抑制して健康被害を最小限にとどめる(2)社会・経済を破たんに至らせないと目的を明確化しました。
一般から意見聴取したうえで、年明けに正式決定するとしていますが、また厚生労働省の専門家会議などが策定した指針を格上げして10分野のガイドラインを新たにまとめており、内閣府は「これで対策の一応の全体像が示せた」としています。
05年12月に策定された行動計画は、世界保健機関(WHO)が宣言する世界的な流行段階(フェーズ)で対策を分類していましたが、新たに国内の状況に応じた5段階に整理し直しました。従前の大きな対策の一つだった「封じ込め」は、地域の完全封鎖が困難なため「まん延防止」に改めています。
対策は各段階で▽ワクチン▽医療▽社会・経済機能の維持、など9項目にわたる。医療では、国内発生早期には感染者全員を入院させる一方、感染拡大期には病床確保のため重症者以外は在宅療養に切り替える体制を明記し、鳥インフルエンザウイルスから作ったプレパンデミック(大流行前)ワクチンを効果次第で未発生期から接種することや、タミフルなどの治療薬の備蓄量を人口の45%分に引き上げる方針も示しています。
被害想定は変更せず、人口の25%が感染して致死率が中程度(0.53%)の場合、最大64万人が死亡、1日の入院患者は発生5週目に10万1000人に達し、社会人の4割が欠勤すると見込んでいます。
従来、新型インフルエンザの発生に備えて、政府及び各都道府県では抗インフルエンザウイルス薬の備蓄は、治療薬として、タミフルを政府で1,050万人分、都道府県で1,050万人分、流通備蓄が400万人分の合計2,500万人分、リレンザを政府で60万人分を確保し、予防投与用として、政府でタミフルを300万人分備蓄するとしてきましたが、今回、これも大幅に拡大されています。

不可思議な点は、発生が報告された際の空港、港での入国規制について法律の規定がされておらず、発症前のウィルス保菌者の入国をブロックすることを断念したことであります。
危機管理の要諦は、初動体制の確立で、1次ブロックを断念することは政府の責任放棄で、とても納得できるものではありません。90年前にスペイン風邪が流行した折にはウィルス感染の速度が情報伝達に比べて速かったかも知れませんが、現在の情報伝達のスピードは、発生が確認されてから瞬時に世界中に伝播することが可能であり、政府は新型インフルエンザ対策を過去に全く例がないほどの莫大な財政資金を投入して対策を講じていますが、水際での拡大防止の対策をとらずに「蔓延」を前提とした計画はとても理解できないものです。
また、感染症対策が都道府県単位で対応する計画となっていることも不可思議であり、万が一、日本が原発となったときの地域隔離や住民保護は都道府県ごとに行うことは合理的ではなく、学校の休校や防疫体制の範囲指定などは内閣の管理下で行われるべきであります。新型インフルエンザの流行がわずか1日か2日で日本中に蔓延するかのごとき行動計画は、0では無いにせよ可能性は極めて低いのではないかと思います。
自然災害や火事、犯罪、感染症など様々な事態に対して、国家や地方自治体が危機管理として、備えをすることは行政の責任として当然でしょうが、ものには「どこまで」という役割分担があると思います。
個人、家庭、集落、地域社会、市町村、都道府県、国家、国際社会までそれぞれが果たすべき責任の範囲があるはずです。
すでに食糧、水、、日用品・医療品、マスクや消毒薬など対インフルエンザ対策の物品、懐中電灯やビニール袋など当座に必要となるものを詰め込んだ「家庭用インフルエンザキット」が医療系スーパーで販売されてい増すが、住民一般の関心は驚くほど低く、冷静です。
そこで知事にお尋ねしますが、 過去の例から考えても新型インフルエンザに対する国の対応はあまりに大袈裟で、もっと対象を絞って、初動体制などについて強化すべきではないかと思うのですが、どのようにお考えになりますか。また、新型インフルエンザ対策は一義的には都道府県でなく国が責任を持って行うべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。さらに、このままでは、無駄なものに財政資金を湯水のごとく注ぐ結果となることは必至であり、国の行動計画を再検討し、空港や港湾での入国を一時留保するのに必要な法律整備を要請すべきだと思いますがいかがお考えになりますか。

