県議会だより

Reports

平成22年9月定例島根県議会一般質問(2)

公共事業による地域活力の牽引について

県職員に「公共調達(工事・備品)の目的は何ですか」と間髪を入れずに「安価に調達することです」と応えられました。私は、「なるほど」と、思いました。
明治から昭和初年にかけてつくられた公共建築物や施設には文化財として後生に伝えたいような優れたものがたくさんあります。とりわけ、地域の小学校などには何十年も経過していながら今なお立派に機能している例もたくさん見られます。
ところで、私たちが住まいする住家は築30年というと「まだ、新しい」という感覚ですが、公共建築物だと「築30年も経過し、老朽化により建て替え」となります。この、違いは何でしょうか。多分、仕事の評価が「価格」だからだと思います。
公共工事が終了すると検査が行われ、施工成績が点数表示され、60点で合格とされます。確かに、設計図書通りの仕事がされていれば、見栄えや丁寧かどうかなどは別にして「合格」となるでしょう。しかし、現状のような入札で、本当に優れた、良い仕事ができるでしょうか。優れた技術を持つ技能者が相応の評価を受けて公共事業に参画できるでしょうか。
県が行う入札で「総合評価方式」の入札方法が執られるようになりました。優れた技術を持つ事業者にインセンティブを与えるのであれば大賛成です。しかし、この評価は技術以外の項目が多すぎると思います。
評価項目にはボランティア活動の参加から高齢者雇用など、およそ施工とは関係ない項目が並んでいます。本来、施工技術と直接関係ない事情、事項は「参入資格」にインセンティブを与えるための事項であって、「施工技術、能力」を判定する評価項目にすることは著しく不合理であると思います。
県は「国交省の基準に準拠」と繰り返すばかりですが、島根県が事業主体の工事に、一々国交省を云々する必要はないことを土木部長は明言すべきであります。
また、工種が限られた島根県では特殊工事の施工実績がとりにくい傾向があり、大手の下請け受注によって施工実績を重ねて入札参加資格を得てきた経過があります。しかし、これも「国交省の基準に準拠」との理由で、下請けは「とび・土工」いわゆる下手間の人夫派遣のごとき様だと感じます。
島根県の事業者が技術力が評価され、さらに技術を進化・発展させるためにも、現状の視点を変更する必要があると思いますが、いかがでしょうか。
国会でも取り上げられた「乗数効果」ですが、公共事業のそれは1を上回り、いわゆる投資の波及効果があると言われております。公共投資には、地域経済を支えるという面があることを示すものです。
ところで、島根県の公共工事の波及効果はどのぐらいですか。私は、このところの公共工事は価格面の制約から、既製品の利用が多く、県内で生産、加工されたものが少ないように感じています。つまり、代金として、県外に支払われるものが多く、結果として県内に循環する財貨が少ないと感じますがどうでしょうか。
例えば、ガードレールの工事が1000万円で発注されたとします。内容は、鋼製のガードレール代金が500万円、施工費が400万円、施工経費が100万円としますと、ガードレールを県内の商社から調達しても、製品は県外から買い入れするため、その代金450万円は鼻からから、発注額ほどの効果が無いことになります。
できるかどうかは別にして、これが木製、つまり、県産木材を特殊加工してガードレールとして利用すれば、公共支出がそのまま県内で循環するため、波及効果はきわめて大きくなります。
「島根発建設ブランド」事業などが奨励されているのはそのためだと思いますが、事業の計画段階から公共支出をより効果的にするため、設計、仕様、維持、管理の各段階から「どうすれば島根県産のものが使えるか」「どうすれば島根県の事業者を参入させられるか」「どうすれば後生に残る優良な仕事がしてもらえるか」をお考えいただきたいと思います。

溝口善兵衛知事答弁

公共事業への県産材活用について

公共事業につきまして、計画段階から効果的に進めるために、県産材の使用、県の事業者の参入の問題、後世に残る優良な仕事、この3点についての考え方を問うということでございます。
私も、議員御指摘のように、公共の施設というものは安全で長く使えなければなりません。それから、できる限り見て美しい、あるいは周りと調和をしてる、環境と調和をしてるということが大事なことだと思っておるわけでございます。そういう意味で、価格だけではなく、品質を高めるための技術力を含めて評価する総合評価方式というのを、公共事業の発注につきましてとっておるとこでございます。
そうした考え方を前提といたしまして、県内経済への影響にも配慮しまして、これまでも、県内企業が施工できる工事は基本的に県内企業に発注をするということを行っております。さらに、下請工事につきましても、県内で施工できる工事は県内企業の使用を、この場合は義務づけるということをやっております。
それから、県産材の使用につきましても、これを優先使用するということをやっておりますし、さらにコンクリート等の主要資材につきましては、県内産の使用を義務化をしているということをやっております。それから、例えば建築部門におきましては、設計やあるいは工事の仕様書では、木材、かわらなどの県内産品を指定して発注をするということをやっております。例えば、宍道高校ができましたけども、屋根は石州がわらを使う、あるいは外壁等は来待石、福光石を使うというような指定をしておりますし、県営住宅あるいは警察の駐在所などにおきましては、屋根は石州がわら、構造材等は県内産木材を使用するというような指定をしておるわけであります。
いずれにしましても、公共施設に当たりましては、計画段階から管理段階まで、一貫して県内経済への効果を考慮して取り組んでまいります。

