県議会だより

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平成22年11月定例議会一般質問(1)

危機管理について

鳥インフルエンザと朝鮮半島の緊張は島根県の危機管理能力を問う大きな問題であると同時に、いずれも「万全を期す」と語られた事態への対処は極めて対照的である。

まず、鳥インフルエンザについてである。
鳥インフルエンザについては、口蹄疫のケーススタディが生かされ、農林水産省の極めて素早い初動対処によって封じ込めが図られ、今のところ周辺への拡大は無いように見受けられている。
島根県と国との連携により、鳥インフルエンザに対する「前例のない対処」が図られ、一連の「指揮・判断・命令」はスムーズに進んだように見え、概ね、適切な対処だと評価したい。
しかし、プレスリリースで、農林水産省は23300羽、島根県は20000羽、殺処分を一方が30日からとし、一方はウィルスの分離確定後とするなど、また、鶏舎の防鳥ネットについて当初「問題なし」とする島根県と「破損あり」とする農林水産省の発表が食い違うなど、危機管理に臨んで一方の大切な要素である「情報の共有、伝達・広報」については大きな反省点があるように思う。
仄聞するところでは、今議会に所要の補正予算が計上・提案され、県は、今後、国と密接に連携して、処理に要した費用負担や事後広報、養鶏事業者への支援、関係者への補償などの事後処理にあたることとなるが、「前例のない機動対処」に対するコスト負担については、国に相応の負担を求めるとともに、養鶏事業者などの畜産関係者が、今後もこうした「万が一」の場合について、行政の指示に従って事態対処すれば、結果として、きちんと事業継続が担保されるということを実証し、関係者の不安を解消することが大切であることを申し上げたい。
また、指摘されている防疫チェックについては、今回の事例をまたとないケーススタディとして、今後に生かすよう関係者の皆さんに申し上げる。

次に、北朝鮮の砲撃についてである。
朝鮮半島の緊張は、我が国の立ち位置を再認識し、国家としての歴史的位置を再定義して、日本のあり方を歴史に問う契機とすべきだが、残念ながら、いまだに有事法制は不十分であり、国会は機能不全のまま会期を閉じようとしている。TPPに関する議論や政治状況を見ていると、日本は世界の孤児になるのではと心配する。
北朝鮮の韓国砲撃は、万が一の戦争状態の発生すら予測させる事態となっているが、政府は「万全の体制を敷くように指示した」と言っているが、朝鮮半島有事の際、日本としての軍事的手当はどうするべきか。 国内世論および政治システムは「周辺戦時」という状況に適応できるのか。日本にとって理想的な国際情勢をどう作るか。などの議論を政権側から聞いたことがない。

朝鮮半島が戦闘状態となった場合、地理的に岩国基地や佐世保基地が米軍や韓国軍にとって兵站の要になる可能性が強く、島根県も地理的環境から、紛争に巻き込まれることは必至である。空港の一時徴用依頼や、ビザやパスポートを所持しない民間人傷病者の保護などの緊急要請に対し、知事判断をどうするかなどの問題が現実化している。

そこで尋ねるのだが、
鳥インフルエンザに対する初動対応は概ね可とすべきものだが、反省点もある。所感と今後の課題を問う。(知事)

危機管理監は朝鮮半島の緊張について「不測の事態に備えて万全を期す」と発表したが、「不測の事態」と「万全を期す」の内容を問う。鳥インフルエンザと違い、現行の法制で「不測の事態」に「万全を期す」ことができるか。(総務部長)

空港の徴用や朝鮮半島から戦争避難の受入要請、傷病者の保護依頼などがあった場合はどう対処するか。(知事)

難民の流入にはどう対処するか。(知事)

政府と半島有事の対処についてきちんと協議する必要はないか。(総務部長)

