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公共事業についてお尋ねします。
一般に公共事業と言われると、「建設、土木」事業をイメージし、社会資本整備を想定しますが、備品購入や印刷などにいたるまで幅広い公共調達全般についての考え方を伺いたいと思います。
近ごろ、落札率、発注者側の予定価格に対して受注者の受注額がいくらかの割合がクローズアップされ、高いと「談合」「不正」と問題視される傾向にあり、「適正競争」と称する値下げ合戦が繰り広げられております。
確かに、みんなの財産である社会資本ですから「安くて良い仕事」「安くて良い品物」が一番ですが、「熟練性」や「技術力」「地域性」などよりも「一定水準以上は同じ」「地域性よりも競争」とばかりの状況が続いており、参入フリーの一般競争によって県内事業者の体力は大きく低下しております。特に、「景気対策」として発注される公共事業、調達が、地域性や採算を加味することなく、従来方式で行われていることに、私は大きな疑問を感じます。
平成20年度の県内の土木・建設関係の公共投資ば、全体で6436件で約1915億8千万円であります。このうち、島根県が事業主体となる補助、単独の事業は2324件739億4千万円で、県内業者への発注が2260件で、発注額は573億5千万円となっており、市町村が事業主体となるものは、3755件493億4千万円で、県内事業者への発注は、3592件464億7千万であります。これに対し、国の直轄事業は、発注件数が340件646億5千万円で、うち、県内事業者への発注は231件243億7千万円で、県外事業者が109件402億8千万円となっており、西日本高速道路に至っては、発注件数が17件、発注額が36億2千万円に対し、県内事業者への発注はわずか3件4千万円で、14件35億8千万円は県外事業者へのものであります。
私は、以前にも、公共投資の現状が「海水浴の貸間」では、公共投資によって県のお金が外に流れてしまうと申し上げてました。
島根県のGDPは約2兆5千億円で、公共支出の総額がが1兆円です。そのうちの土木・建設関係の公共投資額は約2000億円で、全体の8%に相当します。しかし、その3分の1が県外事業者への発注で、また、土木・建設資材のほとんどが県外調達であることを考えると、一定の付加価値いわゆる利益と人件費が確保されないと公共事業による経済循環はほとんど期待できないばかりか、むしろ、島根県からお金が出ていくおそれが大きくなるのではないかとさえ思います。
私は国の直轄事業での土木・建設関係の公共投資を含め、国、県が管理する施設の維持、修繕に至るまで、基礎自治体である市町村が一定の規模になれば、そこに委ねるべきで、現状のように市町村の規模がバラバラなときは補完的に広域自治体である都道府県がそれを代行すれば良いと思っています。国の出先機関などいらぬもので、ムダの最たるもので、直轄事業の負担金で国家公務員の人件費を支払うなど狂気の沙汰としか思えません。
私は、「安いこと」だけが良いとは思いません。「良い仕事」は高くて当たり前であり、「丁寧な仕事」や「熟練性」「専門性」「希少価値」などに一定の評価があってしかるべきだと思います。そうした意味からすれば、総合評価方式による発注は一定の前進ですが、除雪や災害貢献などの加点は当然としても、ハートフルロードのボランティア活動や高齢者雇用など「社会貢献」と言う、いらざる「味付け」要素が多すぎて、本来の技術力と言う面が軽んじられているような気がします。一般競争は一見公平のように思えても、必ずしもそうでないと面も考える必要があると思います。
公共投資の波及効果、経済対策としての効果、全体としての付加価値の額、発注額全体に対する県外流失の額(材料支払いなどの総額)など、公共投資が県内経済にどのような効果をもたらしているのかを説明していただきたいと思います。その上で、発注方法や直轄事業のあり方、発注額の算定などに対する考え方、また、公共事業での付加価値、いわゆる適正利潤はどの程度がを見込んで積算をされているのかお尋ねいたします。
また、先般の梅雨前線豪雨で出雲大社と日御碕を結ぶ観光ルートである大社日御碕線の中山地内で法面崩落が発生し、う回路が確保されたものの、大型バスなどの通行が不能となり、観光シーズンに入った日御碕地域は甚大な影響を被っています。とりわけ、う回路とされた斐川一畑大社線は狭隘、急カーブの上に松食い虫の枯損木が道路沿いに点在しています。また、中山-御碕、御崎-宇龍はシングルアクセスで万が一の時のう回路さえ確保できていない状況であります。さらに、昨日、う回路となっていた斐川一畑大社線は出雲市猪目町の猪目トンネル付近の法面崩落により全面通行止となり不通となりました。こうした事態に鑑み、早急に出雲市と協議の上、林道整備などによって迂回路を確保するなど、動線確保について抜本的な対策を講ずる必要性を感じますが、土木部長、農林水産部長の見解を求めたいと思います。
│掲載日:2009年06月30日│
公共事業を例にとって申し上げますと、大体このくらいのコストがかかるだろうなという計算を発注者、県のほうで、県の事業でするわけでございます。それが予定価格でありますが、予定価格は大体において2つのカテゴリーに分かれるわけでございます。1つは工事費でございます。工事そのものに係る経費でございます。工事費の中には、資材の購入費があります。それから、そういうものを活用して人が働くわけでありますが、現場の人件費などがあります。つまり工事に必要なものがあります。これは工事の形態によっても過去にいろんなデータの累積がありますから、こういう工事ですと、こういう仕様でこういう規模だとこういうことになるという計算がある程度かなり正確にできるわけでございます。それからもう一つは、難しいのは、工事の現場以外に本社等において一般管理費としてかかる部分があります。給与の計算するとか、あるいは資金調達をするとか、いろんな部署の仕事があるわけでございますが、そこら辺は各企業まちまちだろうと思います。さらに、そういう中には利潤も含まれるわけであります。利潤は企業継続のために必要なわけでございますから、長い目で見ればコストに近いようなものになるわけでありまして、そういう一般管理費の部分につきましてはデータがありませんので、十分なものがありません。国のほうは、国の事業を行うためにそういう建設業の財務諸表等を見まして、国交省におきまして毎年調査をして、大体一般管理費はこのくらいかかるだろうなという試算をして、それを国の事業には使っておるわけでございます。県もこの国の調査結果を使っておるということでございます。この中に利潤や税金も含まれます。それから、一般的な仕事をする人々の給与等々もあるわけでございます。大体一般的な工事費では、直接工事費が60%、それから間接工事費が30%、90%が工事費でございます。残り10%が一般管理費ということでございまして、この一般管理費の中に利潤も含まれるということでございますが、この中で利潤がどういうふうに積算されてるかというのは、国交省のほうでは内訳までは公表してないようでございますが、そういうことでございます。
