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漁業センサスの速報値が先月出されました。それによりますと、減少を続ける漁業経営体、あるいは漁業就業者の減少および75歳以上の漁業就業者の増加、減少する漁船隻数が表題に挙げられております。
5年間で専業漁師が500人ぐらい減り、漁船数も500隻ぐらい減っています。8000人近くおられた漁業者は、特に海面漁業ですが、3200-3300人になり、平均年齢が70を超えております。ほとんどが男ですから、70歳の平均余命は1けたで、もういくらも後がないわけです。10年もたったら、島根県の沿岸漁業というのはもう担い手が500人か600人になってしまうというのが、数字で顕れています。一体どうするのでしょうか。海は残ります。魚もいくらかは回遊し、資源はあっても漁師が居ない、残念ながらこれが現実です。
私は現役の魚の仲買人です。昭和53年から市場へ通い出して、30年を過ぎました。昭和53年に私が東京から帰って、十六島の市場へ通ったときには、サザエは、10キロの魚箱、いわゆる木の魚箱ですけれども、大体1万円から1万5000円でした。タイは1キロ1800円から2500円はしていたものです。何と今年、サザエは1㌔400円で、タイは800円です。タイは高級魚でなくなり、イワシが1㌔1500円ですから、大変な状況です。だから、魚を獲っても食えない、生活できないのであります。
私は中学校を卒業し、昭和47年3月、卒業式の日に、1年先輩の漁師さんが私や同級生にかなりのごちそうをしてくれました。その人は、1年前の3月に中学校を卒業し、沖合底曳き船に乗った人でした。当時、16歳の少年の平均月収30万円でした。公務員の初任給が3万円か4万円の頃です、私たちの憧れの的でした。中学校を出た人たちが競って沖合底曳き船に乗せてくださいという気持ち、分かります。
ところが、今、漁師になりますと言う人は稀です。私が住むは、出雲市の島根半島の西側には、日御碕から始まりまして地合まで、日御碕、宇龍、鷺、鵜、猪目、河下、小津、多井、十六島、釜浦、塩津、美保、三津、小伊津、坂浦、西地合、東地合と、これだけの浦があります。ところが、小学校というのは佐香小学校を除いて全部複式です。中学校は、かつて日御碕、鵜鷺、光、佐香、伊野まで5校がありましたけれども、今は光中学校だけが存続し、全校生徒50人。こういう今状況です。
ということは、県や国がいろいろな後継者対策を打ったが、あまり効果が挙がっていないと言うことではないでしょうか。行政が打つ対策というのが必ずしも時代にも地域にも合ってないということが漁業センサスから読み取れるでしょうか。
また、県内の状況は、新しく漁業就業をする人は、まき網とか、あるいは大田の地域で頑張っている小型底曳きなどであり、沿岸地域では、定置網というのが辛うじて就業者を支えています。つまり、ほとんどがサラリーマン漁師で、今まで島根県の漁業・漁村を支えてきた一本釣りの漁師ではないと言うことです。
サラリーマン漁師さんは漁業は支えても、必ずしも漁村に住んでなくてもできるから、漁村を支える人じゃないんです。漁村を支えてきた一本釣りの漁師が減るということは、漁村に人が住まなくなるということです。
海面漁業の歴史は、略奪漁業の歴史でした。島根県はようやく中間育成が定着しつつありますが、種苗から計画的に一貫生産し、計画出荷するという仕組みは全くできていません。私は、国内の他地域からも大きく立ちおくれていると思います。
一日も早く島根県の漁業の成功モデルを作る必要があります。県内で、モデル地区を作り、思い切って行政投資をするなり、徹底支援するなりして、ケーススタディを積み上げ、あしたの漁業の形が見えるところをつくらなければならないと思います。
海士町のCAS。アビー研究所の大和田博士がつくった新しい冷凍冷蔵技術を駆使した施設ができ上がっています。県内よりも、東京や大阪の地域での評判はすばらしいものですが、宝の持ち腐れです。生きた魚介類や海藻を海士町へ運んで、CAS冷凍し、ストックし、計画的な出荷をする。十六島ノリなんかは生で、11月、12月の一番ノリをそのままCAS冷凍し、次の年の年末に製品化して高く売れば、何倍もの収益が上がるでしょう。
また、水産物の卸売市場も大変な状況です。町の魚屋さんもどんどん廃業するという負のスパイラルに入っています。私は、生産と加工と販売を一体化するような方法、あるいは郵便とか宅配を活用する新しい流通のあり方も検討してはどうかと思います。私は、漁業については、思い切った行政出動でしかもはや再生の見込みはないように思いますが、この点については農林水産部長の見解をお尋ねをいたします。
│掲載日:2009年09月18日│
漁業センサスの結果が出て、後継者、担い手が急速な勢いで減っておるということでありますし、漁業というものがかつては非常にもうかる産業であったけども、今はそうじゃなくなってる。そういうことが起こったのは、県の漁業政策というようなものも大いに関係しておると。漁業の支援の仕方、県の漁業に対する、あるいは漁村に対する政策を見直すべきではないかということでございます。
