県議会だより

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6月定例県議会一般質問(2)

農林水産業従事者の労災加入について

雇用情勢悪化で農林水産業への就業希望者が増加しています。非正規雇用社員の削減を中心とした急激な雇用情勢の悪化を受け、職を求める人についても、新しい分野への移動の動きが見られます。製造業を中心に人員削減が相次いでいるのを受け、地方自治体や関係団体では、農林水産業への就業を希望する人を対象に就職相談会を盛んに実施しています。各自治体では、林業の知識やチェーンソーの操作などの具体的な実務を身につけることができる無料の研修会なども開催しているようですが、農林水産業に特化した求人サイトを立ち上げ、農林水産業への雇用を支援している企業もあります。農林水産省のホームページにも新規就農希望者を支援するコーナーが立ち上げられており、農林水産業に就業するために具体的に何をすればよいのかなどを案内し、全国各地の就業情報や支援情報をリアルタイムで確認することができます。 製造業などにおける非正規雇用社員の雇止めや契約解除などの動きは、担い手不足に悩む第一次産業にとっては追い風になるものと言われています。また、若い人に非正規労働を定着させるのではなく、技能を身につけたうえで医療や福祉、農業などの新しい分野へ移動させる仕組みづくりの重要性も主張されています。このような新たな動きが、雇用環境の悪化を少しでも緩和させることに繋がるかもしれません。しかし、製造業などで働いていた人の異業種への転職は、ギャップが大きすぎるのではないかと心配する声もあがっています。求職者の希望と仕事の内容が本当に一致するかどうかという問題もありますが、農林水産業従事者の高齢化なども踏まえ、農林水産業を雇用の受け皿にする動きが進めば、第一次産業の基盤強化に繋がります。また、将来の食料自給率向上にも結びつくものとして、雇用の面だけでなく、様々な面で可能性が広がるかもしれません。
しかし、毎年、島根県内で、農業の就業中に亡くなる人は少なくありません。しかし、民間事業所で働く人のように労災保険に加入している人はほとんど無いのが実態と聞いております。言うまでもなく、労働者災害補償保険は原則として1人でも雇用する事業者は加入が義務づけられていますが、農林水産業のうち常時雇用する労働者の数が5人未満の個人事業は暫定任意適用事業となり、加入は義務づけられていません。しかし、集落営農の拡大や営農集団による作業の受託など農業の経営形態は大きく変化しており、また、中高年の新規参入があるなど、労務環境のみならず農業従事者の労災加入は是非とも必要だと思いますが、この点、知事の見解を求めたいと思います。
仄聞するところでは、県内の状況は、JAで事務組合を設置しているところはJAいずもに1ヶ所あるのみで、ほとんど設置されておらず、特別加入は全就業者の0.7%に過ぎないとのことであり、制度の啓発のみならず、加入を促進するために何らかの対策が必要だと思います。
現状は80000人余りが任意でJAの傷害共済に加入しているようであり、現在、県内の農林水産業従事者の労災の加入実態についてはどのように把握され、加入がさほど進んでいない要因についてはどのように分析されているのかお尋ねいたするとともに、今後、加入が拡大するためにはどのような支援が必要なのかお尋ねいたします。

溝口善兵衛知事答弁

農林水産業従事者の労災保険加入について

御指摘のように、島根県において農業者の労災保険の加入の率は低いわけでございます。また、全国的に見ますと、農業で働く人の加入率がほかの業種に比べても低いといったことが起こっておるようでございます。これは国の制度があるわけでございますけども、そういう制度についての理解が必ずしも十分でないとか、あるいは特別加入の制度等もありますけども、議員もお触れになったわけでありますけども、そういうことが進んでないといったような点もあろうかと思います。しかし、近年農業におきましては、他産業からの参入でありますとか、あるいは集落営農の組織化でありますとか、さらには法人化による農業形態、農業経営の形態も増加するわけでございます。そうしますと、従業員としてそういう組織で働くということがこれからふえるわけでございます。それからもう一つ、大規模経営に伴いまして、農作業はますます機械化が進んでいくわけでありますし、また機械も大型化、高度化していくわけでありますから、作業にも危険性は伴うわけでございます。そういう意味におきまして、公的に整備された労災保険というものがあるわけでございますから、そういうもののPRに取り組んだり、あるいは関係団体と連携をいたしまして、加入促進に向けて努力をしてまいりたいというふうに考えるところであります。

