県議会だより

Reports

平成22年2月定例会一般質問(3)

国・県・市町村の役割分担について

知事は就任した時、「毎年の予算が、県民に対するメッセージ」と言われたが、予算査定や国、県、市町村、民間がやるべき役割分担をどう明確化されたか。
小生は新年度予算について大枠は支持するが、政府の景気対策を受けた地方財政に対する財源措置を受け、予算査定の匙加減が甘くなったのではないか、また、政策の優先順位が少し間違ったのではないかという危惧を持つ。
島根県は警察職員、教員を含めて県職員の給与カットによって財源を捻出している状況である。平岡都さんの手かがりを求めて冬の臥龍山で捜索する広島県と島根県の警察官の給与にも差違があることを申し訳なく思う。今回の予算や提案議案を見て感じたことを申し上げる。
知事は、施政方針で出雲市のトキ事業の支援に言及された。小生はトキの分散飼育は国の危機管理の一貫であると認識する。すべてを国の責任でされることであれば、別段、大きく異を差し挟むつもりはない。市が大幅な財政負担を行ってまで、トキの飼育をすることに住民合意があるとは思えないし、必然性も感じない。県の財政支援を下ろせとは言わないが、知事は少額の県の支援よりも、保護責任を担うべき国の全面関与を要望すべきである。ラムサール条約に登録された宍道湖・中海は日本有数の渡り鳥のメッカであり、大社湾の経島には海猫の自然生息地もある。さらに、島根半島ではオオタカやハヤブサ、クマタカなどの猛禽類の生息が確認されている。周囲の環境からすれば、現状でトキの放鳥は不可能であり、出雲市がトキをシンボルとしてまちづくりを行うことは難しいのであり、県の支援は、もっと総合的に考えるべきだと思う。
出雲市地合町は島根原発の隣接集落であるが、行政区域が異なるために、原発地域の隣接エリアにはカウントされていない。地合は島根原発が俯瞰できる地域であり、距離は8㎞ぐらいだと思う。原発の立地に関する交付金などは当該市町村と都道府県に交付される。原発に関する同意が立地市町村と都道府県の両者の意見を求められることから考えれば、交付金は本来、立地市町村の課題解決に立地市町村自らが取り組むべきものと周辺を含め広報や防災など広域的な課題解決のために広域自治体である都道府県が取り組むべきものに区別して充てられるべきである。地合町の場合は、施設からの距離からすれば当然,避難エリアだと思われるが、過去40年近く放置され、県道の整備すらされていない。住民は、万が一の場合、原発のある魚瀬に向かって避難しなければならないのである。これで、県民の安全・安心が図れるだろうか。
国立公園の日御碕地域では、山梨県河口湖のリゾート旅館が誘致され、温泉が掘削、湧出した。出雲大社の正遷座にあわせて、休止となっていた懸案の二股1号トンネルが整備されることは大きな喜びであり、感謝する。しかし、中山から日御碕・宇龍間はアクセス道路が1本しかなく、災害での迂回路はない。昨年の梅雨期にも孤立した。しかし、その近隣地域で、400万円ほどの木材搬出のために、住民が全く知らない、リクエストもしていないところで、林業公社の事業として2000万円を超える大型林業作業道が整備されている。また、大社町の稲佐の浜周辺は海岸線への流砂堆積による飛砂が問題となっている。県では、昭和59年度から平成2年までの1期事業、平成8年度から12年までの2期事業で対策が中断している。飛砂により住民生活に重大な支障が生じているのであり、県は市町村と協力して関係者と対応について早急に協議すべきではないか。
12月議会で行財政改革の一環から、県民の森の施設群を飯南町に2億4千万円余で譲渡する条例が提案され、議会はこれを支持した。しかし、この議案の提案時に、譲渡に伴う県の財政負担については全く言及されなかった。わずかに委員会の質疑に「地域振興のため、今後幾ばくかの支援を考える」と答えたのみだった。仄聞するところでは、飯南町に対し、4億円を超える財政支援が計上されるようであり、行財政改革から処分すべきとされた施設の譲渡によって、譲渡価格を遙かに上回る財政負担が生ずるのであれば、提案時にそれを明らかにすべきことは当然である。しかも、提案時には県は飯南町と仮契約を締結しており、先日、小生が行った調査では、仮契約時には財政負担の金額について大方の合意があったことが確認されている。交渉の経緯もあり、飯南町への支援に敢えて異は唱えないが、これは、知事が、議会に対して行政情報を正しく提供し、適切な判断を求めるという態度では必ずしもないように思え、残念に思う。

職員に知事の目指すべき島根像がしっかりと投影されているか。強い会社、伸びる会社は、会社の基本コンセプトがしっかりし、社員の一人ひとりに会社の方針が徹底しているのである。トヨタの危機は急激な規模拡大、成長に会社のガバナンスがついて行かなかったことの象徴である。
古事記の1300年を一つのキーワードとして観光振興を含む地域振興を図るというコンセプトは、長い営みの歴史の中から地域振興のツールを見つけて、アレンジ、コラボレートしてほしいとのメッセージだと思うが、職員の意識のなかで古事記や出雲大社の固有名詞ばかりが一人歩きをはじめている。言葉に現れたいわゆるセンテンスではなく、こめられた思いというかねらいをきちんと忖度する職員であるかどうかが、島根県飛翔の勝負の分かれ目だと思う。

