県議会だより

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平成22年2月定例会一般質問(4)

島根県発展計画の見直しについて

島根県は日本のチベットだそうだが、地域医療の問題や就業などの問題を見ると、地域を存続させるためには、石見、隠岐、出雲というくくりから、オール島根という捕らえ方が必要だ。行政課題の解決のため、圏域のありかたをもう一度見直しする必要はないか。山陰道が整備されていない状況では、例えば医療などすぐに「オール島根」という体制は取れないかも知れない。しかし、状況は極めて切迫しており、ドクターヘリの導入を前倒しするとか、当面、山口や広島、鳥取などとの連携を深化させる必要があると思う。
人口の減少は半端ではない。平成17年の国勢調査で74万2223人とされた本県人口は、本年2月1日の推計人口で71万9181人と、実に2万3千人も減少した。平成12年からの10年間で見れば4万2300人もの減であり、安来市が、平成2年からでは6万1800人の減、浜田市が消滅した計算となる。本県の人口減は平成に入ってから顕著となり、ここ数年、加速しているように感じる。成人の1人あたりの年間消費額は約100万円と言われるから、平成初年と比較すれば、年間で600億円もの減となるのであり、県の経済活動が停滞するのも宜なるかなである。
従来は、益田・浜田・川本・出雲・木次・松江・西郷の7拠点だったから、7つの拠点にアクセスするネットワークが整備されてきた。それが、形の上では松江・浜田・西郷の3拠点に収斂されたが、必ずしも交通やライフラインを含めたネットワークの再構築が図られているとは言い難い。医療や産業集積などを考えるとオール島根で対応しなければ、地域間競争についていくことが困難ではないかとさえ思える。コーホート推計などの数値を見ると、10年、20年後の島根県の状況を想像すると身の毛がよだつのだが、「発展計画」を見直し、修正し、地域の維持存続を図るための施策と地域の活力を創出する施策を補強、補充する必要がある。
その際、考えられることが森林整備である。国は成長戦略に木材自給50%を挙げた。戦後、6000万立米を供給し、90%であった木材自給は、いま1800万立米で、20%前後になっている。日本の山林2500万㌶にある木材蓄積量は、50億立米と言われる。林業の衰退は1960年頃から始まったが、収益性が極めて高かった当時の国内山林の蓄積量は、戦後の伐採によって高々20億立米まで減少しており、年間1億立米の需要に応えることは不可能であった。結果、木材輸入は1964年から、完全自由化され、価格だけが下落したのである。現在、国内の木材消費は8600万立米程度で、世界第3位の消費量があるが、価格は1立米1万円程度で、狭義の林業の売り上げは8600億円、従事者48000人とさして驚く数字ではない。しかし、木材業界はすそ野が広く、関連業界がきわめて大きな分野であり、過疎地域である島根県で今後、一番に振興を図るべき業種ではないか。
欧州の林業大国オーストリアは就労者の時給は4000円、日当は3万円を超えるという。なぜなら、山林を管理するための路網が縦横に整備され、高性能林業機材による植栽、管理、伐採・搬出などが可能で、その生産性は日本の10倍と言われている。バイオマスへの取り組みも大きく進んでいると聞く。日本はここ30年ぐらい、林業は採算が取れないとして放置し、人材養成や生産性の向上に資する路網の整備をはじめ、間伐や、枝打ちなど適切な森林管理さえ怠ってきた。林業の生産性は大正時代とさして変わらないとの指摘さえある。
しかし、ここ50年ほどの間に植林された1000万㌶におよぶ人工林の木材蓄積量が回復し、産出期を迎えつつある。今、やるべきことは、まず、生産性の向上のために大幅な支援施策を講ずるとともに、管理や伐採、搬出に対する支援、資源の循環利用のための法整備を含めたルールの確立を図ることが必要だ。また、山林を計画的に利活用するためには、山林の現状をきちんと調査して、把握することが必要であり、島根県においては、モニタリングを行い、森林台帳との蓄積量の乖離を修正し、整備計画の見直しに着手すべきである。日本の農業は、土地改良や品種、生産技術の改良など生産性の向上がなければ、とうに壊滅しているのであり、今日、海外との厳しい競争に耐えているのは、その証左である。木材は、熱源、建材に加え、科学技術の発展によってエタノールや堆肥などへの活用が開発され、他用途利用が可能となってきた。山林の利活用もバイオエタノールや食用林産物に対応する1,2年の短期で回転させる地域、熱源利用や果樹、花木栽培などに対応する10-20年で回転させる地域、建材生産を前提として対応する50-100年で回転させる地域に分類し、整備計画を抜本的に転換する必要を感じるのである。