まず、感想のほうから申し上げますと、かつて漁業に従事するということがそんなに大きな所得を獲得する機会であったかということは、ちょっと驚いたわけでございますけども、私の感想として言えば、むしろ近年に至ってからのほうが、魚に対する需要というのは日本の中でもふえてる、世界でもふえてる。あるいは魚というものが健康にいいとか、そういう考えの人がふえておりますから、むしろ値段は世界的には上がってると思うんですけども、日本の場合は、これは想像でございますけども、外国からの輸入といったものが大きなインパクトを与えてるんじゃないかと、山林と同じような関係にあるのかなと想像したわけでございますが、そこら辺はよく勉強してみますが、とりあえずそういう感想を得ました。
そういう中で漁業を、島根には日本海あるいは豊かな湖、きれいな河川があるわけでございます。そういう資源を活用するということが、発展にとって大事な課題でございますから、漁業についてもどういうふうな発展を考えるべきかというお話でございますが、おっしゃるように育てる漁業、あるいは鮮度を保ち、とれた魚の価値を高める、あるいは出荷の時期を需要期、都市の消費者の需要期に合わせて出荷をするとか、単にとるだけじゃなくて魚の養殖、それから販売、それから出荷の仕方、そういうものを総合的に進める必要があるということではないかと思います。
そういう面について、県内の漁業の方々もそれぞれ工夫、努力をされておられると思いますけれども、県もそういう方々とよく相談をしながら、漁業政策として島根に合ったもの、あるいは世の中の流れに合ったものを追求してまいりたいと、そういうものを踏まえまして県としての支援を考えていきたいというふうに思ってるところでございます。
以上、なかなか直ちに整理はできませんが、感想を含めましてお答えした次第でございます。
まず、海士町におけるCASの活用についてのお尋ねから答えいたしたいと思います。
CASといいますのは、CAS、セル・アライブ・システムということでありますが、先ほど議員のほうからも御紹介がございましたけれども、特殊な冷凍方式によって細胞を壊さずに冷凍保存をするということを可能とする技術であるというふうに私ども考えておりまして、水産物につきましては、通常の冷凍品に比べて高鮮度を維持することができるという特質を持っております。水産物の計画的販売を進める上では、こういったCASのような技術の活用は有力なものであると考えておるところでございます。
海士町におきましては、これまでも季節的な商品であるイワガキを中心として、シロイカなどの冷凍水産物の周年、一年じゅうの販売を行っているところでございますけれども、今後はこのように保存と鮮度を両立できるような技術を活用いたしまして、繰り返しになりますが、冷凍品であっても鮮度にすぐれているという特質を生かした有利販売ができるように、地元の産品を利用した商品開発あるいは原料の広域的な入手体制の整備、あるいは観光客への提供といった販売から生産にまで及ぶような戦略を、漁業者を始めとする関係者と県とが一緒になって策定をいたしまして、販路の拡大、ひいては漁業生産量の増大につながるように取り組んでまいりたいと考えております。さらに、こういった海士町におけます取り組みを検証してまいりまして、県内そのほかの地域にも展開が可能であるのかどうか、検討してまいりたいと考える次第でございます。
最後にもう一点でございます。魚屋さんについてのお話がございました。魚屋さんのみならず、こういった魚屋さんも含めた漁業の振興、活性化というものについてお答え申し上げたいと思います。
魚屋さんと私ども申しておりますけれども、鮮魚店といった小売業者の皆さん、通称魚屋さんというふうに私も答弁させていただきますけれども、魚屋さんにつきましては、魚介類について大変豊かな知識を持っておられるわけでございますけれども、ほかにも漁業者や仲買業者さんも当然詳しい知識があるわけでありますけれども、魚屋さんの場合ですと、消費者に日々接しているという極めて優位、極めて特別な立場にあるということでございまして、消費者のニーズであるとか、消費者のニーズについて、どんな魚が食べたいか、あるいはどういうふうに調理をしたらいいか、どういうふうな調理の仕方で食べたらいいか、例えば切り身がいいか、すり身がいいかといったような情報を持っておられるわけでございます。
また、他方で、魚屋さんは消費者に対して漁業者の日ごろの御苦労などを聞かせるといったような形でPRも行えるような立場にあるわけでございます。こういった魚屋さんが持っております情報収集能力あるいは消費拡大にも寄与し得るような、こういった能力を、売れる水産物づくりを図る上で有効に利用していくということで、鮮魚店を含めた小売業者さんと漁業者さんと両者の間の協働を県としても促していくとともに、水産物をより高く売るための戦略の策定、両者の間で策定される際にも積極的に参画してまいりたいと考えておるわけでございます。
この点は魚屋さんと漁業者間の協働ということでございましたけれども、県といたしましては、地域の実情や特性を生かしていくためにも、漁業集落や漁業関係者さんなど皆さんの生の声を聞いて、何ができるかをともに検討してまいりたいと考えております。こういった戦略と申しますか、こういったものを具体化していくに当たっても、必要に応じまして支援もしてまいりたいと、かように考える次第でございます。