溝口善兵衛知事答弁

インフルエンザ対策について

インフルエンザ対策にかかわる問題でございます。
国の対応についての質問もございました。
まず、水際でとめるというのは大事なことであります。政府のほうは、ことしの5月に感染法、検疫法を改正いたしまして、有症者等に対して感染の有無が確定するまで隔離をするという措置はとりました。しかし、委員が御指摘のように、船の入港あるいは飛行機の着陸、そういうことをブロックするようにはなってないんじゃないかと。それも一つの案だと思います。ただ飛行機は、日本全国各地で国際線もありますし、何万台と来ますし、どういうブロックの仕方が可能なのか、あるいはブロックするにしても、患者がいるっていうことがないとなかなか難しいでしょうから、そういうことを政府がいろいろお考えになった上で検疫法の改正を行っているはずでございますけれども、議員のようなことが可能なのか、あるいはどういう手段がさらにあるのか、政府にもよく聞いてまいりたいと、その上でまたお話をさせていただければと思います。
そこで、今度は政府の対策が余りにも大げさではないかということでございます。
確かに、水際でブロックできれば、日本の中で最初に発生する可能性は少ないわけでございますから、水際で防止すればかなり対応できるということであったと思いますけども、実はなかなかやっぱりそれが難しいというのが世界の見方になっとるわけです。飛行機というものが発達して、何百万人という人が行き来をする時代でありますから、非常に感染をした人が日本国内に入ってこないようにするっていうのは難しいことでございます。入ると、これはワクチンがありませんから、ほとんどみんな免疫を持ってませんから、大流行するというのが新型インフルエンザの怖い点でありまして、それで世界的には入ってくることは防止できないとすると、大流行しないために何をしたらいいかということが一つ。大流行しそうな状況になったときに、さらにそれが予防が、感染してない人に対する啓発とか予防がどういったらできるか。そういうことを考えなきゃいかんというのが現状だと思います。
WHOは新型インフルエンザの発生というのは時間の問題だというふうに見ておるようでございます。鳥だけに感染していたインフルエンザが、鳥から人にうつるようになった。それが人から人にもうつる可能性が非常に高いということでございますから、政府の対策もそういう大流行を防ぐためにどうしたらいいかということにも重点を少し移してるというのが現状じゃないかと思います。各国ともそういう状況になってるというふうに思います。
それから、そういう意味で、国が責任を持ってやるべきではないかという御指摘もありました。国家的な、ある地域だけにとどまる感染症じゃないわけです。交通の手段、国内で一たん発生しますと、人の行き来がありますから、全国に波及をする可能性が非常に高いわけでありますから、国家として対応しなきゃいかん。国が最も責任を持って対応しなきゃいかん分野と思います。しかし、予防あるいは感染の蔓延を防止する実際の作業は、これは地方公共団体しかやるところがないわけです。国は手足を持ちませんから、県がやり、市町村がやるというのは、これはやらないといけない。したがって、国、地方が一体となってやらなきゃいけません。しかし、大きな枠組みは国がちゃんとしてやらなければなりませんし、それから費用負担なども国のほうでほとんどやるべきだと私は思います。
そういうことで、知事会などにおきましても、国の対応をもう少し強化すべきだという意見が非常に出てるわけでございます。私ども同じでございます。例えば、全国知事会では、国に対しまして、全国民分のタミフルあるいは大流行前のワクチン等の医療品を備蓄すること。今、2,000万人分ぐらいが用意をされつつありますけれども、それでは足らない。もう少しやるべきだということを言っております。それから、医師の確保が大変でございますし、それから感染の防具、マスクのようなもんです。それから、人工呼吸器のようなものも要るでしょう。それから、訓練も要るでしょう。そうした財政支援といいますか、国家、国全体としてそれを負担する必要があるんじゃないかという主張もしております。
それから、今度は予防の実施をするのは地方公共団体ですから、地方公共団体が住民の行動を制限するような権限を与えるべきではないかとか、あるいは集会の自粛についても強い権限を与えるべきじゃないかというようなこともあるわけでございます。そういう面につきまして、私も国の対応はまだ十分でないと思います。知事会あるいは市町村などの一緒になりまして、さらに働きかけをしてまいりたいというふうに思ってるところでございます。
そういう状況でございますから、県の中でもできるものはしなきゃいけないというのが私の考えでございまして、必要なタミフルの備蓄なども始めておりますが、あるいは地域の医療体制の整備なども準備を始めておりますけども、タミフル等の備蓄は国のほうで全部買い取る、製造会社から買い取る体制になってますから、地方公共団体がやるというのは限界がございますが、国に対してさらに備蓄を行うように要請をしていきたいというふうに考えているところであります。

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