藤原孝行政策企画局長

公共事業の波及効果について

島根県の公共工事の波及効果についてであります。
公共投資の波及効果を計算する一つの仕組みとして産業連関表があります。平成17年島根県産業連関表を用いて試算しますと、100億円の公共工事を県内で行った場合、約1.5倍の153億円程度が県内経済波及効果として出てくるという結果となっております。

赤松俊彦総務部長答弁

公共建築物の老朽化による建てかえについて

県庁舎及び合同庁舎などにつきましては総務部が所管をしております。このうち主な建物の経過年数を申し上げますと、県庁の本庁舎でございますが51年、県庁分庁舎が55年、隠岐合同庁舎41年となってございます。最も新しいのは浜田合同庁舎でございまして、5年というふうになっておるところでございます。これらの建てかえについてでございますが、事務室などの執務環境、あるいは建物や設備等の機能低下の状況などから総合的に判断をすることといたしておりまして、現時点では計画的な改修等を行い、建物の長寿命化を図りながら活用しておるという状況にございます。

今井康雄教育長答弁

県立学校施設の建てかえについて

県立の高等学校、それから特別支援学校でございますが、その校舎の多くは鉄筋コンクリートづくりでありまして、平成13年度以前に建てたものの、いわゆる耐用年数は60年となっております。学校施設は、児童生徒が一日の大半を過ごす活動の場でありますことから、安全・安心な教育環境を確保する必要があると思っております。このため教育委員会では、毎年度、すべての県立学校の現地調査を実施をいたしまして、現状の把握を行いますとともに、定期的な大規模修繕を行い、適切な学校施設を維持しながら、築後50年を経過した時点で、建てかえをどうするのか、そういった時期について検討するというふうにしております。

西野賢治土木部長答弁

公共建築物のうち土木部が所管しております県営住宅の建てかえについて

県営住宅の建てかえに際しては、住戸面積が狭く、設備水準が劣悪で、整備改善などの改修が困難なものについて、建設年度、老朽度等の視点から判断をしております。現在、県営住宅については、建設後おおむね40年を経過した平家または2階建てのコンクリートブロック構造のものについて、設備水準が劣悪であるため建てかえを実施しており、また鉄筋コンクリート構造では、最も古いものは建設後42年を経過したものがありますが、これまでのところ建てかえは実施しておりません。今後、鉄筋コンクリート構造のものについても、設備水準が劣悪で改修が困難なものについては順次建てかえを実施してまいりますが、一定の設備水準を有するものについては、適切な時期に外壁改修等を行うなど、適切な維持管理を行うことにより、長寿命化を図ってまいりたいと考えております。

西野賢治土木部長答弁

入札制度の改善について

現状のような入札で、すぐれた技術を有する社が参画できないんじゃないかというふうな御指摘でございました。現在、県の4,000万円以上の工事については全面的に総合評価方式を適用しております。総合評価方式は、技術提案を始め、過去の工事成績や施工経験など企業や配置予定技術者の能力を必須の評価項目として設定し、より高い技術力や技術者を有する企業にとって有利になるよう、技術的な項目を価格以外の評価項目の柱としております。特に、技術的に高度な工事であるほど技術に関する評価のウエートが大きくなり、すぐれた技術を有する企業にとって有利となります。一方、工事現場周辺の状況を熟知しているほうが工事を円滑に進められることから、地域要件を評価項目としたり、ボランティア活動の実績などの社会貢献や県の公物管理に貢献している観点から、道路や河川の維持修繕や除雪実績について評価項目としております。このように、総合評価方式においては、技術力、地域性、社会貢献などといった項目を総合的に判断することが県として重要であると考えております。
次に、一々国交省を云々する必要はないんじゃないかというふうな御指摘でございました。
県の入札契約方式については、県の実情を踏まえ、県に最もふさわしいものとなることを常に念頭に置き、検討しており、県独自の基準としての位置づけをしております。ただし国の基準や取り扱いについては、膨大な直轄工事のデータを分析した結果に基づいたものであり、一定の合理性を有することから参考としております。
最後に、島根県の現状の視点を変更すべきではないかということですが、議員が事例と述べられておりました下請企業の取り扱いについては、工事実績に係る品質や企業としての技術力を評価することが困難であることから、現在、下請受注の実績は参加資格として認めておりませんが、今後、島根県として下請実績についてどのような取り扱いが可能なのか研究していきたいと考えております。
いずれにしろ、入札制度については、各発注機関によってさまざまな考え方があること、また社会情勢や社会的要請により変わり得るものととらえており、現状の制度に甘んずることなく、不断の見直しを行い、よりよいものとする所存でございます。以上でございます。

過去の投稿

園山繁の活動日誌