県議会だより

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6月定例県議会一般質問(1)

「溝口イズム」について

ここのところ、とみに、政治家の発する言葉の力と言いますか、メッセージの発信力について感じます。
小泉改革をなぜ、格差が露呈しながらも、大方の国民が支持したのかと言えば、進むべき途筋がはっきりしていたからだと思います。日本は輸出産業で国富を積み上げるために国際標準を受け入れる、いわゆる市場原理の導入であり、「規制緩和」「自由競争」を徹 日本は「国土の均衡ある発展」を国是とし、成長戦略を描いて、貿易で稼いだ国富を積み上げ、徹底した富の再配分で、都市間格差や国民の生活水準を平準化させる、いわゆる日本型の社会主義とも言われるかたちで安定的に発展してきましたわけで、これを主導したのが自民党でありました。
ただ、金融が肥大化、かつ、急激に国際化して、実体経済と乖離すると言うか、何倍もの規模になってくると、国富の指標は曖昧となり、従前通りの再配分システムがなかなか機能しなくなってきた、いわゆる、日本型の社会主義が制度疲労を起こしてきたのだと思います。
リーマンショックによって、世界は肥大化した金融秩序をある程度是正しつつありますが、国際金融のあり方や為替、決済の方法が大きく変わるとは思えませんから、「自由競争」という大きな流れが変わることはないと思います。
国会では、おそらく、戦後はじめて経験するであろう、事実上の政権選択という衆議院議員選挙を意識して、1,2年前から「政権ごっこ」とばかりの不毛な論争が繰り広げられております。物事の枝葉末節を取り上げた非難合戦の繰り返しは、国益を離れた、まさに「木を見て森を見ない」状況であります。
メディアが、総理大臣や政党の党首よりも地方の知事の動静を取り上げる背景には、「政権ごっこ」に対する厭世感やリーダーの発進力の弱さがあるように感じます。
溝口知事は、就任されて丸2年が経過しました。県内のあちこちに自ら出かけ、自分の目で現場を確かめようとされる姿勢や誠実な人柄、風貌に県民の支持は極めて高いものがあると感じております。
ただ、ぼちぼち『善い人』から、溝口知事は『何をしようとしている人、どんな島根をつくりたいのか』『どんな県庁にしたいのか』『どんな県職員であるべきなのか』といういわゆる「溝口イズム」を明確にされるべきだと思います。
私は、知事の答弁を聞いておりますと、一つひとつ丁寧にお答えになりますが、「技術論」「各論」が多く、明確な方針が述べられることが極めて少ないように思います。
私はここ1,2ヶ月で残念な事象に何件も遭遇しました。
ひとつは県内主要観光地のなかで、県が設置している汲み取りトイレを今年度に水洗化する事業が当初予算で計上されながら、市町村との連携不足によって今年の観光シーズンが終わってからしか執行できない事例、国のエコポイント制導入に関して、商工労働部に問い合わせしたときに「エコポイントは環境生活部」と回送され、環境生活部では「国の制度なので承知していない」と応じられ、結果として、エコポイントの交換リストに、島根県内の事業者の名前はわずかで、せっかくのビジネスチャンスを逃してしまったこと。さらには、現在も平田船川の治水事業の工事が施行中で、先日の梅雨前線で、冠水で通行止めになった唯一の県道であるす鰐淵寺線の西郷地内ですが、事業着手の昭和47年から38年が経過し、やっと今春、河川の拡幅掘削が終了し、事業が暫定完了する予定でした。しかし、掘削土砂の処分が出雲県土整備事務所や出雲市の働きかけにもかかわらず、島根県農業公社の職員のかたくなな姿勢によって解決されず、3ヶ月以上も工事が延伸し、結果として、今年の梅雨期にも間に合わなかったということであります。
この3点に共通することは、県の職員に「私のセクションではない」というメッセージがあると言うことです。
知事さん、あなたの答弁には、「それは、本来、市町村の仕事」とか「国の役割」というフレーズがたくさん出てきます。確かに、間違いではありません。しかし、その姿勢こそ、いつの間にか、県庁職員にそのフレーズが移行していると思います。
「どうすれば前進できるか」という意識が欠落しているということであり、「島根県をどうするか」という『意識』ばかりでなく「価値判断の基準がどこにあるか」という最も基本的な部分の認識が共有されていないと言うことではないかと思います。
私は、ボトムアップ、トップダウン、調整型、牽引型、などトップリーダーの行政手法やスタイルは問うつもりはありません。就任3年目にして「知事は県政遂行に対して、県勢振興に対してこういうスタイルで、こういう思考で進めようとしている。だから、我々は、こういう視点で行政に当たっている」という職員の意識が確立されていななければ、ひとつの方向に向かって県政が進んでいくことは難しいと思います。
残念ながら、今回の454億円の補正予算も額は大きいものがありますが、国の方針、指導に倣ったというだけで、「島根をどうする」という明確な知事からのメッセージを感じることはできませんでした。
知事、「溝口イズム」とは何でしょうか。
「島根をこうしたい」という明確なメッセージを期待します。