それから、公共投資が県内経済にもたらす効果等について、それから発注についての御質問がありました。
公共投資を仮に100億円行いますと、産業連関表という一つの波及効果を計算する仕組みがあります。それによりますと、工事の原材料の購入額は100億円の工事の場合は大体51億円ぐらい、半分ぐらいが原材料費、資材費になるようでございます。残りの半分が賃金でありますとか、あるいは一般管理費等になるようでございます。それから、原材料のうち、県外から調達するのは51億円のうち27億円ぐらいだそうでございますから、半分強が県外からの調達になります。調達という意味は、セメントを買う、セメント自身がつくられるとこは県外の工場であったり、あるいは鉄骨を使う、それも製鉄会社を経由してくるわけでございますから、県外になるということでございます。それから、賃金等が入りますと、県民が消費とかをするわけでございます。これがほかの産業に今度は売り上げという形で波及してくるわけでございますけども、そうした間接効果を入れますと、大体100億円の公共工事を行いますと、150億円程度効果が経済的な波及によって出てくるというふうに試算をされています。これは標準的なものでございますから、個々によって実態は違うわけですけども、平均的にはこうだということでございます。
今回の補正予算で公共事業の追加等を行っておりますが、こういうものが県内経済に一定の大きな役割を果たしていくだろうと見ているところであります。
それから、公共工事投資の県内経済への効果を踏まえて、発注方法や直轄事業のあり方、発注額算定などについての質問がございました。
発注方法につきましては、公共調達は地元中小企業の受注機会の確保を通じまして、地域の雇用確保や地域経済の発展に貢献するものであります。県としましては、県内中小企業者への優先発注にも努めており、市町村にもそうした面での働きかけをしているとこでございます。公共工事発注につきまして、県内業者が施工できる工事はすべて県内に発注もしておるとこでございます。
直轄工事でございます。直轄工事事業そのものがどうなるかというのは、これは国が社会的なインフラを全国的にどう整備するかという観点で、直轄事業で行うもの、あるいは補助事業で行うもの、あるいは県単独で行うものということが決まってまいるわけでございます。それは工事の必要性、全国的な調整をどうとるか、あるいは複数の県にまたがる場合には、やはりその調整を要するといったようなことから、直轄事業というものの事業が決まってくるわけでございますが、直轄事業の発注につきましては、国交省がいろんな基準で決めておりますけども、私どもは国に対しましても、県内の建設業の技術力も上がっておるわけでございまして、そこら辺は現実に合わせて県内企業への受注機会がふえるようにということを機会あるごとに申し入れているとこでございます。引き続き、この面についても努力をしていきたいというふうに思います。
それから、発注額の算定の仕方でございますが、発注時の予定価格につきましては、先ほど申し上げましたように、工事費を積み上げると、それから一般管理費につきましては、一定の比率で加算をするといったようなやり方をとっておるわけでございます。また、入札の仕方につきましては、最低価格制度をどうするかといった問題もございます。こういう問題につきましても、これまでも改善の努力をしております。それから、個別企業の特性といったものも考慮をするという必要性から、総合評価制度といった仕組みも取り入れてきているとこでございまして、今後とも県内の公共工事の実態に合わせた適正な入札の制度がとられますよう、さらに研究努力をしてまいりたいと考えているとこであります。
中山、日御碕あるいは宇龍といった地域、その山間部を含めまして、特にその山間に入っていきますと、手入れの十分ではない小規模な人工林、あるいは松くい虫の被害を受けた枯損木、さらにはシカによる被害地などが点在しているところでございます。地域の住民の皆様方がこうした山林の手入れ、あるいは被害対策などのような荒廃森林の整備を行おうとされておられる、これは承知しておるところでございますが、こうした森林の保全、整備にかかわる作業を効率的に実行するためには、路網の整備も必要になるものと考えられるところでございます。日御碕等の地域のアクセスや森林整備についての地域の住民の皆様方の御要望につきまして、出雲市ともよく十分に協議を行いながら、林道等の整備による対応を含めて検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
6月22日、のり面崩落による全面通行どめが発生した大社日御碕線は、一日も早い開通を目指し、全力を挙げて取り組んでおります。この地域は、半島部特有の急峻な地形で、かつ脆弱な地質であり、落石等の危険箇所が多く存在するため、議員御指摘のとおり、対策をまだ講じることができていない箇所もございます。災害の際の代替道路がない箇所もあります。こうした地域的なハンディを解消するためには、県道や市道、農道、林道、漁港関連道など、あらゆる道路について効率的、総合的に整備を進める必要があります。このため、県や市町村のさまざまな道路の担当者で構成され、各県道整備事務所単位で設置しております道づくり調整会議において、地域住民の方の安全・安心な通行環境の確保について、今後検討、対応してまいります。