溝口善兵衛知事答弁

島根県発展計画の見直しについて

島根県の中をオール島根という観点から、圏域のあり方を一度見直しをする必要があるんではないかということですが、古くからある出雲、石見、隠岐といった地域は、やはり地理的な状況が違うからそういうことになっておるわけでありますが、しかし先ほど申し上げましたように、県内の状況はいろいろ変わっております。例えば医療の確保ということでいいますと、これは全国的なお医者さんの大都市集中という流れが島根県にも及び、それが一番その連鎖の最初のところに中山間地域等があるわけでありまして、これは県だけではなかなか解決できません。国が相当な意気込みで国としての政策を変えないとできないわけですが、しかしその間、住民の方がお困りになるのでは困るわけですから、県としては圏域を越えた広域的な医師確保に努めておると。ヘリコプターのドクターヘリの導入がそうでありますし、あるいは圏域を越えた患者さんの搬送、あるいはITを使った遠隔地の診断、いろんなことをやっていかなければなりませんし、あるいは医師確保ということは市町村だけではとてもできません。市町村も一緒にやっておりますが、県の計画として、地域医療の再生計画によって医師の確保をしようということであります。
そのほかにも、中山間地域における新過疎法における対策、これも引き続き県が関与していかなければならないと思います。あるいは、観光については広域観光ということが出ております。あるいは、環境もそうであります。全県的な視点、圏域を越えた広域的な視点でいろんな対策も講じていきたいということでございます。そういう意味で、いろんな行政における圏域といった考え方は、状況の変化に応じて柔軟に対応していくというのが私の考えであります。
木材業界についてのお話がございました。
御指摘のように、木材を利用する業界というのは幅広いわけでございます。製材、合板、チップ、家具、建具、住宅等々あるわけでございまして、島根は豊かな森林資源を持っておるわけでございます。その資源を有効に活用すると、それによって雇用をふやす、あるいは豊かな環境を守る、豊かな水を守る、そういうことは大事な課題でございます。
そういう中で、県としてもいろんな森林木材産業の活性化に対していろんな対策を講じております。一部は国からの助成もあります。県の単独もありますが、相当な重点分野として取り組んでおるわけであります。
その中で、議員はオーストリアのことを引かれて、生産性を高めないとだめだと、そのためには作業道の整備等が必要だということをおっしゃられたわけでありますが、私どももそう考えております。生産基盤であります作業道の整備、高性能林業機械の導入等を進めること、あるいは機械のオペレーター、木材生産技術者の育成等々をやっていかなければなりません。国のほうもそのためのいろんな対策を講じて、島根県にも相当額の交付金を出しまして、県はそれを基金に造成して、一定期間にそうした森林産業振興、木材産業の産業振興に使おうとしてるわけでございます。今回の予算の中にもその部分が盛り込まれておるわけでございます。
さらに、国の措置に加えまして、県としても県単独事業として造林の新植支援事業によりまして、伐採後の森林に必要な森林所有者の負担軽減措置を講じて、森林の再生を進めようとしておるわけでございます。また、豊かな森を守るという観点も大事なわけでございますが、来年度から5年間延長します水と緑の森づくり税によりまして、荒廃森林を再生する取り組みなどを継続していきたいと思っております。
いずれにしましても、森林資源の循環利用を図るために、県としても国と一緒になりまして、できる限りのことをしてまいりたいと考えているところでございます。
それから、それに関連しまして、山林の現状把握について御質問がありました。
循環型農林業の実現のためには、森林の現況をきちっと把握して、計画的な利用を図っていくということが必要であるわけでありまして、これまでも森林GIS情報を加味した森林情報の整備に努めるとともに、森林境界の確定のための調査も実施して、現場に適した森林の再生と効率的な生産体制づくりに努めてきておりますが、これらに加えまして、より正確な森林情報を把握するために、急速な森林荒廃が見られる地域での被害状況、利用可能な資源状況等につきまして、モデル的な調査にも着手をしておるとこでございます。
今後、森林の現況調査に工夫を加えまして、森林情報の精度を一層高め、必要に応じ、地域森林計画など森林整備に関する計画の見直しを行い、計画的な森林資源の利用に努めていきたいと考えてるところであります。

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