溝口善兵衛知事答弁

危機管理について

最初は、鳥インフルエンザに対する対応についての所感と今後の課題について問うという質問でございます。
今回の鳥インフルエンザの対応につきましては、11月29日発生の当初から、農水省と連絡、連携をしまして、とるべき対応等を協議、調整を行ってまいりまして、今後の状況はまだ予断を許さないと思いますけども、昨日までに、すべての殺処分を終了し、焼却を開始をしております。天気がよければ、天候にも依存しますけども、土曜には焼却が終了するか、あるいは天候によってはずれることもあるかもしれませんが、そんなような状況に来ておるわけでございます。あとは、感染防止という観点からしますと、ふんの処理とか残っておりますから、そういうインフルエンザが伝搬しそうないろんなものをきれいに処分をするということが当面の対応として大変大事なことでございまして、それにさらに全力を挙げていきたい。
それから、県内に、鳥の可能性があるわけでありますから、あるいは渡り鳥も関与しているかもしれませんし、状況としては、多くの養鶏場もそういうリスクにさらされているわけでありますから、きちっと防御の体制をとるように、さらに指導監督を行っていきたいというふうに思っておるところでございます。
一方、今回の対応、この経験をしまして感じますのは、当面の対応、早く鶏の処分をしなきゃいけないということに追われて、初期段階などにおきまして、農水省との連絡等におきまして問題があったと思います。幾つかの問題につきまして、その原因などをよく調べまして、今後そうしたことが起きないように対応していきたいというふうに考えておるところであります。
また、これは国のほうにもいろいろ我々の経験をよくお伝えをして、国との連携等につきまして、問題が生じないように、そういう体制を築くようにしていかなければならないと思います。ただそうした問題は、今の殺処分を行うとか、あるいは疑似認定を行うとか、そういう大きな対策自体の進行に非常に差しさわりがあったということではないと思います。いずれにしましても、今後ともこうした問題が起こるリスクはずっと存在するわけでありますから、そういうリスクに対応したきちっとした体制づくりに全力を挙げていきたいというふうに考えております。
次に、危機管理に関連をしまして、空港の徴用でありますとか、あるいは朝鮮半島からの戦争避難の受け入れ要請あるいは、傷病保護依頼、あるいは難民の流入があったときなどにどう対処するのかという質問であります。
まず、空港の徴用、あるいは朝鮮半島からの戦争避難の受け入れ要請などがあった場合の対処でありますが、そうした事態が生じた場合には、外交上の観点から最終的に国がどうするという対応を決めて行っていかなければなりませんが、各地で、例えば難民のようなことですと、これは仮定の話でございますけども、海を渡ってこちらに来たりしますと、こちらのほうで情報を持ってるということもありますから、国の対応を決める際に、国に対してこちらの情報をきちっと伝えていく、そういうことが大事であろうかと思います。そういうもとに、国が例えばいろんな協力要請を島根県にするような場合におきましては、国とよく相談の上、適切な対応を行っていかなければならないというふうに思います。
それから、難民の場合ですと、出入国管理及び難民認定法に基づき、法務省が一時的に対応されますが、先ほど申し上げたと同じような対応をしていく必要があろうというふうに考えております。

赤松俊彦総務部長答弁

北朝鮮による砲撃事件などの有事対応について

北朝鮮による砲撃事件を受けまして、11月24日でございますが、関係課における情報共有と今後の対応を確認をするために、危機管理連絡会議を開催をしたところでありまして、この会議におきまして、正確な情報を迅速に県民に提供するため、国等関係機関との連絡を密にし、各部局とも情報の収集に努める。各部局で連絡体制を再確認した上で不測の事態に備えて万全の態勢を整えるという2点について確認をしたわけでございます。
御質問の、ここでいう不測の事態に備えて万全を期するということはどういうことかというようなことでございますけれども、県の役割というのは非常に限定的であるわけでございます。また、今後どのような事態が発生するのかというのはなかなか予測が難しいわけでございますが、何らかの事態が発生した場合には、迅速でかつ的確な初動態勢ができるよう、緊張感を持って必要な準備を行うというような趣旨であるというふうに考えております。
武力攻撃事態等が発生した場合でございますが、これは国民保護法の体系によって物事が進んでいくわけでございますが、国民の保護に関する基本指針に基づきまして、県民の保護を円滑に実施することを目的に、島根県国民保護計画を策定をしておるところでございまして、この計画に基づき対応をしていくということになるわけでございます。国と連携をとりながら、県民の保護のために最大限力を尽くしていきたいというふうに考えておるところでございます。
続きまして、朝鮮半島の有事の場合の対応というような点についての御質問でございます。
朝鮮半島有事の際の対処でございますが、これにつきましては、まずはやはり国がその責任におきまして検討、処理をするべき事項であるというふうに考えておりまして、国のほうでそういうふうな検討を進めていただければなというふうに考えておるところでございます。

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