県議会だより

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平成15年9月議会一般質問(4)

漁業の振興について

豊かな海づくり大会の開催まであと2週間ほどになりました。しかし、いま県内漁業の状況は大変です。今春は巻き網船団の廃業、今夏も沖合底引き船団の破綻が報じられております。昭和50年代から比較すると巻き網、底引きは半減、定置は4割減といわれており、漁価、浜値もおそろしく安い状況が続いています。ブランド力強化のため保冷パックや殺菌冷海水など鮮度保持や規格の統一等によって品質向上を図っているにもかかわらず卸値の下降傾向に歯止めがかからない状況ですが、ここ30年ほどの漁業経営体の推移をどのように見ておられるのかまず農林水産部長の見解を質したいと存じます。
海に面した島根県の振興はある面で漁業、漁村の振興とリンクしていると認識しております。しかし、なかなか速効性のある具体的な支援策は難しく、漁村は疲弊しています。「収入無きところに定住なし」と言われますが、職住接近の最たる漁村でも漁業で生計を立てようとすればかなりのイニシャルコストが必要です。ランニングコストを抑制するための省力化や品質向上、資源保護に資する投資などには国、県の支援がありますが、経営基盤の脆弱な事業体は法人、個人を問わず金融制度改革による資金ショートを恐れて十分な導入が図られていない状況です。本来ならば、低金利の今こそ絶好の再生産投資や設備改善の機会でありますが、先行きの不安もあり、経営体質の強化は思うに任せない状況です。制度融資の信用補完、信用保証等についても県漁連や市町村と連携してキメの細かな対処が必要と考えますが農林水産部長の見解を質したいと存じます。
漁村の生活環境は漁業の盛衰に直結しております。近年、規模の小さな漁港、とりわけ市町村管理の1種漁港には施設の老朽化、劣化が顕著となっていながら事業費の受益者負担等の問題から放置されたままのものもあります。また、沿岸漁業の漁場醸成に不可欠な森林(魚付き保安林等)の整備や沿岸集落を波浪から守る外郭施設など、従来は漁業者を事業の受益者としてきた事業についても漁村の集落機能の維持存続に必要なものと産業振興として投資に重点を置くものを分離し、漁協や集落など共同で取り組めるものと事業者ごとに個別に対処すべきものに支援メニューを細分化し、見直しすべきだと思います。私は、島根の沿岸漁業は現状は厳しくとも十分に持続可能でかつ安定的な収益が見込める極めて有望な産業だととらえております。いま、必要ならば敢えて経営体そのものへの直接支援も考慮されるべきと考えております。また、1県1漁協の体制整備に向けた集荷、販売の拠点整備の検討も喫緊の課題でありましょう。漁村と漁業者に明るい笑顔が取り戻せ、海がまさに豊饒の資源を活用するための場として水産島根の再生に向け、知事の力強い取り組みへの決意を求めて私の質問を終わります。

三浦農林水産部長答弁

漁業経営体の推移について

議員ご指摘の通り本県の基幹漁業である沖合底引き網漁業や中型巻き網漁業は昭和50年に比べて3分の1以下に減少しており現在それぞれ12ヶ統、20ヶ統となっております。また、大型定置網についても昭和62年に55統あったもののその後徐々に減少し、現在は40統となっております。これら漁業経営体の減少は、資源状況の悪化による漁獲量の減少、漁業就業者の高齢化や漁労経費の増大さらには水産物価格の下落など、様々な原因によって漁業経営が悪化したことによるものと考えております。
県といたしましては、現在の漁業経営体並びに漁業生産規模を維持することが地域経済を支える上でも重要な課題であると認識しており、基幹漁業をはじめとした漁業経営体の体質強化を図ることが急務と考えております。このため、各漁業経営体によるコスト削減や付加価値向上などの取り組みに対する指導・支援を重点的に進め、現在の厳しい状況を乗り切ることができるよう、体力のある漁業経営体の育成に努めてまいります。
次に、経営改善に取り組む漁業者に対する信用補完や金融機関に対する保証対策についてであります。本県漁業をめぐる情勢には非常に厳しいものがある中、各漁業経営者は経営改善を図るため、省力機器や効率的な船上冷蔵機器等の鮮度保持施設の導入等に意欲的に取り組んでおります。県といたしましても、このような取り組みを支援するために施設整備に対する国の融資制度である漁業近代化資金に対する利子補給を行ってまいりました。
また、平成12年度からは短期の運転資金を融通する漁業活性化資金融資事業、平成14年度からは基幹漁業である沖合底引き、巻き網漁業を対象に低利の運転資金融資を行う21世紀漁業構造改革支援事業を実施するなど漁業者の経営支援に努めているところであります。このような融資に対する信用保証については、中小漁業融資保証法に基づき設立され、漁業経営者の信用保証を行っております島根県漁業信用基金協会に対し、平成14年度に6億円を追加出資し1経営体あたりの保証限度額および総保証限度額の増額を図ったところであり、今後とも系統団体や市町村と連携し、適宜適切な施策を実施して本県漁業経営の維持安定を図ってまいります。

澄田知事答弁

水産島根の再生に向けた決意について

本県では、生産力の高い優良漁場を背景に、古くから水産業が盛んに営まれ、豊かな食文化を育むとともに県勢の発展を支えてまいりました。
しかしながら、近年、本県水産業を取り巻く状況は、資源の悪化などに伴う漁獲量の減少や漁価の低迷など非常に厳しいものがあります。このため、県といたしましては、漁業経営の安定や担い手の育成確保、栽培漁業の推進や水産物の品質向上、さらには漁港・漁場、漁村集落の整備を積極的に推進することとしております。
また、平成17年度に予定されている1県1漁協への移行が円滑に行われるよう、系統団体とも連携を密にし、積極的に支援してまいります。現在、本県の水産業は厳しい状況が続いておりますが、関係者の状況打開に向けた気概と取り組みがある限り、必ずや再生できるものと考えております。
県としても、今後とも漁業者や系統団体の意見を伺いながら、必要に応じて施策の見直しも行い、関係者とともに水産島根を再生していく決意であります。

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