溝口善兵衛知事答弁

県政に臨む基本姿勢について

県政に臨む考え方について「イズム」という言葉を使われましたが、私の理解するところでは、どのような考え方で、何を目指して、どのようにやっていくのかということではないかと思います。
どのような考え方、これは非常に基本的な考え方でありますが、これは私が就任する前から申し上げておりますが、県政というのは県民のためにあるわけでありますから、県民のためになるためにはどうしたらいいかということをまず根本に据えて物事に当たっていくと、これが最も大事なことでございます。それから、何をするかということにつきましては、やはり島根の現状を見ますと、少子高齢化が進み、人口の減少が進んでおりまして、島根の活力といったものが大きな問題であるわけでございまして、活力ある島根を築いていくということでございます。そのためには産業の振興だとか、いろいろございます。経済対策、中小企業の競争力強化、企業誘致、地域資源を活用した農林水産業あるいは観光の振興、あるいは高速道路等インフラの整備等々でございます。それから、やはりそういう中にあっても、県民の日々の暮らし、こういうものが安全・安心で豊かなものになるようにしなければならないわけでありまして、医療、福祉、教育、あるいは安心・安全対策、あるいは過疎、離島対策等、きめ細かにやっていくということが大事だということでございます。じゃどういうやり方でやっていくかということでございますが、基本的にやはり県民のために何が必要か、何をやらなければならないかということですと、現実をやはり知らないといけないわけでございますから、現地に行って現場を見、人々の意見を聞くということがまずその第一でございます。それは県職員についても同じでございます。机の上だけの仕事ではだめだということを常に言っておるわけでございます。
冒頭3つの事例についてのお話ありました。私もどうしてそういうことが起こったのかというのは、この質問に関連しまして担当部署から聞きました。私は、1つは電話の応対と、あるいは、ついてのお話もございましたが、その点について私は県職員に対しまして、講習等で申し上げたりしていることは、我々は、具体的な例で言うと、こういうことだということを言っているんです。我々が例えば大都市のデパートなんかへ行きますと、どこの売り場に何があるかわからないというようなことがしょっちゅうあるわけでございます。そうすると、親切なデパートの店員の方々、案内人の方々が非常に親切に教えてくれるわけであります。県政もそれと似たようなところがあると。県政の中でいろんな部署でいろんなことをやっている、デパートのようなもんです。どこで何があるか、名前もよくわからないちゅなことがあります。そうしますと、まずやっぱり県民の方々からの問い合わせ、あるいは注文等がいろんな形で来るわけでございますけれども、それをやっぱり親切に応答する、それをテイクケアするということが大事だと、まずそれが第一歩だということをいろんな機会に申し上げておるわけでございます。それから、仕事としては、やはり人員も減ってくるわけでございますから、やっぱり簡素にして明快に行っていくと、簡単明瞭に行っていくと、なるべく形式的なことを避けると、実施主義でやりなさいということを言っております。それから、今回御指摘になった3つの件を調べたりしますと、やはりいろんな意見等が出た場合に、その部署において考え方が共有されてなければならないわけでございますし、情報も共有されなければならないわけでございます。そういう意味で、部内での意思疎通をよくしなさいということも言っておるわけでございます。それから、難しい問題等は、上が指揮をしないと進まないんで、ちゃんと情報が上に上がる、それから下ではいろんな議論が行われる、問題が上がったらその部署のトップと申しますか、それがちゃんと指揮をする、リーダーシップを発揮するということを言っておるわけでございます。これは私は就任以来言っていることでございますが、しかしこういう面について不十分な点があることも御指摘のように理解はしております。引き続き、県庁、我々の仕事が県民の方々にとって効率的で、よく理解をされるように、支持をされるようにさらに努力をしてまいりたいと考えているところであります。

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