石垣英司農林水産部長答弁

県内の農林水産業従事者の労災保険加入の状況について

労働者災害補償保険、いわゆる労災保険は、国が保険給付を行う公的な保険制度であります。原則として、雇用形態をとっておられる事業主さんは必ず加入するべきものでございますけれども、議員から御指摘がございましたように、農業で雇用形態にある、例えば集落営農組織などのような場合、従業者5人未満の場合につきましては、任意で加入できる特別加入の制度がございます。逆に申しますと、5人以上であれば強制加入ということになるわけでありまして、ほかにも大部分が雇用形態をとっていると考えられます林業、あるいは一部の水産業におきましては、これに加入しているものと認識をしているところでございます。しかしながら一方で、農業や小規模の漁業におきましては、事業主であってかつ御自身も働かれる、いわゆる一人親方と呼ばれる方が大変多いと認識しております。こうした一人親方につきましては、先ほど申しましたように、加入を強制されておりません。したがいまして、任意で加入できる特別加入の制度での対応ということになるわけでございますけれども、島根県においては、平成19年度のこうした特別加入実績は、農業では194人、林業では33人、水産業では13人となっております。このように農林水産業者の労災保険への加入が進んでいないということでございますけれども、その要因として考えられますこと、1つは農業者等に対しまして、こうした特別加入の制度の存在自体、十分に周知がされていないのではないかということ、第2点目としましては、特別加入制度におきまして、加入事務の手続を代行して行ういわゆる労災保険特別加入団体あるいは労災保険の事務処理などの手続を行う労働保険事務組合と、こういったいわば受け皿とでも呼ぶべき体制整備が十分には進んでいないということ、さらには3点目といたしましては、掛金ですとか、補償メニューの内容には違いがありますけれども、民間におきまして、傷害保険制度、これもあるわけでございまして、生産者の皆さん方がそちらの保険に加入していると考えられることといったものが主な要因として考えられるところでございます。
これまでも事農業に関しましては、各市町村に対しまして、労災保険制度のパンフレットを配布したり、あるいは農作業安全運動の実施といったこういったキャンペーンなどの機会をとらえまして、生産者に対しましても、労災保険への加入の促進を呼びかけてきたところではございますけれども、しかしながら農業者の加入が進んでいないというこうした実態は重く受けとめなければならないと考えております。今後は農業者に対しまして、きちんと情報が伝わるように努めていくことが必要と考えております。例えば農業大学校で行われる農業機械士という資格を認定する際、あるいは民間の農業機械の展示会、こういった場でのPR、あるいは集落営農関係者が研修などで集まられる機会、こうした機会をとらえまして、労災保険の制度の説明を行うなど、さまざまな手段での周知広報に努めていく必要があると考えております。それと同時に、こうした加入が進んでいない要因、これをいま一度正確に把握しなければいけないと考えております。また、実際に加入を促進するためには、先ほど申し上げましたような労災保険特別加入団体といったような受け皿の体制整備が必要でございます。この点では、例えばJA、JFといった関係団体のかかわりが不可欠であります。こうした団体に対しましても、受け皿としての体制の整備、こちらにつきまして働きかけていきたいと考えております。こういった取り組みを図りながら、今後その加入促進をする上で労災保険の制度上の何らかの課題がもし仮に見つかったといたしましたら、他の都道府県とも連携をしながら、国に対しましての必要な要望を行うといったことも検討してまいりたいと、かように考えておる次第でございます。

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