溝口善兵衛知事答弁

知事の目指す島根像について

島根らしさについて、その関連でもありますが、まとめてお聞きになってますが、この点について先にお答えしますと、1つは、やはりいつも言うことでありますが、島根は交通の便が悪かったり、谷あり山あり離島ありといった地理的な難しさから、やや大都市部と遠いということもあり、発展がおくれてきた面があるわけですが、かえってそのために豊かな自然が残っておる。それから、大都市で失われたような古きよき伝統文化、あるいは温かい地域社会、人間関係が残っておると、こういうことであります。
その中で、具体的にじゃあどういうことかと申し上げますと、自然について言いますと、隠岐や宍道湖、日本海に代表される豊かな自然があります。山間地域には豊かな森林があります。平地には豊かな田畑があります。川にはきれいな水が流れております。そういうことでありますが、そうしたものは大都市ではなかなか見られなくなってる。地方の県でも有数な県ではないかと思うわけであります。また、松江でありますとか津和野でありますとか、あるいは益田もそうでありますけども、中世から近世にかけての武家文化というのが各地に残っております。これも大きな特色ではないかと思います。
それから、際立ってほかの地域と違う点は、古代の生活、歴史、文化が連綿としてこの地には続いておるということであります。風土記の世界に書かれた地名がそのまま松江の地、出雲の地には残っておるわけであります。こういうところはなかなかないわけであります。いわば古事記でありますとか出雲の風土記に代表される、日本国家誕生にもかかわる神話の世界が残っておって、そうしたものが今日におきましてもこの地に住んでおられる人々の脳裏に受け継がれてるわけであります。
神在月、神無月の話はこの地では有名でありますけども、大体県外から来られた方はびっくりするわけであります。国語の話として神無月の話は知ってるわけですけれども、ああ、こういうところのことかというのは、この地に来てみないとなかなかわからない。
それから、神楽でありますとか民俗芸能、生活の様式等々、地域の伝統文化として根づいておるように思います。この集積は各地にない、古代、その当時の文化として残ってるのは奈良ぐらいでございますか、それとも匹敵するような古代の世界の遺産の集積があるというふうに考えておるとこでございます。
そういう中で、古事記が編さんされて1,300年になる2012年でございますか、2013年に出雲大社の正遷座があると。それは一つの古代世界をひとつシンボライズする、たまたまこの1,300年という区切りもいいですから、それをわかりやすくするためにそういうキャッチフレーズで島根を宣伝をする、PRをしていってはどうかということで打ち出したわけであります。
したがいまして、古代世界には風土記の世界もありますし、あるいはさらに万葉集の世界にもつながるかもしれません。いろんなことを活用していこうというのが今回のキャンペーンでございまして、そのことについては私は既にいろんな場で申し上げております。記者会見でも言っておりますし、庁内の会議等でもそういうことは申しておるわけでございますが、いずれにしても、そうした島根らしさを県外に売り出していく、PRしていく、これが大事な課題だと考えているとこでございます。古事記1,300年の具体的なイベント、内容等につきましては、これから関連する県などとも話をしながら、県内各界の御意見なども聞きながら構築してまいりたいと考えてるとこでございます。
次に、私就任以来3年間で職員にどのような変化があったのかという御質問がございました。
私は、知事に就任したときからこういうことを言ってます。1つは、県の職員は県民のためにあると、県民のために働かなければならないと。そういう意味で、県民の方々の意見をよく聞く、あるいは県内の事情をよく見る、そしてその上で各持ち場持ち場で工夫、努力をしないといけないということを申し上げてきておるわけでございます。
それから、そうしたためにも3つの点を強調して取り組んでほしいということを申しております。1つは、やはり先ほどの話と重複しますけども、県内の情勢をよく見る、現地に行く、県民の皆様の声に敏感であると、県職員全体がですね。それが1つ。それから、その上で、いろんな財政の制約とかいろんな制約がありますから、やはり工夫をする必要があるわけです。よく考える、よく議論をする、それから新しいことを考えるということですね。これが2点目。そして3点目に、その上で新しいことにチャレンジをしていくと、それをやってほしいということを言ってきております。
そういう中で、特にアイデアを出したりするというのは、これは若い世代が得意とするとこであります。いろんなことに興味があり、関心があるわけであります。それから、世の中の新しい動きにも敏感でありますから、若手、中堅職員等は前例にとらわれないで、斬新で思い切ったアイデアを部内で出してくださいと。その上に立つ管理職は、そういう下から上がるアイデアだとかそういうものについて、自由闊達な議論がその部署で行われるようにしてほしいと。その上で、いい知恵、いい意見が、いい構想がまとまるように、監督者、リーダーは指揮をしてほしいということを言ってるわけです。そのためには、やはり風通しのよい職場環境と、幹部職員のそれぞれの立場でリーダーシップが必要だということを言っておるわけであります。
そういう点につきましては、私は庁内の会議をできるだけ頻繁にやるようにしてます。それから、早い段階で、構想が何かまとまって、もうこうしますというんじゃなくて、こういうことをやろうと思ってると、その段階から大事なものについては上げてもらって、よく議論をしようということをやっております。来年度予算をどうするかなどにつきましては、相当早い段階から議論をしてますし、準備を要するようなものは早い機会から、その上で検討を具体的にするように指示をしたりしております。
それから日々、それからいろんな情勢の変化がありますから、毎週幹部会で集まって、各部署の私が知っとくべきような事項について報告を受けたり、そこで時間がありますと議論をしたり、あるいはその会議を切りかえて、行政の効率化を進めるための業務の点検委員会を行ったり、あるいは私から知事会の状況だとか国の動きなどもそこで幹部職員にも伝えるというようなことをやって、私の勤務の部内における協議時間というのは相当費やしておるわけでございます。そういうことを通じまして、私と職員とのいろんな情報の共有ということをやりますし、いろんな議論を行ってるということであります。

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